この日、一誠はギャスパーのトレーニングをゼノヴィアに任せてある場所に向かっていた。数時間前にサーゼクスから連絡を受けて、『今から送る場所に向かってくれ』とだけ言って電話を切ったのだ。
考えても仕方ないと思い、一誠は指定された場所に向かうのであった。ついた場所は神社だった。無宗教の一誠にとって縁遠き場所だ。
「はぁ……面倒だ」
「どうしてお前がここに居るんだよ!?一誠!!」
一誠はため息を漏らした後に声のする方を向いた。そこには双子の兄である一樹が立っていた。ズカズカと一誠に近づいてきた。
「さっさと答えろ!どうしてお前がここに居るんだよ!?」
「俺はサーゼクスさんからの指示を受けて来ただけだ。文句ならサーゼクスさんに言え」
「サーゼクス様が?……どうしてお前なんかが」
「お待たせしましたわ」
「朱乃さん!」
一樹が一誠がこの場所に居る事に苛立ちを感じていると神社からグレモリー眷属で女王の姫島朱乃が現れた。
いつもの制服ではなく、神社の正装とも言える赤と白の巫女服を着ていた。一樹は巫女服の朱乃にかなり興奮していた。
「どうぞカズキ君……貴方もこちらですよ」
「そんな不満顔をするなよ。美人が台無しだ」
「貴方に美人だと言われても嬉しくありませんわ」
朱乃は一誠に歓迎していないオーラをこれでもかと飛ばしていた。実際、朱乃は一樹がここを訪れる事に歓喜したが、同時に一誠も来る事に不満タラタラだったりする。
それもそのはずだ。グレモリー眷属共通の敵を誰が歓迎なんて出来るものだろうか?そんな朱乃の事など気にしないで一誠は神社の中には入って行った。
「お待ちしていましたよ。赤龍帝殿、白龍皇殿」
神社の中には金髪の男性が正座して二人を待っていた。ただし普通の男性ではない。背中には六対十二翼の翼があった。
「初めまして、私は四大セラフで天使長を務めている者、ミカエルです」
「ひょ、兵藤一樹です!」
「兵藤一誠」
「おい!一誠、ミカエルさんに失礼だぞ!」
「生憎、天使に下げる頭なんて持ち合わせていないんでね」
目の前の天使―――ミカエルに対して一誠の態度が気に食わなかったのか一樹は怒りを露にした。だが、当のミカエルが気にしていない様子だったのか一樹はそれ以上、一誠に何も言わなかった。
「済みませんね。会談を前に会っていただいて」
「い、いえ!俺は暇なので」
「無駄話をしていないでさっさと本題に行こうぜ」
「お前は少しは目上の者に敬意を示せよ!」
「はん!嫌だね」
「このっ!!」
一誠としてはさっさと話を終えてこの場から退散したいのだけど、一樹がまたしもその態度を気に入らずに怒りを露にした。
その二人の様子を見て、ミカエルはどこか納得したような顔になっていた。
「報告通りに兄弟仲が悪いのですね」
「なんだ?態々呼び出して俺たちの不仲を見たかったのか?その顔、ブサイクになるまで殴るぞ?」
「不快にしたら謝罪します。申し訳ない」
ミカエルの態度に一誠は変な気分になっていた。天使たちのトップの立つ者がこうも簡単に頭を下げている状況に。一誠は怒りを飲み込み、黙って座る事にした。
少しの沈黙の後、ミカエルは一樹の方を向き一本の剣を差し出した。
「兵藤一樹殿。これを貴方に」
「これは?」
「聖剣アスカロン。ドラゴンスレイヤーの聖剣です。悪魔側から聖魔剣を何本か頂いてので。悪魔でも使えるように調整してありますから」
「あ、ありがとうございます!ドライグ、これ篭手に収納してくれ」
『分かった』
一樹はミカエルから貰った聖剣を『赤龍帝の篭手』に収納した。剣先が篭手から出るようにした。まるで最初からそうればいいかのような動きであった。
