第四次聖杯戦争 ピンクの悪魔の物語   作:不能力者

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第四話 騎士との邂逅

「次はあれが食べたいペポ!」

 

 「……まだ食うか? ……はぁ、買ってくるからおとなしくしてろよ」

 

 夜、僕らはいつも通りのライダーの我が儘で町へ出ていた。いつも、外に出るたび、ライダーは外でどうどうと食べるために僕を吸い込む……本当にやめてほしい。とりあえず、ライダーが一般人にばれる心配はないのがある意味、楽だが。そして今度はたこ焼きが食べたいという……さっき、焼きそばとピザと寿司と餃子と焼き飯とカレーとラーメンとそばとうどんと寿司と……寿司を二回言ってしまった……とを一つにつき十人前以上の単位で食べたはずだというのにこのピンクボールはどこに入るのかまだ食べるという。

  既に慣れたことだが食費がやばすぎる。昨日、一日で1億以上がお亡くなりになってしまった。

 しかし、この出費も聖杯戦争に生き残るためだと考えればそんなに痛くはない。そもそも貰い物の宝くじで当選したのだから無料(ただ)でもらったのと同じだ。

 そう自分に言い聞かせ、財布を取り出したこ焼きを買おうとして近くの――といってもだいぶ歩いたが――の出店(でみせ)のカウンターへと近づき

 

 「「すいません、たこ焼きを……」」

 

 どうやら、他のお客とタイミングが重なってしまったようだ。

 

 「あ、僕はたくさん頼むのでお先にど……」

 

 思わず、僕は言葉を途中で飲み込んでしまった。声が重なったのは黒いスーツに身を纏った美少年だった。映画の主役として出ていても違和感のないくらい綺麗な顔だが、僕が驚いたのはそこではない。彼を見た瞬間、脳裡にステータスが映りこんだのだ。それが意味するのは一つ、彼はサーヴァントなのだ。それも特上の能力を持った。

 

 「? どうかしましたか?」

 

 「い、いえ、な、なんでもないです。さ、先にどうぞ」

 

 僕はなんとか平静を保とうと努力し、自分が彼の正体に気が付いていることを知られないようにする。

 何とかしてこの危機を乗り越えねば、僕らは最初の脱落者になってしまう。

 

 (たこ焼きを買わないで戻ったらライダーは文句を言うだろうけど……そんなことを言っている場合じゃない!)

 

 サーヴァントがたこ焼きを買っている間にウェイバーは死ぬ気で逃げるつもりだった。 彼がカウンターへと近づき、店員と顔を合わせる。

 

 (今だ!)

 

 ウェイバーは全速力で駈け出そうとするが突如、サーヴァントはこちらの方を向き、驚いた顔で見続ける。

 だが、その目線をよく見れば視線は微妙に僕からずれている、どうやら僕の後ろの何かを見ているようだ。

 あれの視線を追いかけると……ライダーがいた。うん、終わった。

 

 「ウェイバー、近くにサーヴァントがいるペポ」

 

 うん、分かってる。そんなこと、言われなくてもわかってる。

 

 「私はセイバー。聖杯を競う者として貴方たちに決闘を申し込む」

 

 彼――クラスはセイバーらしい――はやはり僕らと戦うらしい。

 ウェイバーは彼のステータスを思い出していた。

 

 

 ステータス

 

 筋力:B

 耐久:A

 敏捷:A

 魔力:A

 幸運:E

 宝具:A++

 

 

 

 

 ウェイバーは夜の涼しい気候にも関わらず冷や汗にまみれていた。

 勝機はない、そう一瞬で悟った。それくらい能力に差がありすぎるのだ、幸運以外がすべて圧倒的に負けている。最優のクラスは伊達ではないのを見せつけるかのようなステータスにウェイバーは絶望を感じていた。

 しかし、逃げられない。背を向ければ一瞬の元に切り伏せられるだろう。

 それを知ってか知らずかライダーは呑気な声を出す。

 

 「分かったペポ」

 

 と二つ返事でOKしてしまった。

 

 「しかし、ここで戦えば関係のない人にも被害が出てしまう。出来るなら場所を変えたいのだが」

 

 「そうするペポ」

 

 どうやらここで今すぐというわけではないらしい。これはチャンスだ、戦う場所に向かうフリをして逃げればいい。ライダーにはワープスターがある。あの速さならばそうそう追い付かれはしないだろう。

 

 「ライダー、隙を見て逃げるぞ」

 

 僕はこっそりとライダーに耳打ちする。しかし、ライダーは首……というか体全体を横に振り、僕の意見を拒否した。

 

 「大丈夫ペポ! 僕を信じるペポ!」

 

 ライダーはそう宣言し、胸を勢いよく叩く。僕を安心させようとしたのかもしれないけど、あまりに強くたたきすぎたようで咳を出しながらむせたら余計、不安を煽るだけなんですが。

 

 「あ、でもその前にたこ焼き食べてからペポ」

 

 サーヴァントを、しかも最優のクラスであるセイバーを前にしてこの食欲……駄目だ、こいつ。早くなんとかしないと。

 ていうかそんなの相手が許してくれるわけが――

 

 「わかりました。私のマスターもこのたこ焼きを食べてみたいとおっしゃったので私が買いに来たのですし」

 

 ……英霊にパシられているマスターもいれば、パシリに使うマスターもいるんだなぁ。

 僕ももう少し頑張ってせめてライダーに自分で買いに行かせようか……でもそれで何か問題起こされても困るしなぁ。そんなことを考えさせられる場面だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして連れられた先は港に面した倉庫街だった。人はいないらしく確かにサーヴァントが戦うには適している場所だ。

 ウェイバーとライダー、セイバーとそのマスターであろう長い銀髪の綺麗な女の人――セイバーはアイリスフィールと呼んでいる――が向かい合う。

 どうやらアイリスフィールがたこ焼きを食べたかったらしくセイバーに頼んだらしい。

 あの後、たこ焼きを食べる時間はもらえたのだがウェイバーは緊張でのどを通らなかった。

 その横でライダーは三十人前食べたが。

 

 (本当によくこんな状況で食欲が湧くよな……まあ、セイバーも食べたそうに見てたけどな。本人はバレないように見ていたつもりだけどあんなに食べているところを凝視していたら誰でもわかる。サーヴァントってみんなこんななのか?)

