ハイスクールD×D~転移の白 転生の赤~   作:新太朗

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堕天使の襲撃

「ふふっ……」

 

 この日、リアス・グレモリーは機嫌が良かった。我慢出来ずに笑みが零れていた。それを横で紅茶を淹れた姫島朱乃が見ていた。

 

「嬉しそうですね。部長?」

「それはそうよ。まさかカズキが赤龍帝だったのよ」

「ええ、あれには驚きましたわ」

 

 数日前にリアスが眷属にした後輩の男の子、兵藤一樹。彼はなんと伝説の十三種の神滅具の一つ、赤龍帝の籠手を持っていたのだ。

 リアスも実際神滅具を見るのは初めてでそれが眷属になったのだ。機嫌がよくなるのは当たり前だろう。

 これで自分の夢に一歩近づけたと言うものだ。

 

「それにそれなり才能もあったのは嬉しい誤算ね」

「そうですわね。魔力をあれほど簡単に使えるなんて、自信が無くなってしまいますわ」

「そうね。それで朱乃、はぐれ悪魔ザックの調査はどう?」

 

 一樹の話から昨日見つけたはぐれ悪魔の話へと変わった。自分たちが到着する前に絶命したはぐれ悪魔。

 あの場には自分たち以外に転生悪魔を圧倒するだけの実力者が居た事は明白だ。それも自分たちが把握していない者が。

 この街の管理者たるリアスからしてみれば寝耳に水だ。管理が出来ていないのではないかと両親から追求されてしまうかもしれない。

 そうなれば今後の自分の進路に関わってきてしまう可能性がある。

 

「その件でしたらまだ調査中ですわ」

「そう……はぐれ悪魔ザックは別の街では中級悪魔でもかなり手こずるほどの実力があったそうよ」

「でしたらそのはぐれ悪魔を倒した人物はそれ以上の力を……」

「それが誰か把握しておきたいし、出来れば眷族にしたいわ」

「しかし出来るでしょうか?部長はカズキを転生させるのに『悪魔の駒』のポーンを全て使ってしましたのですよ」

 

 赤龍帝だけあって『悪魔の駒』の中でも一番価値の低い歩兵―――ポーンの駒を八個全て使ってしまったのだ。

 現在リアスが持っている駒は戦車、騎士、僧侶の三つだけだ。この三つの中の一つを使って転生出来るかどうか怪しい所だ。

 

「そうね……なら最悪協力関係を築いておきたいわ。何かあった時に戦力になるならないじゃ大きな違いだわ」

「確かにそうですわね。でもまずは正体を掴まない事には何も始まりませんわ」

「眷属の子たちに時間がある時に捜索するように言っておいて、いいかしら」

「ではそのように」

 

 リアスは朱乃との話を終えて再び朱乃が淹れた紅茶を飲み始めた。新しく加わった眷族の将来とまだ見ぬ実力者の事を考えながら。

 

 

▲▼▼

 

 

「無くなっている……」

 

 一誠はあの悪魔の死体が気になって次の日、再びあの廃工場にやってきた。そこで目にしたのは死体が綺麗さっぱり消えた場所だった。

 まるでそこには何も無かったかのように綺麗になっていた。

 

「誰が……」

『恐らく悪魔たちでしょう』

「悪魔が?どうして」

『はぐれ悪魔には賞金が懸かっています。死体を持ち帰ればそれなりの金になるのですよ』

「マジか!?やってしまった……」

 

 一誠はアルビオンから聞かされた事実に驚愕していた。そして勿体ない事をしてしまったと思ってしまった。

 賞金の事を聞いていれば自分が持って行ったのに。

 

『しかしイッセー。あなたは換金場所を知っているのですか?』

「あ、そう言えば……」

『それでは意味がないでしょう』

「し、しまった……」

 

 アルビオンの指摘に一誠はうな垂れていた。例え賞金首を倒したとしても換金場所を知らなければ金へと変える事が出来ない。それでは倒し損もいい所だ。

 その時だった。一誠は廃工場の入り口の方を見た。そこにはシルクハットにコートを着た男が立っていた。

 

(人間じゃないな……)

 

 一誠は目の前の男が人ではないと氣で感じ取った。氣を全身に巡らせて臨戦態勢で待ち構えた。

 

「兵藤一誠だな?」

「そうだが、あんたは?」

「これから死ぬ人間が知ってどうする?」

「なら答えなくていい。力ずくて聞くから」

「ふん。人間ごときがこのドーナシークに勝てると?」

(こいつアホだ!?)

