プリキュアとの奇妙な冒険‐ようこそヒーリングっど♥へ!‐ 作:アンチマターマイン
しかし文章量はほぼ一万字。実質二話分が詰まった。
今話で『ゆめポートに遊びに行こう!』にケリをつけるべく
無理やり詰めた感ありですね。
放映中の原作…ダルイゼンはなんなんでしょうね。
一人だけ作ってるギガビョーゲンが強い…
というより、むしろ一人だけマジメに仕事してる?
シンドイーネもグアイワルも、ここんとこ茶番くさいことしかしてないし。
※2020/12/27 21:20頃
誤字報告をいただきました。ありがとうございます。
家でトイレ掃除のお手伝いもしてそうなのどかっちですから、
正式名称をお母さんから教わってても不自然じゃあないですね。
なので、出てくる箇所すべてにひと通り読みを追加して対応します。
なお、前話で魁ものどか同様のルビを振ってましたが、
こっちはマジに知らないってことで通します。
「お……オレ、の。
オレのケツにブッ刺してくれた小僧は…どこだ?」
初対面のビョーゲンズは、筋肉の塊みたいな男。
中庭に降り立ったわたしたちの前に現れるなりそう聞いてきた。
ダルイゼンやシンドイーネがそうだったみたいに、
この男もサソリみたいな尻尾が生えてるんだけど…
その下に、なんか余計な棒が一本生えてる。
竹ボウキの柄みたいなのが。
……気づかなかったことにしたいなぁ〜〜正直。
高いトコから見下ろしてるから、イヤでも見える。
「ビョーゲンズのグアイワル、ラビ。
でもなんか様子がヘンラビ」
「わかってるけど…様子ヘンなのは」
「何よアンタ。今回のお題はシモなの?」
「好きでやるかァァーーーッこんなコト!?」
顔が引きつってるフォンテーヌを置いて、
スパークルは平常運転してる。お笑い番組アツカイ!
「だって…えっと。怪物だってトイレ掃除じゃん」
「事故だ事故!
あの小僧が大人しくやられていれば、
今頃キサマらの敵はヤツだったわ!」
「それで逆にヤラレてんじゃあ世話ねぇーぜ。
スパークル!やっちまおうぜ」
「オッケー、退場!」
「来るのか?いい度胸だ…
…おおおおお無理いいいいいい!!??
おがああああああああああ」
……えっと、グアイワルって言ったっけ?
スパークル相手に構えたのはいいんだけど。
その直後に、一人で天を仰いでわけのわからないステップを踏んで…
崩れ落ちてゴロゴロ転がり…お尻に手を当てたまま、中庭の茂みに落っこちていった。
「……何ラビ?」
「…なんだろーね?」
「知りたくもないわ。片づけましょうサッサと!」
「ペェ!」
投げやりに吐き捨てたフォンテーヌの構えが開戦の合図になった。
(中庭に出る前にいくらか打ち合ってたけどね)
グアイワルの方を見たまま呆気にとられてたメガビョーゲンも向き直ってくる。
それにしても…トイレの
柄つきタワシが武器なんだよね。メガビョーゲンの。
しかもなんか水がしたたってる……ウワァ、やだなぁ。
でも、そんなことよりも。
「フォンテーヌ、スパークル。まだ人が逃げ切ってない。
吹っ飛ばすような攻撃はやめておこう!」
「了解よ」
「りょーかーい!
