プリキュアとの奇妙な冒険‐ようこそヒーリングっど♥へ!‐ 作:アンチマターマイン
想像してたよりは大人しいキングビョーゲンの本性でした。
いやマジ集合意識的なヤツを想像してたんです。
どいつもこいつも、育ちきったら結局キングビョーゲンそのものに
なってしまうんだって。食うって過程があるだけ有情。
こうなると、バテテモーダのエピソードがおそらく
かなり削られたであろうことが惜しい。
たぶん、その辺でキングビョーゲンの狙い周りの伏線を
もっと仕込んだと思うんですよ。
さて、どうなるダルイゼン。
今話は、鳴滝くんの番です。
メインキャラの出番は相当偏ってます。
文量はちょっと多め。6000字以上で安定してきたか。
次話で、おなかいっぱい大作戦は〆の見通し。
脇道からいきなり走ってきたのは、見間違いようもなく平光だ。
偶然来たようじゃあないッ、目が最初からこっちを見ている!
バカな…昨日のたったあれだけのやりとりから真相にたどりついた?あいつが?
いや、金に困っていることはすでに知られてるだろ。
今着てるこのジャケット、見つけたのは誰だよ?
そこに来て、昨日のメシガッツき…不覚以外の何モンでもなかったなアレは…
だいぶ短絡的ではあるが…答えにたどり着いても不思議じゃあない。
……ごまかそう。決定的な情報はそろっていないはずだ。
まずは話を聞いて、かわし方を考えるのはそれから…
立ち止まって考えてると、目の前にヤツが止まった。
「……おう」
「タッキー、ついてきなよ」
「どこに?」
「パスタおごったげる。
駅の近くにイイトコあるから!
…あんま安くないケド」
「そんな筋合いはないぞ、お互いに」
「ある。ツベコベ言わない」
なんだ?妙にカリカリしている…腕をつかむな!
クソ、足が動かねーと抵抗できねえ。
重心が松葉杖にあるから、せいぜいイヤがる動きくらいしか。
転げてジタバタすれば最大限ジャマできるだろうが…
そんなマネするのか?天下の往来で?
『魁、ここは従え。得しかない提案だろ!
昼飯はマトモなのが食えるんだぞ?』
「…わ、わかった。引っ張ンなよ、自分で歩く」
「ン!」
結局、F・Fの言うことに従った。
断固たる拒絶を叩きつけてでも退けるべきだったようにも思う。
俺とつながりがあること自体がマイナスなんだからな。
ここは『夢』じゃあなくって現実なんだよ。
だが、おそらく!こいつには善意しかない!
そこに罵声を投げつけようもんなら、確実に傷つく。
結局のところ、当たり障りのないように退けるしかないわけだが…
マトモなの食ってないせいか、頭が、回らん…
「どうしたってんだよ、いきなり…」
「どうした、って、コッチのセリフなんだけど!
生ゴミまでならまだワカるよ?ワカりたくないけどギリギリワカる…
でもさ、『垢』はないっしょ?」
「……ッ!?」
苦し紛れに聞いた質問の答えは、突っつかれたくない弱点のド真ん中だった。
全部ばれている。それ以外の何物でもない。どうやってかは知らないが。
…昨日の夕飯、今日の朝飯とも一応食ってる。
腹に何も入れないと、メシに遭遇したとき我を忘れる問題に直面したからな。
そこでもう、最終手段一歩手前の残飯漁りに走った。
人がいない隙を見計らってフー・ファイターズの塊をゴミ箱やゴミ袋に派遣し、
回収してきた食べられる有機物を固めに固めて栄養ブロックを作成。それを食った。
『垢』よりは断然マシな味だった。だが、悲しくなる味なのもまた事実だったな…
「なんで、生ゴミとか『垢』食ってるって考えた?」
「ちゆちーの名推理!それと聞き込み!
ゴミ箱が荒らされてるウワサと、妖怪アカナメのウワサだよ!」
なんてこった、沢泉か。あいつも先週の買い物に付き合ってる。
当然、俺に金がないこともある程度は知っていて…
そこから先の断片的な情報から、ほとんど真相にたどり着いちまったのか?
承太郎リスペクトしすぎだろ、あいつ!
で、それを裏付ける聞き込みをやってたんだな?
こうなると、花寺がいないことはありえない。すでに全員の知るところか。
「今、お前ひとり?」
「……あッ。またやっちった…」
確認程度に聞いたんだが、平光の怒気が一気に引っ込んだ。
キョロキョロ周りを見回し始める。
「…いたんだな?」
「みんないたよ、さっきまで。
カッとなっちゃって、あたしだけ来ちゃった、みたい」
「というか、なんで俺がここに来るって知ってたんだ、お前」
自分で口に出してから気が付いた。
解答は、せいぜいふたつだ。
昨日、おととい、三日前と、俺と直接会話していて、
推理の材料を渡したに違いないヤツ。
で、ここにいるのは平光…なら。
「ニャトランか。俺を監視してたな?」
「…あ、あたしが行かせたんだよ?
