プリキュアとの奇妙な冒険‐ようこそヒーリングっど♥へ!‐ 作:アンチマターマイン
今回は単純に、非ッ常に難産だったのが原因…
ちなみに今回の敵はビョーゲンズではなくスタンド使いの模様。
今回の語り部は、ちゆちー。
文字数は4500字強。少ねえ…
「ペギタンにも聞いたけれど。もう大丈夫ね?」
「ああ。体内がまだ少し怪しいけどな。
フツーに生活するぶんには問題ないだろ」
日曜日の夜、『夢』。私たちはいつものように
カフェ・ドゥ・マゴに集まっているわ。
ひなたが、そろそろフインキ変えよーよ、って言ってるから、
来週あたりから他のどこかに変えるかもしれないのだけれど。
「ゴハン中にお邪魔したのはゴメンだったペェ」
「あー、いい。いい。気にすんな」
「ごめんなさいね。もっと時間を選ぶべきだったわ」
一人暮らしなら、どんなに具合が悪くても家事は自分でやらざるを得ないわ。
しかも半身不随なのよ?F・Fが一緒とは言っても、さすがに心配よ。
丸一日寝ていれば平気だと言ってはいたけれど、
金曜夜からほぼ丸々徹夜したって本人から聞かされたら、ね。
ましてや、って話だわ。
そんな風に気にしてたら、ペギタンが様子を見に行ってくれたのよ。
それが六時過ぎだったのは、私としたことが…よね。
「あ……ゴハン中だったんだ、鳴滝くん」
「オムライス食べてたラビ」
「オムライス?」
「…オムライスだよ。別にどーでもいいだろ、そりゃ」
「そっか。そうだね」
口をへの字にしてる鳴滝くんに、のどかはやわらかく微笑んだ。
「ラビリンも行ってたのね」
「のどかのお父さんも行ってるラビ、昼に」
「花寺から事前に連絡もらった。
ずっと寝てたのはなんとか隠し通したぞ」
「お父さんが帰ってきてから、ラビリンにも見に行ってもらったの」
「ありがたく思うラビ」
「…ありがたいこって」
「誠意が足りないラビ!…ま、いいラビ」
のどかとラビリン。私と…ほぼ同じやりとりがあったのかしら?
結構長いこと考えこんでたのよね、私。直接、私が見に行くべきか、って。
相手の身になって考えてみろ、とは言うけれど、
そんなこと、やりたくもないくらいにヒドイ怪我を負わされたんだもの。
結論から言うと、行けなかったのよね。
…今、こうしているぶんにはいいのよ。
私は、鳴滝くんの助けになるつもりではいるもの。
彼なりの事情と苦悩があったことも、結果として知ることになったし……
悪事を許す気はないけれど、善くありたいのなら手を貸せるわ。
そこの所、裏切られない限りは味方でいられると思うの。
正直、『かわいそう』よりも『許せない』の方がだいぶ大きいんだけれどね。
だからこそ逆に心配なのよ。私たちが手を放したのなら、こいつはもうおしまいよ。
その意味で、私たちはこいつの人生を握ってる。はっきり言ってイヤよ。重いわ。
私は、それを手放したいの。もちろん、『おしまい』以外の方法でね。
そのためにも、直接の被害を受けた私だからこそ出来ることがあるはず。
その思いにウソはないけど……どれだけ考え込んでも無理だったわ。
想像した瞬間に、あの日の恐怖がよみがえるの。絶対に嫌。
そして、現実になった時点で崩れ去るでしょうね。今日までの頑張りが。
私の頑張りじゃあないわ。彼の頑張りよ。
善くあろうとする努力を、他ならぬ私が叩き壊すかもしれない。
そんな風に悩んでるうちに、ペギタンが私に言ってきたのよね。
『魁の様子、見に行ってもいいペェ?』って。カッコ悪いったらなかったわね…
ひなたのこと、軽はずみだとか不用心だとか思ってたけれど。
もしかしたら、私ができないことを無意識に押し付けていたのかも。
…まあ、ひなたの場合は命の恩人だしね。
私やのどかと違って、危害を加えられたり騙されたりとかしてないのよね、唯一。
ひなたから見れば、噂以外に嫌う理由はとくにないのよ…なかったんだけど。
「……」
サッ
「……ムッ!……」
チラッとひなたを見た鳴滝くんがサッと椅子を引き、ひなたはムッとしてるけど何も言わない。
…ええ。どーゆーやり取りがあったんだか、よーくワカるわよ、コレだけで!
