異世界戦争   作:ロングキャスター

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長らくサボっておりまして...
一年ぶりの次話の投稿になります。

前回までのおさらい。

避難民を連れて移動中の藤原達第二小隊。
しかしクロイツの航空攻撃を受けたが友軍の到着で難を逃れる。R.I.D.Fは今回の報復と敵空軍の一時的な戦力の排除の為、静空の嵐作戦を発令した!




静空の嵐

 

 

「ぐあ゙ ぁぁ~」

 

この世のものとは思えない低い唸り声が響く。

しかしこの声の主を担ぐ男にとっては聞き慣れたものだった。

 

「な~んで毎回毎回潰れるまで飲むかねぇ」

 

藤原はノックダウン状態の篠原に投げ掛ける。しかし彼女にはその問いかけも届くはずもなく返ってくるのは何処から出してるのか分からないうめき声だけだ。

 

彼等の小隊は任務を終えて帰還すると宴会を開くというのが恒例行事となっていた。

そして篠原もその度に飲み過ぎ、酔いつぶれ、部屋に担ぎ込まれて二日酔いの繰り返しの一連の流れでそれを藤原が介護するという流れになっていた。

未だに酒場を出禁になってないのが不思議なくらいだ。

 

「こんな男ばっかりの職場で.無防備にも程があるぞ」

 

藤原は愚痴と説教を入り交じらせて彼女に言う。

だがも勿論篠原はそれを冷静に聞いていられる状態ではない。

 

「う゛...ヤバい」

 

「ちょっちょっと待て!今はやめろ!」

 

ついに篠原のダムは決壊寸前になり.

 

真夜中の静かな一帯を男女の悲痛な声が轟くのであった

 

 

 

─────────────────────────

 

 

二人の男女がてんやわんやしてる最中、陸軍基地に併設する『ジョン・ウエスト空軍基地』では彼等の声が虫程の大きさに思えるほどの爆音が響き渡っていた。

 

武装を満載させた4機の戦闘爆撃機『F-15R ストライクイーグル』が出撃の時を待っている。

 

彼等は『静空の嵐作戦』の実行部隊。

攻撃目標は最前線に近く点在する二ヵ所敵空軍基地。

 

計器チェックを終えたパイロット達はヘルメットと酸素マスクを装置し、4機のF-15がほぼ同時にキャノピーを閉めた。

発進準備が整うと地上クルーが4機の誘導を開始。物々しい雰囲気を漂わせながら滑走路へと向かう...

 

 

 

 

~およそ8700ヤード上空~

 

 

≪ポイント02到着。TANGO3、4、分散せよ。≫

 

≪ウィルコ≫

 

≪ほんじゃぁ、また後で≫

 

攻撃任務に当たる部隊、TANGOは予定通り二手に別れて目標へと目指す。

 

≪ロジャー、予定より-30秒の遅れだ。取り戻せ≫

 

≪あいよ≫

 

この部隊の一番機を務めるTANGO1のパイロットは後席のオペレーションレディ(OR)からの一言に軽くあしらう。

 

TANGO1が少しスロットルを上げて加速させると後続のTANGO2もそれに続く。

 

≪ポイント03に到着後、高度を落とせ。低空で侵入する≫

 

≪かたっ苦しいのはナシ!ミーティングしてんだから分かってるよ≫

 

≪言ってやらないと分からないかと思ったんだけど≫

 

≪おらぁガキじゃねぇよ≫

 

そんな小言を言い合いつつも2機の戦闘機は着々と敵施設へと近付きつつあった

 

 

────────────────────────

 

 

いつもと変わらない夜。

 

日中の訓練の疲れを癒す為に皆深い眠りにつく。

 

ただ1人を除いて。

 

この日、ミッチェルは何故か寝付く事が出来なかった。

何か胸騒ぎがしていたのだ。今までも、胸騒ぎがある日は必ず何か起こった。小さな事から大きいことまで様々だ。

 

(小さな事であってくれ)

 

彼は心中で呟く。

瞳を閉じ、そして気付けば朝の日差しとラッパで目が覚める...

 

そんな平凡な1日の始まりを期待した。

 

 

...寝息しか聴こえないこの兵舎に轟いたのは空襲を警告するサイレンだった。

 

「くそっ!」

 

ミッチェルは毒づきつつベッドから飛び起き、フライトジャケットを鷲掴みにした。

ジャケットを羽織りながら彼は戦闘機が待つ格納庫へと走る。

 

兵舎から駆けてほんの1分足らず。

格納庫を目前にして、突如格納庫から炎と強烈な風が吹き出した。爆発は格納庫を見るも無惨な鉄屑へと変えた。

 

鉄屑になった格納庫はここだけではない。滑走路に併設される格納庫全てが変わり果てた。

 

(まだ一分も経ってないはず...速すぎる!)

