プリキュアとの奇妙な冒険‐ようこそヒーリングっど♥へ!‐ 作:アンチマターマイン
でもアレは、ザ・ニューシンドイーネ!の仕業だから!
素のテラビョーゲンがやったわけじゃあない!セーフ!
とにかくNO断念!!
…ゴメンナサイ、だいぶ遅刻しました。そのぶん、分量は多めです。
来週ですが、身内の手術が週末にあり、立ち合いをします。
大したことをやるわけではありませんが、最悪の事態はありえます。
更新がない可能性があるとだけ、お伝えいたします。
顔を覗き込まれる俺は、ちょっとして、負けた事実だけを鮮明に思い出した。
…こんなツラをしてる場合なのか、お前ら。
「目が覚めたのね。鳴滝くん」
「……。大丈夫なのか?
大丈夫だったのか?お前ら…」
「おかげさまでね」
沢泉の答えと様子を見るに、何もされなかったようだ。
平光、花寺と視線を移す…物憂げな顔はしているが、絶望とか憎しみは感じられない。
ただ、かなりの不満を感じる。というより、表情に出して隠す気がないのか?
兄二人との付き合いから、危険な不満や怒りの兆候はわかるのだ。
程度の差こそあれ、ラビリン、ペギタン、ニャトランも似たような顔をしている…
「あなたが…死んで…からだけどね。向こうから勝利宣言が出て解放されたのよ。
今は反省会をしているところね」
この説明を聞かされれば俺も理解した。
ヤツらの脅しは『フリ』だったということを。
つまり、なんだ。ヤツらの目的はむしろ俺だったということで。
あまりにもふがいない脱落をした俺に、敗者復活の機会を与えただけだったのだ。
溜息がもれた。
「大体わかった。…ぶざまだな」
思わず漏れた言葉だし、いつわらざる本音だったそれに、
沢泉の顔が一瞬で険しくなった。
「誰がぶざまなのよ」
「違う、お前じゃあない!『お前ら』でもない…俺だ。俺のことだよ」
「あなたの、何がぶざまなの?」
「何が、って……
戦いが始まる瞬間にぶちのめされてノビただろ。
そのまま立てずにいる間、お前らはとっ捕まって髪を切られた。
やっと立った俺は戦っても完全な犬死にだった。
……ぶざま以外の、何だっていうんだ」
表情を変えないまま、沢泉がぐいと近づく。
思わず下がる。尻を引きずって。さっさと立ってりゃよかった。
ある種なつかしい恐怖を感じたんだ。
距離が少しだけ詰まって、沢泉も止まる。
「…今、引っ叩こうかと思ったわ。あなたを…
でも、それはダメ。言わなきゃあわからない。
あなたにそう言ったのは私だものね?
だから、言葉を尽くすわ」
……やっぱり殴る気だったのか。
じゃあ、この後、何を言われるんだろう?
何を言って『殴る』と引き換えるんだ?
違う、こいつはそんなことをする奴じゃあない。
ダーティ・ウォーターの時に十分わかったはずだろう。
両方の思考がせめぎ合う。前者の方がわずかに勝っている。
「こっちを見て。鳴滝くん。
……こっちを見なさい!鳴滝魁ッ!」
落ちていた視線を戻す。戻さざるを得なかった。
昔は何とも思わなかったはずだ。だが、ひさしぶりにこうなると…
ああ、自覚した。俺は、すごく落ち込んでいるらしい。
でも、次の言葉は。覚悟のまったく逆側だった。
「私は、あなたに!『ありがとう』って言いたかったのよ!
まずそれを言いたかったの!」
混乱した。怒っているのに、言葉がまったく逆側だ。
「あんな、ボロ切れみたいになってまで私達を守ろうとしてくれた…
あなたの本気は嫌ってほど伝わったわ。だから、『ありがとう』なのよ」
「…………」
「なのに、それを…『ぶざま』?ふざけないでッ!!
守ってもらった私達はどうなるの?
…ええ、あなたの言うことだってわかるわ。
最初に叩きのめされて、後はあなたが弱点になってしまったのは事実よ。
でもね、それを言うなら!逆に!あなたを奇襲から守れなかった落ち度が私達にもあるのよ?