…こうなってわかるけどさ、
建物が入り組んだ場所とか、どこに人がいるかわからない場合だと
巻き込む危険が大きすぎるんだよね、
そのぶん、状況がかち合えばプリキュア以上にモノスゴイ破壊力なんだろうけどね。
他ならぬひなたちゃん自身、すごく警戒してくれてる。
「グレース、スパークル、左右から動きを押さえて」
「動き止めんの?もしかして、オラオラ?」
うなずいたフォンテーヌが飛ぶ。
そのまま飛び掛かるつもりじゃあなくって、ポジション確保のため。
今、わたしたちの中で一番『殴り方』をしっかり覚えてるのはフォンテーヌになる。
成り行きみたいなものだけど、オラオラも承太郎さん直伝になっちゃったし。
一歩遅れだけど、わたしとスパークルも練習してるよ。昨日もやってた。
「メッガァァーーー」
メガビョーゲンが、背中に背負った洗剤ボトルからビームを撃ってくる。
着弾したら、そこがビョーゲンズに汚染されちゃう。
汚染すればするほど強くなるのがビョーゲンズ。
そうわかってるなら、みすみす見逃したくもないけど…今やるべきは、違う。
わたしとスパークルは、回避と一緒に左右からひとっ飛びで距離を詰めた。
「メガッ!?ビョーゲェェーーーン!」
驚いたようだけど、すぐ次の攻撃に転じてきたメガビョーゲン。
左右の手で持ってる武器を振り回す。わたしとスパークルの方、別々に。
飛沫がたくさん飛んでくる。
「ギャーーーッ、バッチィ!
こんなんばっかじゃんあたしたち!」
「ご丁寧に、飛び散ってる『水』でも汚染してるみたいね」
「でも、なにも脅威じゃあないよね。
やることはなにも変わらない」
承太郎さんたちと戦っておいてよかった。
あのプレッシャーを経験したのなら、今更こんなの、そよ風だよ。
だからって油断はできない。あれは、わたしたちを殺せるパワーを持っている。
一歩間違えば、待っているのは無力の絶望!
懐に突っ込んで
地面を転げてメガビョーゲンの裏手に回り、膝裏に蹴りを一撃。
反対側からはスパークルがメガビョーゲンの右ヒジに
両足で踏みつけるみたいにして蹴りつけた。柄つきタワシを取り落とす。
「バランスが崩れた。今ラビ」
「キュア・スキャン!」
ヒーリング・ステッキをかざして、
ヒト型のメガビョーゲン…その、首のちょっと下あたり。
エレメントさんが捕まっているのがはっきりとわかった。
「光のエレメントさんラビ!」
「待っててね。すぐ助けてあげるから」
そしてフォンテーヌが降ってきた。
さっきまでグアイワルがいたあたりから飛び降りてきたみたい。
あっちもあっちでキュア・スキャンしてたらしく、
首の下をキッチリ避けて、腰のあたりに落着する寸前から。
拳打のラッシュを繰り出した。
「オラオラオラオラ…あっ」
バコ ドコ バコァ …ピョォォ~ン
決まるか、と思ったんだけど。
フォンテーヌでも失敗するんだぁ。
何発か当たったくらいで、フォンテーヌの方が飛ばされてしまった。
自分が殴った反動を、思ったように制御できなかったみたい。
まずいよ。敵のダメージが浅い。復帰してくる。
「メガァァァーーーッ!」
体勢をくずしたフォンテーヌに飛び掛かっていく。
踏みつぶす気みたい。わたしたちが黙って見てるわけないよ。
スパークルと一緒にヒーリング・ステッキをかざし、そろって光弾を飛ばした。
ちなみにこれ、名前つけたよ。プニ・ショットって。名前ないとやりにくくて。
狙いが空中だったら誰かが巻き添えになる心配もない。
「メ”ッ!?」
背後から二発のプニ・ショットを受けたメガビョーゲンは、
フォンテーヌに振り下ろそうとした
もつれるみたいに落っこち…やっちゃった!
ドゴォォ! ズゥゥゥン
一階の店に頭から突っ込んじゃってる!誰かがいたら、死んじゃうよ!
走って行って中を見る。瓦礫をいくつか押しのける。
血のにおいとかは、ない。人の声も聞こえてこない。大丈夫みたい。
周りを見回しても人の気配はなし…こっちの方は避難が終わっててよかった。
「メッガ……」
「させない!」
動いたら困るよ。殴り飛ばして元きた方向へ押し出す。
力は強くしすぎない。建物を巻き込んで崩落させたら目も当てられないもん。
でも、それが災いした。
飛び出した先を追撃しようと思ったら、すでに体勢を立て直されていた。
うかつだよ。今まで、さっきコケた以外だと、ダメージをほとんど与えてなかった!