ニャトランのせいじゃあないしッ!」
平光のジャンパーのフードがモゾッと動く。
そこから顔を出したニャトランが、俺の肩に飛び移った。
ただのネコを装うつもりらしい。耳元でささやいてくる。
「ワリぃ…友達ヅラしたスパイだったぜ、オレ」
「いや、いいよ…ばれるよな、考えてみりゃあ。
食器もなければ料理したにおいもないんだからな…
ネコのお前には、確実にばれる」
「ガンバッてんの、伝わってんだぜ。
できればよ、おめーの気が済むまでやらしてやりたかったな」
「…………」
深く、息をついた。
なんというか、力が抜けた。
頑張る意味がなくなっちまった。氷が解けるみたいに消えた。
ドロドロの無念が湧くかと思ったが、そんなことはなかったな。
『あなたは、きっと頼るべきです』
エレメントさんの言葉が、頭の中にこだました。
今がその時だとでもいうのか?
…もういいや。俺は観念した。
「平光」
「うん?」
「みんなの所に案内してくれ。
これは、みんなで話したい」
「…そっか。うん、オッケー。
でも、ゴハン先食べよ。ツライっしょ?」
「じゃあ…なるべく早く、食って出る」
「チャンと味わえ!オゴるんだからさぁー。
食レポ期待するかんね」
そういやさっき言ってたな、あんま安くないとか。ボソッと。
パスタとも言っていた。たぶん千円前後だ。
返すべき金額だな…だがいきなり金を渡すのも角が立ちそう。
まあ、後で聞こう。本人に直接。今はただ食わせてもらう。
ただ、ひとりで突っ走ってここに来てるんだよな、こいつ。
ほぼ間違いなく、花寺と沢泉が気を揉んでるはずだが……
噂をすればと言うべきか。俺のと平光のスマホがほとんど同時に鳴り出した。
「沢泉…?」
「のどかっちだ」
通話。互いの相手に出る。
返す声もそのままそろった。ビョーゲンズだ。
現場に急行した。恐るべきことに、ウチの近所だ。
三日前、実りのエレメントさんに教えを乞うた、あの河原だ。
ここまで来ると、メガビョーゲンもばっちり見えている。
また植物か…どうやら、シダにナノビョーゲンを取り憑かせたらしいな?
花のエレメントさん…ではないだろう。まさか、『あのエレメントさん』か?
「じゃあ、タッキー。ここに下ろしてくから」
「悪い。俺もすぐに合流する。ここならすぐ変身できるはずだしな」
「うん。グレースとフォンテーヌは…もう戦ってるね。んじゃ!」
現場に急行、と簡単に言ったが。俺の足じゃあどうにもならない。
以前、DEATH13のときは足からローラーを出したが、あれは消耗が激しいんだ。
すり減るローラーに血を常に回すからな。できるだけやりたくない。
そこで、『夢』の中で何度か訓練を終えているやり方がすでにある。
まあ…単純だ。プリキュアに変身した誰かの肩に、
米俵みたいに担がれて現場入りするだけだからな。
ちなみに顔は後ろ向きな。逆だとヤバい。
商店街で変身したヒーリングっどプリキュア一行は、
数分と経たずにダッシュで到着し、俺もまた運ばれてここに来たわけだ。
さて…今回の場合、すでに周りに人がいないようだな。
となると、やることはひとつ。どこかで待っているラテの護衛だな。
当たり前だが、プリキュアがいつでも助けに入れる範囲に彼女はいる。
俺もあえてその範囲にいることで、奇襲で誘拐されるのを防げるってのもある。
変身したところでただ走るだけしかできない今の俺だが、
ラテを抱いて走って逃げるぶんにはちょっとしたもののはずだぜ。
ぶっちゃけ、ダルイゼンとか相手だと誤差みたいなもんだろうが。
その誤差でも天と地の差だろ。さっさと変身しろ俺。
下ろされたのは橋のそば。橋ゲタに沿って河原への通路があるので、そこを行く。
水深は、真ん中まで行けばそこそこ深い川だ。問題なく変身できるぜ…
服やら靴やらは、着けたまま。脱いじまっだら変身解けば変質者!
