Fate/Grand Order 狼は荒野の夢をみるか   作:あげびたし

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バビロニアを観てテンションブチ上がり系マスター


始まりの思い出 特異点F 冬木

「召喚サークルに異常事態発生!!!計測魔力が振り切れました!!!」

 

モニターしていた職員が吠える。その顔には絶望の色に塗りつぶされている。

 

「今すぐに魔力供給カット!急げ!!どうにかして彼の前にだすな!!所長とマシュ!立香君!!聞こえるか?!今すぐにその場所から離れるんだ!!」

 

画面越しに彼らに叫ぶ。召喚サークルから漏れ出す光がドス黒く染まり、今にも現れそうだ。

彼はこの世界最期のマスターだ、失われればこの世界は終わる。

初めての召喚術式には成功した。だが、それで安心してしまっていた。

まさかこんな、こんな事になるとは!!!

 

「ダメです!魔力供給、止められません!!!」

「クッソ!なんだこの霊基?!真名が分からない!!それに…このクラスは!!」

「解析出ました!!クラス!ア… 復讐者(アヴェンジャー)!!!大変危険です!」

 

職員の怒号が飛び交う観測室。それを無視して食い入るように画面に釘付けになる。

召喚サークルの黒い光が収束し、一際大きく輝きだす。

その黒い光から始めに現れたのは、狼の頭。

眼光鋭く睨む目からは、画面越しに人類全てを憎んでいる事が伝わってくるよう。

続いて現れた身体も巨体だ。有に3mはあるであろう。

 

更に異常なのはその背に乗るモノ。

人間、なのだろう。黒い戦闘服と同色のマントを羽織ってはいるが判断できない。あるはずの首から先が失われているのだ。

そして、手に握りこむ大鎌は異形そのモノ。

 

「なんだ…なんだなんだなんだ!!なんだアレは!!!巨大な狼に跨る首無し人間?!ハッ!!天才の私ですら分からない!!!」

 

隣にいる天才は、画面に釘付けになり、半分笑っているかのように叫ぶ。

彼がそこまで言うのだ、本当に分からないモノなのだろう。

現界を果たしたその怪物は、明らかな殺意を持って彼らを睨み付け牙を剥き、俊敏に跳ね上がる。

 

マスターの前に立つ盾の英霊となったマシュ。

まだサーヴァントとして成り立ての彼女が精一杯の力を振り絞り、その盾で魔狼の爪を牙を防ぐがいかんせん経験が足らなさすぎる。

徐々にスピードに追いつけなくなり翻弄されてしまう。

 

そして、ついにその牙が。

 

彼の目の前まで来てしまった。

僕は、次の瞬間から目を、背けてしまった。

 

 

目の前が真っ暗になった。

 

 

 

***

 

燃え落ちる都市の中、僕は彼と出会った。

青と白が混ざる毛並みに、巨大な口の中に並ぶ牙。

どんな物も食い破るであろうソレが今、僕の目の前まで迫っている。

僕は動けないでいた。足が根を張ったかのように動かない。

咄嗟に僕は目を閉じてしまう。

 

しかし、牙は僕に届くことはなかった。

何が彼らに起こったのか分からない。

恐る恐る目を開ければ、今にも僕を噛み切ろうとした口が閉じられていた。

そこで初めて、彼と目があった。

雄々しくも悲しさを秘めているような金色の瞳に、僕は一瞬で吸い込まれた。

その僅かな間に、彼は鼻先を遠慮がちに近づけて来た。

ーそして、その瞳を大きく見開いた瞬間。

 

空に向かい大きく吠えた。

 

大気を震わすほどの遠吠えに僕はビックリして、後ろに転んでしまった。

慌てて駆け寄ってきて手を貸してくれたのは傷だらけになったマシュだ。

背中を起こしてくれた彼女にお礼を言いながら彼を見上げる。

 

彼の遠吠えは止まなかった。

 

炎に囲まれ、煙に包まれる地獄のようなこの場所で。

 

僕は彼と出会った。

 

 

***

 

いつ止むのかもわからないその遠吠えは、誰に向かってのものだったのかはわからない。

ただ眺めるしかできない僕達は、この恐ろしくも雄々しい狼の彼の側で立ち竦んでしまっていた。

悲しいのか、喜んでいるのか、怒っているのか。

それとも、その全部なのかは分からない。身体全部で受け止めるにはあまりに僕は弱すぎるし小さすぎた。

でもたった一つ分かる事。

それは彼は、敵じゃない。そんな漠然とした安心感だった。

 

背後から嫌な気配が近づいてくる。ガシャガシャと音を響かせてくるナニカの音。

瓦礫に隠れていた所長が、慌てふためいてマシュの背後へ隠れる。

 

途端に彼の遠吠えが、止んだ。

こっちに向き直った彼は、その瞳を細くしながら見つめてくる。

僕達じゃ無い、その後ろを見ている。

 

おもむろに牙を剥き出し喉を唸らせながら僕達を飛び越した青い影は、背後に現れたスケルトン達を瞬く間に蹴散らしていく。

強靭な前足と爪を払っただけでバラバラになる骸骨達。粗末だが僕がそれに当たればひとたまりの無い剣と弓の攻撃を無数に受けるも全く意に返さずに暴れ続ける。

巨体で打ち据え、脚で踏み潰し、尾で薙ぎ払い、牙で噛み砕く。

暴力の塊が台風のように吹き荒れ、無数にいたスケルトン達が瞬く間に消滅していく。

 

その光景を唖然と見ていた僕の前に、ふらと現れた首無しのマント姿の男。

彼と同時に現界したもう一人の彼は、今までずっと召喚された場所から動かなかった。

その彼が片膝を立て、腕を胸につけたその姿勢をとり屈み込んだ。

それはまるで、中世の騎士達の敬礼のようだ。

 

言葉は、無かった。そもそも彼には喋る口どころか頭が無い。

こっちからの声も聞こえるのかすら分らない。

どうしようかと迷っていると、見上げるような姿勢を保っていた彼は急にバネのように立ち上がり、両手に彼の身体よりも長い凶悪な大鎌を出現させる。

内側に湾曲したその刃は鈍く妖しい光をたたえていた。

その大鎌を握りしめて驚くほどの速さでスケルトン達の群れに躍り掛かる。

勇ましい雄叫びはない。振るわれる鎌の音と粉々になるスケルトンの音だけ。

地面に着きそうなほどの低い姿勢から真上に振るわれる大鎌。股下から頭の先まで切り裂かれたスケルトンが消滅する。

その間に空いた方の大鎌は真後ろにいたスケルトンの首を跳ね飛ばし、それを蹴り倒す。

手当たり次第に首を狩り、斬り払っていく。

竜巻のようにマントを翻し鎌を振るう姿は、首のない死神のよう。

狼の彼と首の無い彼は瞬く間にスケルトン達を蹂躙していく。

 

それを僕達は、ただ眺めていた。

 

ふと香ってきたのは、渇いた土埃と草の香り。

燃えていくこの都市では絶対に、あり得ない香り。

彼らの、香りなのだろうか。

 

何だか落ち着くような懐かしいような、そんな香りだった。

 




藤丸くんの一人称て…どっちでしたっけか…
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