プリキュアとの奇妙な冒険‐ようこそヒーリングっど♥へ!‐   作:アンチマターマイン

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すみません、遅刻です。
退院後、それなりに時間があったのに…

ヒーリングっど♥プリキュアのオフィシャルコンプリートブック買いました。
人物関係の資料だったら、これで問題なさそう…しかしやっぱり地図はない。
原作4話のひなたの友達ふたりの名前を、これ準拠に修正します。

今回の語り部は、鳴滝くん。
文字数は6500字弱。量的には合格だけど…



絶対にバレるな!イップスの後ろ側で‐その1

土曜日の夜の『夢』。カフェ・ドゥ・マゴ。

皆で顔を合わせるなり、沢泉は俺に詰め寄った。

いわく、ダメージからちゃんと回復できたのか。元通りに生活できるのか。

今日は『夢』についてきていないF・Fが言うには『進捗良好』。

全身包帯マミレのミイラ男になってるけどな、俺…

そこは納得してくれた沢泉は、さらに質問を重ねた。

だとしても、月曜日からどうするつもりなの?…と。

 

「制服か?黒コゲの?

 なんとかしてくれたぞ…ニャトランが」

「……どういうこと?」

 

沢泉は一瞬、困った顔で首をかしげると…

目つきが鋭くなって、しかしまた二秒後には目尻が下がってうつむいた。

花寺も、ショボくれた顔で小さく首を振っている。

 

「……。いえ……責められないわね。

 良くはないわ。でも、私はプリキュアだからそうならずに済んだだけ…」

「いや。間違っちゃあいない。間違っちゃあいないぞ。お前の予想。

 ただ、ちゃんと金は払った。ドロボウじゃあない…ネコババだけど」

 

順を追って説明しよう……あの後、チリ・ペッパーのDISCをみんなで確認したんだ。

誰なら適合するのか、ってな…

これだけの強力なスタンドを遊ばせておく手はないんだよ。

当然、俺も試した。花寺も。平光も。全員ダメ。

そこでさらに範囲を広げた。ヒーリングアニマルのみんなに。

結果、唯一適合したのがニャトランだったというわけで。

あいつは帰宅後すぐに使い方の確認に入り、一晩でほとんどが可能になった。

何がって?本来の持ち主…音石明が出来ていたこと、あらかただよ。

物質を電気に変えて電線に侵入、移動した先で元に戻すとかな。

被検体はポテチ。平光家からウチへの転送実験だ。

もちろん、実験後はスタッフがおいしくいただいた。

さらに、生き物を生きたまま同じように送りつけることもやった。

…被験体はゴキブリ。承太郎辞典によるとチャバネゴキブリな。

殺そうかと思ったけど巻き込まれた立場も大概忍びないんで外に投げた。

で、このあたりで次の平光の行動が読めたんで、チリ・ペッパー(ニャトラン)に即座に警告した。

なんでスタンド名にルビ振ってんのかって?

ニャトランは来られなかったからだよ。『本体は電気化移動できない』。

 

「…あ、わかった」

「もう少し考えて動きなさいね。ひなた」

「……。ハーイ」

 

そう…すなわち。絶対ココに連れてくんじゃあねぇーぞ、だ。

人ンチのコンセントからコンニチワとか、やるだけで信用なくすぞ、と。

言ってよかった。ヤツはマジにその気だった。考えてくれよ一瞬でイイから!

ま、言えばちゃんと聞いてくれるし考えもするヤツなんで、

花寺家とか沢泉家へのアポなし突撃は、こちらが言わずとも自分で気づいてやめた。

とはいえ、出来るってことだけは確認必須だったからな。俺が志願した。

チリ・ペッパーで電線に引きずり込んでもらって、公園にある電源のひとつの前で実体化。

俺にはなんの異常も起こらず、また自宅に戻してもらってもそれは同じだった。

 

「本当に、安全だっていうなら……かなり有利になるわね。私たち」

 

そう。これなら、プリキュアの行動半径は一気に日本全国に広がることになる。

もし海底ケーブルだとかを経由できるとすれば、海外すらも視野に入ってくる。

だから確認必須だったのだ。虹村形兆のようにローストされて死ぬ危険も考えられたが、

この実験と、その後に続く練習によって懸念もキレイに消え去った。

 

「練習?」

「おーよ、ちゆ。コッからだぜ。

 制服をどーにかしてやったってのはよぉー。

 ……マジキツかった。もーやりたかねー」

「や…ヤツれてるわね?大丈夫?」

 

そのまま俺の家にとどまったチリ・ペッパー(ニャトラン)

どうやら、本体を電気にして移動させることはできないらしい…に、

F・Fが依頼したのだ。練習がてら制服を盗んでくれよ、と。

町の平和を守ってこんな有様になったのに、

それで受けた損を全額自腹切ってたら生活がままならない。

スタンドは誰にも見えないし聞こえない。この世界にスピードワゴン財団がない以上、

相談して助けてくれる相手などどこにもおらず、しかも俺は家族から見捨てられている。

現実として『盗み』以外にとれる手段がない、と。

少し逡巡したチリ・ペッパー(ニャトラン)が、

しゃーねえ、怪盗ニャトランの手並み見せてやんぜ!

