プリキュアとの奇妙な冒険‐ようこそヒーリングっど♥へ!‐ 作:アンチマターマイン
何を楽しみに見てくれているか。
作中のキャラをどう思ってくれているのか。
書いてる人間は、いつだって知りたいモンですから…
今週より、当作品のタイトルを『笑え勘違い野郎』から
『プリキュアとの奇妙な冒険‐ようこそヒーリングっど♥へ!‐』
に変更します。『達』は抜いた方がよさそうだったので外しました。
「ケツ!ケツがああああ!グワーーーーッ!?」
クリーンヒット!
だが、さすがに一撃必殺は無理だったか…
俺がやった攻撃はごくごく単純。
床を経由して広げたフー・ファイターズを全ての大便器に連結。
吸い上げた養分をヤツの背後、足元に集中させ…槍を作ってぶち上げた!
ビョーゲンズ相手だったら何の容赦もしないぞ俺は。
隣が『流し忘れ』だったのがさらにいい。威力も硬さも割り増しだ。
槍には『返し』もつけている。新鮮なキュウリについてるイボ粒みたいな数をな……
引っこ抜くだけで地獄の苦しみを味わうだろう。
「逃げるぞ、魁。ヤツがマヌケなステップを踏んでるうちにな」
「了解だな…このままだと、ヤバイ」
もともと倒せるとは思っちゃあいない。
あそこまで経験しておいてその考えじゃあオメデタすぎるってもんだ。
この場を逃げ切るための仕込みでしかなく、そして当初の想定より余裕がない。
俺に向かって飛ばそうとした『ナノビョーゲン』が、どこに飛んで行ったかが見えた。
手洗い場の『鏡』!どんよりした暗闇の霧に覆われつつあるッ
松葉杖を突いてる場合ではなく、一時的にフー・ファイターズで
足との連絡を回復。出口付近まで素早く出て、また松葉杖をスタンバイ。
「ま、待たんかァァ〜〜ッ
このグアイワルが!せっかく!デミビョーゲンに戻してやろーとしたのにッ!
ただの人間では『出来損ない』になるだけだが!
お前のようなチカラを持つ逸材ならば……
うごおおおおおケツがあああああ」
付き合ってられるかよ。トイレを襲う変態ヤローめ!
しかし新情報だ…人間にナノビョーゲンを取り憑かせると、
デミビョーゲンとやらになるらしい…そして、それは俺のことだった。
コイツかどうかは知らないが、ダーティ・ウォーター事件はしっかり観測されていて、
どうやら俺のようなスタンド使いを、そうやって活かすことにしたようだな……
恐るべきは、俺の人相が完全に共有されちまってること。
トイレなんか、公共施設で、かつ単独行動にならざるを得ない場所だ。
出入りを不審視されづらく、襲撃にはうってつけ。
マジに遺憾だが、この一点に限って言えば…
花寺についてきてもらうのが大正解だったわけだな。
「鳴滝くん!」
「タッキー、ビョーゲ…んむッ!?」
「大丈夫なの?」
噂をすれば影だ。全速力で来たな、お前ら。
そりゃあそうだ。こんなところでメガビョーゲンが出れば人死にが出かねん。
固有名詞を口に出しかけた平光は、やはり沢泉に顔面をつかまれていた。
花寺の腕の中にはラテ、だ。まもなく気づくな。
周りの一般人が、なんだ?って感じで見てる…
言葉に出すのは危険。スマホを取り出し、『ものかげ へんしん』…一斉送信だ。
すぐに察した沢泉がすでに取り出したスマホを、花寺、平光が覗き込み。
数瞬して、真っ先に平光が動いた。すぐそばの身障者用トイレに突っ込んでいく。
沢泉はそれを止めようとして間に合わず、
花寺と一緒に閉じてしまった自動ドアをドンドン叩いている。
…俺も今気づいた。ダメじゃあねぇーか平光。
衆人環視の中で『個室』のトイレに入っていって、出てきたときにはプリキュアなんだぜ?
ゼンゼン隠れてねェーよ正体!
