翌日、2年5組
「瀬名 アラタ。あなた、昨日ロシウスの生徒と接触したそうね。どういうことかしら?」
朝のHRで担任の美都 玲奈が開口一番にそう言った。
当の本人、アラタはなぜそんなことを言われているのか、理解できないのかポカンとしている。それをクラスの半数が事の成り行きを見持っている。
「え……ダメなんですか?」
「はぁ……」
アラタの答えに美都は呆れた、と言わんばかりにため息を吐いた。見守っていたクラスメイトもこれにはため息やら同情の視線がアラタに襲う。
この時点で、アラタが所属する第1小隊の小隊長、出雲 ハルキはお腹を抑えている。それをサクヤがなだめ、ヒカルは関心がないようだ。
「このさいだから言っておきます。星原 ヒカル。あなたもよ。」
突然の指名にヒカルは顔を上げた。
「学園内外で、友人を作ることは結構。ただし、内外でウォータイムに関する話はやめなさい。その話が私の耳に入った時点で情報漏えいとして処罰します。
わかったわね。ハルキ、今後こういうことがないように」
「はい」
ハルキがそれに答えるとHRは終了し、美都が教室から出ると何人かからクスクスと笑う声がしてきた。思わずアラタがむっ!とし反応し声をあげようするのをハルキが止めた。
「美都先生が言っていただろ、他国の生徒と無闇矢鱈に声をかけるな。」
「でもよ、友達なんだぜ?話くらいさせてくれよ」
「だめなものはだめだ。」
「そもそも、君は相手の名前を知っているのか」
ヒカルの問にアラタがうっと唸り声を上げ、ヒカルがそれ見ろ、と言う表情をしている。
「あ、でも。他の奴らがグリーンとか言ってたぜ」
「グリーン?どっかで聞いたことある名前だね…」
サクヤが考えるように頭を抱えているとユノが口を開いた。
「ロシウスのグリーンなら、グリーンスナイパーズのことね。」
「グリーンスナイパーズ?」
「ロシウスきっての狙撃手よ。なんでも命中率90%以上のプレイヤーがいるって噂。」
「へぇ…戦ってみたいな」
ー
「おい、見ろよ。昨日ジェノックの奴と話してた奴だぜ」
「ホントだ」
廊下を通るたびにロシウスの生徒がこちらを見てニヤニヤと笑っている。はっきり言ってうざい
「ジェノックの人が話しかけてきたのにひどいですね」
隣を歩くミオが口を尖られながら言った。前を歩く級友、バネッサがうんざりとしたようにしている。
「ごめんねぇ、バネッサ。」
「いいって、うちはこういうの慣れてんだし」
「それは頼もしい」
バネッサが所属する第6小隊は、何かと話題に上がる法条ムラクが小隊長だ。恐らく、それで何かと好気な視線などに晒させて慣れているのだろう。
「今度ジェノックにあったら容赦なくやってくださいね!シーちゃん」
「わかった、サポート頼むよ。ミーちゃん」
お互いをニックネームで呼ぶとバネッサが「お前ら、仲いいな」と笑った。
その日のウォータイムは任務がなく四人全員がそうそうに寮に戻った。
「はい!それでは第……」
「14回ね…」
「14回、学力向上対策を始める!!」
隊長の言葉でミオを囲む形で3人が食堂の椅子に座っている。
あまり勉強が得意な部類に入らないミオのため不定期に開催される勉強会である。ちなみに定期試験前には週に3回ぐらい開催される。
「さ、今週の数学のノートを出せ」
「うぅ……はい」
おずおずといった具合で可愛らしいくペイントされた大学ノートが机に出される。表紙には組と名前,左端には「数学」と書かれている。ところなしか数学の字がブレている。
それをマシロが慣れた手付きでノートを開ける。
しばらくマシロが付箋が貼ってある箇所を何回もチェックする。
やがて、ノートを机に置きマシロが顔を上げた。その顔は怒っているわけではないのにどこか恐怖を感じる。
「えぇー…ミオさん。」
「は、……はぃ……」
マシロが言葉を発するとミオの背がどんどん小さくなる。小動物みたい、だと心の中でシオンは思った。
「お前は何やってるんだ」
マシロはそれだけ言うと教科書と参考書、そして3人分のノートを机に広げた。
教科書と参考書には赤いペンやらで線が引かれている。
ノートは、ミオ以外の3人の私物だ。こちらも公式やら計算式やらで埋まってはいるものの時折ペンで線が引かれている。
「マシロさんは、怒ってるわけじゃないんですよ。ただ、徹夜してまで頑張ってほしくないだけなんです」
「ま、私が早寝なだけなんだけどね」
「お前はどんだけ寝るのが早いんだ」
「ん〜、10時30半くらい?」
「はやっ!!」
「とにかく、みんなお前が大事だ。」
「わ、わかってますよ。で、でも…あたしの整備ミスでみんなが…」
「ミーちゃん、私達そうそうやられない。だから安心して…ね?」
人気がない、食堂でしばらく4人の声が響いた。時折、ミオの唸り声が聞こえてきた…?