一人だけプリキュアじゃあないあなたをッ!
フー・ファイターズは治療ができるスタンド…
真っ先に狙われることなんて、わかりきっていたわ!」
初めて見た怒り…いや、そうじゃあない。
平光の兄が、下水道に入り込んだ俺達を怒鳴ったのと同じ眼だ。
同じ眼が今、俺だけに向いている…それが初めてなんだ。
「それに…私達が吊るされた後よ。仮に私があなただったら!
プリキュアになれなくて、フー・ファイターズで戦うのが私だったなら!
あなたよりうまく戦えたなんて、とても思えないわ…
ああするしかないって判断したあなたの決断の重さも、わかるなんて言えない!
私は痛かっただけよ。つらかっただけよ!当たり前でしょう?
言いたいことは多いけど!そりゃあ文句はたくさんあるけど!
もう…あなたは他人じゃあないのよ?それが、あんな姿になって…嫌なのよ。痛いの。
あなたも、私達を見て…そう思ってくれたのよね?」
うなずく。同じかどうかはわからない。
でも、あの先の絶望を見たくないと思ったのは確かだったから。
沢泉を見る。平光を見る。花寺を見る…
傷つく姿は……想像するのも、嫌だな。
「だから、ね。
今回のあなたを『ぶざま』と言う人がいるのなら、許さないわ。
たとえあなたが許しても、私が許さない。
そして…あえて言うわ。あんな戦い方、二度とやらないで。
あんなことをされて死なれたら、どのみち、私達は立ち直れないわ。
約束して。今ここで」
「……、お前は、あんな」
「無関係なことを持ち出さないで。
私は約束してと言っているの。あんな戦い方を二度としない、って」
「…………ああ。はい。約束します。
もう、あんな戦い方はしません」
「忘れないでね。…ありがとう」
軽くパンッと手を鳴らし。
ハイ、お説教終わりッ!と皆の側に振り向き離れる沢泉。
言いかけた俺の質問…
『お前は、あんなことがあってなお、俺にそんな言葉が言えるのか?』
それはすべてを口に出す前に伝わり、無関係と一刀両断された。
今の俺は…これからのあなた、か……
『信じられている』。胸の奥で、ストンと落ちる音がした。
だが俺は、今の約束を守ることができるのか?
本当にそうせざるをえなくなった状況の中で……
確かなことは、どのみち俺は強くなければならないということ。
強くなれば、自動的に守られる約束なんだからな。
…花寺が来た。平光も。
松葉杖を使い、ようやく立つ。
「ちゆちー、めっちゃママ!
よかったね、タッキー」
「ちょっ…冗談じゃあないわ!いくらなんでもそれはやめて!」
沢泉は本気で嫌がった。たぶん鳥ハダが立ってるだろうよ。
なんてコメントしづらいことを言いやがるんだノッケから!
でも…そうか。今のはママがすることらしいな……
そう思ったら、安心を感じたんだ。
キモい。自分を客観視すると途方もなくキモい。
でも仕方ないだろ。俺の母親、鳴滝リンドウはきっと、母であって母じゃあない。
今、感じてるみたいな安心をくれたことなんか、一度もなかった…
とにかく、これは胸の中に詰めたまま墓の下まで持っていく。断じて表には出さん!
出した日には!俺は自爆して死ぬだろう…!キモッ!超キモッ!!
「どうしたの?頭ブンブン振って」
「ななな何でもない。な何だよ花寺」
「どーせロクでもないこと考えてたラビ」
「ほっとけ。…で?」
「わたしとも、約束しよう?…ううん、みんなで。
『生きてることを大切にする』って。
お互いに約束するの。イヤ、かな?」
「なんでか…聞いても?」
「うん」
花寺は言う。
今回は、俺が生命を犠牲にして立ち向かう立場になってしまったが、
本当の闘いで、花寺が、沢泉が、平光がそうならないとも限らない。
「そんな時にね、『誓い』があれば生きてくると思うんだ。
絶対に死なない、生きるんだって、心に決めていれば。
きっと、動きが違ってくるよ!あきらめない動きになるの!
