プリキュアとの奇妙な冒険‐ようこそヒーリングっど♥へ!‐ 作:アンチマターマイン
キングビョーゲンが未だに曖昧模糊とした存在なのがなんとも。
ラスボスになれるのはダルイゼンしかいないように思える。
そこまで来てるのに、現在の当作品当話の時間的位置は
アニメ本編で言えば第四話っていう。
ここまで来たら原作沿いもクソもないんで無意味な比較ですけど。
今回は若干長め。
来週から、当作品のタイトルを前話で宣言した通りに変更します。
大変だった。
肉体的にじゃあない。ちょっと混んでるとはいえ、俺が座る余裕だってあったしな。
それでも十分程度の旅路が体感5倍に引き伸ばされた理由は、ずばりニャトランだ。
何が言いたいのかって?
興味持たれたんだよチビっ子に!
バスの中ではヌイグルミのマネさせて抱えてたから、視線が痛いのなんの……
そして、近寄ってきてサワろーとしたチビっ子から割と必死で防衛して今に至る。
サワんな、ヒトにアゲるモンだぞコレは!
そう言っても引き下がってくれない物分かりの悪いチビっ子は退かず、
攻防は親御さんの参戦まで続く羽目になった。
そっちにネダりなさい、オレなんかじゃあなくって!
謝られたんで、なんか買ってあげて、とだけ返しといた。
「あんがとね」
で、今ようやく渡せたわけだな。本来の持ち主に。
人目があるから、ヌイグルミのマネさせたままでな。
「おかえりー、ニャトラン」
「ヌイグルミの名前を呼ぶな、ヒト前で!」
「イイじゃん、ヌイグルミはメデるモンっしょ?
ウリ、ウリウリ…カワイイ、あったかーい!」
「やめてやれ。マジメに」
沢泉からDISCも回収し、その場はいったん離れた。
昼飯に同席しないことは、向こうも最初から承知だ。
俺が向かうはショッピングモール内の百均。
おやつラーメン4個セットを買って、近場ですぐさまバリバリ食らう。全部だ!
これで、あいつらの前でみっともなく腹を鳴らすことはない……
乾燥状態のまま食らったおやつラーメンは、
しばらくするとノドの乾きを連れてくるってのは常識だが。
その渇望を持って、俺はついでに水場を探す。
言わずもがな、変身に使えそうな場所目当てだ。
海鮮料理屋の入口にある生簀…アクセス可能。風呂桶ほどもあるから全身キッチリ沈めるぜ。
表のボードを見る限り、毎日すぐそこの漁港から生きたままの鮮魚が来るらしい…
変身に必要な養分だけを見るんなら最有力候補だな。
あとは、屋上(たぶん施錠されてる)にある貯水槽と、
ショッピングモール外になるが…道路ひとつ隔てた先にある、ゆめポート唯一の足湯だろ?
さらに、ちょっとばかし遠いが、最悪…海にダイブしてもいい。
F・Fは汽水湖出身のプランクトンだったから、よほどでなければ塩水とも付き合えるわけだ。
海水でなら、概算5分で変身可能との見込み。俺はシュノーケルを出して潜ればいい。
逆に、イケそうだけど使いようがないのがスーパー銭湯。
ショッピングモールのすぐ隣で、源泉もすこやか温泉と同じっていう、
かなり侮れないトコ(沢泉談)なんだが…
建物の奥深くじゃあ、とっさのアクセスは不可能だよな。
垣根を越えて露天風呂に突っ込めばいい?そんなコト言うヤツは正気じゃあないね。
ヒトゴトだと思いやがって…他に方法がないときは、そうさせてもらうがな。
モールのド真ん中にある噴水も養分不足だ…フー・ファイターズをこっそり這わせて確認した。
そうやってモール内の地図とにらめっこしながら動き回ること三十分、
スマホにメールが来た。花寺からだ。
入り口のクレープ屋に集合か。どうやらそこで食ってたようだ。あいつらはな。
「おー、来た来た。思ったより遅い…ドコ行ってたの?」
「水、探してた」
「水…そっか、へんし…ケホッ。スパ銭あるじゃん」
花寺と沢泉から注いだ視線が、平光の失言を食い止めてくれたようだ。
このふたりは安心なんだよ。俺よりも思慮深いからな。口を出す必要すらない。
「スーパー銭湯のこと?ダメね…奥まで行くのに時間がかかるわ」
「必要になるの、とっさのことだもんね。たぶん」
「ま、大丈夫だとだけ言っとく。最有力候補はすでにここから見えてるぜ」
「えっ?……ああ、アレ。気をつけなさいね?」
「十分に気をつける」
とくに沢泉は、一聞いて十、とは言わないまでも三わかる、
体育会系頭脳派とも言うべきヤツなんで、目的がはっきりした話ならマジに早い。
家が旅館で、その看板娘ってのが大きいんだろうな。育ちがいいよな…
体育会系とはいっても、いい意味だ。俺は悪い意味の塊だった。
…気を抜くなよ俺。こんなところで辛気臭いツラをさらすな。
「それで、どこ行く?」
「服行くよ、服!タッキーの」
「……俺ェ?」
なんだよ。マのヌけた声返しちまったじゃあねーか。
「一ヶ所付き合うって言ったっしょ?」
「言ったけど」
おい…最悪だぞ、この流れ。
財布の中身がバレかねない。
「たぶんタッキーさ、着せ替え人形にされるのイヤだよね?
