「エルダーシティにエルドバンドを配備したのにジェノックにやられちゃったねー」
「そ・れ・は嫌味か?」
「まさか、エルドバンドの設計者ともあろう方の面子が立たないなー、と思いまして…ね?」
前を歩くメガネの少年と茶髪の少女はお互いに軽口を言いながら登校している。その後ろを紺色の髪の少年と黒髪のツインテールの少女が歩いている。
茶髪のシオンは挑発するかのようにメガネをかけたマシロにちょいちょいと腕で脇を突く。
「ったく、エルドバンドが倒されたせいで司令官から小言もらったつーのに…お前からも小言貰うのかよ、俺」
顔には疲れた表情を隠すきもなくぐったりと天を見上げるマシロ。
「ま、原案上げたのは私だから私も同罪かなー…?」
「じゃ、お前も同罪ってことで」
シオンの言葉にマシロが彼女の肩を軽く叩く、その動作だけで眉間にシワができマシロの肩を叩く。叩かれた彼は「いってぇ…!!」とオーバーな動きをする。それを後ろの二人が笑う。
「そういや今日は朝礼の日やな」
「そうですね、シルバークレジットの表彰式に連絡事項ぐらいですかね」
「せやな、エルドバンドと言えばジェノックが新しく作ったLBXに着ける機械、面白うそうやわ」
「あれは……相当な技術力と知識、それに探究心と完成させると言う貪欲さ。それらが必要にになるので私にはちょっと……できないです」
前を歩く二人から意識を外し、ヤヨイが言葉を紡ぐ。そうなると自然とミオの口からは弱音が出る。貪欲さと技術力、そのどれもが自分にはないものばかり。自然と設計者に嫉妬してしまう、あまりにも完成に近く、実践投入できた程に設計者には自身があったのだろうか、それとも仲間を信頼しているのか、
「別に、あれは必要ないよ。」
「そうだな」
笑って会話していたはずの二人がこちらを向き笑いかけてくる。隣にいるヤヨイは二人が何を言うのか検討がついているのか目を閉じ笑っている。
「お二人とも…いつから」
「ミーちゃんが作ってくれたあのライフル、使いやすいんだよ。それに無理して真似なくてもいいしね」
「あぁ……彼らにはあれが必要だが俺たちには必要ないだろ?俺たちにしかできない戦法がある、それだけでこの世界で生きていける。違うか?」
「ジェノックの設計者には圧倒的な技術力があった、でもミーちゃんが気に病む必要なんかない。兜崎 ミオっていう人間がいるだけでわたしたちは戦える、それに今の戦闘スタイルを考えてくれたのはミーちゃんだよ。」
「今のミオちゃんがそんな弱音やとその戦闘スタイルも否定してしまうことになるんや。もう少し自分に優しくなろ?な」
「みなさん……」
自分には持ったない優しい言葉の数々、それだけで涙が出てくるようなそんな感覚、顔を上げ、三人を見るが彼らはすでに前を向き、こちらからは表情は見えない。けれども、ミオはお礼を口にした。
「あ、ありがとう……ございます」
「どうも」
「うん、よく言えました」
「はーい」
3人は、それぞれ口にするとミオの方へ向き勉強や、新作LBXの話など話題は絶えずクラスに付くまで続いた。
ー
体育館には、全校生徒が集められ学園長のジョセフィーヌの話に耳を傾かていた。
彼らが気にするのは今週のシルバークレジットの結果だけだ。先週のシルバークレジット高額者発表、それは先週のウォータイムで好成績を残したものにボーナスが与えられるシステムのことだ。1位や2位の結果はわかりきっており、その他の順位を予想し合うのが生徒のひそかな楽しみとして広まっている。
『5位、中等部2年、細野 サクヤ』
特に生徒がざわついたのはこの5位だろう、その他の順位は予想できていたのかみな冷静だった。
体育館から教室に戻る途中、シオンが不意に「あっ……」と口にした。それを不思議そうにマシロ達やムラク達が視線を彼女に向けた。
「そういえばさ、もうすぐだよねぇ…」
「なにが?」
