TS少女とDr.エイト   作:Dr.エイト/Spider

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Q:スライムはどうやって生まれるのでしょうか。


【01】スライムは最弱のモンスターですか?

 

 

        スパイダーエイト・チャンネル!

 

 

 

「こんにちは。ファンタジー研究家のエイトです」

「魔王軍四天王、兼、助手のキーリ・スカラだぜ」

 

 ブラックすぎるブラックボードを背景に、炎のように赤い髪と金色に輝く瞳を持つ少女が映し出されます。どう見ても人間のカラーリングではない。配信者です。

 

「このチャンネルは、私とキーリ助手の二人で、ファンタジー世界の秘密について考察していくチャンネルです。質問があればコメントからどうぞ*1」

 

 画面の上部に映る電子の波のようなアイコンが揺れ動きます。これが私。

 

「本日は、記念すべき第一回目ということで、身近なファンタジー生物について考察していきたいと思います」

「わーぱちぱち」

「キーリ助手。あなたにとって一番身近なモンスターといえば何ですか?」

「お前かな」

「何て?」

「ファンタジーな生物を再現するために違法な生物実験を行う……」

「おおっと、過去の捏造(ねつぞう)はやめましょう。キーリ助手が向こうの世界にいたころの話として考えてください」

 

 ないですよ、そんな事実は。精々がマンドレイクの作り方を再現したくらいです。

 

「そうか、こっちでモンスターらしいモンスターっていないしな。向こう側……ドラゴンだな」

「え、そっち? どうしてです?」

「どうしてって、身近にいるからだろ。想定してた答えじゃなかったか? 台本用意しておかないからだな」

 

 そういえば魔王軍の四天王でしたっけ。ダンジョンの奥に籠っているからスライムなんて見ないんですかね? 詳しく観測できていないのでいまだに半信半疑なのですが。

 

「討論形式なので台本読みはちょっと……」

「それでどうする? ドラゴンやるのか?」

「いや、ドラゴンは語ることがたくさんあるから第一回には重いです。そういうわけで本日のテーマはこちら。『スライム』についてです」

「わーぱちぱち」(二回目)

 

 こうして、私は話のコントロールのコントロールの必要性をより強く感じたのでした。

 

 ブラックボードには独りでに、『SLIME』の文字が描かれました。私の姿が画面にないのでポルターガイストのように見えますね。

 

「では早速、スライムのイメージについてまとめていきましょう。キーリ助手、スライムは知っていますね?」

「スライムか。魔王軍にもいたぜ。物理攻撃が効かないやつだろ」

「そうですそうです。でもそれは今回の答え。結論出ちゃってます……。ちょっと先に私が調べた情報で説明させていただきますね」

 

 私がそう言うと、ブラックボードにいくつかの画像が浮かびます。

 ゼリーやプリンのような、ある程度の弾力を感じさせる画像です。

 

「スライムといえば、主にファンタジーを題材としたRPGにおいて、序盤に登場する敵として挙(あ)げられます。チュートリアルのような立ち位置のモンスターで、大抵は剣一本で簡単に倒すことができます。柔らかく湿り気と弾力のある体を兼ね備えていて、体当たりをするように攻撃を行うモノが多いですね。今日(こんにち)のスライムのイメージには、『ドラゴンクエスト』シリーズの影響が大きいでしょう」

「ぬいぐるみ?」

 

 写真はしずく型をしたスライムのぬいぐるみを映していました。

 

「そうです。ぬいぐるみやストラップ、かばんなど様々なグッズの展開が成されています。可愛いですね。……それはそれとして、私は顔のあるスライムという解釈は嫌いです」

 

 ドラゴンクエストは好きなんですけどね。好きなんですけど認められないのです。

 

「どうしてだ?」

「そもそもスライムとは”ぬるぬる”だとか”ねばっこい”だとかの性質を持ったモノのことであり、いわゆる粘土や泥、ヘドロの類を指す言葉です。そしてファンタジー生物としてのスライムの元となったのはアメーバや粘菌とされています。粘菌なんて元々英語で"slime mold"ですし。当然彼らに顔はありません。スライムが初めて登場した1953年の『Slime (邦題: 沼の怪)』、ジョセフ・ペイン・ブレナン著。及び1958年の『マックイーンの絶対の危機(ピンチ)』に登場するスライム状生物”ブロブ”など登場初期のスライムは物理的な攻撃で傷つきませんでした。そして触れたものを酸で溶かし吸収してしまうなど非常に凶悪な性質を持っていました。ファンタジーよりもホラー寄りの生物であったこともあり、不定形の非常に不気味な怪物であったわけです」

「……長いな。実物のアメーバや粘菌は結構弱いのでは?」

「そこはファンタジーですから……」

 

 ”スライム”としての初めての姿では物理的なダメージは全くといっていいほど効果がなかった訳(わけ)ですし。生みの親ならいくら盛(も)ってもいいんですよ。

 

「そうか」

「現代の弱いスライムのイメージに結びつくのは1981年に発売されたコンピューターゲーム『ウィザードリィ』シリーズや、それに影響を受けた1984年の『ドルアーガの塔』などが有名で、剣で倒せるようになっています」

 

 『ドルアーガの塔』に関して言えば、ゲームデザイナーの遠藤雅伸(えんどうまさのぶ)氏が自身を指して「日本版スライムA級戦犯」と称するほど、日本におけるスライム像に非常に大きな影響を与えていますね。

 

「その間に一体何があったんだよ」

「全くの別物としか言いようがありません。もしかすると1976~1979年の間に大流行した玩具のスライムの影響があるかもしれませんが、その真偽は定かではないです」

 

 この時代のスライムはまだ液状であり、見た目は原初のスライムと変わらなかったことが両者のイメージの混乱に拍車をかけています。そもそも日本での知名度はほとんどなかったようですけど。

 

「”ぷよ*2”だとか”ぷに*3”だとかのように名前が違えば納得できるんですけれど。スライムはやはり不死身の怪物であってほしいですね」

「結局お前の趣味じゃねえか」

「そうですよ! 何か問題が? 原典から名前を借りる以上は、”液状の生物である””雑食または肉食性である””物理的な攻撃は通用しない”といった点は遵守してほしいですね。以上で第一回、スライムについての考察を終わりたいと思います。お付き合いくださり、ありがとうございました」

「ありがとうございました」

 

 ♰ ♰ ♰

 

「言うほど考察だったか?」

「他にふさわしい言い方がありました?」

「説明会」

*1:
実際にコメント欄で質問すると割とグレーなのでそのうちtwitter貼ります

*2:
ぷよぷよシリーズ。

*3:
アトリエシリーズ。




A:卵から生まれるのを見たぞ。


 そんな馬鹿な……分裂するだけではないのですね?
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