ハイスクールD×D~転移の白 転生の赤~   作:新太朗

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魔聖龍タンニーン

 魔聖龍タンニーンは六大竜王の一体であった。彼は同属の数が減っているの一番危惧していた。そこである悪魔の眷属になる事で領地を手に入れてそこに自分の同属たちを住まわせた。おかげで以前より数は減る事はなくなった。

 そんな時、タンニーンは二天龍の噂を耳にした。今代の二天龍の宿主は双子の兄弟だったのだ。兄が赤龍帝で弟が白龍皇だ。すでに戦っており、弟の白龍皇が勝ったとか。しかし兄は倒されたが死んではいなかった。

 

(何故だ?……家族の情か?)

 

 タンニーンは不思議でならなかった。もしかしたら家族だからこそ、止めをさせなかったのではないかと思った。

 その後、不死鳥のフェニックス家とグレモリー家が非公式のレーティングゲームを行い、そこで白龍皇が大暴れしてグレモリーの姫の婚姻を白紙にしたとか。

 最初は赤龍帝がしたとされていたが、コガビエル襲撃の際に何もしていなかった事や三大勢力の会談で一誠の活躍で役に立たないのでは?と噂が立つようになった。

 

「ドライグが不憫だな……」

「ひぃ!?」

「この程度で腰を抜かすとは……」

「こ、この程度だと!?死に掛けたんだぞ!?」

 

 タンニーンは赤龍帝が冥界に来るのでアザゼルから実力を見て欲しいと頼まれて少しばかり戦ってみたのだけど、一樹の腰抜け具合に呆れていた。

 一応死なない程度の加減はしたつもりだったが、一撃で戦闘不能になったのだ。籠手で力は倍になったはずなのにまるで手応えがなかった。

 だから思わずタンニーンはドライグを哀れんだ。ここ数十年の間、覚醒しなかったので強い宿主に出会えたかと思えたが、そうではなかった。

 

「アザゼル。これが赤龍帝か?」

「ああ、そうだ。やはり弱いと思うか?」

「そうだな。中級程度ならいい勝負が出来るが、上級や最上級相手では話にならんだろうさ」

「そうか……ついでなんだが、イッセーの方も頼めるか?」

「白龍皇か……こちらと同じではない事を祈るよ」

 

 タンニーンは期待せずに一誠の方へと向かった。英雄の子孫でもない元一般人の転生悪魔だから弱いのは仕方ないと思うタンニーンだった。

 しかしその考えは一誠と会って変える事になるとはこの時のタンニーンは思いもしなかった。

 

 

▲▲▲

 

 

「はあああぁぁぁ!!」

「ぐっ!?」

「まだまだ!!」

「なっ!?」

 

 タンニーンは『白龍皇の鎧』を纏った一誠と戦っていた。一樹と違い真正面から攻撃してきている一誠にタンニーンは驚きを隠せなかった。

 それ以上に攻撃が体の芯まで届いているようでタンニーンは笑っていた。一誠が思った以上に。それ以上にタンニーンには気になる事があった。

 

「兵藤一誠。どうして半減をしない?使えない理由があるのか」

「理由か……だってもったないだろ?」

「もったない?」

「お前ほどの大物を相手にしているだぜ?」

「なるほどな……」

 

 タンニーンは一樹と違い、一誠は戦いを楽しむ余裕がある相手だと理解した。だからこそ相応の態度で返さなくてはとタンニーンは一誠に殴りかかった。

 一誠はそれに同じく拳で迎え撃ってきた。拳同士がぶつかり衝撃波を生み出した。本来ならタンニーンの方が体が大きいので一誠の方が吹き飛ばされるのに逆にタンニーンが後ろに仰け反った。

 

「おりゃぁ!」

「なっ!?……ぐふっ!」

 

