リアスと一樹たちが堕天使たちの件を片付けようとしている中、ビルの屋上からある教会を見下ろしている一誠が居た。
ここ数年、人が寄り付かなくなったのか管理していないのか雑草は伸び放題で、教会の建物そのものもかなりガタが来ているのは見たら誰だって分かる。
一誠の背中には『白龍皇の光翼』が出ていた。
「アルビオン。あそこで間違いないんだな?」
『ええ、ドライグの気配を強く感じます』
「そうか……」
一誠は廃教会の中から感じる複数の氣に覚えがあった。日常から感じた事のある氣ばかりだ。
(オカ研の連中だな……それに一樹)
文科系の部活なのに入部人数に制限があり、誰でも入部出来ない不思議な部。そこには双子の兄の一樹が入部したと最近、浜本と松田の二人から聞いたばかりだった。
(一樹から俺と似たような氣を感じる。まさか赤龍帝ってのは一樹なのか!?)
人間と龍の二つの氣。自分と同じような氣の気配に一誠は一樹が宿敵の赤龍帝であると確信した。
(期待していたのに……ガッカリだ)
一誠は一樹の氣の大きさに落胆した。氣の大きさ=強さだ。氣が小さいならそれだけ弱いと言う事だ。
自分と比べても明らかに弱い一樹の氣。この二年間鍛えてきた一誠からすればあまりにも弱弱しかった。
「アルビオン。済まないが二天龍の戦いは当分お預けのようだ」
『どうしてです?』
「一樹があまりにも弱いからだ。あそこまで弱いと戦う気すら失せる」
『そうですか。別に決着を急ぐ必要はありません。いずれ倒してくれるなら』
「そうか。なら今回は挨拶だけにしておくか」
一誠はビルの屋上から廃教会へ向けて飛翔した。
▲▲▲
「祐斗と小猫が先鋒よ!」
「はい。部長」
「……行きます」
祐斗は自身の神器『魔剣創造』を使い魔剣を一本作り一誠に迫った。その後ろに小猫が続いた。二段構えの作戦だ。
祐斗の攻撃を避けるなら小猫が攻撃するし、祐斗の攻撃を防いでも小猫が追撃してくる。
それに対して一誠はあえて近づいた。
「っ!?」
「遅い!」
予想外の動きに祐斗は一瞬、驚いていまい隙を作ってしまった。それを見逃すほど一誠は甘くない。
祐斗の股間に向けて蹴り上げた。そして男の急所に直撃してしまった。
「のおぉぉぉ!?」
「まったく足元がお留守だぜ?」
祐斗は股間を押さえて悶絶してしまった。多少一誠も加減したとはいえ、男の急所は鍛える事が出来ない。
祐斗はしばらくの間、動けないだろう。
「……よくも祐斗先輩を。てい!」
「おっと!」
「……そんな!?」
「そんなに驚く事か?」
小猫は自分のパワーに自身があった。それこそリアスの眷属の中では誰にも負けないほどだ。なのに目の前の人物には片足だけで受け止められてしまった。
「足は腕の3~4倍のパワーがあるんだ。止められて当然だろ?」
「……この!」
「甘い!」
「ぐっ!?」
小猫は一誠に攻撃をしようとしたが、一誠は近くにあった長椅子を使い小猫を吹き飛ばした。小猫は防御したので最小限のダメージで済んだが、吹き飛んだ際に壁に叩きつけられてしまった。
「祐斗!小猫!よくも私の眷属たちを!!」
「いや、お前らから仕掛けてきたんじゃ!」
「黙りなさい!朱乃!」
「はい。部長」
一誠に眷属が次々やられて逆ギレしたリアスは朱乃と挟むように立ち攻撃を放った。
「滅びなさい!」
「雷よ!」
「舐めんな!」
リアスの滅びの魔力と朱乃の雷を一誠はそれぞれ片手で受け止めた。本来なら片手で止められる訳はないが、一誠にとってそれほど難しくはなかった。
「そんな……」
「部長!彼の腕が……」
「あれは……!?」
リアスは朱乃に指摘されて一誠の腕を見た。そこには白い鱗に包まれた一誠の腕だった。一誠は事前にアルビオンと契約し身体を売っていた。
「まさか、自分の中にドラゴンの両腕を」
「……部長、違います」
「小猫?」
「……あの人の全身からドラゴンの力を感じます」
「まさか……両腕だけじゃなく……」
リアスは小猫の指摘に驚きを隠せなかった。リアスだけではない気絶している一樹や状況が飲み込めていないアーシア以外の全員が動きを止めた。
リアスは一誠の身体を見て、疑問に思った。
(全身を売ったにしてはドラゴン化が腕だけなのはどうして?)