たぶん、ニャトランにツッコまれて気づいたんだろう。
開いた自動ドアから、コメカミをポリポリかいて平光が出てきた。間に合わねーなコレ。
揺れと破壊音が始まった。メガビョーゲンが出てくる…出来ることはこれだけだ。
「うッ…うワああアァァァ!?」
大声をあげて逃げる。俺が率先して逃げるんだ!
異常な状況で思考停止した周囲に、俺の悲鳴を伝染させれば!
「え?わ…わぁぁぁーーーッ」
「何これ、地震?」
「ちょっと、ヤバイ、出ないと…」
「逃げろーッ!」
「出てください、建物から出てーッ!崩れますッ!」
よし、やった!
全体が一気に避難の流れで染まったぞ…
続く破壊音。周りの人間は一目散に逃げるだけ。
こうなっちまえば、変身するスキなんざどうとでもなるだろうよ!
あとは、俺に必要な『水』だ。
階段まで行きついたところで、ひときわ大きな崩落音が耳についた。
潰れたトイレから巨大な影が這い出し、モールの中庭に降り立った。
「メッガビョオ~~ゲェーーーン!」
掃除夫みたいなカッコしてんのは……トイレだったせいだろーな。
右手に
変身を終えたプリキュア達は、ビミョーな顔をしつつだが。
さっそく散開しつつ立ち向かっていた。ヤツの攻撃には死んでも当たりたくないだろう。
プリキュアとメガビョーゲン、双方に申し訳ない気持ちが沸いた。
俺がトイレで襲われたばっかりに…
今後、二度と同じことは繰り返せない。今回はまだいいだろう。
が、次があって…ナノビョーゲンが、なんかの間違いで便器なんぞに着弾しちまったなら!
考えたくもねえぞ、おい。ポルナレフ病は断じて予防せねば。
それはそれとして俺は急ぐ。今考えるコトじゃあないからな。
階段を下りれば、目的地はすぐそこだ。
足を踏み出す直前に、F・Fが呼び止めた。
「魁。アレのケツに刺さったフー・ファイターズは消すぞ。
サンプルを持ち帰られることにつながる」
「おっ、そうだな……消すなら今くらいが限界か」
「もっとも、ただ消すんじゃあ芸がない。
あいつらの戦いに参加されても困るしね…よし。
回転して『らせん状』に切り裂きながら脱出する!」
スタンド、フー・ファイターズは、俺とF・Fで共有されている。
射程距離もともに同じで、50m以内なら、
俺にもF・Fがやっていることを感じ取れるのだ。
そいつが望ましいかはまた別だがな!
「えげつねえ……うへェ、モガキまくってる」
「脱出完了、みんな消したぜ。急ごう」
F・Fの攻撃中、もちろん俺も遊んじゃあいない。
体内から構造を確認…奴らビョーゲンズも、ヒーリング・アニマルと同じく
多分に概念的な存在みたいだが、やはり同じように生物に準拠もしているようだ。
要するに…現時点では奴らより非力と言わざるをえないフー・ファイターズだが!
体内に入り込みさえすれば有効打が望めるということだな?
致命傷につながる急所も、どうやら人間と同じと見た…しめた。かなり強力な情報だぞ。
しかし、体内にも奴らの『汚染力』が強烈に働いているのも確認できた。
普通の物体じゃあ、おそらくアレで瞬く間に腐れて消えちまうんだろう。
今回の『槍』も、ヒーリング・アニマルと化したF・Fだから、やっと通った。そのようだ。
『お手当て』の力なしにはどうしようもないってことだな。少なくとも俺達には。
以前、俺があっさり汚染されきっちまった理由も、そこにあるわけだ。
ラビリン、ペギタンにニャトランの言っていたことが、今や実感として理解できるぜ。
…気を取り直す。変身しなければ。
したところで、出来るのは囮役と、けん制の攻撃くらいだろうがな。
だが俺達は直後、どうしようもない問題に直面する。
「…魁。ヤバくない?これ」
「人が途切れねえ」
例の海鮮料理店は、今下りてきた階段から見て、モール出口への道中に位置していた。
つまり避難する人間のうち何割かは確実にここを通ってくる。
抜かったなんてもんじゃあねえ。常に人目だらけじゃあねェーか!