 一誠はタンニーンが体勢を崩した瞬間に尻尾の先を掴んで肩に通してそのまま背負い投げの要領で投げ飛ばした。

 まさかタンニーンも体格差があり過ぎる一誠に投げられとは思ってもみなかった。一誠はそのままタンニーンに畳み掛けた。

 そして一誠の手刀がタンニーンの喉に向けられた。タンニーンは手を上げて降参のポーズを取った。

 

「俺の負けだ。今代の白龍皇よ」

「何が負けだ。手加減していたくせに」

「サーゼクスの部下を殺す訳にはいかないからな」

「なるほど……」

 

 タンニーンは力を抑えて一誠と戦っていた。理由としてはサーゼクスの部下を殺す事は出来ないからだ。タンニーンは一誠をある人物と重ねていた。

 

(ヴァーリ・ルシファーと似ている……あいつと同じ道を進まない事はないといいが)

 

 先代にして魔王孫と人間の間に産まれたハーフ。父から虐待されてアザゼルが保護したと聞いた時はアザゼルを疑った。

 堕天使が態々ハーフを……白龍皇を保護する理由が思いつかなかったからだ。しかしタンニーンの心配を他所にアザゼルはヴァーリをしっかりと育てていた。

 だが、事件が起こった。赤龍帝に会えない事で不満を溜め込んでいたヴァーリがついにキレた。その不満を他の者にぶつけた。

 最後はアザゼルの手で終わらせたと聞いた。だが、死体はどこにも見当たらなかったと。

 

「イッセー!無事か!?」

「イッセー!大丈夫か!?」

「イッセー君。怪我はありませんか?」

 

 一誠を心配してゼノヴィア、匙、ソーナが近づいていた。それを見たタンニーンは少しだけほっとしていた。

 

(今代の白龍皇には側に誰かがいるのだな)

 

 ヴァーリの場合は誰も側に居らず、孤独だった。アルビオンは居ただろうが、それでも孤独だった。それをタンニーンは心配してたいが、強い者は孤独になってしまう事が多かったが、一誠にはその心配がないように見えた。

 

(誰かが側に居るなら大丈夫だろう……)

 

 タンニーンは一誠の実力を測れて満足したのか、そのまま自分の領地へと帰って行った。飛び去る前に一誠と目が合った。

 その時、一誠はタンニーンに挑発的な笑みを浮かべていた。その意味は「次は本気で戦おう」と事だろう。タンニーンもそれが分かったのか、笑みで返してきた。

 

「アザゼル」

『タンニーンか。それでどうだ?お前から見たイッセーは?』

「中々の強さだな。肉弾戦なら歴代でもトップだろうさ」

『だろうな。イッセーの奴は強いからな』

「しかし双子でここまで違うものか?」

『それについては不明だ。イッセーに聞いても答えるつもりはないらしい』

 

 タンニーンは領地に戻る途中でアザゼルと連絡を取った。一樹と一誠の実力の違いが気になったからだ。ほぼ同じ空間で育った双子の兄弟がどうして実力に差が出たのかが気になって仕方なかった。

 アザゼルに聞いた所で答えたが返ってくる事はなかった。そもそもアザゼルですら知らないのだから仕方ない。

 

「アザゼル」

『何だ?タンニーン』

「兵藤一誠はまだまだ強くなるぞ」

『何!?あれ以上強くなるだと?』

「ああ、伸び代を感じた」

『マジか……』

 

 タンニーンは一誠がまだまだ強くなる事をアザゼルに告げた。戦ったからこそ分かるものがそこにはあった。心配があるが、それも大丈夫だと思った。

 

(手を貸すのもいいかもしれないな)

 

 領地に戻ったら他のドラゴンに一誠と一樹の事を話そうと思った。そして一誠なら手を貸してもいいと考えていた。タンニーンは次に一誠と会う事を考えながら笑っていた。

 それは久々に骨のある奴に会ったからだ。しかも成長出来るだけの逸材なら文句のいいようはないだろう。タンニーンは悪魔に転生してもドラゴンなのだ。

 強者との出会いは彼の体で眠っていたドラゴンの血が少しだけ暴れていたのであった。

 


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