そこに現れたのは白だ。穢れを知らない何もにも染まりそうで染まらない。そのような白だった。それが龍の形をした鎧になっていた。
誰もがその白き美しさに見惚れていた。誰もが動きを止めて、その神々しい姿を目に焼き付けていた。
「な、なんだ!?その姿は!!」
「カーディナル・オーバー・ドライブ―――純白の白龍皇って所だな」
「しょ、所詮は見掛け倒しだ!」
「まったくこの力を理解出来ないとはな……」
カテレアは今の一誠の姿に何故か苛立ちを感じていた。それは彼女がひと目見た瞬間に分かってしまったからだ。
(つ、強い!?ありえない!オーフィスの蛇で強化されている私よりも!)
カテレアの苛立ちは一誠の実力がオーフィスの蛇を飲んだ自分より強いと感じたからだ。魔王の血族で無限の龍神の力の一部を取り込んだ自分よりも強い事に。
それがカテレアが苛立ちを感じている理由だ。強くなったはずなのに自分より強い相手を目の前にすれば誰だって怒りを露にしてしまうだろう。
「まずは周りの掃除だな……」
『Half Dimension……DivideDivideDivideDivide』
「ぎゃぁぁぁ!!」
「く、空間が!?」
「に、逃げろぉぉぉ!!」
「い、いやだぁぁぁ!!」
一誠は空間を圧縮して周りの悪魔たちの体の一部を潰した。周りの悪魔たちは何が起こっているのか理解出来ずに恐怖のあまり逃げるしかなかった。
「このっ!」
『Reflect!』
「なに!?がはっ!」
カテレアが放った魔弾が一誠に当たるかと思いきやカテレア本人にそのまま跳ね返ってしまい、彼女は魔弾を自分自身でくらってしまったのだ。
「な、何をした!?」
「何って……反射しただけど?」
「は、反射!?」
「ああ。白龍皇には三つの能力がある。半減、圧縮、反射の三つだ。最初は二つだけだったけど、今では三つ全部使えるんだよ」
アルビオンが『白龍皇の光翼』に封印された際に三つの内、一つに制限がかかってしまったのだ。しかしそれは覇龍を制御した際に制限が解除されたのだ。
そして一誠は三つ全てを完璧に使いこなせている。周りにいた悪魔たちは圧縮で空間を潰しただけだ。
「カテレア・レヴィアタン。もう一度、言うぞ。投降しろ、そうすれば命だけは助けてやろう」
「ふ、ふざけるな!私はカテレア・レヴィアタン!私こそが真の魔王だ!」
「どこから来るんだ?その自信は……なら終わらせてやるよ」
「人間がぁぁぁ!!」
カテレアは一誠に魔弾を放ち続けた。反射を使える一誠にとって中距離攻撃は最早効かない。しかし純血の悪魔が近接戦なんてできる訳もなく、カテレアはただ中距離攻撃をするしか選択肢がなかった。
「当たれぇぇぇ!!」
「よっと……もっとしっかりと狙ったらどうなんだ?」
「人間がっ!!調子に乗るなぁぁぁ!!」
カテレアは魔弾を放ち続けた。しかし一誠には一発として当たらなかった。一誠の動きが早過ぎてカスリもしなかったのだ。
カテレアはオーフィスの蛇で魔力は上がったが、それで戦闘に勝てるとは限らない。相手の出方、自分の魔力量、技の技術など戦闘はそれらを総合的にまとめて初めて戦いに勝てるのだ。
しかしカテレアは頭に血が昇り、冷静な判断が出来ないでいた。そんな状態で一誠に攻撃を当てるのは至難の業だ。
「くそっ!どこに!?」
「―――後ろだよ」
「しまっ―――ぐふっ!?」
カテレアは一誠を見失ってしまい、簡単に背後を取られてしまった。一誠はカテレアの背後から手刀で胃袋の当たりを突き抜いた。
するとカテレアの魔力が小さくなっていった。カテレアは一誠の手に握られているものを見て驚愕した。
「オーフィスの蛇を!」