俺は、メガビョーゲンの出現で人が避難して、無人状態になるって想定してたんだ。
なんつーバカ丸出し。平光のことをまったく笑えない俺だった。
「クソがッ!次行くぞ、次!」
「戦闘が激しくなってるな…こうなると屋上もマズイ。
『露天風呂』しかないと思う」
「なんてこっただよ…チキショオ」
ゴォォォ… ズゥゥゥン
ピシッ ピキ!
F・Fの言を裏付けるように、大音響と地鳴りが近場のガラスにヒビを入れた。
いきなり最後の手段だけになるとか。
これも日ごろの行いが悪いせいか……まさしく、だな。
俺以上に悪い奴なんざ、そうそういやしないんだ。
やるしかねえならやってやる。心を決めたなら外を目指す。
目指した矢先に、また会うとは思っていなかったがな。
避難する人間の中に逆走してきたヤツがいた。ふたり。
ボーイッシュと、温和…だ。
「何やってんだ、お前ら。逆だぞッ!?」
「あんたこそ…ひなたはどうしたのよ?」
「私たち、ひなたちゃんを探しに戻ってきたの。
一緒にいなかったの?」
なんてこっただよ…チキショオ。
心の中で同じセリフを繰り返す羽目になった。
死ぬかもしれない場所に戻ってくるとか、バカなのか?
…ああ、バカなんだな。あいつの友達で、あいつらの同類なんだ。
そう考えたなら、こうなるのはむしろ必然!
俺の見通しが甘かったってコトでしかない!
どうやって止める?どうやって引き返させる?
ここでしくじれば、こいつらは戦場に突っ込んでいっちまうぞ。
こいつらが潰されて、血のシミになっちまったなら。
……ズキッ
痛みが走ったと思った。
…嫌な想像ってのは不健康なもんだ。
とにかく、止めなくてはならない。最悪の結末だけは。
すぐバレるウソはつくな!とくに電話関係!
電話しようと考えるのは当然で!
そして、プリキュアやってるあいつらに、電話が通じるはずがないッ!
「あいつらとは…、トイレの前で、はぐれた。
向こうも俺を探してる可能性があって、俺も今探してる!
上にはもういない!それだけは確かだ。今見てきたんだからな」
「…確か、って……どんだけ探せるってのよ、そんな足で」
「電話はしてみた?ひなたちゃんに」
「……してないな。してみる」
一時的に、だろうが。ふたりの敵対的な態度が和らいだ。
話を聞いてくれる気にはなったらしい。
俺も『信じる』対応をしなければ。
スマホを取り出し、電話帳『平光ひなた』…発信。
プリキュアをやってる間、スマホがあいつのどこにあるのかは不明だがな。
存在することはしているらしい。着信音だけが響く。
「出ない、な。壊れたりはしてないらしいな」
「やっぱり…」
「壊れてないからって、何を安心できるのよ。
もしかしたら、『出られなく』なってるってことじゃあないの?」
ズドドドォォォ ン!
パキ! パキィン バシ! グワシャア
「ひっ!?」
「嫌ぁ!?」
ガラスが割れた!近いぞクソがッ!?
中庭なんて狭い場所で、あれだけ巨体の敵をコントロールしきるのは
そりゃあ難しいだろうよ!…マジにまずい。
「これまでだ…逃げるしかない。
いたら死ぬような場所に、あいつらが留まるはずないだろ」
すくみ上がったふたりに畳みかけていく。嘘はまったくない。
俺自身、ここを一刻も早く離れないと無駄死にしかねない状況だ。
ふたりも理解している。現実になった恐怖が目の中に降ってきたのが見えるぜ。
腰が引けている…そのまま、引いていけ!
「それに!お前の言う通りに『出られない』としてもだ。
それこそ出来ることが何もねえぞ。
今やれることは、この場から逃げ切って!