とか言ってくれたところに、割り込んで俺が提案した。

せめて払える金は集めよう。無敵のスピードを誇るチリ・ペッパーなら、

自動販売機の下に落っこちた小銭もあっという間に集められるはず。

軽犯罪にはなるが、忘れられたに等しい金だ。

これで代金を支払えば、盗んでいくより断然罪は軽いだろう。

納得したニャトラン本人がウチに来るのを待ってから、

俺は地図帳(地理の授業で使う)を広げた。

日本全国津々浦々の駅を片っ端から指さし、

ほぼ確実に存在する自販機の下を総当たりであさり回ってもらった。

そして日が昇り始めた頃合いに、ようやく目標額に到達。

ウチの近所の服屋から制服を持っていったら、俺が特定される危険ありのため、

ゆめポートの方にある服屋をあたり、俺にほぼ一致するサイズのものをいただいた。

代金はレジに詰めた。で、小銭の大群のままじゃあちょっとしたテロだからな。

非常に心苦しくはあったが…

国内トップクラスに権威と伝統のある神社の賽銭箱をあたって紙幣に両替した。

レジに突っ込んだのはそれからだ。

 

「それだけのことを忙しく繰り返しまくったが。

 チリ・ペッパーには一度たりともおかしなことは起こらなかった…安全と見ていいと思う。

 まぁ…なんだ。表向きの損害は、一応存在しないはずだぜ」

「……よく、わかったわ。

 良くはない…けど、最善を尽くしたと思うわ。

 神様もきっと許してくれるわね」

「わたしに、許すとか許さないとか言う資格、ないけど。

 そっか。誰も傷つけなかったんだね。鳴滝くん」

 

……髪をかきあげて、アサッテを見た。

 

「ホメられたこっちゃあねェェーんだけどな。

 ソコだけは…どーにか……つーか、苦労したのはニャトランな」

「なんかオゴレよなー、そのウチ!」

「晩メシでいい?来る日、あらかじめ言えよ」

「肉、タップリくれよな!」

 

タップリの肉か。……鶏とか?

ちょうどいい。今、ウチの冷凍庫では大量の鶏肉がうなってるし。

卵もイケるだろ。こいつは都度、切らさないようにしてる……

野菜も大丈夫のようだから、同じように買い込んであるニンジンと

冷凍グリーンピースもイケそうだが…玉ネギだけはヤバイ。

と、脱線。こんなトコで考え込むこっちゃあねー。

 

「ニャトラン、あとで食レポちょーだい」

「平光、お前な……別に楽しかねぇーと思うぞ。

 おおざっぱなクソガキ料理だぜ、しょせん」

「あら、自己流?」

「いや、まあ…そうかな?一応、本を見てたけど、それも最初のうちだけで…

 安売りしてた食い物を『食えりゃあいい』で煮たり焼いたりしてるだけだからなぁ、基本」

「十分、スゴイよ。簡単に言ってるけど…わたし、お手伝いしてるだけだもん」

「私も興味あるわね。旅館沢泉の娘として、お料理も学んでいるわ」

「あの…ハードル、上げてくれるなよ?頼むから…

 花寺の母さんの足元にも及ばないし、旅館のガチ料理人とかと一緒にされた日には」

 

平光に続いて沢泉が食いつくとは思わなかったよ。

さらに花寺まで食いついて、こっぱずかしい生っちょろい料理論をしばらく説く羽目になった。

…………聞き上手なことで。いいかげん話が進まないんで、ここはカッ飛ばす。

せいぜい土鍋でコメ炊いてるのが驚かれたくらいだな、特別なことといったら…

ねえんだよ、炊飯器。

沢泉から、いくつか簡単な調理の改善案を授かったところで打ち切って、

俺が思うところの本題に戻った。

 

