白い龍。二天龍。白龍皇。呼び名が様々あるドラゴン。アルビオン。三大勢力の古の大戦の中、宿敵の赤龍帝のドライグと戦場を引っ掻き回した。
そして魂を神器の中に封印されてしまった。しかしそれで二天龍の戦いを止める理由にはならない。むしろ戦いは激化した。時代を変え、宿主を変えては戦い続けた。雌雄を決めるために。お互いに満足いく結果を求めて。
その中でアルビオンは歴代最強と言える人物に出会った。それがヴァーリ・ルシファーだ。
先代魔王の孫と人間との間に産まれた存在。魔王の膨大の魔力を引き継ぎつつ、神器を―――神滅具を『白龍皇の光翼』を覚醒してしまった。
その所為でとは言わないが、ヴァ―リは父から虐待されていた。それを命令したのはヴァ―リの祖父に当たる悪魔だ。
そしてヴァーリは耐えられなくなり逃げ出した。逃げ出した先で堕天使の総督アザゼルに保護される。そこからのヴァ―リの人生は多少マシになった。アザゼルの下で様々な事を学び生活していた。
「アルビオン」
『どうしました?ヴァーリ』
「赤龍帝はどこに居るんだ?」
『申し訳ありませんが私には赤いのがどこに居るかは分からないのです。ただ、近くに居たならば、気配で分かります』
「なら探してみるか」
ヴァーリが二十歳を越えた辺りから彼は赤龍帝を探し始めた。アザゼルの下で修行をして、自分の実力がどの程度なのか知りたくなったのだ。
ヴァーリは世界中を歩き、赤龍帝を求めて旅をした。その道中で各神話勢力と戦い着実に経験値を稼いでいた。
赤龍帝と会った時に倒すために。しかし何十年と探したが赤龍帝は一向に見つからなかった。
「どうしてなんだ!?」
『ヴァーリ……』
「どうしてどこを探しても見つからないんだ!?俺は会いたいと思っているのに!」
ヴァーリは長年に渡り赤龍帝を探して見つからない事に苛立ちを感じ始めていた。この頃からヴァ―リは少しずつ可笑しくなっていった。
少しの事でもすぐに怒るようになり、物に当たる回数が増えてきた。そしてついにヴァーリは一線を越えてしまった。
これまでヴァーリは戦ってきた相手は倒しはしたが、殺しはしなかった。それは相手がもしかしたら将来強くなるかもと思ってからだ。
ヴァーリは天使を、悪魔を、吸血鬼を、妖怪を次々と殺し続けた。しかも殺し方が残虐過ぎた。
これに危機を覚えた各勢力はヴァ―リに賞金を掛けた。その中でアザゼルだけはヴァ―リを信じていた。我が子のように育てきたヴァーリがそんな事をする訳がないと。しかしアザゼルの思いとは裏腹に事は起こってしまった。
ついにヴァーリは堕天使にまで手を出したのだ。そしてそれをアザゼルは目撃してしまった。
「ヴァーリ、お前は……」
「アザゼル。俺の邪魔をするな……!!」
「諦めろ!この時代には赤龍帝は居ないんだ!」
「知ったことか!退け!」
「バカ……野郎が……!!」
アザゼルはヴァーリと戦う事にした。せめて自分の手でヴァーリを終わらせてやるのがアザゼルなりの優しさなのだろう。
戦いは激しくなりヴァーリは右腕と左足をそれぞれ失った。魔法で出血を止めているが、決着が付くのも時間の問題だった。
ヴァーリは最後の力を振り絞って、転移魔法で逃げた。
「がはっ……」
『ヴァーリ……』
「どうやら……ぐふっ……ここまでのようだ」
『そのようですね』
ヴァーリは吐血しながら自分の終わりを感じていた。
「アルビオン。今だから言えるが……俺は最初、お前の事が……嫌いだったんだ……がはっ……」
『ええ、知っていましたよ。我々は繋がっているのですから……』
アルビオンは気が付いていた。幼少期からヴァーリに嫌われている事に。父親からの虐待も『白龍皇の光翼』を覚醒させなかったらもっと軽かったかもしれない。