一着だけ選ばせてくれれば、それでイイから!」
「……。それでいいなら」
「それでイーよ。行こ!」
…これって、もしかしてアレか?
最初にムチャクチャな条件をドーンと叩きつけて、
後から妥協したように見せかけて要求を呑ませるっていう…
イヤイヤないない。ンな知恵、働かせないからコイツ!
でもヘンなトコで勘が鋭いからな。油断できない。
それよりもだ。
「なんで俺の服選ぶの?」
「んー?
普段さ、男モノの服を選ぶのってお兄のときくらいだし!
目ぇツケてても、お兄には似合わないなぁーってあきらめるヤツ多いんだ。
だからそーゆーの選びたい」
「……ジャケットをお願いします。季節は春と秋で。可能な限り安く。
限度額は三千…三千五百円。これ以上は無理。
なるべくインナーつきがいい。冬もできるだけそれで頑張りたい」
「ふんふん…アンタの考えてるコトさ、わかったよ。
探してるのは冬モノ?オフシーズンの処分品狙い?
ただ、その金額でインナーつきはキツイかもしんない…オッケー、探そっか」
「ひなたちゃん、すごい…」
「モチはモチ屋っていうのかしら」
…いや。頭は悪くないんだよコイツ。
集中力にムラがあるだけだ。興味さえあればガッつくし、
なんか集中すると他を見ねー、というか忘れる…それがヤバイってだけでな。
オシャレ関係は常に関心の中で、小遣いとニラメッコしていつも悩み続けてるわけだな。
男モノを見てるとは思わなかったけど、そりゃあ見るか。家族だもんな…普通は。
先頭に平光、間に沢泉、その後ろに俺、最後尾に花寺でエスカレーターに踏み込み、2Fに行く。
そこから、対面への渡り廊下近くまで来れば、男モノの服屋。そのうち一軒だ。
全体的にあまり安くはない。が、目当てのオフシーズンものはちゃんとあるようだった。
靴も扱ってる…スポーツ用のヤツもある。ゴム臭えな、クソ…用は無い。
「この店だとココだね。大体ココ固まってる!」
「俺もアサるか…欲しいのは一着だけじゃあないし」
「鳴滝くん、まずこれを羽織ってみて。サイズ感わかっておかないと選べないわ」
協力して素早く済ますべきだ。
店員のオバちゃんは別に俺を知らないようで、なんか生暖かい視線を投げてきてるだけだが、
全員がそうとは限らないんだからな……
沢泉が後ろから差し出してきたジャンパーに腕を通す。
見立ては正しかったようで、すんなり違和感なくいけた。
俺の身長はあまり高くない…沢泉よりちょっと高い程度で、
いやしくもちょっと前までアスリートの端ックレのクレ。やせている。
沢泉としても、自分の延長で選ぶことができたのだと見える。
「じゃあ、この辺は最初から除外だね…大きすぎたりしたら合わせにくいし」
「ヤバイ…思った以上に絞られちった。かなり売れちゃった後っぽい?」
こうしていると、嫌でも思い出すものがあった。
俺を刺すしかなくなったアイツが…陸上に入る前に、両親とシューズを選んでいた風景だ。
あれを激しく憎んだ俺だけど、もしかしたら今、アイツと同じ景色の中にいるのかな?