ひなた。あなた、この距離から先に近づくな、みたいなこと言ったでしょう?
それを律儀に守られちゃってるのね。こんな喫茶店の4人席でまで!
何なの、この融通のきかない男は……いえ、むしろマシね。
……ともかく。あの恐怖を改めて思い出したからには。
のどかにせよ、ひなたにせよ。一対一にはさせないように動くわよ、これからは!
これはきっと、鳴滝くんのためにもなるはずだわ。
「ありがたついでだけどな。ちっと、相談したい……いいか?」
「なんか切り出そうとしてたよね。いいよ」
あら、珍しいわね…向こうから頼ってきたわ。
というか、初めてよね。どういう心境の変化かしら?
と、言いたいところだけど。素直に受け取って平気そうね。
以前、本人が言ってたじゃない。
これからは問題を抱えたらまず相談する、って。
「アッ、もしかして。
昨日、ひなたに相談したって話かよ?」
「そうだよ」
「あたし手伝うって言ったじゃん」
「…すまん。俺なりに用意してきたこともあってな。
実行に移す前に相談したいんだよ」
ニャトランの横でブータレた顔をしてるひなた。
さっきの延長で気分悪くしてるだけっぽいわね。
鳴滝くんは、少しひるんだ様子を見せたけど…いたって普通に応対してる。
「平光には昨日言ったが…学校その他で俺のイメージが悪すぎるのはまずい。
いつ、そこを敵スタンドに攻撃されるかわかったもんじゃあないからな。
少なくとも、無害な隣人、くらいにはなっておきたい」
ホントに意外ね。でも、言ってることは正しいわ。
以前、話題に出たみたいな、人を操る系統のスタンドが敵に現れたなら…
そこに、普段から嫌われ者の彼がいたなら…下手をしたら、集団リンチに持ち込まれるわよ。
私たちですら味方できない状況になりかねないわ。恐れているのは、それなのね?
私自身……もし、私がプリキュアじゃあなくって、彼の事情を知るよしもなかったなら。
『正義感』でそれに加担する未来もあったかもしれない。冗談じゃあないわッ。
「わかったわ。私はどうすればいいかしら?」
「いや、動くのは俺な。俺がやろうとしてることがおかしくないか、事前に聞きたい」
先をうながしてみると、だいぶ前から行動には移してたらしいことがわかる。
そして、F・Fの差し金があったことも。
「ま、最初に相談されたのは、あたしなんだけどね。
周りの目を変えたいっていうのは、要するに、他人を変えたいっていうことよ。
他人は無理やり変えられない……反発くらうだけ。
『他人を変えたければ自分を変える』、回りまわって近道よ。経験上」
F・Fは続ける。そのために、あえて自分の『逆』をやる、って。
コーヒー党なら紅茶を飲むようにしてみる。
慎重に動くべきと思うなら大胆に行動してみる。
チリ・ペッパーの時、いやに活発に動き回ってた理由はそれ?
そういえば、先週あたりからいきなり紅茶になってたわね、コーヒーから!
「身の回りで出来そうなことは、そろそろ打ち止めになってきた…
ここからは、他人への行動を変えようと思うんだ」
「どうする気?」
……相談してくれてよかったわ。心底、そう思う。
『逆』を考えた結果、彼は愚直に今までの『逆』に行き着いた。
つまり、周りの人間に話しかけまくっては、積極的にいいことをするっていう。
「不審に思われるに決まってるじゃない、そんなの!」
「やっぱりか」
おそろしい非行の前科がある人間が、接点もないのにいきなり親しく話しかけてきて、
いろんなことを手伝ってくれる……恐怖しかないわね。何を企んでるのよ?
