廃教会で一つの決着がつこうとしていた。一樹を殺した堕天使レイナーレは最近、教会から『聖女』から『魔女』へ堕ちた少女アーシア・アルジェントとの持つ神器『聖母の微笑み』を奪い自分のものにしようとしていた。
しかしそれを一樹たちが阻止した。しかも神器を奪われる直前だった。おかげでアーシアは命を落とさずに済んだ。
一樹はレイナーレがいつアーシアの神器を奪うのか分かっていた。何故なら彼は転生者だからだ。ラノベ『ハイスクールD×D』を読んだ別の世界の人間だ。
だから彼はこれから起こる事を全て知っている。そしてどう行動すればいいのか分かっている。その上で『原作』を少しだけ自分にとって都合のいいように改変していた。アーシアがこの廃教会に来る前に公園に行く事もそこで子供を治療する事も知っていた。
だからレイナーレと遭遇しない道を選びアーシアとゲーセンで長く遊んだのだ。アーシアを自分のハーレムの一員にするために。
(ここまで順調だな!)
一樹はアーシアの救出劇が計画通りに進み笑みを浮かべていた。主であるリアスを説得して、同じ眷属の木場と小猫を連れて廃教会で堕天使たちを追い詰めていた。
「お、お願い!一樹くん!助けて!」
「……駄目だ。俺の命だけでも許せないのにアーシアの命まで奪おうとした」
「な、なんでもするから!エッチな事だって!好きにしていいから!」
「それ以上、喋るな……」
「ぐっ……!?」
一樹は命乞いをしているレイナーレに『赤龍帝の篭手』を装備した左腕を手刀にして左胸に突き刺した。
左腕をゆっくり抜くとレイナーレは前のめりに倒れて動かなくなった。
「部長……お願いします」
「ええ、後は任せてちょうだい」
リアスは滅びの魔力でレイナーレを完全に消滅させた。こうして堕天使レイナーレたちの計画は終わった。
「アーシア。大丈夫か?」
「はい!カズキさんのおかげです」
「それでもし嫌じゃなかったらリアス部長の眷属にならないか?」
「眷属に……はい。お願いします」
「部長!」
一樹はアーシアに転生悪魔になる事を提案してアーシアはこれを受け入れた。そして晴れてアーシアはグレモリー眷属の僧侶―――ビショップとしてリアスたちの仲間になったのであった。
「なんだ。もう終わったのか」
「ええ、終わったわ……誰!?」
リアスは眷属でもない声に振り向いた。そこには一樹と同じ顔の少年が立っていた。そう、一誠だ。
リアスは一樹と同じ顔にフリーズしてしまったが、すぐに臨戦態勢を取った。
「あなたは?」
「俺か?兵藤一誠だ」
「いっせい……貴方はカズキの……」
「弟だ」
リアスに質問にあっさりと答えた一誠。リアス以外に一人驚いている者が居た。一樹だ。その顔は信じられないと言わんばかりのものだった。
(どうしてここにこいつが居るんだ!?)
『赤龍帝の篭手』を持っていないはずの一誠は物語には登場しないと高を括っていた一樹は動揺を隠せないでいた。
「どうしてお前がここに居るんだ!?一誠!!」
「何、挨拶をしにきただけだ」
「挨拶だと!?ふざけるな!!」
「ふざけていないさ。俺の相棒がライバルの気配を感じてな」
「ライバルだと?……まさか!?」
次の瞬間、一誠の背中に白い翼にクリアブルーの羽が現れた。『白龍皇の光翼』が一誠の背中に現れた。それを見た一樹は雷に打たれたような衝撃を味わった。
(どうしてあいつに『白龍皇の光翼』が!?ヴァーリのだろ!?)