…あきらめちゃったら、終わりだから!」
なんというのか、まぶしいヤツだよな。妬ましいくらいに。
体が弱くて病院から動けなかったっていう過去がそう言わせるのか?
…言っていることはわかる。俺は、自分の生存を早々にあきらめたからな。
こいつが言っているのは明らかにそれだ。
遠まわしに非難されていると言えなくもない…が、もう俺の命は粗末じゃあない。
血と汗と涙がそれを許さない。そう再確認したばかりだっただろ。
花寺が、沢泉が、平光が差し出す手に、手の平を重ねない理由は、ない。
「わたし、花寺のどかは『生きてることを大切にします』」
「私、沢泉ちゆは『生きてることを大切にします』」
「あたし、平光ひなたは『生きてることを大切にします』!」
「…俺、鳴滝魁は、『生きてることを大切にします』」
「ラビリンも、大切にするラビ」
「ボクもだペェ。みんなが大切だペェ」
「仲間外れはナシだぜーッ、オレもな!」
「あたしも乗った。一回死んだ身だけどさぁーッ、それだけにね…なんか嬉しい」
「アン、アンッ!」
全員の手が重なった。
F・Fもわざわざ『エートロ』になって混じってきた。
今の俺と同じタイミングで夢に入ってきたらしいラテも、
重なる手の下で盛んに跳ね回っていた。
くさい言い方になっちまうことを許してほしい。
俺はこのとき、神聖なつながりが出来たことを感じた。
『ヒーリングっどプリキュア』って言ってたっけな…
それが、俺を含めて、今!成立したのを実感した。
「…ぼく達の入り込む余地はなかったな」
「や~ッてらんねーわいッ!
言いたいこと、ほぼ全ッ部先に言われちまった!
面目丸つぶれってヤツじゃ!」
「やれやれだぜ…タバコが切れちまった」
「そーいやーさ、タッキー」
一分くらい続いていた余韻を破ったのは平光だった。
「うん?」
「犬死に、ってさ。どーゆー意味?
なんかイヤな言葉にしか聞こえないんだけど」
何の話をしてるのかわからなかったが、そうか。俺から出た言葉だ。
沢泉を怒らせたときに、確かにそんなことを言った。
「……怒るなよ?
明らかにお前の前で言っていい言葉じゃあなかった。
ラテもいたのなら、なおさらな」
「うん」
「なんの役にも立たない、無駄な死に方…って意味だな。
なんでそれが犬なのかは俺も知らない」
ぶわっ。そんな音が聞こえそうなほどに、平光から嫌悪感が吹き出した。
ノーテンキな目つきが憤りにすり替わっている。
こうなるのは全然不思議じゃあない。こいつの性格と、家とを知っているのなら。
「何それ。最低…
あたし、その言葉、大っ嫌い。
二度と使わないで」
「悪かった……」
予想以上にダメージがでかい。
大体いつもバカみたいに笑ってるこいつがこんな顔をするとな…
「アゥン…」
「うぐッ…」
さらに、足元で当たり前のように聞いていたラテ。
こいつは幼い犬のヒーリング・アニマルで…当然のように人語が通じている。
こんな言葉を聞かされたのなら、ダメージを受けても当然かもしれない。
「ラテ…お前はな、違う…お前がいなきゃあ、ビョーゲンズの出現がわからないんだろ?
お前にしか出来ないことで役に立っているんなら」
「タッキー!」
俺なりのフォローは、目を鋭くした平光に無理やり遮られた。
「役に立つとか立たないとか、どーでもいいでしょ!
ただラテがいてくれるだけで、他になんにもいらないじゃん!
タッキーは、役に立つからあたしを助けたの?」
言葉ひとつで、こうもなるのか。
今日は、嫌なことを問われる日らしいな…
黙って首を横にふる。あの時の俺に、そんな判断は働いていない。
ただ、個人的な痛みだとかかゆみがあっただけ…
「たぶんね、それと同じ!
それでいーじゃん」
「……らしいぞ、ラテ。
お前は、ただのお前でいいんだとよ」
平光の手を借りてその場に座り込み、ラテを撫でる。
…あれ?なんかサイズが……違う、ような?