「メガビョーーーゲェェーーン!」
「きゃあぁぁッ!?」
「グレース!?ヤバイよ!」
ガシ ギュオ! ガッ ガツッ …ドグシャア!
鷲づかみにされて、手首で放り投げられた。
地面にほぼ水平に投げられたわたしは、地面を何度か跳ねてガラスに叩きつけられた。
割れなくてよかった、とか痛みに耐えながら思ったけど、そんな場合じゃあなく。
メガビョーゲンが、今度はわたしを踏み潰しに飛んできた。
「…つッ、プニ・シールド!」
「ラビーッ!」
ギュバ!
シールド全開で防ぐ。かわすのは逆にまずい!
かわした先にあるのは、また店。ごはん屋さんが集中してるトコ。
この辺は一面ガラスに覆われてるけど、メガビョーゲンの前には紙同然だよ。
突っ込ませるわけにはいかない。守らないと人が死ぬかもしれない。
「メッ、ガァァァーーーー」
「うぐう!」
ズドドドォォォ ン!
パキ! パキィン バシ! グワシャア
全重量の、ジャンプで勢いまでつけた踏みつけが来た。
プニ・シールドで防ぎはしたけど、衝撃だけでガラスが割れた。
自覚する。プリキュアの力を、今ので一気に消耗しちゃってる。
あと一発、同じのが来たら変身が解ける。解けたら、死ぬ。潰れて死ぬ。
でも、動けるわけないよ。また同じ攻撃を繰り返すっていうのなら。
…でも、そんな覚悟は必要なかった。一人で戦ってるんじゃあないんだもん、わたし。
「こン、のーッ!」
「メガーーーッ!?」
ヒュッ ボッゴァ
二階から飛んだらしいスパークルの蹴りが、メガビョーゲンの顔面を捉えた。
わたしのこと、踏みつけようと片足を上げていたから、つんのめってたたらを踏んでる。
そこに、跳んできたフォンテーヌが正面から立った。
小指から順に、見せつけるように拳を握って。
「覚悟はいいかしら?返事は聞いていないけど」
「メッ、ガ…!?」
オラオラオラオラオラオラオラオラ…
拳打のラッシュがメガビョーゲンを刺す。今度こそ練習してきた体勢で。
スネを打たれまくって転げるメガビョーゲンへ、まめに位置を変えながら拳の嵐は止まらない。
スネから腰へ、腰から脇へ。打撃の波紋が間断なく刻まれる。
「オラァァァーーーーーッ!」
メシッ ドグシャア!
とどめの一撃は顔面だった。
どこかに吹っ飛ばすみたいなことはしない。フォンテーヌだもん。
メガビョーゲンが叩きつけられた先は地面で、もううめき声も出てない。
「今よ、グレース!」
「ありがとう!…エレメント・チャージ!」
「ヒーリング・ゲージ、上昇ラビ!」
残りの力は多いとは言えないけど、ふたりがいれば安心して出し尽くせるよ。
高まる力、高まる勇気。思いのままに。助けるために!
「プリキュアッ、ヒーリングゥゥ、フラワァァーーッ!!」
ゴッ ギュワァァ パァァァァ…ン
放った桃色の光はメガビョーゲンの喉元少し下に吸い込まれ、撃ちぬく。
そして助け出す手となって、囚われたエレメントさんを包み込んだ。
蝕む先を失ったメガビョーゲンは、もう存在を維持できない。
「ヒーリン、グッバァァ~イ…」
シュパァァァ~~~ッ フワッ……
わたしたちプリキュアは、苦痛を与えることなく彼らを『消せる』。
ううん…役目を終えたから消えてるだけ、かな。
病気っていうのは、体が戦ってる反応そのものだったはずだから。
詭弁かもしれないけど、言えることはこれだけ。
「お大事に」
「ラビ!」
『平光の友達二人確保。気絶のためモール外で見張ってます』
エレメントさんを見送ってから、すぐにメールを確認すると。
わたしたちに一斉送信で、こんな文面が来てた。
…不謹慎だけど、みんないなくてよかったよ。
エレメントさん、男子トイレの鏡にいたんだもん。そこにね、聴診器持ってね。
『お加減いかがですか?』なんて言ってるの目撃されちゃったら…
おヨメいけない。というかアブナイ人すぎる。
ちゆちゃんは言った。
私達のアタマの方がよっぽどオカゲンイカガね、これは。
…言う通りだよ。言う通りすぎる。男子トイレ抜きにしてもそうだよね。
まあ、置いておこう。その辺はこれから考えるとして。
「友達?あたしの…誰?」
すぐに電話をかけるひなたちゃん。
やっぱり考えるより行動の子だよね…今はそうしない理由もないけど。
「タッキー、今どこ?