 

ミッチェルはそう思いつつ空を見上げる。

爆発音に混じり低く腹の奥にズッシリと響くジェットの轟音。

以前に上空で対峙した時にも聞いたあの忌々しい音...

 

ミッチェルは月明かりにうっすらと照らされる敵機を睨んだ。

だがそうこうしている内に再び爆発音がなる。今度は滑走路の方からだった。

ミッチェルはふと我に返り辺りを見渡す。

 

「機体はどうだ!」

 

迎撃機発進の為に来ていたのであろ整備兵を見つけると大声で訪ねる。

 

「格納庫はダメです!外に駐機させてたのしか...うわっ!」

 

彼が言い終える前に、数機の戦闘機が爆発炎上した。

爆風に吹き飛ばされた彼の元へミッチェルは駆け寄る

 

「他に機体は!」

 

彼が無事であるのを確認すると間髪入れずに怒鳴った。

しかし彼は吹き飛んだ機体を見つめて返答しない。

 

「おい!」

 

体を大きく揺すり答えを求める

整備兵はゆっくりとミッチェルへ視線を向け、絞り出すように発した

 

「い、今のが飛べる最後の機体です...」

 

ミッチェルは上空へ視線を向ける。

稼働したサーチライトによりしっかりとその姿を晒す敵機。ミッチェルはその機体に戦慄した。

 

以前対峙した物より大柄でカラスのように黒く塗られた

その機体は何かただならぬ雰囲気をまとっていた。

 

 

────────────────────────

 

クロイツ帝国空軍、第5空軍基地に空襲を伝える警報が鳴り響いたちょうどその時、RIAFの戦闘爆撃機はすぐそこまで来ていた。

 

≪方位185。目標到達まで残り40s。TANGO2、到達+30sで滑走路上空へアプローチ≫

 

≪ウィルコ≫

 

≪さぁ派手に行こうぜ≫

 

TANGO1のパイロットは少々興奮気味に言った。

 

≪あんま興奮すんなよ。俺達がしなきゃならんのは"お礼参り"だ≫

 

TANGO1のOR(オペレーションレディ)は意味深な言葉でパイロットをなだめる。

彼の言葉を聞いてTANGO2の二人が笑う。

 

他愛ない話をしていると目標は目と鼻の先まで来ていた。

 

≪よし、たっぷりとプレゼントしてやれ≫

 

≪drop... now≫

 

月明かりにうっすらと照らされた格納庫をHUD(ハッド)に捉え、爆弾を投下する。

機体に吊り下げた無数の200kg弱程の爆弾がまるで産卵された卵のようにパラパラと落下していく。

 

高速で格納庫を通過した直後、後方から複数の爆発音がする。

 

≪よし、いったな≫

 

TANGO1のORは爆弾の直撃を確認した、コックピットの小さなミラーではあるが爆炎に照らされた格納庫の破片がしっかりと確認できた。

 

≪drop、now≫

 

TANGO2からの投下合図が無線に入る。

彼等が投下した滑走路専用の破壊爆弾はしっかりと滑走路をえぐり、巨大なクレーターを作った。

 

基地を通過した2機はゆっくりと上昇。そのまま左右に旋回して再度攻撃体制へと移行した。

旋回を終えると今度はゆっくりと下降を開始し兵装を爆弾から機銃へ変更、HUDに機銃弾の予測軌道を表す表示がなされる。

 

TANGO1のパイロットは操縦桿にある発射レバーを握る。直後彼は操縦桿を引き機体を上昇させる。一秒程の射撃で放たれた100発を超える20mm弾は一瞬にして駐機中の敵戦闘機を鉄屑に変えた。

彼は機首を上に向けスロットルを絞りエアブレーキを展開さらに兵装を翼下の1000ポンド爆弾に変更する。

 

次なる標的は管制塔。投下された爆弾は管制塔の厚いコンクリートをぶち抜き内部で炸裂した。建物のその後は想像に容易いだろう。

爆弾を投下し上昇を始めた頃、基地の対空施設が稼働し眩い光に照らされた。

 

≪そろそろ潮時だな≫

 

≪攻撃目標への攻撃は全てやった。あとは"カメラマン"に任せましょ≫

 

