プリキュアとの奇妙な冒険‐ようこそヒーリングっど♥へ!‐   作:アンチマターマイン

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放送中の原作…
ダルイゼン、一度でも善性を示していれば…
のどかは十分手を差し伸べたと思います。
期限区切れば良し、って言ってるも同じでしたし!
しかし今回の話、当作品を書いてる私にグッサリ刺さった。
このオリ主、宿主から養分吸い上げてる寄生虫と何が違うのよ、って。
神(作者)の意思でのどか達にブチ込まれた巨大ポリープじゃねーか、と。
ダルイゼンが始末されたんなら、こいつも始末されるべきでは?と…
この作品の行く道は真実か?それとも上っ面だけの邪悪か…?
作者は前者であろうとしていますが、実際どうなのやら。

衣料品とかで、キュアサマーの姿を見るようになってきました。
否応なく、バトンタッチを実感させられますね。

今話の語り部はのどかっち。
文量はかなり多い。8000字以上。


決め手のひと味!おなかいっぱい大作戦‐その6

「今ラビ、グレース!」

「せぇーのッ、ドラララララララララララ!」

 

土手を背に追い込んだシダのメガビョーゲンを前に、

わたしは両の足を踏ん張り、気合と拳を繰り出した。

最近、やっとまともに出来るようになった拳打のラッシュ!

掛け声は仗助さんからいただきました。ちゆちゃんと同じで、願掛け。

どうせ殴るのなら『なおす』ためがいい。

あの誰よりもやさしい力は、わたしには逆立ちしてもマネできないけれど、

せめて心はマネしたいんだ。この手は『お手当て』のために使うの!

 

「ドラァァァーーーッッッ!!」

 

ボグショア

 

「メッガ、ビョッ!??」

 

ド ズオォォーーーン

 

締めの一撃、手ごたえは十分だよ!

土手に体の半分が埋もれたメガビョーゲンの頭上に、

フォンテーヌが飛んだ。すでにエネルギーをため切っている!

 

「プリキュア…ヒーリング、ストリィィーーームッ!」

 

シュゴバ ボッゴォア

 

狙いすました水流の光線がド真ん中を撃ち貫いていき、

助け出す手に変わったそれは、実りのエレメントさんを解放していた。

メガビョーゲンは、それでおしまい。光に変わって消えていく。

 

パァァァーーーーーッ…

 

「ヒーリン…グッバァァ~~イ……」

「お大事に」

「ペェ!」

 

フォンテーヌが着地と同時につぶやくと、もうそこには何もなかった。

少し離れて高みの見物を決め込んでいたシンドイーネが地団駄を踏んでる。

 

「なによ、なによなによ!

 そのバカげた強さは何?ドコでズルしてんのよ!

 キィィーーーーーーッ」

 

言うだけ言って瞬間移動で消えた。

もしかしたら、侮れないかもしれないなあ。

確かにわたしたちは、『ドコか』で『ズル』をして強くなってるんだし。

普通の人間よりも6時間以上は余分に使えてるんだよね、一日を。

変身を解いたちゆちゃんが駆け寄ってきた。わたしも解く。

少し遅れて、スパークルも解いた。

 

「やったわね。実戦に通用したわ、のどか」

「うん。ガンバッてよかった」

 

仗助さんのロボットと戦ったのが、上達のきっかけかなぁ。

クレイジー・ダイヤモンドと向かい合って、拳を合わせて理解できた気がする。

承太郎さん、思い出を使わせてくれて、ありがとうございます!

 

「……んむー、あたしイイトコなかったかも」

 

でも、ひなたちゃんはちょっとヘコんでる。

今は、主に太陽(サン)を使って、狙いすました一発で撃つのを練習してて…

止まった目標にならなんとか当たるようにはなってきたけど、

今回は4発撃って、全部が外れちゃってる。動かれると途端に苦しいみたい。

威力はだいぶ落ちるけど、プニ・ショットの方が使いやすいかも。

エレメントさんに当たったらマズイって意味では、強い威力も欠点だしね。

 

「千里の道も一歩からよ、ひなた。

 もともと乱射して数でカバーするスタンドじゃない。

 狙うのが難しくって当然だわ…地道に、やっていきましょう?」

「それにね、強くて怖いレーザーが空から飛んでくるの、

 メガビョーゲンはスッゴク動きにくくなるみたいだよ?