「鳴滝くん。わたしも賛成できない」
「花寺も、か」
真面目な目つきになって、のどかが言うには。
鳴滝くんが回りの誰からも話しかけられない孤立状態にあるのには、
『嫌われている』に加えて、『怖がられている』のがあるからこそで。
今、鳴滝くんが言ったようなことを実行に移したとしたなら、
おそらく『怖がられている』が消えることになる。
なるほどね。迎合するって態度なら、そうなるわね。
結果、『嫌われている』だけが残ったのならどうなるか。
「……わかったペェ。
のどかは、魁がイジメられるって言ってるペェ?」
「もし、そうなったら…挽回が、今よりも難しくなるよ。
ひなたちゃんの友達グループに守ってもらうくらいしか方法なくなっちゃう」
「…ウーン、ムズイ。チョイ前にみなちーとりなちーに聞いてみたんだケド!
めっちゃ警戒されてるよ、タッキー。あたしの他の友達にもさぁー」
議案は全会一致で否決。
ツマンナそーな顔してるけど、受け入れるつもりみたいね。鳴滝くん。
結構、感情が表に出るわよね、あなた。
ま、いいわ。変な意地を張ったりはしなさそうだしね。
のどかの笑顔がそこに続いて、残った意地も溶けたみたい。
「ムズカシイこと考えなくていいと思うな。
普通のことを普通に、だけど、ガンバッてやろう?
鳴滝くん、掃除とかはちゃんとやる人だよね?」
「まあ。それなりにはな」
「なら、『逆』をやる必要なんかないよ。
見てる人は見てると思う。
焦らずに、ひとつずつを大切にしていこう?」
「……。そーだな」
「ま、あんたも日々変わっている……
そいつを見極めてからでも、遅くはないかもね」
締めに入ったF・Fに、ラテが同意してアンと鳴いた。
話自体はこれでオシマイだったけど、私としても考えさせられるわね。
『変わる』のは賛成だけど、思うに問題は『知らない』ことよ。
現に私も、『知らないまま』なら敵視したままだったでしょうしね。
そこを本人がどうにかしようとするのは逆効果だわ。
いざその時に、彼を敵視する人間が一人でも増えないようにしたいのなら……
(私は、唯一の被害者よね)
陸上部のみんなへの根回し。考えてみましょうか。
かなり危険よ。やり方がまずいと、最悪私自身に火がつきかねない。
慎重に動かないとね……
翌日。放課後。
密度の濃い金土日だったせいか、陸上の練習がいやに久しぶりな気がするわね。
これも…というか、これこそが私の本分よ。誰にも邪魔させないわよ。
準備運動を終えて、さっそくバーを設置する。
もちろん、高さはマイベストよ。大会で勝つには、少なくともこの一段上が飛べないとね。
周りを見る。いつもの風景……
同じ陸上部の先輩、同級生に、後輩の視線をいくらか感じるわ。
期待には応えないとね。それだけのことを、私はやってきているつもりだわ。
(……ン?)
フェンスの向こうあたりに、カメラを持った不審な影が。
波がかった髪に、メガネ……ああ、彼。名前知らないケド。
あんまり気分はよくないけど、盗撮の類じゃあないことは知ってるわ。
先輩がたに囲まれてトッチメられた挙句にカメラを没収されて。
中身を確認したところ、マジメに写真撮ってたっていう彼ね。
実際に学内新聞も出してるらしいから、あんまり強くも出られない。
誹謗中傷だったらトッチメる理由もあるけれどね……
ま、いいわ。カッコイイところ見せてあげるわよ。
周りを意識から追い出した瞬間から、そこは私だけの世界。
助走をつけた私は、地を蹴って、勢いよく空へと舞い上がる。
重力を超えるこの一瞬は、私の宝物ね。
でも、なにか違和感があった。空中にいる私への『違和感』…
ガタ… バシン! …バフッ
「…………えっ?」
マットに落着した私は、落ちていてはならないバーを目撃していた。
どよめきが聞こえる。いけないわね。飛べていたものが失敗するなんて。
「ドンマイ」
「気を取り直していくわ」
友達がバーを再セットしてくれた。
そこにまた、私は飛ぶ。空に……
飛んだ空で、私は何を見ていたの?
私はまた、落ちたバーを見ていた。
来週あたりで、またアンケートを新しくします。
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