……今、目が覚めた?んじゃ、代わってよ…
え、こっち来い?…いいけど。うん、じゃあ後で」
いぶかしげに電話を切ると、不満そうな顔をした。
「まどろっこしーなぁー。電話で代わってくれりゃあ済むっしょ?」
「ひなた。今まで何をやってたか、友達にどう説明するつもり?」
「そりゃー、プリキュアになってメガビョーゲンと戦……
言えるかー、こんなの!」
ああ、鳴滝くん正解。
すぐ電話を代わったら間違いなくヘンなコトになってたねコレ。
ちゆちゃんならともかく、ひなたちゃんはマズイ。
道中でカバーストーリーを相談しながら正門に向かう。
裏門に逃げようとしたけど、途中で怪物が裏門側に来たから諦めて正門に回ろうとした。
これで通すことになったら、正門の先に鳴滝くんが見えた。
「まずは、無事でよかった…な」
……なんかよそよそしい。また何かあったの?
単に、プリキュアとスタンド使い仲間の部外者が近くにいるから?
それに構わずか、ひなたちゃんがまずは聞いた。
「タッキーさ、なんでそんなに魚クサイの?」
「海鮮料理屋の台車使ったからだよ。まずは後ろのふたりに…」
「ひなた!無事?」
「ひなたちゃん!」
駆け寄ってきたふたりのことはわたしも知ってる。
クラスメートで、ひなたちゃんの友達…
間接的にだけど、わたしとちゆちゃんの友達でもあるってこと。
ちょっと、ぽっちゃりしてる方がりなちゃんで、
ボーイッシュっていうのかな?カッコイイ方がみなちゃん。
「りなちー、みなちー。来てたんだ…
って、魚クサッ!?どったのソレ?」
「そんなのどーでもいいから。ケガはない?」
「どこかぶつけたりしなかった?転んだりとかは?」
「…んふッ、ダイジョブだよ。
ふたりとも、やさしー。ウレシー!」
ふたりとも、臭いが結構ヒドイことになってるけど。
ひなたちゃんの無事で頭がいっぱいみたいで、心配だらけの顔で詰め寄ってる。
そんなふたりに、ひなたちゃんの頬っぺたが綻んでふやけた。
そこからは、わたしたちも交えてカバーストーリーを語っていく。
ひなたちゃんは相槌しか打たなかった。巻き込みたくないよね。
ちょっとずつ質問を入れながら聞いていたふたりだったけど、
説明が終わったのを確認してから…みなちゃんが、ひなたちゃんに聞いた。
「ひなた、あんたさ」
「なに?」
「どうして、あいつと一緒にいるの?」
今は一人、離れて正門から外を見てる鳴滝くんを、
みなちゃんはアゴで指した。
…あっ、なんかわかった。話が見えた気がするよ。
ただ、今はおかしなコトにならないように気を張っとかないと。
ちゆちゃんも身構えた雰囲気がある。顔にも態度にも出してないけど…
ひなたちゃんだけが自然体だった。
「んー、命の恩人だからだよ?」
「恩人?何があったの?」
「それなら、私からも説明できるわね。
助かったのを見ているからね…のどかも、そうよね」
「えっ、うん」
ちゆちゃんのカバー、すごい。内容はこう…
自然公園で、ひなたちゃんと鳴滝くんが怪物を相手に
必死で防戦してるところに、ちゆちゃんとわたしも通りかかってしまった。
そこに、よくわからない誰かが出てきて怪物を撃退してくれた…って。
「プリキュア…とかなんとか聞こえたけど、それ以上はわからないわ。
とにかく、私たちは助かったのよ」
「それでね、その時、ひなたちゃん気絶してたから…
わたしたちが通りかかるまで、鳴滝くんが守って戦ってくれてたみたい。
どうやって、とかはわかんないけど。そうじゃないと説明できないの」
「…うん、そーゆーコトなんだけど。アタマいっぱいでよく覚えてないや」
ちゆちゃん、上手い。
これで今後、ひなたちゃんがプリキュアって口走っても、
そんな単語を知ってるっていう保険まで出来た。
どのみちビョーゲンズの現れる場所にはプリキュアがいなくっちゃあいけないんだもん。