 おどかすだけでも意味があったと思うな」

「アッハハー、結局、途中からフツーの殴り合いになっちったケドね…

 ありがと、ちゆちー、のどかっち」

 

言ってる通り、4発撃ったあたりでメガビョーゲンに狙われちゃって、

スパークルはそこから防戦一方になっちゃったんだけど。

そこにわたしとちゆちゃんが後ろと脇から割り込んでいけたんだよね。

反省会は、今はこの辺にして。

駆け寄ってきたラテと合流してから、ラビリンに聴診器を手渡される。

みんなと見つめる泥と草むらの中には、さっきの実りのエレメントさん。

 

「エレメントさん、お加減いかがですか?」

「ありがとうございます、プリキュアさん。ワタシは大丈夫です。

 お礼に、これを持っていってください」

 

そう言って、わたしの手の中に納まったのは一本のボトル。

ヒーリング・ステッキの中央にはめ込まれてるやつと同じで、色違い。

 

「み、実りのボトルラビ!」

「うわ、カワイー!キレー!ナニコレ!スゴイモンなの?」

「おー、スゲーぜ、ひなた!

 めったに見られるモンじゃあねぇーかんな」

「ヒーリング・ステッキの真ん中についてるアレと同じモノだペェ。

 グレースには花のボトル。フォンテーヌには水のボトル。

 スパークルには光のボトルがついてるんだペェ」

「ということは…プリキュアの力の源みたいなものかしら?

 いいの?そんな貴重なものを…」

 

詳しく聞くと、ちょっと恐縮しちゃうね。

もしかしたら、これがあればプリキュアに変身できるのかな?

とか思うと、気楽に受け取れるものじゃあないように思うけど…

実りのエレメントさんは、それでもウンウンとうなずいてくれた。

 

「いいんです。

 おなかがすいてもガンバッてる人間さんとヒーリングアニマルさんがいましたから」

「…えっ?わたしたち以外に……?」

「人間の仕組みの中でご飯を食べられない人間さんだそうです。

 でも、人間の決まりを破りたくないって言ってました。

 お友達の『幸せ』を脅かしたくないって……

 だから、わたしたちから土地の恵みを取り上げようとしていましたけど。

 やめてください、って言ったら、助けを求められたんです」

「…………」

「つらいのに、誰かのためにガンバッて、正しいことをしようとしてる人間さんを見たら…

 ワタシも、誰かの力になりたいって思ったんです。だから、受け取ってください」

 

ひとりしかいない。ひとりしかいないよ明らかに。

ううん、正確にはふたりだよねコレ!

ちゆちゃんが、ストレートに聞きに行った。

 

「もしかして、『垢』とか『生ゴミ』を食べる方法を教えたりしなかったかしら?」

「…はい。そういうものにはエレメントさんが居つきにくいですから。

 そこを狙えばエレメントさんに迷惑はかからないって、教えました」

 

……ハイッ、確定!

 

「なるほどよぉー。つながったぜ、ゼンブッ!」

「生ゴミ以外にも食べるアテあったみたいラビ」

「土地の恵み…フー・ファイターズで栄養分を搾り取ろうとしたペェ?

 エレメントさんも止めるはずだペェ」

 

みんなでお互いに顔を見合わせあうのを繰り返してから、ちょっとして。

ちゆちゃんが、軽く目を細めておだやかに微笑んだ。

 

「聞かなかったことにしましょう?これは…」

「え?ちゆちー、どして?」

「あいつがエレメントさんに相談したのは、内緒話よ。

 私達の耳に入っちゃうなんて、思ってもみないから打ち明けたんだと思うのよ。

 秘密にしたかったことをさんざん暴いて、さらに内緒の相談まで知られちゃったら…

 私があいつなら、きっとイヤだわ。裏切られたみたいに思うかもしれないわ」

 

あっ、さっきわたしがちゆちゃんを止めた理由と似てる…かな?