「そんなわけで、だ。練習は必要だろうけどな…今後は、ビョーゲンズが現れたところに

 一瞬でプリキュアが到着できるな。ただ」

「ニャトランは、ニャトラン自身を電気に変えて移動できない。

 普通に考えると、スパークルだけが(・・・・・・・・)ついてこられないよね」

「えー、なんで…………あ”ッ!?」

 

ヤッパリ気づいてなかったな、お前。

そう。音石明がわざわざジョセフを殺しに来た理由を、ここに来てはっきり理解した。

物体、生物問わず電気にして、瞬間移動に等しい速度ではるか遠くに運んでしまえる能力なら、

ハーミット・パープルで居場所がバレようが、次の瞬間には地平線の彼方に逃げられる。

この条件の音石明に追いつけるスタンドなど、おそらくこの世に存在しない。

DIOですら無理だろう。ハーミット・パープル単体で追い詰めることは不可能だ。

本体も電気になって逃げられるっていうのなら、な。

実際にはそうじゃあなかった。実験してはっきりした。

おそらくはチリ・ペッパーの明確な弱点だ。

つまり。平光は電気になって移動できるが、本体であるニャトランだけは無理。

そしてキュアスパークルは、両者のいない場所では成立しない。そういうことだ。

 

「あたしだけ留守番?あたしだけダッシュでオッカケんの?

 ビョーゲンズ出たら!めっちゃヒドッ」

「明日のうちに採石場あたりで実験すんのをススメとく。

 プリキュアに変身した状態で、チリ・ペッパーの電気化が効くのかをな。

 いいか、ヒーリング・ステッキからだぞ。

 お前自身から電気化したら、最悪、途中で変身が解けて感電死だぜ」

 

テンションが凍った平光は、サーッと青ざめた。

当たり前だ。ごく最近、臨死体験しちまってるだろうが。

当事者だろうが、俺。

 

「…いや。いや…悪い。取り消す。完全に取り消す。

 ヒーリング・ステッキは本体のニャトランだ。

 最悪、自分自身を丸コゲにする自殺になっちまう。

 実験するだけでもあまりにリスクが…」

「大丈夫よ。話を聞く限り、ひなたから電気化すれば安全ね。

 それなら、電気化したひなたを取り残されたニャトランが制御できるもの」

 

振り返って気付く。俺は、最初っからヘンなコトを言っていた。

沢泉の方が、完全に論理が正しい。

 

「……。悪い。沢泉」

「気にしないで。実験には、みんなで行きましょう?」

「魁がいれば、感電で心臓が止まってもF・Fでマッサージできるペェ」

 

付け足してきたペギタンに、俺もうなずいた。

各個撃破を回避したいなら、実験そのものが必須なのは正しいしな。

 

「明日はあなたが無理でしょうから、来週……って、来週は私が無理ね」

「あっ、大会だっけ。ちゆちゃん」

「ええ」

 

大会。俺にも、すぐにわかった。

去年は俺もいたんだからな。春の陸上大会だ。

すこ中のホープたる沢泉は、ハイジャンプの一選手として参加するわけだろう。

こうして言われるまで知らなかったし、知りようもなかったがな。

俺が陸上部に近づくことは、わざわざ断るまでもない禁忌だ。

彼女のハイジャンプが、目に入る距離まで近づいてはならない。

実際のところ、一度も見たことないんだが。

 

「ま……そーだな。武運を祈る」

「ベストを尽くすわ」

「あ、そだ」

 

気が付けば顔色を戻していた平光が、手のひらをポンと拳で叩いた。

 

「応援行こーよ、みんなで!

 タッキーも。席は離れててもイイからさぁー」

 

俺の首がヤツに向いた。

沢泉も、花寺も。

ヒーリング・アニマルの皆も、ことごとく。

 

「……えっ、えっ?どったの?」

 

戸惑う平光への返事で。

平光を除いた全員の声がハモッた。

 

「もしかして、知らなかった?」

 

ここで皆が思い出した。

平光が、例の事件について知りうる理由もキッカケもないことを。

せいぜいが噂話までであって、疑ったとしてもそこまでだということを。

もう、話さないわけにはいかないだろう。

一人だけ知らなければ、知らず知らず地雷を踏みぬきかねないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「最ッッッ低!!」

 

責任をもって事情を説明したところ、

ごくまっとうな軽蔑が飛んできた。

こればっかりは、被害者の沢泉はもとより、花寺もダメだ。

説明を押し付ければ、それ自体がセクハラものだ。

 

「……そういうことがあったんで。

 俺は、すこ中の陸上部には絶対に近づけない。

 どのツラ下げて、ってヤツだ」

「ッタリ前でしょ?来んな!!」

 