遅かれ早かれ、町のうわさになるのが避けられないなら…先に、便利に使っちゃうんだ。
「それって、ウワサの怪物……
ううん、わかった。信じる」
「私たちも助けてもらった、ってことだもんね。今日…」
「魚くさくなっちゃったけどね。だからこそ事実、かぁ」
何か言いかけたみなちゃんは、でもそれを途中でやめて、
信じる、と言い切ってくれた。りなちゃんは、言葉で確信を深めてくれた。
今日はこのまま帰ることにしたらしい。
ふたりはわたしたちに背を向けて、鳴滝くんの横まで歩いていって、言う。
「お礼、言っておくね。ありがと」
「…早く帰って、洗うんだな、服…かなりひどいぞ」
「そうするね。ありがとう」
目をそむけたまま言葉だけ返した鳴滝くんに構わず、ふたりはそのままバス停に向かった。
ショッピングモールは緊急で休業になった。だよねー。
巨大な怪物が出て暴れたんだもん。目撃者多数だからウソ扱いは無理。
あ、破壊の跡とかは大丈夫だよ。
ビョーゲンズによる破壊であれば、プリキュアがそのビョーゲンズを倒しさえすれば、
直後にキレイに元に戻るのを何度も見てる。クレイジー・ダイヤモンドみたいに直るの。
でも、エレメントさんが蝕まれきって『死んでしまう』とダメらしい。そんなことはさせない。
とにかく、そういうことなんで。わたしたちは、海沿いの倉庫がたくさんあるあたりに出てきた。
仕事以外で用がある人はあんまりいないから内緒話もできるだろうって、
ちゆちゃんに案内してもらったんだ。結構開けてるしね。スタンド使いの奇襲もないと思う。
「そんじゃ、改めて。ありがと、タッキー」
「ありがとうじゃあない…俺は失敗している。
つけなくていい傷をつける羽目になっちまってるんだぞ」
「……キズ?どゆこと?」
鳴滝くんは、ボソボソ気味に順を追って説明した。
まず、あのふたりはひなたちゃんを心配して後をつけていたこと。
おそらくは、バスの中でたまたま見つけた鳴滝くんを目で追っているうちに
待ち合わせているわたしたちを発見したのだろうということ。
その後、途中で気づいた鳴滝くんが確認のため近づいたところ、
ひなたちゃんに近づくな、と強く伝えられたこと。過去の行いを恐れられ嫌われているから…
そしてメガビョーゲンの出現。すでに避難していただろうふたりは、
ひなたちゃんに電話をしたけれど通じず、危険な目に遭っているかもと考えて
ショッピングモール内に助けに戻ってきてしまった。
そこに、変身のために隣のスーパー銭湯に向かおうとした鳴滝くんが通りかかり、
外にまた避難するように説得したけど、失敗。かえって奥に進む決意を固めさせてしまった…
「どうしようもなくなった俺は、ふたりの腰あたりをF・F弾で撃ち、
体内で一気に増殖…肺の空気を追い出して気絶させた。
そのまま筋肉を操って外まで歩かせようとしたけど、生きたままじゃあ難しすぎた。
それで、海鮮料理屋の台車に積んで外に出た…わかるか?」
「わかるか?って…なにが?」
「全部、俺の身から出たサビ…俺がやってきた悪いことへのツケ、だ。
不信感を持って追跡されたのも、俺の説得をまるきり無視されたのもな。
だから撃たなきゃあいけなくなった…
早速、問題になっちまってるだろ。結局」
「…アンタさ。そんなことしか言えないの?」
やっぱり、さっきわたしが察した通りだった。
ここまでこじれるものなのかな、自分を嫌いになっちゃった人って…重症だね。
でも、これだけでも進歩だよ。ちゃんと話してくれてるんだから。
F・Fがいつも一緒なおかげもあるだろうけどね。
ちょっと前のあなただったら、ウソついてごまかしたと思うな。
こうやって、ひなたちゃんが怒る隙間もくれなかったはず。
「あたしが『ありがとう』って言って!