一刻も早く専門家を呼ぶことだ…そっちの方が、よっぽど『ため』になる」
理を尽くしていく。お前らがここにいることは間違っていて。
引いて別の手段をとった方がよっぽど正しい。
恐怖の先に進んでも間違いしかないのなら、引かない理由なんかないはずだろ。
だから帰れ。誰も攻めるヤツなどいない。いるのなら、そいつがおかしい。
俺は必死だ。心の中でまでブツブツと説得をタレていた。
黙って聞いていたふたりだったが、やがて、ボーイッシュの方がうつむいた。
そして。
「…ありがと」
パァン!
ヤツは自分で自分の顔を、思い切り平手で打った。
顔を上げて、キリッとした目で俺を見た。
「あんたのおかげで、見栄を張れそう」
「何、言ってんだ……?」
「…たぶん、あんたにはわかんないだろうけどね」
そして聞かされた。理解させられた。
俺は、押してはいけないツボを押し込んだのだ。
『正しさ』が、かえって『バカ』への道に背中を押したらしい。
「あんたの言ってることさ、正しいよ。
だけどさ…何も出来ないから、どっかの誰かにまかせろだとか。
そんなの納得したくない」
「…………」
「ひとつでも、出来ることがあるかもしれないんだったら…
あたし、行くよ。友達だもん」
温和も、『バカ』に呼応した。
恐怖がより深かったように見えたのに、だ。
「私も、行くよ。ひなたちゃん、誰か助けようとしてるのかも…
周り見ないで、頑張っちゃってそうだし。
私も、助けてあげられるんだったら…」
気づけば、周りに誰もいない。
そんな中をふたりは歩き出した。より奥に。
見栄を張れそう、だって?
張ったからどうなるっていうんだ?
恐怖が消えてなくなるとでも?
いや、ちょっとはわかる。気がする。
ある種の事がらは死ぬことよりも恐ろしい。
そういう目に何度か遭ってるんだよ、俺だって。
理性で無理だとわかっていたとしても、戦うしか選べないことがある。
でも…違うな。うぬぼれだ。俺は生命を大事だなんて思ってなかったんだから。
死だけを望む人間に恐怖などない。ジョセフが言っていたように『ノミと同類』なんだろう。
今だって、いわば借り物になっちまったから大事にしてるに過ぎないし…
ともあれ、確かなことは、ひとつ。
監視カメラの有無だけを素早く確認した俺は、指先をF・F弾の銃口に変え。
去っていくふたりの背に、ピタリと照準を合わせた。
「ああ、わからないな。俺にはわからない」
いや、あの。
鳴滝魁の変身、初戦場のはずだったんですけど。
助けに戻ってきたふたりがそんな予定をふっ飛ばしてくれました。
こっちの方が自然なんで良しとします。
※デミビョーゲン
本作独自設定。
テラビョーゲン(ビョーゲンズの指揮官クラスの知性体)は、
通常、物体や植物(に宿る精霊…エレメント)にナノビョーゲンを植え付けて、
侵略用の戦闘体であるメガビョーゲンを生み出すわけだが、
これをはっきり意志を持った動物に使用すると、
元々あった魂を中途半端に侵食して同化してしまう。
同化過程で魂の抵抗に遭い、エネルギーを無駄に消耗して弱くなり、
しかも同化した生物にある程度独立した意志が残ってしまうため、
キングビョーゲンへの帰属意識がその分薄くなる。
出来損ないの半端ビョーゲンズ。ゆえに、デミビョーゲン。
通常、こんなもの作る意味などまったくないが、
元々不思議な力を持っている生き物が素体なら…
あるいは、テラビョーゲンに迫る戦闘力を持つ個体が生まれるかもしれない。
…なお、本体のテラビョーゲンがより強力になり、ナノビョーゲンそのものの
パワーが増大したなら、問題解決によりデミ化しなくなる。
おそらく、作中にて語る機会がない&原作にこのような設定はない
の併せ技により、この場で設定を放出してしまいます。
ビョーゲンズの体内の『汚染力』とやらも同様ですが。
ご意見、ご感想、誤字脱字報告、ぜひよろしくお願いします。
自分の道を信じたものだけがいつか輝ける!って言っても、やっぱし不安です。