プリキュアとの奇妙な冒険‐ようこそヒーリングっど♥へ!‐ 作:アンチマターマイン
『4人』の中にネームドはいません。
もしかして、日ごろの行いが悪いのかしら?私…
目の前で得意になってるアホ…敬意をもって扱う理由がカケラも見当たらないヤツの
頭が痛くなる話を聞かされ続ければ、そうも思うわよ。
「わかってくれたかな?沢泉ちゆさんよぉぉーッケケケ
夢の中はオレのもの!ここでは誰もオレに逆らえねぇぇーーッ」
コスプレっていうのかしら?
死神のカッコでプカプカ浮いてるこの男の名前は
去年までクラスメートだったから知っているわ。
あまり好かれている人間ではないわね。
何か悪いことをしたわけじゃあないけど、下品な冗談がすぎるヤツだったわ。
それこそ、男の子同士でさえもちょっと引かれるレベルで、ね。
関わらない限りは無害だから、大して気にもしてなかったけど…
スタンドを得てこうなってしまった、と。本性見たり、というわけね。
…ああ、明らかにスタンド使いなのよ、こいつ。
今、私がいるこの場所も、異次元空間というか、異界というか…
具体的には言わないわ。ただ、ひたすらいかがわしいとだけ。
もう、見てるだけでオトコに対する不信感が極まってくる。
弟がいる身だと、これは…あの子もこんなこと考えてるのかしら?…げんなりする。
「あなた、いつからこんなことを…いったい、何人に?」
「知りてーかぁ?ヒヒヒヒ、まあいいや。
一か月前だ!一か月前に、神様がオレにくれたパワーがこれだぜ。
神様は言ったぜ!好きに楽しめと!
なら楽しまねー方がバチ当たりだよなぁー…『4人』だぜ!
『4人』をオモチャにしたが、誰一人としてオレのことを覚えちゃあいねぇー
夢の中だもんなぁー当然だよなぁー、そしてお前が『5人目』になる!
サイコーだぜ!家から動かずやりたい放題、天国だ!」
まあ、これで必要なことはみんな聞けたわけだけど。
こいつの能力は、眠った人間を、自分が支配する夢の世界に引きずり込むこと。
こいつ自身は自宅から動かず私を攻撃してきていること。
遠く離れた私をここに引き込めたことから、射程はものすごく長く…
目当ての人間が寝ている場所さえわかれば攻撃の対象にできることもわかる。
どうやって私の部屋の場所を知ったのよこいつ…そこは置いといて。
そして、この夢の世界を覚えていられる人間は誰もいないこと。
…これは、もう…仕方ないわね。このまま犠牲者を増やすくらいだったら。
「今すぐやめなさい。こんなバカなこと…」
「やめるわけねぇーだろーがよォォーーッ」
「これが最後よ。今すぐやめなさい。でないと…後悔するわよ」
「後悔?やってみろよ…今からッお前にできることはッ!泣き声を上げるだけ」
「スタートッ!」
「プリキュア、オペレーション!」
ボッゴォ メキ メシャ
変身は一瞬。間髪入れずに振り抜く拳が、こいつの顔面にめり込んだ。
これほどまでに近寄ってくれれば、もうすでにいい練習台でしかないわ。
「ゲッ…ゲビッ?な、なんッ……」
「そうね。私にできることといったら、泣き声を上げるだけよね…
ただし、あなたのよ矢間佐馬助。あなたの泣き声よ。準備はいいかしら?」
「ひ、ヒィッ…こんなはず!」
まず、ここに来た時点でペギタンがいた。
一緒に寝ていたから一緒に引き込まれたのはほぼ確定で、
となると、プリキュアの力も、変身の手段も一緒に引き込まれている。
そして、エレメントさんを…『魂』を捕まえることができるプリキュアなら、スタンドを殴れる。
なぜならスタンドは魂に近いものだから。
本物の幽霊を知っている承太郎さんの知識が、すべての確信を後押ししてくれたわ。
そうでなければ、絶望していたかも…ね!
「さあ、泣いてもらうわ。4人分の絶望の涙をね」
「こんな理不尽があっ…」
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
拳の一発一発が、えぐり、こそぐ。
デタラメなパンチなんか撃ったりしない。
手本とする拳のラッシュは、全てが狙いすました必殺の一撃なんだから。
ラスト、とっておきの!