ひなたちゃんが走り出したのに、ちゆちゃんも続こうとしたんだよね。

わたしも走ろうと思ったけど、思い直して止めた。

ニャトランの話を思い出したからね。鳴滝くんが誰のために頑張ってるのか、って。

そこに、わたしたち全員が止めに入ったら…こう思うかも、って思ったの。

『努力を無にされた』って。

そう思ったら、わたしは止まらなきゃあいけなかった。

そして、ただ止まるだけじゃあ『口だけ』だから…ちゆちゃんを止めた。

ひなたちゃんは…鳴滝くんが受け入れてくれるならそれでいいし、

反発されたら、わたしが味方に立ってお手当てする。そう考えたの。

 

「ン……わかった。ナイショにしとこ。

 …あ、そういえば。何やってんのタッキー?

 スグにコッチ来れんじゃあなかったっけ?」

 

納得してくれたひなたちゃんが、思い出してスマホを取り出した。

言われてみれば…わたしも取り出す。ちゆちゃんも。

着信あり…メールだ……『件名:FF』!?

そこへさらに、たった今来た。新着。古いほうから順に読む…

 

『入水自殺と思われて拘束された。

 肩を貸されて発作中。車の中にいる』

『持ち物から花寺という単語を確認。

 花寺の父の可能性大』

『家に着。表札が花寺。花寺の父ほぼ確定。まもなく屋内』

 

「おお、もう…」

 

ちゆちゃんが、額に手を当ててうなだれた。

何があったのか、手にとるようにわかったよ……

お父さん、まさかそんなトコに通りかかるなんて。

松葉杖ついてる人が川の中に入っていく姿なんか見たら…

そりゃあ止めるよ。お父さんだったら!

 

「タッキーってさぁ…もしかして、ダメンズ?」

「ダメなんかじゃあないよ。

 ダメなんかじゃあない、けど……残念感スゴイ」

「気づかなかった私達も悪いわよ。

 ヒトが通りがかった時点でアウトじゃない、川で変身って!」

 

考えるのは後にすることにした。

自殺未遂でつかまった鳴滝くんが、あまりにもピンチすぎるから。

エレメントさんへのお礼もそこそこに、わたしたちみんなウチまで突っ走った。

 

『こっちは片付きました。今すぐ向かいます』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

みんなしてウチに帰り着いて、最初に顔を合わせたのは鳴滝くんだった。

玄関をカギで開けて入ったら、廊下に飛び出してきたのに鉢合わせた。

口をヘの字に曲げて、床にポトポトこぼしているのは…涙?

 

「ど、どうしたの?なんで泣いてるの?」

「…そ、そこどいてくれ。トイレ行きたい……その、アレだよ。

 あんまり出来立てで、アッタカすぎちまったもんだから、舌を…

 今のなし、今のなし!舌なんだが、そう、舌噛んだ!

 イテェーからトイレ行く、どいてくれ!」

 

わたしたちを押しのけるみたいに間をすり抜けてトイレに入り、

ガチャッとカギをかけられた。まさか追えないよ。

松葉杖とは思えない速さで引っ込んじゃった。

 

「なに?支離滅裂よ」

「ナンデ舌噛んでトイレ行くの?」

 

困惑してると、奥からお父さんが来た。

 

「ああ、おかえり。みんなも一緒かい?

 いや、スゴク立て込んでるんだけど…彼のことは、知ってるんだね?」

 

みんなうなずいて、食卓に通される。

そこにはお母さんがいて、食べかけのオムライスがあった。

一口か、二口くらいしか手をつけられてないみたい。

 

「何があったの?お母さん…」

「あっ、のどか…色々あったんだけどね。

 お腹が空いてるみたいだったし、彼のぶんもお昼を作ったのよ。

 せっかくだから、一緒に食べようと思って…

 でも、食べ始めたら、いきなり泣き出しちゃって」

 

また、みんなで顔を見合わせる。

今まであったこと、そして今を照らし合わせて考えると…

 

「そっか。オイシかったんだね、タッキー」

「無理もないわね。泣いても仕方ないわ」

 