ガルルルルルルルーーーーーーーッ
ガブッ
「うゴわァァーーーッ!?」
「あっ、イギー…どして?」
ラテを脇にのけて、いつの間にかそこにいたボストンテリアが俺の手を噛んだ。
耐えかねてひっくり返った俺の顔面に、さらに飛びかかる追撃。
バリッ バリッ! バリリッ ブチ ブチィ!
「うぐええッ、髪が!」
「わわわ、ラテいじめてるって思われた?
タッキー謝って、早く謝って!」
「謝るって何を?ぐええッ」
ラテを落ち込ませたことくらいしか思い当たるフシがなかった俺は、
その後必死こいてイギーとラテに謝ったものの、結局最後までやられた。
何をやられたって?髪ムシりから顔面に屁までのフルコースだよ!ポルナレフコース!
「さて、ボウヤ。お前さんはもうわかったじゃろ。
さっきの戦いで、お嬢さん方にはあって、お前さんに無かったものは何じゃ?」
「生きる意志だとか、見通し…です。
俺は生き残る可能性をみんなのっけから捨てた」
「おおむね正解じゃな。
そこについては、さっき克服したしの?」
イギーから救出してくれたのは、ジョセフとアヴドゥルだった。
コーヒーガムで誘導されたイギーは、
今は脇の方でコーヒーガムをクッチャクッチャ食っている…箱ごと。
ラテも一本だけおすそ分けをもらったらしい。
というか、箱をとられたアヴドゥルからねだっていた…イギーの近くでウレシそうに食ってる。
そして俺達は、改めて反省会の続きというわけだ。
「もっと言えば、お前さんにないものは希望じゃよ。
希望のない戦いは見ている味方を絶望させる……
悲壮なツラして電話かけまくってる倒産寸前の社長みたいなモンよ!
どんなにガンバッたって、そんなんじゃ社員は一人も残らんわい!
最後のチャンスさえフイにしちまうんじゃ!」
「自分をだます、そこまでする覚悟が必要…?」
「ゼンゼン違うわい。信じるんじゃ。
信じて、ただ尽くすんじゃよ。使命だとか思いにのォー
お嬢さん方には、それができとる!だから心配いらんのじゃ。
ピンチの中に一瞬の勝機を見出すには、それこそが必要なんじゃ」
「……信じることで、動きが変わる。ですか?」
「それだな」
横から花京院。黙っているのにそろそろ飽きた雰囲気だった。
「そこの平光さんを助け出したときの戦いに、たぶんそれはすでにある…
スタンドすらない状態で持ちこたえるには、どんな変化も見逃せなかったはずだ。
そして、治療するにはきみ自身の生存が必要不可欠。
助けると決めたものの前で、きみは何が何でも生きて勝つ決意があったんじゃあないか?」
「はい。生きて勝ち、治療を終えるのは絶対でした…間違いありません」
何を言いたいのか?つまりは、俺はすでに感覚としてそれを理解しているということ。
実例をすでに潜り抜け、後は応用あるのみということか。
それを肯定するように、花京院は深くうなずいてくれた。
「なら…もう大丈夫だ。きみは、彼女たちと肩を並べて戦えるだろう。
あとは立ち回りの問題だな。使ったら死ぬ切り札なんか、ばかげてる…」
「そうじゃのォー、もうちっとマシにはできんのか?
動かない下半身を単純に動かすだけでもかなり違うと思うんじゃが」
「出来ません…顔が割れた状態で下半身は動かせない。
そんなことをしたら、全国レベルのスプリンターとして父さんに呼び戻されることになる」
フー・ファイターズを使って、元の水準まで足を動かせるようにするぶんには楽勝だ。
だが、それを公衆の面前でやろうものなら、俺の商品価値が復活する。
ちょっと前までだったら喜んだだろうな…だが、今の俺にとってそれは死だ。
プリキュアはみんなすこやか市民なんだからな。俺の実家は
ビョーゲンズの拉致にたった一人で立ち向かう羽目に陥っちまうだろうよ。
ホワイトスネイク関係者についても大差ない。
「それじゃよ、それ。
気づかんのか?お手本が近くに三人もおるぞ?」
「……?どういうことですか」
「わからんヤツじゃな。てめーも変身しろと言っとるんじゃ!