≪だな。...TANGO1からCP。Mission complete RTB≫

 

TANGO1のパイロットとORは軽く会話すると作戦を終えて帰路へとついた。

 

 

────────────────────ー

 

一連の騒ぎを終え夜が明けた第5空軍基地。

 

夜通し行われた消火活動により基地内で発生した火災は全て鎮火していた。しかし漏れ出た燃料やオイル、燃えた建物や機体の鼻を突く強烈な匂いは辺り一面に立ち込めたままだった。

皆が意気消沈のなか復旧活動に励むなか、ミッチェルは人混みを掻き分けながらある部屋に向かっていた。

 

「ミッチェル少佐、ただいま参りました!」

 

彼は扉の前で声を張り上げる。

中からの返事を待ち扉を開けた。

 

「急に呼び出してすまない。」

 

外を眺める中年の男は彼に詫びた。

 

「何かご用でしょうか?バウル指令」

 

ミッチェルは男に問う。

 

「君は奴らと空で一戦交え生還した。...本当か?」

 

バウルは彼の方を向いた。

 

「はい」

 

バウルの問いに頷く。

 

「では単刀直入に聞く。奴らと我々とではどれ程の差がある?」

 

「正直に言いますと、比べること自体が間違いだと言えるほどに」

 

「そうか...そうだろうな...」

 

バウルはうつむきつつも小さく頷きながらミッチェルの前へと歩んだ。

 

「すまないが、君には一度本国に戻ってもらいたい。」

 

「本国にですか?」

 

「そうだ。本国の技術屋に現場の意見を伝えて欲しい。現状のままでは事態は良くならん...むしろ悪くなる一方だ」

 

「分かりました。...質問なのですがレーダーの設置は成されないので?」

 

「上にはしつこく言ってるのだがね。こちらの意見は二の次だ。これも全部...」

 

バウルが言い終える前に扉が勢い良く開けられた。

 

「これまた随分と酷くやられたものですな。バウル閣下」

 

「一体何の用だ...ハンス」

 

バウルは睨んだ。

 

「そんな邪険に扱わないでください。私は閣下の身を心配しただけですよ」

 

「ふん!何を見え透いたことを...心身共に元気しておったよ貴様の顔を見るまではな!」

 

「全く薄情な方だ...」

 

ハンスはやれやれといった様子であしらい、ミッチェルを見た

 

「ん?そちらは?」

 

「エルンスト・ミッチェル空軍少佐であります。」

 

「おお!どこかで見た顔だと思ったが大陸戦争の英雄ではないか。...会えて光栄だよ、少佐」

 

「私もお目にかかれて光栄であります。大佐」

 

ハンスはミッチェルからの敬礼にニヤリと笑みを浮かべて返礼する。

それらを終えるとハンスは窓へ歩いた。酷く無惨な姿と化した基地を一見して深く息を吐いた

 

「帝国空軍の英雄が居ながらこの有り様とは...」

 

「貴様...!何が言いたい!」

 

「いえ、ただそれほどまでに敵の空軍は優秀なのかと」

 

ハンスは振り向きバウルの顔を見据えた

 

「まるで私の部下が怠け者だと言いたげだな?」

 

「まさか!純粋にそう思っただけですよ」

 

ハンスは笑った。しかしその笑顔にはどこかしらトゲの様なものを感じる。

 

「かく言う貴様ら陸軍も大した戦果は挙げとらんと聞く」

 

「ええ、ですから私が来たのですよ。私が帝国を勝利に導きますよ」

 

ハンスは不敵な笑みを浮かべる

 

「貴様が指揮すれば帝国は滅びるだろうな」

 

「ハッハッハッ!まさか少将が冗談がお好きとは...笑えぬ冗談ですな」

 

ハンスは歩き出した。彼はミッチェルの前で立ち止まると彼を見て

 

「帝国勝利には空軍の助けは必須だ。期待しているよ少佐」

 

「はっ!」

 

敬礼するミッチェルの肩を軽く叩き彼は部屋を後にした。

 

ハンスが出るや否やバウルはかぶっていた軍帽を叩き付けた。

 

「くそっ!奴め!奴はいつもそうだ!自分の思い描く結果が出なければ他人を見下して...!」

 

バウルの怒号が轟く。

ミッチェルは外まで響いてないかと内心冷や汗をかいた

 

「指令、落ち着いてください」

 

「奴が指揮するとは...帝国陸軍も終わりが見えるな!」

 