りなちーもみなちーも『ありがとう』って言ったっしょ?
そんだけじゃん。それでいいじゃん!」
「…………そうか?かもな。
なら、今の俺の『気分』はそれで片付けるよ」
「でしょ?…ン?『気分』?」
「『気分』じゃあなくって、『問題』があるって言いたいのね?」
ちゆちゃんが引き継ぐように聞く。
そうなんだよね。感情だけの問題だったら絶対に言わないよ、この人。
だからいっつも口を開けばアワレっぽくなるんだよ…きっと。
「およそ14万円、だ」
「…。なんですって?」
「
そこで飲み食いしたり、服だって買ってる。
俺を刺したあいつから、金を巻き上げてな…その総額だよ」
「ちょっ…シャレになんない…あたしのお年玉、何年分……?」
「…それで?」
先を促す。
…まともな感覚なら、友達付き合いやめるね。
そんなひどいことをする人となんて。
でも、わたしたちにはそれができない。わかって言ってるはず。
「俺は、な?
アスリートとして結果を出し始めてからは、父さんに金をねだることもできた。
結果を出す人間には、金に糸目をつけない人だからな…
他人から金を奪う必要なんかありゃしない。
俺達は…俺は、面白いだけだったんだ。あいつや、その他の弱い何人かが…
いたぶられて弱り果てていく姿を、いつも笑って見てたんだ。
今日、ここに来て思い出すことは…そんなことばっかりだったよ」
「……納得ね。私が知っていたあなたの姿よ」
「お前らがまともな人間なら、俺は化け物だ。
日の光をあびて笑いあう資格のない生き物なんだよ。しかも進んでそうなったんだ。
今後は、俺を『兵隊』…いや、『駒』として扱え。それ以外を俺は望まない」
……F・Fが口をはさむ気配がない。
必要ないって思ってるね。
ラビリンたちも、物陰から見守ってる。ラテも、じっと見上げてる。
少しして、最初に口を開いたのは、深いため息をついたちゆちゃんだった。
「はァァ~……メンドくさいわねぇー、あなた」
「『駒』にそん…」
「黙りなさい。何を言ってるのかわかってるの?
あなたは私たちに、同じところまで落ちろと言っているのよ?
かつてのあなたと…お断りだわ。誰がやるもんですか」
「うぐッ…」
「どう考えても逆よ。あなたがここまで登ってらっしゃい。
言っておくけれど待たないわ。どんどん登っていくわよ…
つらいでしょうけど、苦労しなさい。今までさんざん落ちたんだから」
「……できると、思うのか?本気で?」
「やるか、やらないか。アスリートの本気は『ただそれだけ』よ。
そうでしょう?元・全国レベルのスプリンターさん?
やってみない?それとも、意気地なしのまま腐っていたい?」
やっぱり、ちゆちゃんはすごい。
鳴滝くんの後ろめたい気配が、みんな戸惑いに変わっちゃった。
そうはいっても、どうすればいいんだ?って言いたげ。
そこに、今度はひなたちゃんが。
「…鳴滝くん、さぁ。いい?」
「う……あぁ」
「その、ヒトをイジメてたときの思い出ってさぁ…いい思い出?
思い出すと、いい気分になんの?」
聞かれた鳴滝くんは、うつむいたまま黙って。
奥歯をかみしめたみたいな顔のまま、やっと答えた。
「最低だ。どうしようもなく『汚い』…
でも、だからって何なんだ。何も変わりゃあしないだろ」
「そっか。なら…タッキーでいいじゃん。
や、正直さぁーちょっとスグに受け止めらんない、ビックリすぎて!