 

 勝手に名乗った男に一誠は開いた口が塞がらなかった。態々自分から名乗る必要があるのだろうか?聞く手間が省いてくれた目の前の男が何がしたいのか一誠には分からなかった。

 

「しかし兄弟揃って運のない事だ」

「兄弟?もしかして一樹の事か?」

「ああ、あの男はレイナーレ様が殺し損なったようだが」

「なるほどな……」

 

 一樹の下にもこの男の仲間が行った事を察した一誠はどうして一樹がオカ研に入部したのかが分かった。

 この男の仲間が一樹を殺しに行き、そこでリアス・グレモリーと関係を持ったのだ。少し気分がスッキリした一誠は改めて臨戦態勢をとった。

 

「一樹の事は分かった。とっとかかってこい!」

「ふん。人間が……ぐっ」

 

 ドーナシークは光の槍を一誠に向かって投げた。しかし槍が一誠に当たる瞬間、消えて自分の足に光の槍が刺さっていた。

 ドーナシークは訳が分からなかった。確かに槍は一誠に吸い込まれるように向かって行った。しかし槍が刺さっているのは投げた本人である自分だ。

 

「な、何をした!?」

「質問したら答えてもらえるとでも?どうした、俺を殺すんじゃなかったのか?これじゃお前が死ぬぞ」

「くっ……調子に乗るなよ!人間が!!」

「その人間に手玉にされているのに気付かないとは哀れだな」

「こ、この!!……がはっ!?」

 

 激情に任せてドーナシークは槍を投げ続けた。しかし一本も一誠に当たる事はなかった。何故なら全ての槍はドーナシークに返っているからだ。

 身体に何本もの光の槍が刺さり満身創痍になっていた。

 

「どうした?もう終わりか」

「こ、この人間が……!!」

「今度はゆっくりしてやるから投げてみろよ」

「この……!!?」

 

 ドーナシークは一誠の挑発にまたしても光の槍を投げてしまった。そして見た。一誠の手に握られた光の槍を。

 そして一誠はその光の槍をドーナシークに投げた。槍はドーナシークの左胸に刺さりそのまま前のめりに倒れた。

 一誠がした事は簡単だ。投げてきた槍を掴んで投げ返しただけだ。それも超高速で。ドーナシークは最後まで分からないまま死んだ。

 

「アルビオン。こいつは堕天使で言うとどの程度のレベルなんだ?」

『二翼一対は堕天使の中では最下級ですよ』

「つまりこいつはザコって事か?」

『ええ、そうですよ』

「俺も舐められたものだな」

 

 殺しに来た割にはそれほど強くない者を送ってきた事に一誠は怒っていた。怒る論点がズレているのだが。

 一誠は興味を無くしてそのまま廃工場を後にした。

 

「ここで間違いなのか?」

「そのはずっす」

 

 一誠がいなくなった後、二人の堕天使がやってきた。カワラーナとミッテルトの二人だ。彼女らはドーナシークとの連絡が取れなく上司であるレイナーレに命令された様子を見に来たのだ。

 

「まったくドーナシークは人間の始末にどれだけ時間を掛けているのだ」

「仕方ないっすよ。前はグレモリーの悪魔の所為で失敗したんすから」

「どれだけレイナーレ様に迷惑を掛ければいいのだ!」

「そうっすね。帰ったらレイナーレ様に報告してお仕置きしてもらうっすよ」

「あ、あれは……!?」

「え……そんな……ドーナシークさん!?」

 

 二人が見たのは身体に無数の槍が刺さった後のあるドーナシークの死体だった。二人は行動は早かった。

 ドーナシークの死体を回収して痕跡を消してレイナーレの下へ報告するために飛び去った。

 

「…………」

 

 二人は気が付かなかった。二人が痕跡を消しているのを物陰で見ている人物の事を。影で観察していた人物は主に報告するために廃工場を後にした。

 

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