ミッチェルがなだめるが彼の怒号は止まらなあい

 

「いいか!奴は己が蜜を舐める為ならどんなに優秀な人間も使い潰す...!人命など埃と変わりないのだ!」

 

「は、はぁ...」

 

彼の気迫に気圧されミッチェルははっきりとした返答が出来なかった。バウルは叩き付けた軍帽を拾い汚れを叩き被り直した。

 

「取り乱してすまない...こちらにレーダーが来ないのも奴が根回ししとるからだ。我々が頼りだと言ったが嫌がらせをしてるのは向こうではないか...そもそも派兵促したのは...」

 

バウルは言い切る前にミッチェルの顔を見た。

 

「奴の愚痴が止まらんな...改めて言う、本国に戻り技術屋に現場の意見を伝えてくれ。一週間の休暇を与える、ついでに故郷に帰ってゆっくりするといい」

 

「はっ!しっかりと伝えさせていただきます!」

 

敬礼を終え部屋を後にするミッチェル。

扉を閉めるや否や深いため息をついた

 

「うちの軍はどうなるんだか...」

 

高い天井を見上げて一人呟いた。

 

 

──────────────────────ー

 

 

R.I.D.F基地内に設けられたトレーニングジム。

 

屈強な兵士達がトレーニングに励んでいる。

藤原もその一人だった。ランニングと筋トレをひとしきり終えた藤原は隅の休暇室で一息ついた。プロテインジュースで一服している彼に声をかける男がいた。

 

「ここでお前を探すのは苦労しねぇなぁ。ちょっとばかしヒョロイぞ」

 

藤原にとって恐らくこの世で一番嫌いな声だ。

 

「別に俺は筋肉モリモリマッチョマンの変態になりたい訳じゃねぇよ」

 

藤原は嫌いな声の主、サントスに向いた

 

「何で?女の子にキャーキャー言われるぜ?」

 

「キャーキャーよりも頭のイカれた大男って言われちまう」

 

その場に居た別の兵士が二人を茶化す。

ちなみにだが藤原は筋骨隆々な体型ではないが、しっかりと鍛え上げられている。

 

「で、何の用だよ」

 

「たまには二人で酒でもど...」

 

「やだ」

 

「...せめて最後まで聞いてから言ってくれ。そういうのが一番グサッとくる」

 

「ナイフでグサッとされないだけありがたく思え」

 

「ったくつれねぇな...心配すんな、お前んとこのお嬢ちゃんみたいに潰れねぇからよ」

 

「そういう問題じゃない」

 

「どういう問題なんだ?後で教えてくれ」

 

サントスはそう言って出ていってしまった。

 

「ずいぶんと嫌ってんねぇ。仮にも上官なのに」

 

一連の会話を聞いていた兵士が藤原に言う

 

「いろいろあるんだよ」

 

「付き合ってやらねぇの?」

 

「誰が行くかよ」

 

藤原は再びトレーニングルームへと向かった。

 

 

 

──────────────────

 

 

一通りのトレーニングを終えて自室へと戻った藤原。食堂で夕食を摂る為に準備していた。

 

「さて」

 

扉を開けた藤原。

しかし開けた先の光景に驚く事になる

 

「何でいんだよ...」

 

まかさサントスが待っていようとは

 

「誰も行くなんて言ってねぇぞ」

 

「だから来たんだよ」

 

サントスはお構い無しに部屋へと入る。手にはビールと食べ物が入ったビニール袋を提げていた。

 

「入ってくんなよ...まだ飯食ってないんですけど」

 

「食いもんくらい何かあんだろ?」

 

押し退けるように入るサントス。

 

「それに他所じゃ話せん」

 

先ほどまでとは一転して神妙な顔になった彼を見て藤原も何も言うことはしなかった。

奥へと進んだサントスは人の部屋にも関わらずドカっとベッドに腰かけた。

 

「意外とスッキリしてるんだなぁ」

 

「人の部屋をジロジロ見んな...でどんな話だよ」

 

「まぁ焦るなって。腹が減ってはなんとやらだ」

 

「お前も食ってなかったのか」

 

「いや食べたよ?...だからほら」

 

サントスはビニール袋から紙袋を取り出した

 

「バーガークイーンのチーズバーガー...好きだろ?」

 

藤原は何も言わず問いかける

 

「....セットは?」

 

「ポテト」

 

「サイドは?」

 

「ナゲット&スパイシーチキン」

 

「...交渉成立」

 

「何の交渉だよ...」

 

 

 

