「ここは……?」
リアスは目が覚め、天井が目に映った。身体を包むふんわりとした感触からベッドの上に居る事は容易に想像出来た。
身体を起こして周りを見てみると白いカーテンで区切られていた。
(保健室?)
そこ以外に自分の中では思い当たる場所が無かった。その時だった。カーテンが開けられてある人物が入ってきた。
「気が付きましたか?リアス」
「ソーナ!?もしかしてあなたが?」
「ええ、そうですよ」
カーテンを開けて入ってきたのは駒王学園の生徒会長の支取蒼那であった。いや彼女の本名はソーナ・シトリーだ。
「か、カズキや他のみんなは!?」
「安心してください。皆さん、別室で休んでいます」
「そう。良かったわ……」
「それでリアス、あそこで何があったのですか?」
ソーナの真剣な表情と声音にリアスは話す以外の選択肢が浮かんでこなかった。それに親友であるソーナには隠し事はしたくないとも思っていた。
「……兵藤一誠よ」
「兵藤?それはあなたの眷属の……」
「双子の弟よ」
「彼がまさか……あなたたちを倒したのですか!?」
「ええ、そうよ」
「信じられませんね……」
ソーナはリアスの表情を見て、嘘は言っていないと確信した。そもそもリアスは嘘が下手なので顔に出やすい。
「それにしても一般人の人間にやられたとは思えませんね」
「ええ、彼は……白龍皇だったのよ」
「…………はぁ!?そ、それは本当ですか!?」
「ここであなたに嘘を言うわけ無いじゃない。『白龍皇の光翼』を確認したし、二天龍の会話を聞いたわ」
「それにしても兄弟で二天龍ですか……ありえないとは言いませんが、そんな事が」
全ての人間には『神器』を宿している可能性がある。それにしても伝説の龍の魂を封じた神器が兄弟で発現するなど聞いた事がなかった。
だが、完全にそれを否定する根拠も無かった。
「つまり兵藤一誠君は何かしらの特別な訓練か私たちのような存在に接触して力を付けていた、と?」
「恐らくは……でもカズキの事を調べるついでに家族の事もちゃんと調べたわ。魔術師の家系でもなければ、人外の存在と接触した形跡すら発見出来なかったわ」
「しかし他に考えれる可能性はありませんよ?」
ソーナとリアスはいくら考えても答えに辿り着けなかった。それもそのはずだ、彼女たちは一誠の秘密を知らないのだから。
「それで兵藤一誠君が白龍皇である事は私の方で報告しておきましょうか?」
「待って!報告はもう少しだけ待って欲しいの」
「待ってと言われましても……」
「お願いよ、ソーナ!」
「……分かりました。その件はリアスに任せます。どの道、学園の外の事はリアスが担当ですから」
リアスとソーナは駒王学園に入学する際に学園内での事はソーナが担当して、学園の外の事にリアスが担当する事を事前に決めていた。
だが、その分何かあっても責任は担当者だけになってしまうし、連帯責任もしないと約束していた。
それに直接戦ったのはリアスなので上手く報告するのはソーナには無理だった。
「部長」
「朱乃!」
保健室に新たな人物が入ってきた。それは茶封筒を持った朱乃だった。リアスがベッドから出て、朱乃に近づいた。
「朱乃、あなた大丈夫なの!?」
「だ、大丈夫です。アーシアさんのおかげです」
「あの娘が?」
「はい。それと部長、これを」
「これは?」
朱乃はリアスに茶封筒を渡した。リアスが中身を確認してみるとそこには『兵藤一誠』の調査記録が入っていた。
リアスが寝ている間に起きた朱乃が調べていたのだ。短期間に出来る限り調べていたのだ。ここまでしてくる朱乃にリアスは涙を浮かべた。
「私は頼もしい眷属を持てて幸せだわ」
「ありがとうございます、部長。それで調べたのですが、やはり兵藤一誠は人外の存在には接触した痕跡はありませんでした」