ひなたちゃんも、ちゆちゃんも。わたしと同じ結論みたい。

最近のヒドイ食生活から、おいしくてあったかいご飯の落差はもちろんあるけど。

誰かが作ってくれるご飯は、鳴滝くんにとってどれだけぶりなのかなって。

ううん、そもそも、鳴滝くんの家は…ひどい家族だったんだから。

最悪、一緒にご飯を食べることもなかったのかも……

 

「……知っているんだね?彼の事情を」

「ええ…全てじゃあないと思いますけれど」

 

お父さんの質問に、またみんなうなずく。

どこまで答えていいかは、用心しなきゃあいけないね。

 

「難しい話は後にしましょうよ。

 みんなもお腹空いてるでしょう?

 作るわ、今すぐ!チョット待っててね」

「あ、いえ!そこまで」

「ちゆちゃん、一緒に食べよう?ひなたちゃんも」

「ウン、ゴチになります!」

 

いつも三人で食事してるから、新しく席を持ってこないといけない。

ひなたちゃんは席の移動その他を手伝ってくれて、

ちゆちゃんはお母さんの周りを手伝ってくれた。

だけどね。途中でちょっとトイレに近寄ってみたの。あんまり長いから。

するとね…すすり泣きが聞こえてきてた。

わたしとひなたちゃんとで、どうしようか迷ってたら…

後ろから来たお父さんに、そっと止められた。

 

「落ち着くまで、待ってあげよう。

 恥をかかせるもんじゃあない…」

 

まあ…結果として、お父さんの気遣いはある意味無駄だった。

それからだいたい二十分して、やっと落ち着いて出てきた鳴滝くんに、

みんなで声をかけたんだよね。全然おかしくもない言葉を…

 

「おかえり、タッキー」

「あなたの分、温めなおしてあるわよ。

 電子レンジだけどね…それは許してほしいわね」

「食べよ?お腹すいちゃった」

「アン!アン!」

 

ラテも、足元にまとわりついて迎えにいったところで。

鳴滝くん、ピタリと止まって、うつむいて…

また、ポタポタと、落ちるしずくが止まらなくなっちゃったんだ。

 

「えぇぇーーーッなんで泣くの!

 あたし、またなんかやっちった?」

「もう、話が進まないじゃないの…いいから、こっち来なさい」

 

ちゆちゃんとひなたちゃんに引っ張られながら、

しゃくりあげるみたいな声で彼が言うには。

 

「悪い……なんか、もう…………腹いっぱいだ」

 

……そっか。そうだよね。

『おかえり』なんて言ってくれる人、いなかったよね。

わたしには、当たり前すぎるから…一瞬、わからなかったよ。

今は、その気持ち…味わってほしいな。好きなだけ。

 

「うん。ゆっくり食べよう?

 一気に食べたら、お腹壊しちゃうもんね」

 

そこから、無言で食べるのを見守る感じになっちゃった。

みんな、フツーにおしゃべりしながら食べてるんだけど、

そこに反応したり、参加したりする余裕がまだない感じ。

『夢』の中でなら、一緒にお菓子とか食べてるんだけどね。

…あ、そっか。『現実』だね、ここ。

 

「ごちそうさまでした」

「お粗末さま。お口に合ったかしら?」

「…これ以上のものは、ありませんッ……」

「そう。うれしいわ」

 

食べ終わったら、落ち着いた。本題に戻るときが来たってこと。

お父さんから改めて聞かされる。鳴滝くんが何をしようとしていたか。

…フツーの人には、自殺以外のなんでもないよね。当然。

わたしたちは、なるべく落ち着いて話を聞くしかできない。

で、お父さんの話が終わったら、今度は鳴滝くんの番で…

 

「……ごめんなさい。ズレた話をしますけど…聞いてください」

 

そう前置きした彼は、堰を切ったみたいに話しだした。

 