神器を通じてヴァーリの感情を知っていたアルビオンは申し訳ない気持ちになっていた。だからどんな酷い言葉を投げかけられて受け入れようとしていた。
「アルビオン。俺は……」
▲▼▲
アルビオンはゆっくり目を開けた。そこは真っ白な空間。『白龍皇の光翼』の精神世界だ。そこには大勢のフードを着た者たち居る。彼らは歴代の白龍皇だ。
覇龍―――ジャガーノートドライブを使用し生命力を使い切って死んでしまった者たちだ。彼らの魂は未だ救われてはいない。
ずっと『白龍皇の光翼』の中に囚われている。
「アルビオン」
「ヴァーリですか。久しぶりですね」
「そうか?俺には死んでから一瞬のような気がするんだよな」
「それはそうでしょう」
アルビオンの目の前に先代白龍皇のヴァーリが現れた。アルビオンは死んで魂になったヴァーリにホッとした。
歴代の白龍皇のように負の感情に囚われてはいなかった。
「それでどうしたのですか?神器の奥底にいた貴方がここまで出てくるとは?」
「何、今代の白龍皇を見たくてな」
「そうですか。それで貴方から見て、イッセーはどうですか?」
「強いな、彼は」
アルビオンはヴァーリのイッセーへの評価を聞いて、思わずニヤけてしまった。歴代最強の名高いヴァーリの評価だ。
「しかし一般人の彼があこまで強いとは」
「ああ、それは―――」
ヴァーリの疑問にアルビオンはイッセーから聞いた異世界の話をした。最初はヴァ―リも信じていなかったが、全部を聞いてどこか納得した顔になっていた。
「なるほど。強い訳だ」
「ええ、もしかすると歴代の中でもヴァーリ、貴方に匹敵するかもしれませんね」
「それは楽しみであると同時に惜しいと思うよ」
「惜しい?何がですか?」
「彼が赤龍帝だったら……白龍皇でもいいな。戦ってみたかったよ」
「ヴァーリ……」
やはりヴァーリはまだ過去の事を考えているのだろう。自分にとって最高の好敵手に出えなかった事を。
それだけがヴァーリにとっての心残りだ。アルビオンにはどうする事も出来ない。掛けてやる言葉も出てこない。
「ここで彼の活躍を見させてもらうさ」
「そうですか。面白くなりそうですよ」
「そうか……」
それだけ言ってヴァーリは再び深層部へ帰っていった。
▲▲▲
「間違いないのね?祐斗」
「はい。間違いありません」
リアスは眷属の木場祐斗から堕天使についての報告を受けていた。例の廃工場で今度は堕天使が倒されていた。
はぐれ悪魔の次は堕天使だ。偶然とは思えなかった。
「もしかして同一人物かしら?」
「流石に僕には確認出来ません」
「朱乃はどうかしら?」
「同一人物でなくとも関係者ではないでしょうか?」
「どうしてそう思うの?」
「場所です」
「場所?」
朱乃の指摘にリアスは考えた。はぐれ悪魔が殺された次の日に堕天使が殺されている。もしはぐれ悪魔を殺した人物が死体を確認しにきた時に堕天使と出会ったならこの偶然もありえると思えてきた。
「朱乃。あなたは例の廃工場に監視を付けてちょうだい」
「分かりましたわ」
「祐斗は堕天使の動向を調べておいて」
「分かりました。部長」
「それと他の二人にも説明しないと」
リアスは今後の行動のため、堕天使の動向を調べる事にした。もしかしたらはぐれ悪魔と堕天使を倒した人物と接触出来るかもしれないからだ。
「生徒会……彼女たちにも知らせておかないと……」
朱乃と祐斗がオカ研の部室から出た後、リアスは一人生徒会に向かった。そこには幼馴染の親友の人物が居る。
彼女やその眷属たちにも警告を出した方がいいだろうと思ったからだ。