遠い目をしそう言ったシオンにヤヨイが問いかける。
「試験」
「………………」
「あぁ、そういえばもうすぐだだよな。今回の論文どうすっかなー」
「僕は、もう決めてあるよ。対策ノートも作った」
「俺もッス」
「明日、勉強会だな」
「やな」
「うぅ……試験なんてなくなればいいのに…なんであるんですかね〜」
「まぁ、勉強は学生の本文だからね」
ミハイルの正論に返す言葉がないミオはそれっきりため息を吐くばかりでシオン達は苦笑いをしていた。唯一ムラクだけはその様子を後ろから眺めているだけだった。
この神居大門統合学園は、普通教科の試験とは別に論文なるものが存在している。大抵の生徒は計画的に論文対策をするのだがごく一部の生徒はそれを忘れ試験前に慌てる光景をよく目にする。そう、目の前のように……
昼休み、スイーツ系のレシピ本を探しに図書室によるとジェノックの制服を着た男女2名がいた。その二人に見覚えがあり、声を掛けた。
「こんにちは」
その言葉に机に視線を下ろしていた二人は顔を上げた。
茶髪の女子生徒が弾かれたようにこちらを見る。
「えっ……あなたはっ!」
「私は、蔵前 シオン。よろしくね」
「シオンっていうのか!俺は……「瀬名 アラタ」えっ…なんで俺の名前知って…」
「ムラクさんが随分と気に掛けているから、気になって…最近のジェノックの大躍進は瀬名さんだよね?」
「ロシウスがなんのよう?」
親しげに話す二人に女子生徒が睨みを効かせてくる
「ユノ…?」
「引き抜こうとは思ってないよ?ただ、瀬名さんみたいに純粋にウォータイムを楽しんでるのが羨ましいだけ。気をつけて、あなた達みたいなプレイヤーがロストするのは悲しいから。」
では、と言いその場を後にしたシオンに脱力したユノとは対象的に最後の言葉がわからず首を傾げるアラタ。
「蔵前、シオン?」
「あぁ、そう言ってた。」
「聞いたことがあるな、アルテミスで2回優勝し、地元の大会で何度も優勝したプレイヤーだ。確か、剣崎 マシロと言うプレイヤーと同郷だった……」
帰り道、アラタの言葉にオウム返したハルキとその名前に心当たりがあったのかヒカルがその情報を口にした。
「そういえば、アイツ最後に変なこと言ってたな」
「変なこと?」
「あぁ、『あなた達みたいなプレイヤーがロストするのは悲しい』とか『純粋にウォータイムを楽しんでるのが羨ましい』って」
「ずいぶんと変なことを言うな。」
「だろ?なんだろーな、アイツ」
ー
「蔵前 シオン?」
「あぁ、アラタが騒いでたから確かだぜ」
「そうですか、彼女がこの学園に。では剣崎くんも?」
「だろーな、蔵前だけ寄越すはずないから。」
その言葉にメガネのブリッジを治し、その人物はため息を少しだけ吐いた。自分はちゃんと任務を果たせているのだろうか。
いつも、その事が頭の中を駆け巡り、そして自分を守る為だけに来る彼らの事を考えると胸が裂けるような感情が現れる。できれば……と考えてしまうこともあるのだ。
いや、それは考えてはいけないのだろう。
「蔵前さん、話があります」
「なに?東郷 リクヤさん」
ー
定期報告
・ジェノックとアラビスタの同盟の話が上がったがジェノック側がこれを拒否、以前敵対関係にあり
・神居島在住、医院を経営している佐伯氏に自分の正体を明かす及び所属先についても言及
・ジェノックが新兵器を開発、キラードロイドを撃破。今後のウォータイムの中心になる可能性有り
・剣崎からの報告により、現総理大臣の息子に自分と剣崎についての情報が届いた
・ハーネス所属、藤咲 ミツルと接触。以前の大会から見られたオーバーロードについては現在調査中
・ジェノック所属、瀬名 アラタと接触。氏の予想に従い調査並びに警戒に当たる
藤咲、瀬名両名については今後も警戒に当たり、件の能力を発現又は片鱗を見せた場合緊急報告を送る。
報告者、蔵前 シオン
提出者、TO社 宇崎 拓也