 

 「改めて名乗ろう、我がクラスはセイバー! 尋常に勝負!」

 

 そんな考えはセイバーの名乗りで中断せざるを得なくなった。

 さっきまでとは別人のように闘気を飛ばすセイバーを前にして既に僕は戦う前から萎縮していた。

 それを「戦う前から気持ちで負けたら駄目ペポ」とでも言うようにウェイバーの背中をポンと叩きライダーは前に出て

 

 「僕はライダーペポ。よろしくペポ」

 

 そう言葉を交差させて互いに戦闘態勢へと移行する。ライダーは口から以前にも使った黄金の剣を取り出す。セイバーも黒いスーツから甲冑へと服装が変化する。しかし、何も持っていない。

 セイバーなのだから剣が武器のはずだが……

 

 「セイバー、この私に勝利を」

 

 「はい、必ずや」

 

 だが、相手は無手で戦うらしくマスターと一言、勝利を誓った後、ライダーへと向かってくる。

 ライダーの能力の低さを見て油断しているのだろうか……だが、なんにしろこれは好機だ。

 武器を持っていなければライダーのステータスでも、とライダーを見ると再び脳裡にステータスが映る。

 

 

 筋力:C

 耐久:D

 敏捷:C

 魔力:D

 幸運:A++

 宝具:C+

 

 

 

 ウェイバーは驚愕した。ライダーの能力が上がっているのだ。

 これでも強いとは言えないが前に見た能力に比べれば遥かに高い。おそらく宝具の力だろう。

 ウェイバーの心にわずかな希望が花開く。油断している今ならという思いが。しかし――

 

 「はぁっ!」

 

 「ペポ!」

 

 どうやら、セイバーは何かを掴んでいる。自分たちには見えない何かを。セイバーだから十中八九、剣であろうが。

 辺りに剣のぶつかる音が響き、彼らの剣劇の嵐の付近には火花が飛び散り、建物や道路は抉れる。

 しかし、どちらが優勢かはウェイバーには分からなかった。

 あまりの速さに目で追うことが困難なのだ。サーヴァント同士の戦いは普通の人間にはなし得ず、またサーヴァントを相手に出来る魔術師は皆無なのも納得だ。さっき、たこ焼き屋でセイバーと会ったときももし、自分の正体がばれていたら何が起きたかも分からないまま首をはねられていただろう。

 

 

 「ペポッ!?」

 

 突如、轟音が響く。音源を見るとライダーが倉庫らしき建物の壁に叩き付けられていた。

 ……やばい! やはり、いくらライダーの能力が上がっているとは言っても元が低すぎる。

 しかも相手はセイバー、これでは勝てるわけがない。

 壁にめり込んだライダーの前にセイバーは悠然と立ちつくす。

 

 「流石にセイバー相手に剣で戦うのは少し無理があるみたいペポ……ここからは僕の戦い方をさせてもらうペポ。来るペポ、ワープスター!」

 

 ライダーが叫ぶと、あの時僕らをカレー屋へと連れて行った輝く星がどこからか知らないが夜の闇を明るく照らしながらライダーの目の前へとやってきた。

 ライダーはワープスターへと飛び乗ると空に舞い上がりセイバーから離れていく。

 そして距離をとったところで一気に急降下しセイバーへと襲い掛かる。

 急降下のスピードを加えた剣の一振りは先ほどとは比べものにならない威力らしく受け止めたセイバーの足元の道路が隕石でも落ちて来たかのように大きなクレーターができ、破片が辺りに飛散する。

 そしてその剣と剣のぶつかりあった衝撃は暴風となりウェイバーとアイリスフィールへと襲い掛かる。

 

 「うわっ!?」

 

 「きゃっ!?」

 

 ウェイバーとアイリスフィールは吹き飛ばされ、建物に叩き付けられる――寸前で互いのサーヴァントに助けられる。セイバーは抱きかかえるように助け、ライダーはワープスターを楯のようにしてウェイバーにぶつけて救った。

 

 

 「大丈夫ですか、アイリスフィール?」

 

 「ええ、ありがとうセイバー」

 

 「僕のお菓子潰れてないペポ?」

 

 「僕の心配をしろよ、僕の!」

 

 二人はマスターをおろし、再び、武器を構え戦闘を再開する。

 ライダーが先ほどのように距離を取り、急速落下で一撃を加え、再び距離を取り、また急降下して剣を一振りし、また離れる。まさにヒットアンドアウェイという戦法をとる。

 セイバーはそのすべてを完璧に受け止める。戦いはまさに一進一退の攻防だった。




ライダーの初期ステを見た後、セイバーのを見ると半端なく高く見えました(汗)。
やっと戦闘へと突入。ちなみにセイバーの幸運はワンランク落ちています。
理由はライダーの幸運が高い時に召喚されたため、ライダーに都合のいいようにダウンになりました。
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