ハイスクールD×D~転移の白 転生の赤~   作:新太朗

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土砂降りでも地は固まらず

 兵藤家の地下のトレーニングルームで一誠と一樹は視線を交わしていた。アザゼルの提案で二人の実力を測るために戦う事になったのだ。

 グレモリー眷属にイッセー眷属の皆は戦いが始まるのを今か今かと視線を向けていた。一樹も始まるのを体操をしながら待っていた。

 しかし一誠は腕を組んで欠伸をしながら待っていた。それが一樹の神経を逆なでしていた。

 

「おい!ふざけているのか!?」

「何が?」

「戦うのに欠伸をする奴が居るか!?」

「戦い?俺とお前で成立すると思っているのか?」

「このっ!!」

 

 一樹は一誠に殴りかかろうとしたが、押し留まった。一度落ち着いて気持ちを切り替えた。一樹は馬鹿ではない。

 これまで感情に任せて一誠に向かって返り討ちになっている。冷静になって戦えば勝てるはずだと一樹は考えたのだ。

 

「それじゃ……始め!」

「くらえっ!!」

「おっと」

 

 アザゼルの開始の合図と同時に一樹は一誠に殴りかかった。一誠は一樹の攻撃を簡単に回避した。一樹は冷静を保ちながら一誠に攻撃を続けた。

 しかしいくら攻撃しても一誠には掠りもしなかった。それだけ一誠の回避速度が一樹の攻撃速度を上回っているという事だ。

 

「くそっ……いい加減、当たれ!」

「遅いのが悪いだろ。もっと早く攻撃出来ないのか?」

「このっ……」

「一発でも当てたら反撃してやるからよ」

「くそがっ!!」

 

 一樹は一誠の言葉に怒り任せに攻撃し始めた。そして段々と動きにムラが出始めた。もちろんそれを一誠は見逃さなかった。

 大振りになった攻撃にカウンターで蹴りをお見舞いしてやった。一樹は面白い具合にふっ飛んで行った。

 

「がはっ!?」

「おおぉぉ~飛んだな」

「このっ!」

「どうした?さっきより遅いぞ」

「黙れ!くそっ!」

 

 一樹は苛立ちから冷静である事をすっかり忘れていた。ただ一誠に攻撃を当てる事しか考えていなかった。

 しかし経験の乏しい一樹の攻撃を避ける事なんて、一誠にとって朝飯前だった。しかも腕を組んで足だけしか使っていなかった。

 

「こうなったら……うおおおぉぉぉ!!」

「お前、それは……」

「ここからが本番だ」

「赤い龍に体を売ったんだな」

 

 一樹の体は赤い鱗に覆われていた。一樹は一誠に勝つためにドライグに体を全て売ったのだ。一誠と同じように。

 

「しかしいいのか?それではまともな人間の生活は出来ないんじゃないか?」

「ふん!部長と朱乃さんが吸い出してくれるから問題ない!」

「なるほど……」

 

 体に溜まった龍の力はリアスと朱乃が吸い出す事で人間に戻る事が出来る。一樹としても二人とイチャイチャ出来るので体を売る事はそれほど抵抗がなかった。

 

「女にしてもらうとか情けないな……」

「調子に乗るなよ!!無能がっ!!」

「俺に才能が無いのは最初から分かっている」

「とっと失せろっ!!」

 

 一誠はアレイザードで自分に才能がないのを痛感した。だから努力する事にした。自分の取り柄と言えは粘り強さだけだ。

 なら才能すら凌駕するほどの努力を続けたらそれは才能と言えるだろう。だから一誠は一樹に強気でいられる。実際に強いので。

 

「くそっ……どうして!どうして!お前なんだよ!!」

「何がだ?」

「俺こそが主人公なのに……お前ばかり活躍する!」

「くだらないな……」

「なんだと!?」

「お前が俺の何が気に入らないかと思えば、そんなくだない事だったとは……」

 

 物心付いた時から一誠は一樹から嫌われているのを感じっていた。遊びに誘っても足蹴にされるし、家に居ても一言も話さそうともしない。

 だからアレイザードに行くまで仲良くしようと努力して来た。10年近く挫けずに誘ってきた。しかし一樹が誘いに乗った事は一度もなかった。

 