フー・ファイターズなら出来るじゃろ?水さえあれば!」
…その発想はなかった。
目がぱちくり。瞬きの音が聞こえるようだった。
「それ、めっちゃイイ!
いっしょにヒーローやろうよタッキー!」
「そっか、わたしたちだって正体が隠せてるからやれるんだもん」
「現実的な方法としては『仮面』かしらね?」
マジかよ。既定路線になりつつある…
実際、頭ごなしに否定するには惜しい方法なのが憎い。
「そうじゃな、外付けで『仮面』じゃ!
思うに、てめーの肉体に無茶な改造なんざ、する必要ねーんじゃよ。
外付けでパワードスーツ作れば同じことよ」
ダーティ・ウォーターになるんじゃあなくって、
ダーティ・ウォーターを纏う、か……
「それが、出来るんなら…
フル稼働しても、ブッ壊れていくのは『スーツ』だ。
俺は壊れない!」
「スタンドであるあたし自身から言う!
夢を壊すようだけど…無理ね。全部外付けじゃあスタンドパワーが足りない。
でも、人間と同じ動きができる程度ならなんとかなる。
一定時間、正体を隠して戦う…までなら、水さえ確保できればやれる」
というか、F・F自身にとうの昔から蓄積があるな。
本体から離れた位置に人間大の分体を作り、
エルメェスと互角に渡り合った実績が、しっかりと。
とくに水中はF・Fの独壇場だ。俺にも、たぶん同じこと。
たとえパワーが人間程度に落ちようとも、
敵前で松葉杖をついてオタオタやってるよりはるかにマシ!
「戦える…戦える、ぞ……現実的になってきた」
「そりゃあよかったわい。研究と練習はしっかりやっとくんじゃぞ?」
これをものにできれば、俺の戦いは『泥』から『石』に変わる!
これが希望か。そうなんだな?
思い違いでもいい…俺に、また走っていく先ができたのに、変わりはないんだから。
長い夢も、そろそろ終わりに入りつつある。
今は互いに質疑応答し、持っている情報を発展させようとしている…
それもまた、終わりの頃合いだ。
「花寺さん。きみは幼少から病弱で、いつ死んでもおかしくなかったという。
しかもその原因は医者から見て一切不明だと!」
「…はい」
「それはもしや…スタンドが害になっていたのでは?
すでにスタンドに目覚めていて、最近克服したのではないかな?」
「ホリィさんと同じ。そう言いたいんですよね?アヴドゥルさん」
「うむ…わたし自身も、実例に何度か遭っているのでな」
「可能性は低いと思います。
今使っているDEATH13は、DISCですから。
いくらホワイトスネイクでも、複数のスタンドを一人に詰められるかどうか…
それに、わたし自身、そんなことはあってほしくない。
お母さんとお父さんが、巻き込まれちゃう…引きずられて、スタンド使いになっちゃったら…」
「たしかに…可能性は低いようだ。
スタンドが発現したのなら、ご両親がすでにそうか、きみに引きずられるのが道理!
時間が経ちすぎているのに、とくに不思議な力もないというのならな。
だが…であるのなら、なおのこと!きみの病気は探っていくべきだろう…
何かにつながっている気がする。断言はできないが…」
確かに似ていた。花寺から聞く病状は、
空条ホリィに表れたスタンド害にかなりの部分がそっくりだった。
取り殺されはしないものの、長期間肉体を蝕み続ける例もあるらしい。
だからといって結びつけるのは早計だが、完全に排除するべきでもない…
警戒するべき要素が、またひとつ増えてしまった。
「さて…もう、いいじゃろ。
わしらは、わしらの旅路に戻るとするよ」
「はい。ありがとうございました」
立ち上がるジョセフに続く皆。
その巨大な影たちの風下に立って、花寺は深く頭を下げた。
当然、俺達もだ。平光でさえ空気を読んでいる。
「花寺さん。わしらが視界から消えたのを見届けたなら…
夢は終わりじゃ。夢ごと、わしらを消しなさい。
そして、二度と同じことをするんじゃあない」
「……えっ?」
「お前さんは立派な子じゃ。
わしらを支配したくないと考え、自由意志をよこして呼び出してくれた…
だが、それだけにじゃ。お前さんは、あのDIOすらもやらなかったことをやっとる。
『死者の完全なる蘇生』じゃよ」
「ッ……!」
最後まで、意表をつくことを言わなきゃあ気がすまないらしいな。この爺さん。
花寺が、目に見えておびえた気配を出す。
「夢におぼれたくないんじゃろ?なら、やめとけ…
いつか、誰かと避けがたい『別れ』を迎えた時…
この力は、確実にお前さんの
夢に行けば会えちまえるんじゃからなぁーーッ
だが夢なんじゃ。わかっとるじゃろ?