「俺は…あいつから…俺を刺したヤツから、14万円を巻き上げた。

 どうしようもない金額を次々ふっかけて、親から金を盗むように仕向けました。

 あいつの心身を踏みにじって、楽しんでたんだと思ってましたけど…

 それだけじゃあなかった。今にして思えば……

 俺は、きっと壊したかったんだ。壊したかったのは、家。…家庭。

 陸上部に入る子供に、上等なシューズを選んでくれる

 父さんや母さんがいる『家庭』

 それを、たまたま見ちまったばっかりに、俺は…

 そのシューズを取り上げて、焼いたんです。目の前で」

 

いったん区切った言葉は、まだ続く。

歯止めが効かずに、しゃべらずにはいられないみたいに感じる。

わたしたちは、じっと聞いてる。お父さんも、お母さんも。

 

「焼け焦げて燃え尽きていくシューズを見て、俺は…

 胸が、胸がすく思いだったんだ!

 世の中の不正を正してやってる気分だった!

 与えられるに値しないものを、俺が奪ってやるんだって本気で思った!」

 

鳴滝くんは、まだ片付けられていない、オムライスのお皿を両手でつかんだ。

 

「花寺、の母さん」

「はい」

「俺が、焼いたのは…

 俺が、壊そうとしたのは……

 『これ』だったんですね」

「…そうね」

 

今度はうつむかなかった。視線だけが、下に行った。

オムライスのお皿に、自分の顔でも映ってるみたいに。

その先にいる誰かを見ているみたいに。

 

「…………ごめんなさい」

「鳴滝くん?」

「困るよな。みんなに言っても……悪い」

 

お父さんが、彼の背中にポンと手を置いてあげた。

 

「今のきみなら、過ちを正せるはずだよ。

 きみは『これ』を、誰かに向けてあげられる人になるんだ」

「それが、できることなら」

「出来る、出来ないじゃあない。やりたいか、やりたくないかだよ。

 きみは、どっちだい?」

「……やりたいです。やる方が、ずっといい」

「よく言ったね。じゃあ、邪魔な問題を片付けようか。

 死んでる場合じゃあないだろう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこからは、一気に話が進んでいったなぁ。

当然、スタンドだとかプリキュアの話はできないから、

鳴滝くんはお金の無さを自殺の原因に位置付けて話をしてた。

わたしたちに命を助けられはしたけど、金銭面の迷惑だけは

かけるわけにはいかず、だけど不仲な実家も頼れない。

残飯をあさって食いつないだが、それもすぐに町のウワサになってて、

バレるのも時間の問題…もう死ぬしかないと判断した、って。

それを聞いたお父さんは、まず下水道に落ちた日に払った病院の

診察料について確認。それすらも実家に請求できてないのを知ると、

それを責めることなく、お母さん以外のみんなを連れてひなたちゃんの家に向かった。

ちょうど、ひなたちゃんのお父さんがいたのは運がよかったかも。

髪の毛もヒゲも、スゴく濃いヒトだった。

お父さんはさっそく事情を明かすと、ひなたちゃんのお兄さんが

鳴滝くんの支払いを立て替えたことにできないかって相談に入った。

そうすれば、立て替えた金額をいつまでも払ってくれないってことで、

鳴滝くんの実家に直接請求する名分ができるからだって。

そして、そこに鳴滝くんの苦しい生活事情をとがめる一文を含める。

 

『一か月の生活費がこんな金額じゃあ、何度同じことを繰り返されるか

 わかったものじゃあない。最低でもこれだけは出してあげろ』

 

…ってね。

もし今回無視されたら、来月にもっと厳しい調子の手紙を送ろう。

そう、お父さんは提案して。

 

「よろしい。私も一肌脱ぎましょう」

 

ひなたちゃんのお父さんは、そのまま賛成してくれた。

自殺未遂の事件を聞かされたときから、邪険にするつもりはなかったみたい。

鳴滝くん自身には、いい感情を持ってないみたいだけど…

今を乗り切るための間に合わせってことで、一万円を貸してくれたとき、

 

「うちの子に触ったら地獄に叩き落とすのでそのつもりで」

 

って言って鳴滝くんを怖がらせて、すぐひなたちゃんに怒られてた。

ともかく、方針は決まって、その日のうちに手紙がポストに入れられた。

手紙の送り主は、ひなたちゃんのお父さん。

わたしたちはほとんど何もできなかったけど…

ほぼF・Fと相談した通りのやり方になったのは、大人のスゴさだよね。

…で、自殺未遂なんてことをしちゃった鳴滝くんを、少なくとも今日一日は返せない。

返してすぐに自殺なんてされたらたまったものじゃあない。

ってことで、ちょうど空き部屋になってるところを使って

泊まらせることにしたんだけど、鳴滝くん本人がものすごい勢いで反発した。

 

「言わせてもらいますッ、あんたは正気じゃあないぞッ!!