サントスからの賄賂を受け取りテーブルについた藤原。バーガーを頬ばりながら彼の話を聞いた。

 

「前の空軍の話....覚えてるだろ?」

 

「静空の嵐か」

 

「一昨日の深夜決行された...ちょっとPC貸せ」

サントスは部屋の隅に置かれたノートPCを指した。

それを受け取ると持参してた携帯端末と接続しデータを転送した。

 

「主要施設は吹き飛んだ感じか」

 

画面には偵察隊が撮影した基地の写真が表示されていた。藤原はバーガーを頬張りながらサントスの説明を聞く。

 

「ああ...見事なもんで、基地の作戦能力は失われたな。復旧には当分掛かるだろう...前回の戦闘の後、戦力補充として十数機の機体が二つの空軍基地に配備されたようだが...」

 

サントスはさらには数日前の写真を出す。

 

「それも今回の攻撃で失われた。」

 

「それの補充は?」

 

藤原の問にニッと笑うサントス。

 

「なしだ。2日経った現時点では前線基地に目立った動きは無い」

 

「そらそうよな...離発着できねぇわけだし?」

 

「ところがそうじゃない...」

 

サントスは再びPCを操作する

 

「これは陸軍管轄下の基地だ。滑走路付きで連絡機の離発着に使う目的だったんだろう...だが空軍の臨時基地の役割もあったそうなんだが...この2日で空軍の移動が確認されない」

 

「戦力の損耗を恐れてる?」

 

「恐らくな...まだ2日程度だからなんとも言えんが、少なからずその考えはあるはずだ」

 

二人の会話が一旦の区切りを迎えた。そのタイミングで藤原は最大の疑問を投げ掛ける。

 

「これは空軍のお話だろ?俺たち陸には関係ない話だ...本題は?」

 

またもやサントスはニッと笑う

 

「空軍同様に陸軍でも動きの低下が見られる...傍受した無線内容を要約すると、戦力の分散と補強ですったもんだしてるようだ」

 

藤原がその内容に首を傾げる

 

「今回の爆撃から、脅威のある戦力を潰したと判断したんだろう...陸軍の戦力が集中している所が狙われると察した結果、今ある戦力を各地に分散させてしまおうって事だが、奴らは戦闘で損耗している...それを補充したいのに戦力は集中できない。」

 

「逆に分散された部隊は単一の戦闘能力に限界がある...各個撃破も容易になる訳か」

 

「しかも基地復旧なんかに陸軍まで回されてる」

 

サントスは新たな写真を出す

 

「こいつは兵員を乗せたと思われる車列を写したやつだ...向かった先は俺たちの攻撃目標。これまで疲弊してたのがここに来て一気にボロ出したな」

 

「なるほど...で、用件はなんだ」

 

「単刀直入に言うと要人救出だ」

 

「要人救出?」

 

「あのお姫様だよ」

 

藤原は思い返す。

以前サントスと話した皇女の事だ

 

「尻尾掴んだか」

 

「ケチャフデ山つう比較的小さい山なんだが...そこにクロイツの前線基地がある。ここに居るという話だ。」

 

画面に映った写真に対して、意見を求めるような目で藤原を見た。

 

「...規模自体はそれほど大きくはないが頑丈そうな建物があって...周辺は対空砲らしきものも確認できるな...ヘリで行くにもかなり離れた所からしかアプローチ不可能だな」

 

「確かにな」

 

「車輌で向かって途中から徒歩で侵入...要所をクリアリングして要人を救出し、車輌まで戻っておしまいかな」

 

「しかないよな」

 

「ただ1つ意見を言うなら、本部から専任を呼んだ方がいいんじゃないか?」

 

「それが出来るならねぇ...上が放したがらないのよ」

 

「だからって他にも候補は居ただろ」

 

「お前ん所は一ヶ月半前にこんな訓練やったろ?んでそん時一番成績が良かったのがお前らだ...もう上はお前らで決めてるみてぇだ。確定したらそん時詳しく教える」

 

サントスは一通り話すとPCを閉じ帰り支度を始めた

 

「全部確定してから話せはいいもんを...俺にベラベラ話してるってバレたらヤバいだろ?」

 

「まぁ..,お前もな。分かってるなら聞かなきゃ良い訳だからな」

 

「なんかあった時は同罪か」

 

「その代わり、なんかあったらフォローはしてやるよ」

 

そう言うと彼は部屋を出た。

 

「ただ良いように使ってるだけじゃねぇか」

 

