『Divid!』
廃工場での白龍皇一誠と流血のザックの戦いは一誠の一方的な戦いになっていた。白龍皇の光翼を覚醒させたからではない。
元々の戦闘力がかけ離れていたからだ。異世界アレイザードでの戦闘経験はもちろん錬環勁氣功で氣を操って身体能力を底上げしている一誠には悪魔に転生してそんなに経験もないザックでは相手にならなかった。
(くそっ……くそっ……まだこの街に着たばかりだぞ!?まだ1人も食べていないんだぞ!こんな所で死んでたまるか!!)
この街に来る前に食べた人間だけでは前にあった戦闘の傷は癒えてはいなかった。傷を癒すためにも人間の血肉を食らう必要があった。
なのに1人目を食べようとしたのに今、命の危機に晒されているのは自分だ。目の前の人間は他の人間とは圧倒的に違う。
「お、お前は何者なんだ!?」
「何者……兵藤一誠だ。で、背中のは白龍皇だったか?」
「は、白龍皇だと!?ではそれが白龍皇の光翼か……!!」
「らしいぞ」
ザックは少しずつ一誠から離れようとした。名前くらいは知っていた。十三種の神殺しの神器―――神滅具だ。
その一つの白き龍の魂が封印されたものが目の前にある。
(冗談じゃない!こんな所で白龍皇に出会うなんて!早く逃げなければ)
ザックはすぐさま走り出した。だが、一瞬にして壁へと叩きつけられた。
「ぐはっ!?な、なにが……」
「お前のスピードは俺にとって遅すぎるんだよな。それに逃げる気満々だったのは分かっていたからな。対処しやすかったぜ」
「お、遅すぎるだと!?ば、バカな!」
ザックは自分のスピードにそれなりの自信があった。彼が悪魔に転生する際にしようとした『悪魔の駒』は騎士―――ナイト。スピード特化の駒だからだ。
それだと言うのに一誠から見たら遅すぎるのだ。その瞬間、ザックの心は折れた。
「うわああぁぁぁ!!」
「まったく逃げるとは戦いの流儀がなっていないな。お、いいもの発見!」
逃げるザックを尻目に一誠はH字の鉄筋を片手で拾い上げて、そのままザックの背中に向かって投げた。
「ぐぶっ!?」
「よし、命中!」
ザックはH字鉄筋を背中から受け、貫通して絶命した。一誠はザックが絶命したのを見届けたらそのまま廃工場を後にした。
それからしばらくしてからその廃工場に人影が現れた。
「ここね。はぐれ悪魔ザックが居るのは」
「はい。部長」
現れたのはリアス・グレモリーと姫島朱乃の2人だった。彼女たちは最近、この街にやってきたはぐれ悪魔ザックについて調査をしていた。
そこで目撃情報があった廃工場にやってきたのだ。周りを調査しているとザックの死体を発見した。
「これは……一体誰が」
「殺されてそれほど時間は経っていませんわ。恐らく私たちが来る前に……」
「匂いで追うのは難しいかしら?」
「はい。ここは何年も放置されていて、埃やカビなどで匂いを追うのは難しいかと」
「一応、お兄様に報告しておかないと。それと朱乃」
「はい。部長」
「他の子たちに警戒するように言っておいてくれるかしら?」
「分かりましたわ」
リアスと朱乃は廃工場を後にした。
▲▼▲
一誠は自分のアパートに戻ってきた。高校生になってバイトして半年後にここに住んでいる。理由は双子の兄が嫌いだからだ。
見下してくる視線に耐えるのが嫌で一人暮らしをしている。両親には社会勉強と言っているので本当の理由は知らない。
「さて、白い龍。お前の事を教えてもらおうか?」
『ええ、いいでしょう。ただ私の名はアルビオンです』
「分かった。アルビオン」
『そうですね。まずは私と言う存在から説明しまよう』
そこからアルビオンは一誠に自分の事を語りだした。自分にはかつて身体があり、赤龍帝と呼ばれる赤い龍と雌雄を争っていた。