(その理由が主人公がどうとか笑えてくる……)

 

 一誠はただ呆れるばかりだった。一樹が自分の事を主人公だと勘違いしていた事に内心、笑っていた。もちろん哀れんでだ。

 

「来い一樹。お前が勘違い野郎だと教えてやるよ。弟の慈悲としてな」

「くそがっ!!ウザいんだよ!!この世界は俺のためだけの世界なんだよ!脇役以下のクズはさっさと消えろぉぉぉ!!」

「それはお前の事だろ?」

「一誠ぃぃぃ!!」

 

 一樹は一誠の挑発に乗って真っ直ぐに向かった。そして怒りに任せて攻撃をしたが、一誠にはどの攻撃も当たる事はなかった。

 一誠は一樹の攻撃を紙一重で避けて体力を節約していた。それに対して一樹は怒りに任せているのでフォームもあったものではなかった。

 だから体力がどんどん減っていた。体からは大量の汗が流れていた。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

「どうした?もう息が上がったのか。体力を鍛えたらどうだ?」

「だ、黙れ!はぁ……はぁ……くそっ……どうして当たらないんだ!?」

「それはお前がアホだからだよ」

「何だと!?」

「怒りに任せて攻撃をするから体力を無駄にする。もっと節約しろよ、アホ」

 

 一誠は戦う中で常に冷静でいる事を心がけている。それは周りを見ずに戦い、アレイザードで大きな失敗をしてしまったからだ。

 その時はレオンたちがフォローしてくれたが、ここではそうもいかない。だから一誠は常に周りを見ながら戦うようにしているのだ。

 どこで決めるか、相手の攻撃をどう避けるかなどを常に考えている。それに対して一樹はただ力で捻じ伏せる事しか考えていない。

 

「くそがっ!俺が主人公なんだよ!主人公は最強なんだろうがっ!!」

「はぁ……幼稚な主人公だな。努力をしない者が主人公になれる訳ないだろ」

「黙れぇぇぇ!!」

「ふん!」

「がはっ!?ぐぇ……」

 

 一誠に突っ込んだ一樹は腹に強烈な一撃を食らい、膝から崩れた。すると一誠はアザゼルの方を向いた。

 

「アザゼル!もういいだろ!?」

「……ああ、手間を取らせたな」

「俺はもう行く……そこで寝ている奴が起きたら伝えておいけ。死にたくなければもっと強くなる事だな」

「分かった。伝えておく……」

 

 一誠はそのままゼノヴィアたちを連れて兵藤家の地下のトレーニングルームから出て行った。一誠が去ると一樹の下にリアスたちが駆け寄ってきた。

 

「カズキ!しっかりしなさい!……こうなったのもアザゼルの所為よ!」

「済まなかった。まさかここまで実力差があるとは思わなかった……」

「アーシア。すぐに治療してちょうだい!」

「は、はい!カズキさん、しっかりしてください」

 

 アーシアはすぐに『聖母の微笑み』で一樹の傷を癒し始めた。その間、リアスはずっと一樹を抱えていた。その瞳の奥には怒りの炎が灯っていた。

 

(彼は危険だわ!お兄様の部下でも早く排除しないと私とカズキの未来の障害になるわ)

 

 リアスは一誠を消そうと色々と思考していた。そんなリアスをアザゼルは傍らで見ていた。そしてアザゼルは後悔していた。

 一誠と一樹の仲の悪さがここまでとは思いもしなかったからだ。兄弟だからと言って必ずしも仲がいいとは言えない。

 

(これはサーゼクスに言った方がいいだろうな……俺が思った以上に仲が悪いな)

 

 近々冥界で行われるパーティや他の勢力との同盟などやる仕事は山のようにある。そこに一誠と一樹が問題を起こされては対処のしようがない。

 冥界では二人を一緒に行動させては火に油を注ぐようなものだ。

 

(二人は別行動にして、監視を付けた方がいいだろうな……)

 

 折角、同盟を組んでも二天龍がそれを台無しにしてはこれまでの努力が水の泡になってしまう。それだけは絶対に阻止しなければならなかった。

 アザゼルは喧嘩をしても仲がよくならなかった兄弟に重いため息を人知れずに吐き出すのであった。

 

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