ハイスクールD×D~転移の白 転生の赤~   作:新太朗

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スロースタート

 リアスは一誠とフィルの戦闘をただ見ているだけしか出来なかった。自分たちの戦果はケロベロスを数体倒すのでやっとで、フィルの攻撃に眷属全員が離脱寸前まで追い込まれた。

 特にリアスを庇った一樹の傷が酷くアーシアが治療しているが、回復には時間が必要だった。しかしリアスたちには時間を掛ける暇はなかった。

 皆殺しの大司教のバルパーが四本の聖剣を統合する際に地脈のエネルギーを利用した時の余剰分が今、まさに爆発し掛けていた。

 爆発させないために堕天使コガビエルを倒す必要があった。しかしフィル一人にここまで追い詰められてはコガビエルを倒すのは夢のまた夢だ。

 そんな時に一誠がソーナの眷属である匙を連れて結界内に入ってきた。

 

(悔しいけど……今は彼に頼るしかない)

 

 自分やライザーを倒した一誠ならフィルを倒せるのではないかとリアスは思った。なにより白龍皇なのだ、半減して戦いを有利に出来ると確信していた。

 しかし一誠は『白龍皇の光翼』を使わずにフィルと互角以上の戦いをしていたのだ。その事にリアスはショックを受けていた。

 

(私たちやライザーとは加減していた!?)

 

 明らかに今の一誠の動きは以前戦った時とは違い洗練されていた。以前は喋りながら余裕で戦っていたのに、今は黙々と作業でもしているようだった。

 フィルの魔剣をナイフで受け流して、鎧の隙間を的確に切り裂いていた。そして時々、目潰しを加えてはフィルをイラつかせていた。

 フィルがイラつく度に動きに隙が出てきた。もちろん一誠はその隙を見逃さない。

 

「どうした?フィル・バーネット。さっきより反応が遅いぞ」

「このっ!!」

「はい。隙だらけ」

「くっ!?」

「ほらよ」

「なっ!?」

 

 一誠はフィルの目に向かってナイフを投げた。フィルは何とか顔を反らして避けたが、それが不味かった。一瞬でも一誠から目を離すべきではない。

 

「覇槍!」

「ぐはっ!?」

 

 フィルは一誠の覇槍をモロに受けて、5メートルほど後ろに吹き飛んだ。

 

(なんだ、今の感触は!?何か仕込んでいるのか?)

 

 一誠はフィルが思いの他、吹き飛ばなかったのが疑問に思った。それに蹴った感触も違和感を覚えた。

 本来ならもう少し吹き飛んでも良かったはずだ。なのに吹き飛ばなかったのだ。フィルが踏ん張ったのもあるが、理由は別にある。

 

「お前……その顔は」

「まったく忌々しい兄弟だ!」

 

 フィルの顔の半分が紫色の鱗に変化していた。それの姿は龍化した一誠のようだった。そして背中からは翼が鎧を突き破って出てきた。

 

(この氣は……まさか!?)

 

 一誠はフィルから出てきた龍の氣に覚えがあった。ここではない世界に住んでいる龍だ。その恐ろしさは忘れもしない。

 

「邪龍ザーハック!あのドラゴンを連れて来たのか!?」

「ええ、そうですよ。力は使いようですよ」

「勇者を自称しておきながら邪龍に頼るとは道を踏み外したにも程があるだろ!?」

 

 邪龍ザーハック。アレイザードのブラックマウンテンの食物連鎖の頂点に君臨しているドラゴンだ。一誠は以前、遭遇した事がある。

 その際に戦闘になり、瀕死の重傷になったがなんとか逃げる事が出来た。それはザーハックが縄張りの外に滅多に出ないからだ。

 そんな邪龍をフィルはアレイザードから連れてきたのだ。

 

「ザーハックを契約封印したのですよ」

「まったく余計なものを持ち込むなよな」

「勝てばいいのですよ。勝てば」

「外道が!とっと死ね!」

 

 一誠はフィルの背後を取った。ナイフがフィルの首を捉え、今まさに首が飛ぶかと思われた。しかしフィルの首はまだ繋がったままだ。代わりに一誠のナイフが砕けた。

 

(冗談だろ!?)