そしてミカエルは今度は一誠の方を向き、またしても一本の剣を差し出してきた。
「兵藤一誠殿にはこれを」
「これは……デュランダルか?」
「ええ、レプリカですけどね。教会で最近、作られたものです」
「生憎と俺はゼノヴィアのように空間魔法なんて使えないぞ?」
「それは大丈夫です。イメージしてください。腕輪を」
一誠はミカエルから渡されたデュランダルを持ちイメージした、腕輪を。するとデュランダルが一誠の腕に腕輪として形を変えた。
「どうなっているんだ!?」
「それには『擬態の聖剣』の一部を混ぜているのです」
「ああ、だからか……質量保存の法則って知っているか?」
「そこは魔法なので」
「その言葉で片付くと思ったら大間違いだぞ!」
大剣であるデュランダルが小さな腕輪になったのだ。一誠のツッコミはもっともだろうが、ミカエルは魔法の一言で片付けてしまった。
一誠は何か言いたげだったが、言葉を飲み込む事にした。この手のタイプに何を言っても無駄だからだ。
「ならもう俺は帰っていいか?」
「ええ、構いません。その前に一ついいですか?」
「何だよ……」
「貴方は強い。その強さはどこで手に入れたのですか?」
「トレーニングで」
一誠はそれだけ言って神社から出て行った。まるで文句を一切受け付けないぞ、と言わんばかりの態度であった。
その事に一樹は何か言おうとしたが、一誠の姿はもうそこにはなかった。
「済みません。ミカエルさん」
「いえ、気にしていませんので。それでは私もそろそろ御暇しましょう」
「お気をつけて」
ミカエルも一誠に続いて神社から出て行った。残されたのは一樹と朱乃の二人だけになった。しばらく沈黙の後、朱乃から一樹に抱きついた。
「どうしたんですか?」
「カズキ君に癒されたくて……」
「朱乃さん……」
「カズキ君……」
一樹と朱乃は顔を赤くして少しずつ顔を近づけた。もう唇と唇が触れそうになった瞬間、部屋の扉が勢いよく開いた。
そこには紅髪を逆立てたリアスが仁王立ちしていた。誰がどう見てもかなり怒っている。そして一樹に近づき、朱乃から引き離した。
「私のカズキに何をしているのかしら?朱乃」
「私のなんて、独占欲が強いのでは?リアス」
「私の眷属なんだからいいでしょ!」
「眷属は物ではないのですよ?」
リアスと朱乃はお互いにガンを飛ばしていた。二人の間に火花が飛び散っている。魔力と魔力がぶつかり、周りに影響が出始めていた。
そこで一樹が二人の間に割っては入った。流石の二人も一樹を前に魔力を引っ込めた。
「そこまでだ。リアスも朱乃も」
「カズキ!」
「カズキ君!」
「二人が喧嘩しないようにちゃんと相手するから」
「カズキが言うなら……」
「こちらとしてもいいですわ」
リアスと朱乃はすんなりと納得した。二人が気にしていたのは一樹が気持ちがどちらかに偏るのを恐れていた。
しかし一樹から相手にしてもらえるのら問題はなかった。三人はそのまま服を脱いで朝まで体を重ねるのであった。
しかしそれで悪魔の仕事や会談の準備などを疎かにしてソーナにこってりと説教されるのはまた別の話だ。
「二人とも最高だったよ」
「カズキ……もっと私を満足させて」
「カズキ君……私も欲しいわ」
「ああ、任せておけ!」
ソーナに説教された後に三人でこっそり抜け出して人気のない場所でまたしも体を重ねるのであった。
悪魔、天使、堕天使の三大勢力の会談はもう目の前まで迫っていた。この会談が白龍皇と赤龍帝の未来にどのような変化をもたらすのかはまだ誰にも分かっていない。
「もっと喰わせろ!お前の強さを!」
「流石は見込んだ甲斐がある!」
光翼と聖槍がぶつかり世界に変革を齎すのは神すらも分からないだろう。