リアスは一度売ったからには人間の身体ではいらないのに一誠の腕は先ほどまでちゃんとした人間の腕だった。
なのに今は白い鱗に守られた龍の腕になっていた。
「なに、ドラゴンの力を発散させる術さえ知っていれば問題ないのさ」
「それを知っているという事なのね」
「ああ、だけど教えられるのはそこまでだ。もっと知りたいなら力ずくでも聞き出すんだな」
「ええ、いいわ。その余裕をすぐに消してあげるわ!」
リアスは一誠の余裕が気に入らなかった。上から言われるのがリアスには耐えられなかった。それはお嬢様として育てられた彼女だからいえる事だろう。
(どうすれば勝てるの!?)
リアスの中で一誠に勝てるイメージがまったく浮かんでこなかった。こんな事は今まで無かった。これまでのはぐれ悪魔は明確な勝利のイメージがあった。
しかし目の前の少年にはまったく浮かんでこなかった。悩んでいると一誠の方から仕掛けてきた。
「ボケッと立っているなよ」
「なっ!?」
一瞬で距離を詰められて張り手で後ろに飛ばされた。そのまま壁に激突するかと思われたが間に一樹が入りクッション代わりになってリアスを守った。
「か、カズキ!?」
「だ、大丈夫ですよ。部長」
「ご、ごめんさない!」
「謝らないでください。勝ちましょう!」
「そ、そうね!行くわよ!」
「はい!」
気絶から目が覚めた一樹が加わった事でリアスには希望が出てきた。朱乃、祐斗、小猫も何とか立ち上げって集結した。
ダメージはまだ残っているが、戦えないほどではなかった。リアス以外の三人も一樹が居れば勝てると思っている。
だからまだ希望が持てると全員が信じていた。しかしその希望は一瞬にして消え去った。
「……え?」
まさに一瞬の出来事だった。一樹、朱乃、祐斗、小猫の四人がいつの間にか壁を背に倒れていた。しかもピクリとも動く気配がない。
リアスは頭の中が真っ白になった。しかし目の前からの殺気で現実に戻ってきた。目の前の殺気。それは拳を構えている一誠だ。
拳に集まるオーラが、それが何なのか分からないリアスでも危険だと理解した。
(避けなきゃ―――!?)
思考はいつも通りなのに身体だけが追いついてこなかった。まるで世界がスローモーションになっているかのように。
近づいてくる拳を避けようとしているが、身体が思うように動かなかった。一誠の拳はリアスの顔を捉えていた。
拳がリアスの鼻先から数cmの所で止まった。一誠は最初から当てる気など無かった。あくまで脅しとか考えていなかった。
「悪いが殺す気は無いんでな」
「…………」
「これは……気絶しているな」
寸止めされた拳から放たれた圧はリアスの長い髪を後ろに一気に流れた。一誠はリアスの様子が可笑しな事に気が付いた。
先ほどからまったく動かなかったのだ。そうリアスは気絶したのだ。これまでにあれだけの殺気を浴びた事がリアスにとって気絶するには十分な殺気だったのだ。
「それじゃ俺はこれで」
そのまま横に倒れたリアスたちを放置して一誠は今度こそ、自分のアパートへの帰路に着いた。
その後、リアスはある人物によって眷属全員助けれるのであった。