『原作』とは違う展開に頭が付いていかずにフリーズしてしまった。その時だった。リアスが一樹を庇うように前に立った。
「みんな!カズキを守るわよ!」
「「「はい!部長!!」」」
全員が臨戦態勢を取っている中、一樹の左腕に『赤龍帝の籠手』が出現してドライグは一誠の『白龍皇の光翼』の中に居るアルビオンに対して話しかけてきた。
『久しぶりだな。白いの』
『ええ、そうですね。赤いの』
『今代の宿主が兄弟だとは奇妙な縁だな?』
『確かに。ですが、今回は私の宿主の方が勝ちますよ』
『言ってくれるな。こちらも中々のスペックを持っているぞ』
『それでもイッセーは強いですよ』
二天龍は自分たちの宿主の自慢話を始めた。一誠やリアスたちは黙って話しを終わるのを持っていた。そしてその時はきた。
『しかし私の宿主はここで決着を付ける事はありませんので』
『出会って、戦わないとは変わったな。アルビオン』
『そうですか?貴方も以前とはオーラが違うように感じますよ。ドライグ』
『お互い以外に興味のあるものを見つけたと言う事か……』
『ええ、そのようですね。ではいずれ決着を付ける時に』
『いずれ合間見える事だろう』
話が終わると一誠は『白龍皇の光翼』を仕舞って反転して廃教会の扉に向かって歩き出した。
「待ちなさい!」
「うん?何だ」
歩いている一誠をリアスが大声で止めた。一誠は歩みを止めて少し身体をリアスたちに向けた。
「どこに行くつもり?」
「アパートに帰るんだけど?」
「はぁ!?アパート?」
「俺は一人暮らししているんだ。用事は終わったから帰るんだ」
「赤龍帝であるカズキと戦いにきたんじゃ……」
「は!何を勝手に勘違いしている?」
一誠はリアスの質問に笑い捨てた。一誠の用事は最初に言ったように『挨拶』に来ただけだ。ついでに言えば、堕天使たちの結末を見に来ただけの事だ。
最初から一樹と戦う気は無かったのだ。
「最初に言っただろ?挨拶に来たと。それに弱い赤龍帝なんて倒す価値すらない」
「―――ざけんな」
「カズキ?」
リアスは一樹が何かをブツブツ言っているのが聞き取れなかった。次の瞬間、一樹が『赤龍帝の籠手』を装備して一誠に向かって殴りかかった。
「クソがっ!調子に乗るなよぉ!!」
「何だ?このパンチは?」
「このっ!」
「どうした?鬼さんこちら、手の鳴る方へ」
「避けるな!!」
一樹の攻撃は一誠に事ごとく回避されて、一発も当たらなかった。一誠は一樹の攻撃を紙一重で回避していた。
それが一樹の神経を逆撫でしていた。当たらない攻撃、余裕を持った回避、まるで自分なんて見ないで相手に出来ると言わんばかりの態度。
一樹はさらにムキになって攻撃を続けた。
「この!この!どうして当たらないんだ!?」
「それはお前の攻撃がなっていなからだ」
「なんだと!?くそがっ!!」
「相手を殴るってのこうするんだよ!」
「ぐはっ!?」
一誠の顔面パンチで一樹は吹っ飛ばされた。起き上がる時に鼻から何か液体が垂れてきたので拭ってみると血だった。
一発の攻撃で鼻血を出した事に一樹の怒りは許容を超えた。
「がああぁぁああぁぁ!!!」
「まるで獣だな?戦うならもうちょっと強くなれよ」
「ががああぁぁぁ!!」
「少し寝ていろ!」
「ぐふっ!!?」
一誠は一樹が気絶するほどの強い攻撃で沈めた。リアスたちが我に返り一樹に駆け寄った。
「カズキ!?よくもカズキを……!!」
「いや、そいつから攻撃を仕掛けてきたんだ。正当防衛だろ?」
「黙りなさい!みんな!カズキの仇を討つわよ!」
「「「はい!部長!!」」」
一誠の話なんて聞く気がないリアスたちは一誠に向かって攻撃を仕掛けてきた。一誠はダルそうにしながらも気を引き締めた。
「せめて準備運動くらいにはなってくれよ?」
こうして白龍皇イッセーとリアスたちの戦いの火花は切って落とされたのだった。