同じ席に座ってられる状況じゃあなくなった俺は、

追い立てられるままに立ち去って、形兆の霊園を抜け、ヒーリングガーデンまで避難した。

花寺がこっそりメッセージをよこしてきた。

 

『説得中。合図を出したら戻ってきてね』

 

こうなっては仕方がない。草むらに寝転がって、不思議な色の空を見上げる。

…当然の結果だな。花寺と沢泉は『承知』で迎えてくれていたが、あいつは違った。

かといって、人間関係を放棄するつもりはないぞ。というか、できない。

割れた皿を接着剤でなおすみたいに、破片を丁寧にそろえるしかないだろうな…

しばらくは距離を離そう。向こうも、婦女暴行未遂犯に近づきたくないだろうし。

そんなことを考えていたら、花寺からの続報。

 

『ひなたちゃんが迎えに行きました。合流して戻ってきて』

 

ここでこうしているのは、花寺には丸わかりなのな。

ここはDEATH13の世界で、花寺はその本体なんだから当然だ。

それにしても、このパターンの多いこと…また平光だけアッチコッチすんのかヨ

落ち着きないからなぁー。考えるより先に動くのヤツだからなぁー

これでこそ、って気はしないでもない。

起き上がって、物音に注意しながら歩いていると、

そう時間もかからずに、ヤツは見つかった。

こっちを見るなり、ショゲかえった顔をしてきた。

 

「……ごめん」

「謝る要素ねーけど?」

 

いかん。こういう言い方をしたら、こいつはもっと気にする。

すぐに言葉を付け足していく。

 

「お前の怒りは正しいよ。保証する。

 婦女暴行未遂になんの遠慮がいるんだよ」

「後悔。…してんだよね?」

「…………。

 足が、動かなくなった直後、な。

 クラスのヤツに言われたんだ。

 お前を助けたいヤツなんか、この世に一人もいるもんか、って…

 納得したよ。俺が一番。『ああ、そうだよな』って」

 

俺もたいがい、余計なことをしゃべっているな。

質問は、後悔してるか…それだけだろ。

なんだこれ。同情でも引きたいのか?

とてつもなくカッコ悪く思った俺が次に足した言葉を。

 

「少なくとも…その時点でクズだったことに変わりないからな。

 いくらでも怒っていいし、憎んでもいい」

「ちゆちー、言ってたよ。

 怒るのって、本当にイヤだって。憎むのって、めっちゃ疲れるって。

 イヤな自分とイヤな気持ちを、ジッと見てなきゃいけなくなるって」

 

キレイに打ち返された。平光に。

素直に言うと、その発想はなかった。

怒るのも憎むのも、俺は『権利』だと思ってたからな。

まさか『負担』と言われるとはな。

それを償い、取り除く有効な手段は…たぶん、俺にできることだった。

奇しくも、それはすでに取り組み始めていること。

 

「……なら、変わるだけ、か。

 俺は、二度とあの俺に戻らない……

 安いセリフだなぁー。しかもくっせえ」

「ま、あたしもアンタに近づかないし。

 こっから先に近づいたら悲鳴上げるかんね!」

 

およそ2mか。憶えた。

ついてこい、と身振りで示す平光の後ろを歩きだす。

 

「俺もな、このままでいいとは思ってなくてよ…

 今の嫌われ者の状態をほっとくと、いつか敵スタンドに利用される日が来る。

 はっきりいって弱点なんだよ。こいつは変えるべきだ。F・Fにも言われたよ」

「ン?イメージアップしたいってこと?」

「まあ、そうなるな」

 

唇に指を当てて考え出した平光は、

それほど時間を空けずにウンウンと一人でうなずき、

自信ありげな笑みを浮かべた。

 

「ウッテツケのおシゴト、あるよ。

 今はないケド」

「今は?お仕事?」

「たぶんタッキー向け。

 イメージアップにはピッタリじゃん?

 ま、そん時になったら、ってコトで」

 

こいつに紹介されるお仕事ってのがわからん。

なんかの設営の手伝いとかか?人脈広いらしいからなコイツ…

花寺とか沢泉に、その辺は普段から聞かされてる。

ま、今はないと言ってるんだ。気にするのはその時にするか。

しかし、大会か…スタンド使いだとかビョーゲンズだとか。

そろそろイイカゲンにしてほしいとこだが……今回は、どうかな?

なんかあると思って備えておくか。

 




チリ・ペッパー、本体を電気化できない…という解釈の二次創作を
すでにいくつか見てますが、当作品でもそれを採用します。

ご意見、ご感想、誤字脱字報告、ぜひよろしくお願いします。
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