また後でイロイロ言い出すかもしんないけど、そん時はゴメンね」
「謝る必要、どこにあんだよ」
わたしも、やっと何か言えそう。
今のやりとりで、糸口ができたよ。
「鳴滝くん、『汚い』って言ったよね。
思い出したら、やっぱり…痛い?苦しい?」
「だからって何だって話だけどな…」
小さくうなずく鳴滝くんは、だけどわたしの望む答えをくれてる。
「なら、ね……化け物なんかじゃあないよ。
だって、あなたは痛みを感じてる。
きっと、今感じてるのは、化け物から人に戻った痛みなんだよ」
「…だからって、あいつらが俺を許すとでも?」
「許さないよ。わたしだったら絶対に許さない」
即答だよ。事情にもよるかもしれないけど…
ただ楽しいなんていう理由で、わたしからそんなお金を取り上げるのなら。
「十四万円とか、お父さんとかお母さんの財布に頼らないとどうしようもないもん。
でもね、『だからって』何もしないっていうのは違うと思う」
本当に言いたいことは、ここから。
難しいことはなんにもないの。ただ、言葉にするだけなら。
「『汚い』のなら、『きれい』にしようよ。
『大嫌い』なら、『大好き』になろうよ。
過ぎちゃった昔はどうしようもなくったって、今はできるよ。だって生きてる。
始めようよ、『大好きな自分』を。いじけてるより、よっぽどいいよ」
届いたかな、わたしの言葉。わたしもやってるんだよ?
みんなにお手当てされるわたしから、みんなをお手当てするわたしになるの。
「……厳しいな」
「厳しいよね。でも、負けないの」
「もう…今更……恥も外聞も、あるもんか…
俺に、取り繕う体裁は、ない、か」
…届いたみたい。全部届いたかはわからないけど。
少なくとも、前を向く気にはなってくれたみたい。
ブツブツつぶやいてるけど、おびえた目はどこかに行っちゃった。
「わかった。…いや、まだよくわからない…けどな。
出来ることを、まず考えてみる」
「うん。『駒』とかナシ。わたしもヤダよ」
背を向けて、バス停に向かって松葉杖を突き始める鳴滝くん。
もう帰ることにしたみたい。わたしたちもそうするしかないけどね。
「あッ、チョット待ってタッキー!
買えたのインナー付きジャケット!
オバちゃんが廃棄寸前のヤツ出してくれたんだ!
3600円!予算オーバーだけど100円は出すからさぁー」
「…マジか?
いや、3600円でいい、むしろ安い…」
ひなたちゃんが追っかけていって、わたしたちも続いた。
……まあ、平和な方だったかなぁ?今日は…
「って、ナンだよコレ。テルテルボーズ?
もちっと、なんとかならなかった?」
「なんない。だから残ってたんでしょ?
それでも一番マシなやつ…ステッカーだけなんだから大目に見てくんない?」
「うへェ……」
怪物も倒す。一般人も助ける。
どっちもやらなきゃあならないってのがプリキュアのつらいところです。
原作のアニメでも、見えないところで無数にこういう苦労があるはず。
今回の一連の話は、プリキュア的にやることを特に意識していたり。
その割にはシモだらけになっちゃいましたけど。
鳴滝魁…オリ主について。
今回の流れを最大限悪意に取れば、ハーレムを目指してる流れですね。
書きながら自分で思った。そんなつもりはない。しかしそう受け取れる。
個人の嗜好から、それだけは絶対にないとだけ言っておきます。
だいいち、こやつにンなモン抱えさせても待ってるのは破滅だけです。
急勾配の下り坂で馬を全力疾走させる以上の愚行です。
のどか達も、そのそれぞれに慈悲深い心はもちろんありますが、
スタンドとプリキュアのつながりがなかったら、
大変だね、ガンバッてねでオシマイです。フツー。
作中でも言ってる通り、付き合ってられる範囲をとうに超えてます。
運命共同体だからなんとかせざるをえない。
ご意見、ご感想、誤字脱字報告、ぜひよろしくお願いします。
あなたが大好きって誰かが思ってる。って思いたい私がいる。