寝て見る夢にうずもれるなんぞ、生きてるとは言えんよ」
「はいッ…ごめんなさい」
「次にお前さんは、生きてるって感じ!と言う!」
唐突で勝手な予言をくらった花寺は、
しかし、満面の笑みでそれに応えた。
「……生きてるって感じ!」
巨大ジジイの巨大な手の平が、花寺の背中をバシンと叩いた。
面食らってヨタつく花寺に、ジジイはニンマリ笑って歯グキを見せた。
「オウよ、生きなさい!思う存分じゃ!
意味のある『死』が欲しいとかぬかしとるボウヤがいたが!
そんなもん、存分に生き切った後にしかねーわいッ!」
思いっきり当てコスってきやがって。
って、待てよ。なんで知ってる?誰だ、しゃべったの。
横にらみで見ていると、俺にも近づく影があった。
…ポルナレフだ。なぜ?
「ボウズ、あのお嬢ちゃんたちを悲しませてみろ。
地獄の果てだろーと、てめーを追って串刺しにするぜ」
「…そんなことには、しない。約束する」
「おめーにはガッツがあったな。それに免じて信じてやるか…
でかくなったら、一杯おごるぜ。てめーもおごれよ」
あんたは串刺しになんかしに来ない。
でかくなった俺の姿なんか、あんたは見ない。
あんたは、時間が止まった人間なんだ。
目の奥がツンとなった。知っている承太郎の記憶とダブッたのかもしれない。
「ところでよボウズ、これだけは聞かせろや」
「な、何を…?」
「本命ダレよ?
オレの見たところ!平光の嬢ちゃんを見る目が違ってるよーに見えたがッ!
沢泉の嬢ちゃんにも心が動いたんじゃあねーのぉー?
あんなアッツイお説教されちまったらよぉーーーッ」
「やめろポルナレフ。酔っ払いの絡みじゃあないんだぞ…」
「イテ!テ!テ!」
しんみりした俺がバカだった。
後ろ首の皮をネコみたいに引っ張られて、ポルナレフは花京院に連行されていく。
その、ほんのわずかな間に、花京院も言い残していった。
「きみは出会えた。おそらくはぼくと同じように…
後悔は、ないようにしてくれよ」
その孤独からDIOに一度は屈した彼の言葉だった。
「花京院さん!あんたは、DIOに…」
「勝ったんだろう?わかっているよ。
わかっていても、油断なんかしない…ぼくの宿敵だ」
「……ああ…」
それ以上、何も続けることはできなかった。
紛らわすように回りを見る。
沢泉は承太郎に挨拶しているようだった。
何事かを言った沢泉に、承太郎は、やれやれだぜ、とだけ返している。
F・Fもそこにいる。すでに何か伝え終わったようで、
沢泉の横でただ黙って見ているが…
平光は、イギーとラテを両腕に抱っこして、
バラバラにほどけた髪でギャハギャハ笑ってた。
「では、今度こそさよならだが!
最後に、占い師たるわたしが、きみたちの未来の暗示を見てやろう」
俺は、タロットカードを一枚引いた。
『吊られた男』『正位置』
のどか『死神』『逆位置』
ちゆ『力』『正位置』
ひなた『太陽』『正位置』
もちろん、ヒーリング・アニマルのみんなも引いてます。F・Fも。
ご意見、ご感想、誤字脱字報告、ぜひよろしくお願いします。