7月下旬、駆王学園の生徒たちにとって最高な日々の始まりの夏休みがやってきた。家族と旅行で海や山に行く者がいれば、どこにも行かずに家でゴロゴロしている者もいるだろう。
そして夏休みに入って一誠はゼノヴィアや黒歌などの眷属たちと実家に戻ってきていた。一人暮らしをする際に両親との条件が長期休暇になれば実家に絶対に帰ってくる事だった。
はっきり言って一樹の事を毛嫌いしている一誠としては学校以外で顔を合わせたくないのだけど、この時だけは帰省する。
一誠は別に両親を悲しませたい訳ではない。だから帰省する際には一樹がいないであろう昼過ぎにしていた。
「…………住所はあっている。これはどういう訳だ?」
一誠はある家の前で絶句していた。そこは本来二階建ての一軒家が建っているはずだったのだけど、今は金持ちの豪邸が建っていた。
面積も左右の家を潰して伸ばしているのは明白だった。住所を何度も確認したが、間違いなかった。ここは兵藤家だ。
「それはそうと……お前は誰だ?」
「初めまして白龍皇。おれっちは美猴。孫悟空の末裔さ!」
「あの西遊記の?」
一誠は目の前の人物が有名な天竺を目指した猿の末裔とは思いもしなかった事に驚いていた。表情は変わっていないが。
「そうだぜ。おれっちも仲間に入れて欲しくて来たんだぜ」
「もしかして『禍の団』のテロリストか?」
「そうだぜ!」
「孫悟空の末裔がテロリストとか世も末だな」
「おれっちは初代と違って楽しい事をしていたいのさ」
「なるほど……」
初代は最初暴れ猿だったが、天竺に行った事で改心したのだろう。しかし天真爛漫な性格は子孫に受け継がれていたようだった。
一誠は『悪魔の駒』のルークを美猴に投げた。美猴はそれを見事キャッチした。
「なら頼むぜ。言っておくが雑魚は俺の眷属にはいらないぞ。美猴?」
「楽しませてくれそうだな。白龍皇は」
一誠は改めて仲間になった美猴を連れて家の中へと入った行った。門を抜けて最初に目に入るのは大きな庭だった。はっきり言って一般家庭の兵藤家には広すぎる庭だった。
「親父!お袋!居るか!?」
「お、一誠帰ってきたか」
「あら一誠お帰りなさい」
玄関で両親を呼ぶといつもと変わらない両親の姿がそこにはあった。一誠は一先ず胸を撫で下ろすのであった。そして両親に近づき問い詰めた。
「この家はどうしたんだ!?」
「この家か?実はリアスさんのお父様が建築関係の仕事をしているらしくてな」
「無料でリフォームしてくれたのよ。一晩で」
「起きたら豪邸になっていた時には驚いたものさ」
「でもちょうど良かったわ。家のリフォームを考えていたから」
「一晩で家がリフォーム出来る訳ないだろ!?」
一誠は叫ばずにいられなかった。そもそも家を豪邸にするのに一晩では時間が足りない。それに寝ている人間がいる中でどうリフォームしたのだ?
そんな事が出来るのは四次元ポケットを持った未来ロボットの青タヌキくらいしか無理だろう。
「それにこれはリフォームではなく魔改造だ!」
「そうなのか?一樹やリアスさんが何も言わないから気にしなかったよ」
「最新技術なら可能じゃないの?」
「二人とも……一晩でリフォームなんて未来から来た猫型ロボットにでも頼まないと無理だよ」
一誠は両親の器の大きさに改めて驚かされた。某アニメの猫型ロボットでなければ無理なリフォームをすんなりと受け入れたのだから。
一誠はにはここまで魔改造された家を見たらツッコミを入られずにはいられないかったのに。
「それで一誠。後ろの方たちは?」
「もしかして一誠のお友達!?」
「まあ……そんな感じでいいよ」
「一誠が友達を連れてくるなんて!母さん、今夜は晩ご飯を少し豪華にしよう!」
「そうね!中学生からあまち友達を連れてこなくなって……心配していたのよね!」
「おい!」
一誠は中学生の途中から友達などを家に連れてくる回数が減ってきたのを両親は心配していた。実際には放課後に修行しており、連れて来なかっただけなのだけど。
それを知らない両親は一誠が友達も出来ないボッチだと勝手に勘違いしていた。実は一誠は学校では交友関係は広い方だったりする。
女子に人気でデートなどをしたりしてその後、別の男を紹介するから学校で知れない生徒の方が少ない。
「おっ!イッセー、来たか」
「アザゼル?どうしてお前がここに?」
一誠たちの目の前に堕天使たちの総督のアザゼルが現れた。格好はスーツを着ており、落ち着いた雰囲気を出していた。
最近、オカ研の顧問になった事は知ってはいた。しかしどうしてアザゼルがここに居るのかが一誠には分からなかった。
「リアスとカズキは地下に居るぞ」
「地下?この家、地下もあるのか!?」
「ああ、トレーニングルームだ。リアスたちはそこで修行している」
「気配が感じなかったから居ないものと……」
「結界で振動などを地上に行かないようにしているからな!」
一誠は地下に意識を向けた。確かに結界があったが中の気配はまったく探知する事出来なかった。それだけ気配を遮断するのに適した結界という事だろう。
「イッセー。一つ頼みがあるんだが」
「何だよ?」
「お前の実力が知りたいんだ。ちょっと相手をしてくれないか?」
「別にいいが……」
「よし!地下に行くぞ!」
一誠はアザゼルに連れてて地下に行く事になった。一誠としてもアザゼルを相手にどこまでやれるか知りたかったので文句はなかった。
▲▲▲
「どうして貴方がここに!?」
「はぁ……引き受けるんじゃなかった」
一誠は地下に降りてすぐに嫌な相手に会ってしまった。リアスだ。最初に玄関で気が付くべきだった。どうして家をリフォームしたのか。
それは大人数では手狭なだからに決まっている。ではその大人数とは誰なのかを察するべきだった。
この地下にグレモリー眷属が集合していた。彼らが兵藤家の居候なのだろう。
「あ、イッセーさん」
「よお、ギャスパー。元気にしているか?」
「は、はい!僕、がんばっています!」
「そうか」
現在、ギャスパーはグレモリー眷属に戻っていた。一誠がこれ以上、自分の下に居なくても大丈夫と判断してギャスパーをリアスに返したのだ。
「私を無視するな!どうして貴方がここに居るのと聞いているのよ!?」
「ここは俺の実家だぞ?帰ってきて何が悪い?」
「悪いわよ!ここはカズキと私たちの家なのよ!」
「勝手に人の家を魔改造しやがって、調子になるなよ駄乳め。頭への栄養が胸ばかりに行くんだぞ」
「なんですって!!?」
一誠とリアスは顔を合わせただけで一触即発になっていた。すると眷属たちが集まってきた。その中で一樹と朱乃だけが一誠に殺意の視線を向けていた。
一誠はそんな小物の殺気なんて受け流していた。むしろ一誠は一樹と朱乃に向けて鼻で笑ってみせた。
二人は今にも爆発しそうに顔を真っ赤にしていた。
「ちょっと待てお前ら!」
「アザゼル!どうして彼をここに連れてきたのよ!」
「それはイッセーとカズキの実力を確かめるためだ」
「それって……」
「ああ、ここで二天龍の戦いをしてもらうのさ」
兵藤家の地下で今、伝説の二天龍の戦いが始まろうとしていた。果たして勝つのは悪魔に転生した兄の赤龍帝か、異世界に転移した弟の白龍皇か。
戦いの幕はアザゼル総督によって開かれたのであった。