 

 一誠のサバイバルナイフはごく一般的なものだ。そこに氣を流しコントロールする事で切れ味と耐久値を底上げしていた。

 だから普通のナイフよりよく斬れるのだが、フィルの首は斬れなかった。その理由はフィルの首にあった。鱗だ。

 フィルが龍化した際に首を守るように鱗が出てきたのだ。その鱗だけは一誠でも斬れなかった。

 

「バカめ!死ねぇぇぇ!!」

「しまっ―――」

 

 今度は一誠が危機的状況に陥ってしまった。フィルの魔剣が一誠の首を捉えた。一誠はバックステップで避けようとしたが、フィルの魔剣のリーチからは逃げられなかった。

 

(捉えた!!)

 

 フィルは自分の剣が一誠の首を確実に捉えたと確信した。一誠はバックステップで避けようとしたが間に合わない。

 そしてフィルの剣が一誠の首に触れた。しかし首は斬れなかった。

 

「…………はぁ!?」

「残念だったな」

「バカな……!!」

 

 フィルは一誠の首が斬れていない所か自分の剣が一誠のナイフ同様に砕けた事実に愕然としていた。一誠は自分の服の襟を捲って見せて。

 そこには白い鱗があった。

 

「まさかお前も!?」

「そういう事!!」

「がはっ!?」

 

 一誠はフィルの顔面を龍化した拳で殴り飛ばした。フィルはそのまま校舎に吸い込まれるように飛んでいた。そしてフィルは起き上がる事はなかった。

 いつまで経ってもフィルが出てこないのだ。一誠はコカビエルに体を向けた。

 

「少しは出来ると思ったが、所詮は転生悪魔だな。だが、多少は役に立ったな」

「酷い言われようだな」

「それで?貴様は一体、何者だ?ただの人間ではないだろう?」

「これを見れば分かるだろ?」

「そ、それは!?」

 

 一誠はコカビエルに『白龍皇の光翼』を展開して見せてやった。コカビエルは少し同様しているように見えた。それもそのはずだ、何故ならその『神滅具』の事はよく知っているからだ。

 

「忌々しい翼だ!」

「先代にボコボコになったからって俺に当たるのは止めてくれ」

 

 コカビエルは過去に先代白龍皇ヴァーリにボコボコにやられている。その事はコカビエルにって人生最大の屈辱だった。

 人間と悪魔のハーフ。自分の方が長い時間を戦ってきたのにヴァーリが十代の時にこっ酷く敗北した。古の戦争を生き抜いた自分が負けたのだ。

 

「ふん!あの糞餓鬼は死んだのか!」

「人の死を喜ぶな。糞が」

 

 コカビエルはヴァーリが死んだ事に大いに喜んだ。コカビエルにとって邪魔以外の何者でもなかったからだ。その事に一誠は怒りを覚えた。

 

「今代の白龍皇!どうだ、俺の部下にならないか?そうすれば女を好きなだけ抱けるぞ?」

「はっ!美学もプライドもない堕天使だ。他人に頼らないと勝てないのか?実は弱いのか?」

「貴様!!」

 

 コカビエルは一誠の挑発に乗り、光の槍を一誠へ投げたが一誠は光の槍を素手で簡単に掴んでそのままコカビエルに投げ返した。

 コカビエルは魔法障壁で防いでお互いに無傷で終わった。

 

「なるほど。赤龍帝の噂の正体はお前だったのか」

「そうらしい。一樹……赤龍帝はたいした事、なかっただろ?」

「確かに」

(そのままコカビエルと潰し合え!)

 

 一樹は一誠とコカビエルが潰し合うのを今か今かと待っていた。その表情は残酷な笑みを浮かべていた。

 まさに一樹が望んだ展開だ。我慢して、一誠が来るのを待ったものだ。

 

「流石に今の状態だと厳しいな。行くぜ、アルビオン」

『ええ、いつでも行けますよ』

「バランス・ブレイク!」

『Vanishing Dragon Balance Breaker!!』

 

 白き龍の皇帝の鎧を纏った一誠がそこにはいた。一誠はコカビエルに殺気を向けた。

 

「さあ、始めようか?堕ちた天使……地獄への片道切符をくれてやるよ」

 

 白龍皇イッセーと堕天使コカビエルの戦いが幕が切って落とされた。

 

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