藤原は呟いた。

 

 

─────────────────────────

 

 

翌日、藤原は基地の外れにある難民キャンプを訪れた。

 

彼が皆を連れてきたその日からこの3日ほど毎朝様子を見に行っていた。

とは言え、そのうち2日は彼らの氏名、年齢、身体状況などの記録、確認や衣食住の確保などの用事付きだったので、ただの様子見は今回が始めてだった。

 

「お兄さんおはよー!」

 

子供達の元気な声が聞こえ、駆け寄ってきた一人の子供を抱き抱える。

 

「相変わらず朝から元気だなぁ」

 

抱えられた子供が笑顔で答えた。

 

「おはようございます隊長」

 

藤原がその声の方へと顔を向けると、篠原とイムレイそして同隊員のリッキー、ダロンの四人が居た。

 

「悪いな、やらせて」

 

藤原は子供を下ろしながら彼等に詫びる。

 

「どうってこと無いっすよ」

 

篠原が答える。

彼女らは避難民に食事を届けていた。

 

「藤原さん!」

 

 

「長老...お身体は?」

 

「心配には及ばないよ」

 

「それは良かった...テントしか準備出来ずに申し訳ない...宿舎が準備できるまではもう少しかかりまして...」

 

「雨風を凌げる物を用意していただけただけで十分ありがたい...命の恩人だ」

 

長老は手を握り頭を下げた

 

「長老!来て来て!」

 

子供が駆け寄ってくる。

 

「あの人凄いんだよ!」

 

手を強く引く子供にされるがままの長老。彼らが向かう先には同部隊一のゴリマッチョ、リッキーの両腕にぶら下がる子供達。

渡してたお菓子が余ったのだろうか、篠原が藤原の元へ来るとクッキーを手渡した。

 

「子供って強いなぁ」

 

藤原は呟いた。

 

「ですねぇ...怪我してる子も居るのに」

 

篠原が答えた。

 

「難民を受け入れてくれるなんて...上も理解してくれたんですね」

 

「いろいろあったんだぞ?」

 

「でもテントも糧食も準備してくれてますし」

 

「バーカ...テントは歩兵隊の余りを頭下げて借りてきたんだよ...糧食も軍からの配給はなし。うちの部隊費から出してる」

 

「え!?」

 

「申請が終わるまでは全部こっち持ちだよ」

 

「なら早く終わらせて下さいよ~」

 

「いやー...ほならね、自分でやってみろって話だろ?...もう申請はしたから、上が手続きやるだけだよ」

 

「さすがっすね」

 

「...女だからって手ぇ出さねぇと思ってる?」

 

暫し二人に無言の間ができた。

その間、二人は無邪気に遊ぶ子供達を見ていた。突然篠原が沈黙を破り藤原に問いかける

 

「これで良かったんですよね...」

 

いつになく真面目なトーンで語る篠原に驚く藤原。

あの日に言われた事に思うことがあったのだろう

 

「間違ってた」

 

「え?...」

 

藤原の言葉にキョトンとした顔をする篠原

 

「そう言ったら?」

 

その言葉に何も返せなかった。

 

「俺も間違ってるかないかなんて分からない...お前はどう思う?」

 

藤原に問われるが何も出てこない

 

「分からないから聞いたんだよな...俺たちが無視してれば今より幸せになってたかもしれない。どれが正解でどれが不正解なのかは俺たち人間には見つけ出せない....でも、間違ってるなんて言ったらあの子達の笑顔が全部嘘になる...」

 

藤原の視線は子供たちに向けられていた。篠原はこちらを見ない彼の横顔をじっと見つめた。

 

「自分が正しいと思うならそれでいいんだよ...そして自分が正しいと思う事をやればいい。ただ明らかに間違ってたら止めてやる。今回はお前がどう思うかだよ」

 

藤原はやっと彼女を見た。

 

「これで良かったですね!」

 

篠原はニッと笑う。

 

「お前も意外と悩むんだな」

 

「なんすか意外とって...私も悩む時はしっかりと...」

 

「こういうので悩む前に、自分の飲み方の方を考えて欲しいんだけど?」

 

「あ、いやそれは...私の飲み方は間違ってません!」

 

「んだと?じゃあもう二度とお前とは飲んでやらねぇ」

 

藤原は呆れたようにそそくさと去って行く

 

「あっちょっと待って下さいよぉ...私が悪かったですってぇ」

 

 

足早に去って行く彼を篠原は追いかけた。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

次回「皇女救出」

 

 

 

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