…立ち去りたくなってきた。選んでもらった服が燃やされる幻を見る前に、だ。
ジャンパーを脱いでオバちゃんに渡しつつ、ボトムス回りを探す。
チノパンはこれから向けだ。高い…やはり処分品からGパンでも見繕うか。
半ズボンも、値段次第では考慮に含めていいんだが……そこで気が付いた。
視線、ふたつ。こっちに降ってきている。
むろんのこと、花寺でも、沢泉でも、平光でもない。
元を追う…ひとり見えた。なんとかわかった。隣のクラスの女子だ。
つまり、俺を除いた三人のクラスメート…
「タッキー、コレとかどーよ」
「悪い、イキナリ腹が下った…トイレ行く。選んどいてくれ」
「ええっ?大丈夫なの?ついていこっか?」
「大丈夫だって、花寺…俺だってガキじゃあない」
松葉杖を素早く繰って進む。
三人の視線を振り切った位置に出て、あのふたりを探す…いた。
どっちも女子だ。名前は知らない。
片方はボーイッシュな強気気味のヤツ。もう片方は、ややふくよかな温和なヤツ。
どちらにも言えることだが、俺を見る目は……冷たいようだな。
人差し指でチョイチョイと招いてやると、意を決してボーイッシュの方から来た。
少し離れた位置に誘導する。人気のないところは当然避けつつ、な。
「どうする気だ?…魁」
「どうもしない。言い分を聞いておきたい…
来るべきものがついに来た。そんなとこだろ」
喉の奥の耳打ちに、ボソボソと答える。
できれば避けたかった。でも実際、時間の問題ではあったんだ。
そそくさと逃げるわけにはいかない…
そんなことをしたら、俺もあいつらもダメージを受ける。
「…………何の、用で?」
「…どういうつもり?」
「たぶん。あいつらの近くにいることが、どういうつもり…か、だよな?」
最大限、真面目に答えるつもりだ。答えられる範囲のことならな。
煙に巻いたりしたらどうなるかなんて、わかりきっている。
「ひなたに近づいて…前の学校みたいなことでもする気?」
「あいつを…傷物にしようとしてる、と。そう思ってるわけだな」
流れている噂はまちまちだ。
俺が沢泉に対して起こした事件は広く知れ渡ってはいない。
おそらく、噂が知れて最もダメージを受けるのが当事者の沢泉だからだ。
関係者内で箝口令が敷かれて、それっきりになっていると思われる。
だが、あれの背景にある不純異性交遊については…
真偽定かならぬ…だが、チョロチョロと耳に入ってくる。
…で、事実だ。グウの音も出ない。
だがそれを、こんなところで吹聴して何の意味がある?
誰も幸せにならず、ダメージだけが残るぞ…事実確認されても、俺はスットボケる。
「そんな事実はない。今までもこれからもな」
「信じられると思ってんの?
その足、動かなくなったのだって…自業自得なんでしょ?」
「ああ。だが、それとこれとは話が違う」
「違わないよ。何も違わない……
あんたがどんなクズだろうと、あたしは知らない。知ったことじゃあないよ…
許せないのは、あんたみたいなのが…ひなたに、大好きな友達に近寄ってきたってこと!」
「…そうだな」
返す言葉もないってやつだ。
そんなことはわかっている。ずーっとわかってきたつもりだ。
だが、ヌルかったんだよなあ。こうやって言葉にして聞かされるとハッキリわかる。
刺さるんだ。真心だから、なおのこと。
本気で思いやるからこその怒りが、こいつにはあるんだよ。
今となっては、目を見ればわかる気がするんだ。本物を見てきたからかな?
平光。お前の友達さ……いいよな。
俺みたいな、何するかわからない犯罪者同然のヤツ相手に、
正面からタンカ切ってきたぞ。お前のために。
「そうだな?…あんたナメてんの?開き直ってんの?
楽しいでしょうねぇ、ヌイグルミひとつで機嫌とったフリしてさ!」
…見てたのか。バスの中から追われてたと考えるべきか?
悪いニャトラン。巻き込んじまった。
俺がお前を平光に渡す姿が、こいつらにはどれほど醜悪に映っただろう?
お前は、どれほどおぞましい物体に見えたんだろうな?
「あの子は、ちょっとヌケてるから…騙されちゃうかもしれない。
あたしだって、そんなトコを笑っちゃったコトもある…だからこそ許さない。
あんたみたいな…」
「みなちゃん。その辺でいいと思う。怒らせる必要ないでしょ?」
温和な方が止めに入った。もちろん、俺に味方してるわけじゃあない。
「私たちからお願いしたいのはひとつだけ。
ひなたちゃんに近づかないでください。
ひなたちゃんと、ひなたちゃんと親しい全ての人に…
それさえ守られるなら、私はあなたに干渉しないから」
ハハハ。内心で乾いた笑いが漏れた。
お前な、それは『全部捨てろ』って言ってるんだよ。
そりゃあ、俺の事情なんか知る由もないし、考える必要もないだろうけど!