「オラァァーーーッ!」
「ドビゲェェェェェ~~~~ッ!?」
ボロ雑巾になった死神が、夢の世界の壁をぶち破って消えた。
一緒に、夢の世界もボロボロと綻んで消えていく。
「…問題は。夢から覚めた私がこれを覚えているか?ってことだけど。
再起不能にはさせてもらったわ。
私たちが裁くしかないんでしょう?誰にも見えないし聞こえないのなら…」
「ちゆは、間違ったことはしていないペェ。これしかなかったペェ」
「ありがとう。ペギタン」
「……で!俺が叩き起こされたわけだな…深夜3時に!」
「何度だって謝るわよ、それは…でも、仕方ないでしょう?
夜中に単独行動できる人間が、現実的にあなたしかいないのよ」
結論。覚えていたわ、夢から覚めても。
敵スタンドを倒したからか、プリキュアだったからか…それはわからないけど。
覚えているなら、やることはひとつ。DISCの回収よ。
あの男は同級生で、至って普通に家族もいる身だった。
スタンドを再起不能なまでにボコボコにされた以上、あの男も同じように吹っ飛んでいて…
家族がそれに気づかないわけがない。
放っておいたら病院に運び込まれて手出しできなくなる。一刻の猶予もなかった。
だけど、私は出られない。100%確実に家族その他に気づかれるもの。
深夜3時に外出する言い訳なんて、用意できるわけないわよ!
花寺さんも平光さんもそれは同じで…動けるのはただ一人。家族が同居していない鳴滝くんのみ。
私は迷わず電話をかけた。ちゃんと全員の番号を交換しておいて本当によかった。
フー・ファイターズで足にローラーを出して現場に急行した彼は、
矢間佐馬助が救急車に運び込まれる寸前ギリギリでDISCの回収に成功してくれたわ。
猫に扮したF・Fがやってくれたのが実際のところみたいだけど。
そして今は朝7時…私のランニングに付き合ってくれる名目で、みんな公園に集まった。
「わたしが知らない間に、大変なことになってたんだね」
「てか、襲われた『4人』の中に、まさかさぁ…」
「もう、それは考えない方がいいわ平光さん。
覚えていないことはむしろ幸いとしか言えないもの。
落とし前はつけさせた…これについては二度と考えないようにしましょう」
「……うん」
どう考えても不幸にしかならないものね、この追及…追う方法もないし。
気まずくなる中、鳴滝くんはみんなの真ん中にDISCを放り出した。
「まず、このDISCだけどな…俺が持つのは絶対にダメだ。
理由は言わないでもわかるはずだよな?」
全員、沈黙。肯定の沈黙よ。
そんなことをしたら疑心暗鬼からの破滅だわ。
これは、『完全犯罪』を可能にする道具だって証明されてるんだもの。
というか、今回は運が良かったとしか言えないわよ。
今回、私が勝てた理由は…敵が私たちをなめてかかりすぎたこと。
敵にスタンドの知識が根本的になかったこと…自分だけが特別だと勘違いしていたこと…にある。
もし、敵側にそれがなく、もっとずるく、用心深く仕掛けられていたら…
鳴滝くんは、それができる立ち位置にいる。みんな、それを知っている。
「そして、捨てちまうのも無し…だ!
ビョーゲンズに回収されるとか、考えたくもねえッ」
『あたしとしては、ホワイトスネイクの手元に戻っちまうのもまずいと思う。
どうあっても、あたしたちの手元で有効活用するしかないね…』
「って…やっぱしホワイトスネイクだったの?DISCバラまいてんの」
『あたしが肉体の記憶を読んだ。間違いない…プッチの姿はなかったけどね』
鳴滝くんの喉から響くF・Fの声に、平光さんは少しの間考え込んで…
鳴滝くんの真正面にまで唐突に歩み寄った。
目を丸くして、同じだけ下がる鳴滝くん。
「な、なんだよ?」
「読んで。あたしの記憶。
ホワイトスネイクが、あたしにDISCを入れたっていうなら…
何されてるかわかんないじゃん。
あたし自身覚えてないってのが、怖くてさぁ」
目を少しそらして聞いていた鳴滝くんは、
自分のDISCを取り出して差し出す。
花寺さんが間に立って、平光さんのDISCを取り出し…
入れ替わりに、F・Fを収めた。
少し待つ。ほんの数秒が長いわね。
「……どう?F・F」
『六日前、遊びからの帰宅中に不自然な記憶の空白があるな…
そして……こ、こいつは……
ゆめポートに来たとき、ショッピングモールを破壊する、だと…!?』
「え。なに…それ」
『前後につながりはない。ただそれだけが記憶に書いてある…
何か、暗示のようなものをかけられているのか?』
とても穏やかとは言えない状況になってきた。
何かピンときたらしい花寺さんが、また平光さんの額に手を当てる。
F・FのDISCを取り出し、続いて…もう一枚、DISCを取り出した。
なぜ、もう一枚のDISCがあるの?
もう一枚ということは、これは記憶DISC?