「家系が魔術師の類ではないのは確認済みなのは知っているわ」
「そこで兵藤一誠とよく一緒に居るクラスメイトから少し話を聞いてきました」
「それでどうだったの?」
リアスが朱乃に勿体ぶらずに教えてもらおうと近づいた。しかし朱乃の表情は浮かなかった。
「これと言ってありませんでしたわ」
「そう……」
「ただ、中学2年の夏休みが終わった辺りから急に人が変わったように身体を鍛え始めたようですわ」
「なら夏休みに何者かと接触したのかしら?」
「それも無いかと。そのクラスメイト二人は夏休みほぼ毎日会っていたそうですから」
「もしかして夏休みが終わった時に『白龍皇の光翼』が覚醒したのかもしれないわね」
リアスはそう結論付けた。朱乃もソーナもリアスの指摘に頷いた。彼女たちもそれ以外に可能性がないと判断したのだ。
だが、まったく検討違いをしているのを三人は気が付いていなかった。
「それと部長。先ほどご実家から連絡がありました」
「実家から?何かしら」
「実は―――」
リアスは朱乃から告げられた内容に顔を真っ赤にして憤慨していた。
「冗談ではないわ!!」
その日のリアスは学校を休んで実家に向かった。朱乃から聞いた話を確認するために。
▲▲▲
「はぁ……」
冥界である男性悪魔がため息を漏らしていた。その時に近くいたメイドが紅茶を持ってきた。
「ありがとう。グレイフィア」
「いえ、先ほどのため息はリアスお嬢様の事ですか?サーゼクス様」
「ああ」
冥界最強の悪魔、サーぜクス・ルシファーは自分の眷属で『女王』のグレイフィアにどこか呆れた顔を向けていた。
「私は家を出たから何も言えないが、父上の勝手には兄として文句を言ってやりたいものさ」
「しかしご当主様はどうしてお嬢様の婚姻を早めるような事を?」
「原因は彼女の新しく入った眷族さ」
「……赤龍帝ですか?」
「そうだ」
元々リアスの婚姻は彼女が大学を卒業するまで保留になっていたが、ここでリアスの父が婚姻を早めたのだ。
その原因は赤龍帝の一樹に原因があった。
「リアスが大学を卒業するまで4年以上の時間がある」
「はい。それが?」
「それだけの時間があれば覚醒したばかりの赤龍帝を鍛えるには十分だ」
「では、お嬢様は力を付けた赤龍帝を使って婚姻を破棄させようと?」
「ああ、だから父上はそうなる前に手を打ったんだ。まだ赤龍帝は戦力としては未熟だからね」
一樹はまだリアスの眷属の中では弱い。しかし時間を掛ければ、十分な強さを誇るだろう。そうなるとリアスの我が儘が加速すると考えたグレモリーの当主は先手を打った。
まだ未熟の内にリアスの我が儘を潰そうとしたのだ。いくら赤龍帝と言えど、才能があったとしても経験が乏しければ、勝つ事は難しいだろう。
「レーティーングゲームで決めるようだけど、リアスたちには厳しい戦いになるだろうね」
「そうですね。どうするつもりですか?」
「戦う場所はリアスたちの学校でいいだろう。準備期間は出来るだけ用意するように両家の当主に話すつもりさ」
「それくらいがベストかと」
本来は成人した悪魔が参加出来る『レーティーングゲーム』。リアスはまだ成人していないので参加は一度もない。
しかし相手はすでに10戦しており、ゲーム経験者だ。これくらいがリアスにとっていい経験になるだろうと思ってだ。
「うん?これは確か……」
「そちらはリアスお嬢様の眷属になった者の家族ですが。どうしましたか?」
「いや、妙に気になってね」
サーゼクスは一誠の資料の顔写真を見ていた。どこか年齢相応の顔付き見えなかった。そしてレーティーングゲームの事で自分の父でグレモリーの当主に会いに向かった。