「……誠意をもって答えるよ。
できない相談だ……!」
「どうして?」
「『蜘蛛の糸』って知ってるか?芥川龍之介の…
俺はカンダタで、あいつらは糸。それだけ」
「…。あんた、バカにしてんの?」
信じられないよな。当然だ。
それこそが俺の積み重ねてきたものだ。クソの山だ。
俺はクソ山の王様で、そこからすらも転げ落ちたんだ。
「言い分はわかったけど。
でもね、正直言って…カケラほどの信用もできない。
今日はこれで引き下がります。
でも、今後もし、ひなたちゃんが傷つくことになったら。
私たちがそうなると判断したのなら!
…私は、いつでも警察を呼ぶ。とだけ言っておきます」
「わかった…覚えておくよ」
去る二人を見送ることなく、俺も踵を返す。
行先はトイレだ。もう何分経ったかもわかりゃあしないがな。
戻ってはいけない。それだけは確信していた。
「で、どうすんの?…魁」
「警察には……かなわないよなぁ~」
フードコートの前を通りかかる。
俺と年頃の変わらない奴らが、大挙してテーブルを囲ってる。
「……か、魁。なんで、こんなことになったペェ~」
なんで追ってきてるんだよ、お前。
左手でムンズと掴み、小脇に無理やり抱える。
「お前な。今すぐ戻れ。
それで、何も見なかったことにしろ」
「イヤだペェ。今の魁を一人にできないペェ」
「一人って…F・Fいるぞ、一応?」
まあ、いいや。
俺も、どういう心境の変化かな。
ペギタンを抱えたまま、当初の予定通りトイレに入った。
運よく無人だ。個室もフルオープン…最深部の一個にこもる。
フタをしたままの便座に、俺は座り込んだ。
ペギタンは…なんというのか、モチモチだ。
ニャトランはフカフカだったが、抱え心地はいささかも劣らない。
「ペェ…わかるペェ。あのヒト達の反応は正しいペェ。
友達のそばにサメが来たりしたら…怖がって当然だペェ。
でも、ボクは…」
「ありがとう、ペギタン。
でもな…こうなって、むしろ良かったとも思うんだよ」
「どういうことだペェ?」
「さっきの、さ…フードコート、見たろ?
前の学校じゃあ、俺もあんなフウにテーブルを皆で囲んでたんだよ…
いじめられっ子に、一方的に金を出させて、な?
俺達は、ビタ一文支払わずにガツガツ食いまくったもんさ」
「……ペェ?いきなり放さないでほしいペェ」
腕の中のペギタンを、俺は放した。
怪訝な顔をしたヤツは、目の前に浮いている。
いいもんだよな。暖かいのって。でも仕方ない。
俺は、その肌の暖かさすらも自分で穢しちまったんだからな。
「お前もな…俺から離れろ、な?
よーく再確認できたよ。俺の魂は穢れている…
しかも、好んでそうなったんだ。
近くにいたら、『うつる』ぞ?」
「何を言い出すんだペェ?
みんなと協力して戦っていくのはどうなるペェ?」
「心配ないよ。ちゃんとやる……ただし、一人の『兵士』として。
俺に『仲間』の資格はないよ。ただ立ち位置が変わるだけ、な」
「ペェ……」
「穢れが『うつれ』ば、あいつらも同じ苦しみを負わされる。
何の罪もないのにな!…そいつをわかるんだよ、ペギタン」
「……。それでも、ボクは」
ドン ドン ドンッ!
ドアを猛烈にノックされた。
やばい、話し込みすぎたか?
「なんだァァ~~こいつ?
周り、ガラガラのはずだぞ?
なんでノックしてくるんだ?」
そんなことはなかった。F・Fがすぐさま教えてくれる。
だとなると、こいつは…不審なヤツだ!
スタンド使いか?ノックして開けさせることに、なにか意味があるのか?
だが幸い、開ける必要などない。俺と、F・Fにとってはな。
「ペギタン」
「ペェ」
「合図と同時に出て、先に戻ってろ」
「ペェ!」
ドン! ドン! ドン!
「スンマセン、今出ます」
俺が出るのは今からだが、フー・ファイターズはすでに出ている。
トイレには必然、養分がいくらか溶けた水が常にあるからなぁ~
そして地面からの照り返しでわかった。マッチョの男!
肌の色がメチャクチャ悪い……ビョーゲンズ!手加減無用!
スマホ…『トイレびょうげんず』花寺たちに一斉送信…そして、やる!
ガチャ キュイィー…
「よ~し!進化しろ、ナノビョーゲぐわあああああああああああああ!!??」
ひなたの友達周辺では、すでにデフコンワン発令済です。
正面から文句を言ってくるだけ、まだ平和的。
ご意見、ご感想、誤字脱字報告、ぜひよろしくお願いします。
何を見て、何を感じてる?ねぇ?