「この蛇で魔力を底上げしていたなら蛇を取り除けば、元に戻るのは道理だろ?」
「どうして蛇の位置が分かった!?」
「それはお前と蛇の魔力の波長が違っていたからだ」
「は、波長だと!?」
カテレアとオーフィスの魔力の波長を感じ取れる一誠にとって蛇の正確な位置を見極める事など造作もない。だから手刀で腹を突いて蛇だけを取り除く事が出来たのだ。
しかし魔力の波長など感じられない悪魔のカテレアにとって一誠が言っている事は理解出来ないでいた。
「何を訳の分からない事を!」
「そんな残念の頭では理解出来ないか……だから魔王になれなかったんだよ」
「人間がぁぁぁ!!死ねぇぇぇ!!」
カテレアは蛇が抜けた状態での最大の魔力弾を一誠に向けて放った。一誠なら簡単に避ける事も防ぐ事も出来るのだが、一歩も動こうとはしなかった。
そして魔力弾が一誠に直撃した。周りで見ていた者たちは一誠に注目した。そして砂埃が晴れた。そこには無傷の一誠が立っていた。
「そ、そんな……馬鹿な!?」
「所詮、借り物の力がないとこの程度か……いい加減諦めたらどうだ?」
「だ、黙れ!私……私こそが真の魔王に相応しいのだぁ!!」
「俺もそろそろ終わらせるか……」
「ひぃ!?」
一誠はカテレアとの距離と一気に詰めた。そしてカテレアの頭を掴んで顔に近づけた。兜をスライドさせて顔を露出させた。
そして一誠はカテレアの目を直視した。するとカテレアの様子が可笑しい。
「い、いやぁぁぁ!!?く、来るなぁ!あああぁぁぁ!!」
カテレアは悲鳴を上げてそのまま気絶してしまった。周りの者たちは一誠が何をしたのか分かっていなかった。一部の者たちを除いてだが。
「な、何をしたの!?」
「威圧だ」
「アザゼル総督。威圧とは?」
リアスの疑問に答えたのはアザゼルだった。アザゼルは一誠がカテレアに何をしたのか分かっていた。
「ようは自分の方が強い事を分からせたんだよ」
「それだけで?」
「それだけって……ただ視線を合わせただけでそれが出来るんだぞ?どれだけ修羅場を潜って来たんだよ、あいつは」
「…………」
リアスは黙るしかなかった。カテレアは決して弱い悪魔ではない。魔王の血族してそれなり教育を受けており、リアスやライザー程度ではギリギリ足元に及ぶ程度だ。
それなのに一誠は威圧だけでカテレアに自分の方が強い事を分からせたのだ。リアスは下唇を強く噛んだ。
(まだまだ実力を隠していると言うの!?カズキの方が強いはずなのに!!)
リアスはまだ一樹の方が強いと信じて疑っていなかった。ポーンの駒を全て使って転生したのだ。この程度とは思っていない。
しかし当の一樹は一誠の実力に恐怖のあまり震えていた。
(冗談じゃない!どうしてあいつが『覇龍』をコントロール出来ているんだ!?)
『原作』の一誠やヴァーリでもかなり手古摺っていたはずなのに。ここでは一誠はおろかヴァーリも『覇龍』を制御出来てはいなかった。
それを一誠はやってしまったのだ。一樹の一誠の対しての殺意がどんどん膨れていた。その後、魔王の部下たちによって事態は収束した。
そして会談は同盟を結ぶ事で終わり、細かい取り決めは後日となり解散となった。その後、この会談を『駆王同盟』と呼ばれるようになり、白龍皇イッセーの名が各勢力に一気に広まるのであった。
「イッセー!死ねぇぇぇ!!」
「誰かを倒すのに技がいるが、誰かを殺すのに技は必要ないんだよ」
「俺が主人公なんだよぉぉぉ!!」
「そんな事、知るか!」
会談は終わり、物語は次のステージへ進むのであった。白き龍の皇帝と赤き龍の帝王がぶつかる時、物語は誰もが予想出来ない未来へと進むのであった。