靴が完全に水につかり、やがて膝に達したあたりで松葉杖を河原に放り出す。
ちょっとばかし冷たいが、しょうがねえ。
バシャアァ…ン
立てない俺は水の中に倒れこむしかない。
あとはちょっと泳いで川の中央まで行って、完全に潜ればいい。
この川はそこそこ栄養があるからな。
2分…とは言わずとも、3分あれば変身できる計算だ。
キキィィィーーーーッ
ギャルルルルッ…
プリキュアたちが戦ってる場所は、少し遠め…
ここだと、メッガビョーゲェーン、とかいう声がちょっぴり聞こえるくらいだ。
巻き込まれる一般人の身になれば、十分に身の危険を感じる距離だがな。
橋の近くで、急ブレーキを踏んだ音がした。そうもなるよな。
引き返すなり進むなりするんだな。ここが一番危ねぇーぞ…
「よし、F・F。手順開始…」
『待て、待てよ…』
「なんだよ。変身しねーと溺れちまうぞ俺」
『できない…いや、できはするが!
クソ、厄介なことになった…』
「何を…?」
『気づけよ、マヌケ!
もうすでに聞こえてんだぞ!
お前にも!音がッ!』
「…ハァ?」
間の抜けた声で聞き返すと同時。
水に踏み入った何かに、俺の全身が水上に引っ張り上げられた。
「ンなッ、え……?」
「やめないかッ、こんな、バカなこと!!」
男だ。おっさんだ。声と手からわかりはするが。
後ろから羽交い絞めにされて、陸上に引きずられていく俺!
「いや、あのッ。俺、やんなきゃいけないことが」
「そんなことを言われてこの手を放すと思うのかい?
嫌だね……ついてきてもらうよ!」
…………あッ、わかった。アハ体験!
入水自殺と思われてるよ俺!
というか、それ以外の何モンでもないわ。冷静に考えたら!
言い逃れする?どーやって?
「ちょっと着衣水泳に挑戦しただけじゃあないですか。ヤダなぁー」
「今ここで、きみを信用することは不可能だよ。来なさい」
ですよねー。俺があんただってそう言うだろうよ!
なんだよ着衣水泳って。バカじゃねえの俺?
こうなったら…やむをえん、最終手段だ。
当て身をくらわせて気絶してもらおう。
来た…陸上に。足がつくようになった今……
ガシ グイッッ
姿勢を変えられた。松葉杖を拾っていくためか?
それはわからないが、変わった後の姿勢が…俺にとっての致命傷だった。
全身の筋肉と血管がピンピンに張ったワイヤーと化し、
空気が一斉に周囲から消えた。こうなっちまったら蝋人形と大差ない。
なんだよこれ。最低だ!
クハァ~ッ……
ゼヒッ、ゼヒッ……ヒィィッ グッ
「なッ……どうしたんだい、いきなり!?
痙攣、呼吸がッ?救急車!…ここで呼ぶのはまずいな。
いったんウチに連れて帰るしかないか…急ごう」
そこから先。呼吸が収まるまではロクな思考ができなかった。
ペギタン式を必死に思い浮かべて息を整える以外に出来ることなどない。
それでも、だ。驚くべきことに、今回の俺は十分足らずで復帰できた。
思えば一回、無理やりに立ち上がったこともあったな。
救急車を呼ばれるギリギリのところで復活し、事情を説明できた。
「すると…なんだい?
きみは、肩を貸されると…過呼吸になる体質だっていうのかい?
足が動かないのに、しかも?」
「はい。何がどうあれ、事実としてそうなんです…
ご迷惑をおかけしました」
冷静になって周りを見回すと、嫌な予感しかしなかった。
俺を助けに入ってきたメガネのインテリっぽいオッサンの仕草と、
その奥さんだろうミディアムロングの女性のやわらかな振る舞い。
さっきまで、二人がかりで濡れネズミの俺の水気をふき取っていた…
両方ともに、既視感がある。
それどころか、顔の作りもなんだが…あと、髪質?
だが、今それは重要じゃあない。考えるべきは、さっさとここを立ち去る手段。
ふき取られるのに、つい身を任せてしまったけど…あいつらは今も戦ってるだろ。
『魁。言っとくけど、あっちはもう決着ついてるから。
あんたがダメになってる間にスマホで連絡とったからね』
「マジか……クソ」
『そーいうことだから、もう…世話になっとけ。
たぶん、悪いようにはならない』
落ち着けるわけないだろ。こちとら自殺を止められた立場になっちまってんだぞ?
最悪、実家に通報案件だ。面倒ごとにしかならねえ。
「あなた…うちの子を知ってる?