そこに天使、堕天使、悪魔の三大勢力が横槍を入れてきた。そこで三大勢力と戦っていたが、『聖書に記されし神』によって神器に魂を封印された。
そこからは宿主を変えて何世代にも渡り赤龍帝と戦い続けたと。そして今代の白龍皇は一誠だと言う事だ。
「なるほど……それにしてもどんだけその赤い龍?」
『ドライグですよ』
「そう。そのドライグと戦いたいんだよ。アルビオン」
『もちろん。決着が付くまでですよ』
「気が遠くなりそうだ……」
最後の肉体があった時から今日までどれだけの宿主を変えて戦い続けた龍たち。どうのような決着なら納得するのかは分からないが、そんな戦いに自分も巻き込まれた事に少し一誠はワクワクしていた。
まだ見ぬライバルである赤龍帝がどんな奴なのか楽しみではあった。何が得意で何が不得意なのか、どんな戦い方をするのか、今から楽しんでいた。
「早く来ないかな。いやこっちから行けばいいのか」
『焦らなくても今代の赤龍帝はこの近くにいますよ』
「分かるのか!?」
『ええ、それはもちろん。これまでどれだけ戦ってきたと思っているのですか?赤いの魔力の波長は嫌でも覚えていますよ』
「それはそうだな……」
長い時間同じ相手と戦ってきたのだ。相手の特徴くらい嫌でも覚えてしまう。
『それでは今度は貴方の事を教えてもらいましょうか?』
「俺の事を?」
『ええ。貴方の実力は目覚めたにしては高い。潜在能力はほぼ皆無に等しいですが、私―――ドラゴンとの相性は過去に見ないくらい抜群です。それにあの悪魔との戦闘も中々のものでした。どこかで戦闘経験がなければああはなからった』
アルビオンは一誠の戦闘能力の高さに驚いていた。一般人より強いはずの悪魔をあそこまで圧倒する実力。どこかで戦闘を経験していなければありえなかった。
それどこか一誠が使った技には心当たりがまったくなかった。自分が知らない内に出来たにしては練度が卓越していた。
「そうだな。俺は異世界に行った事があるんだぜ」
『異世界ですか?信じられませんね』
「だろうな」
一誠はそこから異世界で勇者と共に魔王と戦った事や尊敬出来る兄貴分である凰沢暁月の話など色々掻い摘んで話した。
それを聞いたアルビオンは一誠の異世界での話しを信じようとはしなかった。それもそうだ。自分は行った事も見た事もないのだから。
「でもな、元一般人の俺からしたら悪魔だのドラゴンだの。そっちの方が信じられない。それにアルビオン、お前は異世界が無いと証明出来るのか?」
『それは……』
まさに悪魔の証明。無い事の証明はある事より難しいのだ。いくらアルビオンでもぐうの音も出なかった。だから信じた訳ではない。
しかし一誠の話はどこか納得出来る部分があった。それにアルビオンは一誠が嘘をついているようには感じなかった。
『それにしても貴方は先代の白龍皇に似ていますね』
「先代?どんな奴だったんだ」
『ヴァーリ。兎に角、戦う事が好きな男でした』
「戦闘狂だったんだな」
『ええ、彼は戦う事で自分の存在意味を見出そうとしていました』
(声のトーンが……)
一誠はアルビオンのヴァーリを語る言葉のトーンが少し落ちた事に気がついた。何かしらの思い入れがあるの事を察した。それから一誠はアルビオンの話に耳を傾けた。
先代の白龍皇のヴァーリの生涯を一言一句聞き漏らさないように。すぐ側で見て感じたアルビオンだからこそ語れるヴァーリの人生だった。
「今夜はとことん聞かせてくれ。アルビオンにとって思い出深い人物なんだろ?」
『ええ。彼ほど最強に相応しい白龍皇はいなかったでしょう』
「それは興味あるな。それに超えてみたい。先代を」
『それは中々の覇道になりますよ?』
「望む所だ!」
それから一誠はアルビオンと語り明かした。