…その一枚を脇に置き、花寺さんはF・FのDISCだけを平光さんに戻す。
それからまた数秒。
『…消えたぞ。さっきの暗示らしきものだけが消えた!
ど、どうしてわかったんだよ?のどか…』
「ホワイトスネイクは、記憶とスタンドをDISCにして取り出す能力だから…
そういうことをやるのなら、記憶DISCを書き換えるか、また別のDISCを入れるか。
そのどっちかだと思って…試してみる価値はあるなー、って」
二枚目のDISCを取り出したとき、平光さんは植物人間にはならなかった。
よって、答えは後者…というわけね。
承太郎さんが実際にやられた、幻を見せて溶かす能力の線もあるかとは思うけど…
どうも、これで正解のようね。
でも、その冴えを気にしてる場合じゃあなさそう。
「……アハハ、なに?つまり、アレ?
あたしに『太陽』渡してさぁー、やらせたかったのは…」
『人殺しだ。ホワイトスネイクは、あんたに人殺しをさせようとしたんだ』
平光さんの瞳が曇った。
というより、ものすごい速度で光が塗りつぶされていく瞬間を見た。
「…ふざけるなよ。つまりは…俺もか。俺もなんだよなF・F!おいッ!」
『わからねえって!調べもしねーうちからじゃあ…』
「なら、さっさと調べろよ!爆弾つかんで自殺しに行ったのも、
俺が俺自身の意思だと思い込まされていた、だけ…なのかよ?
今の俺は俺なのかよ!?都合よく使われる人形じゃあねぇーんだろうなッ!?」
『調べてやるって言ってんだろ。黙れ!』
ヒステリックに騒ぎ出す鳴滝くんが場を持っていく。
いきなり、何?あなた自身の問題には、まだなっていないでしょう?
調べもしないうちに怒鳴りだす意味がどこにあるっていうの?
「……悪かったよ。戦うしかないんだよな。
事実がどうあれ、スタンド能力自体は戦える武器だ。
ホワイトスネイクには、俺が後悔させてやるさ…」
…なんで、すんなり鎮火するの?
そんなだったら、最初から怒らないでよ。
寝不足だからって、情緒不安定すぎるんじゃない?
寝不足については私が悪いんだけど。
「ひなたちゃん、鳴滝くん。
最悪の事態は避けられたよ?…よかったよかった。ね?」
花寺さんの穏やかな微笑みが、ささくれた場を収めてくれた。
ダメね、私も…余裕がないわね。二人は、もっとそうでしょうに…
正論で正すんじゃあなくって、ただ聞いてあげる態度も必要みたい。
「ごめんね。のどかっち…みんなも。
そーだよね、ヒドイことにはならずに済んだし!
むしろザマーミロじゃんホワイトスネイク!」
『あたしも悪かった。言い方がド直球すぎたらしいな…
ココロのキビってやつには気を付けてるつもりなんだけどね』
平光さんの目の色もひとまずは元通り。
一安心というには…しばらく、様子を見てあげないとね。
自分の知らないところで人殺しにされかかったなんて、
ショックを受けないわけがないもの。
「…話、戻すぞ」
「何の話…あっ、ロクデナシのスタンドDISCの話だよな」
「正直、使いたくないラビ」
「ボクはもっとだペェ、ホントに最低の人間だったペェ」
「そう、だからこそ選り好みはさせない…
もっと最低の人間の手に渡るのが最悪なんだからな」
この場の本題は、あくまであのスタンド使いのDISC。
私だって使いたい気分にはなれないけど、
また一方でとてつもなく強力なスタンドだということもわかる。
ビョーゲンズの方を見ても、ホワイトスネイクの方を見ても、
使えるものは使わなきゃ、危うすぎるものね。
鳴滝くんを除いた全員で、DISCを頭に差しては次に回す。
私には適合しなかった。DISCから弾き飛ばされるって、妙な感覚ね。
そうやって、最終的には……
「あなたにしか適合しなかったわね…花寺さん」
「……うん」
このスタンドは、たぶんDEATH13。
吸血鬼DIOの手先だったということだけはわかっていても、
承太郎さんの記憶には直接存在しないスタンド。
赤ちゃんが本体で、アラブで襲ってきた『だろう』という状況証拠があるだけ…
力そのものに罪はないはずよ。花寺さんなら、きっとうまくやるわ。
DEATH13の能力(夢に引きずり込める条件)は、
かなり強力めに見積もっています。
ハーミット・パープルとタッグを組めばデスノートと化すでしょう。
相手が人間でありさえすれば。
本文中のオラオラは、度が過ぎると文字数稼ぎになってしまいます。
今後、同じことをやるとしても、場所を厳選しなければなりませんね。