花寺のどか、っていうんだけど」
「…!!」
予感があっただけに、かえってポーカーフェイスもできなかった。
納得しかないんだよ。その顔、その仕草。その雰囲気。
沢泉の母さんと対面したときも、未来の沢泉だろうなーとか思ったっけ。
でも、平光の兄貴はかなり違ったんだよなぁ、平光と…
ちなみに俺は母親似だ。誰も喜ばねーけど。
「やっぱりか…そんな気はしてたんだ。
きみのような子は、そう何人もいないだろうしね」
どんな口を聞こうが、墓穴を掘る気しかしない。
口ごもるというより、沈黙し続けるだけになってる。
そんな俺に対し、花寺父の目つきは鋭くなった。
「そうなると、ぼくはますます…きみを許せないな。
のどかは…きみを助けたはずだ。下水道に落っこちたきみをだ。
なんだってそれを台無しにする?」
「わたしね…驚いたわ。それに、恐ろしかったわ。
帰ってきて、イヤなにおいをさせたままののどかに事情を説明されたときよ。
のどかは、ね…病弱だったの。いつ死んでもおかしくなかったくらいに。
そんなのどかが、下水道に踏み込んでいった……
もし、そこで具合がまた悪くなったら…そこで死んだかもしれなかったのよ?」
カバーストーリーだな、うん。
だが、事実は当たらずも遠からずなんだ。
なんの弁解も、俺にはできやしない。
ただ申し訳なく、視線を伏せるだけだった。
花寺にもだ。この様子だと、説明をするときにどんな反応に遭ったか。
沢泉も同じことだ。平光は、俺も一部見ているがな。
椅子から立つにもワンステップいるんで、両膝に手をついて頭を下げた。
土下座男だな、俺は。
「ごめんなさい」
「…その一言で、済ませられると思うのかい?」
「それでも、差し出せるのは俺の首だけです」
「それは一人前の男のセリフだよ」
首以前に、言葉が一撃で切り捨てられた。
どうすりゃあいいんだよ。
出まかせやゴマカシでここを抜け出すことは、出来そうにない。
「自分から捨てようとした首を、人に差し出そうとなんかするんじゃあない…
そんなんじゃあ、もっと許せないだろう?」
か、考えろ…花寺と、この人たちを侮辱するような考えを退けて、
納得してもらえる答えを示さなくっちゃあならない…!
侮辱するような考えの逆を言うか?
…馬鹿が。それこそが安易な侮辱だろ!
俺が許されるために差し出すもの。それがさっぱりわからない。
『もうしません』で済むはずがないんだよ。そこに納得できる根拠がいる!
解なし。解なし。解なし…首が、右往左往するだけだ。
「…まいったな。責めてるわけじゃあないんだが。
でも…そうだな。
ぼくの望む答えを答えろ、と受け取ってしまったんだな。きみは」
「……。はい」
「そうか。悪かった…じゃあ、質問を変えるよ。
きみは、何から逃れたいんだ?命を捨ててまで」
あああ…俺にはわからん。
少なくとも今回は自殺じゃあない。
それだけに、何を言っても出まかせになっちまうぞ。
ダメじゃねーか、何をどう考えても…助けてくれ、F・Fッ!
F・Fは何も言っちゃあくれなかった。
「考えないでいいのよ。思ったままを言ってみて」
思ったままァ?
『何を言っても出まかせになっちまう』!
こんなクソナメた回答ができるかァァァ~~~~~ッッッ
「うッ、ううッ?…うぅぅ~~~~ッ…!?」
なんの役にも立たないうめき声だけが漏れ出しちまった。
止めた。だが遅い。ふたりとも怪訝な顔をしてんだぞ?
「ぼくらは、きみが何を言っても責めないよ。約束する。
だから、言ってみなさい」
俺の持つ答えは、なし。
なしは、自殺しようとした事実に矛盾する。ありえない。
答えがなしは、答えられない!答えないは、答えがない!
出まかせ、なし。ゴマカシ、なし。
…考えろ。別の側面からだ。
スタンドだとかプリキュアの事情に、この人たちは巻き込めない。
たぶん、花寺の命そのものっていうくらいに大切なはずだぞ。
何を言っても出まかせなら、せめてそこの所を守るウソを作れ!
今の俺が、死ぬに足る理由は、なんだ?
「…………もう、お金がありません」
「…。なんだって?」
思いつくものは、これしかなかった。
前にも書いたと思いますが、短期的なプロットは作ってます。
しかし、またしても書いてるうちにプロットとズレていった。
もっとギクシャクするはずだったんです。
もう、いらないんじゃあないかとか思ったりもしますが、
完全に思いつきだけで書き殴っていくのはもっとキツイ。
ご意見、ご感想、誤字脱字報告、ぜひよろしくお願いします。
何かを得たものが真の勝者なのか?でも何か得たいのもまた事実