 俺がやってきた悪いことには、

 『そのテのヤツ』だって含まれてるって言っただろ!?」

「そうか、そうだったなぁ……

 じゃあ、今夜はぼくも、きみの部屋に泊まるよ。監視だ」

「なんでそうなるんだ?

 俺を家に帰せばそれで済む話だってのに!」

「ぼくの安眠のためだよ。こう見えて気が小さいんでね…

 あ、そうか。じゃあお風呂も監視しないとな。ついていくよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お疲れ様』

『花寺……つ、疲れた』

 

今は夜の9時。鳴滝くんもわたしも、お風呂に入った後。

部屋ごしに、スタンド会話でやりとりしてる。

結局、鳴滝くんはお父さんをどうにもできなかった。

今も、同じ部屋でテレビとか見てるはず。

 

『マヌケなミスひとつで…なんでこうなった?』

『よかったよ。死んだりするより、ずっといいよ。

 鳴滝くんのお金の問題も解決できたし、ね?』

『そう願いたいな…ああ、布団、干しっぱなしだ……』

『それで帰りたかったの?』

『まあ理由のひとつではあるな…』

 

声が途切れたんで、手元のスマホに集中する。

こっちもこっちで、ちゆちゃん、ひなたちゃんから

メッセージが何度も来てる。返信、返信…と。

 

『花寺』

『なぁに?』

『ごめんなさい』

 

また声が聞こえてきたと思ったら、しおらしい態度だった。

でも、萎縮してるわけじゃあなくって。

むしろ伸び伸びした感じがあるかな…?

 

『…いきなり、どうしたの?』

『スタンドについて明かしたあの日な。

 真面目に心配してくれてたお前を、俺は平気な顔でだましたよな?

 思えば、ちゃんと謝っていなかった……

 だから、お前が怖かったんだと思う。

 こんな形で、礼儀がなっちゃあいないけど…ごめんなさい』

 

今日は、ごめんなさいの日だったみたいだね。

運がいいのか、悪いのか、わかんないけど。

ちょっとしたきっかけで、たくさんの荷物を下ろすことができたんだ。

わざわざ、それを積みなおすことも…ないよね。

 

『うん…いいよ。わたし、あなたを許したよ。

 それと……』

 

「ラビリン?」

「ラビ?」

「鳴滝くんが謝ってるよ。

 ほら、ひなたちゃんが大ケガしたとき…

 あの日、だましてごめんなさい、って」

「……もう、二度とするんじゃあないラビ。

 そう言っといてほしいラビ」

 

『もう二度とするな、って。ラビリンが』

『……おう、わかった』

『おやすみ』

『…おやすみ。じゃあ、夢で』

 

そのまましばらく、夜が更ける。

やがて、わたしは窓の前に立つ。

月を見上げて、DEATH13を展開した。

長い今日が終わって、いつもの『夢』が始まる……

一緒にお手当てしよう。みんなを守るの。

 




弱ってるところに寄ってたかって堤防をブッ壊しにかかられた図。
決め手のひと味が効きすぎた。
鳴滝くんが宿泊してる部屋は、もちろん後のあすみんの部屋です。
一泊だけです。次回には引き払ってます。

次回はスタンドバトルです。
ビョーゲンズは関与しません。
その前に、テコ入れ的な回が一回あるかも。

ご意見、ご感想、誤字脱字報告、ぜひよろしくお願いします。
できれば、当作品に何を期待なさっているのか知りたい…!

2021/2/14
予定変更。ビョーゲンズが関与する話に変更です…
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