プリキュアとの奇妙な冒険‐ようこそヒーリングっど♥へ!‐   作:アンチマターマイン

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数分とはいえ遅刻した。
日朝九時更新の文言、現状に沿って修正。

今回の語り部は、鳴滝くん。
文字数は6000字弱。標準より少し多めか。



絶対にバレるな!イップスの後ろ側で‐その4

普通に考えて、俺ほどの悪評を払拭しきることはできるのか?

金、暴力、セックス。ひとつだけでも忌避するに足る悪事の

すべてを犯してきたのがこの俺だ。

このうち全部とまではいかないが、かなりの部分が事実として

すこ中に知れ渡っているこの状態から、どう持ち直す?

まあ、『あきらめろ!』だよな、普通なら。俺だってそう思う。

そこをどうにかするために自分を変えるというのなら、

大きく変えなきゃ、周りも大きく変わらない。力学的にも当然だ。

トチ狂ったくらいのことをやらなきゃあ効果は望めないから、

みんなに相談してから実行に移そうとも思った。

……知っての通り、止められたけどな。

なるほどな。恐怖がなくなりゃナメられる。もっともだ。

だから、時間をかけてでも軟着陸しろ。

花寺の言を、俺はそう受け取ったし、納得もした。

沢泉の言う通りで、不審に思われるに決まってる、ってのも道理だからな。

ま、水ササレたみたいな気分にはなったけどよ……基本的には従うつもり。

 

「『汚い』のなら、『きれい』にしよう、って…言ったよな。花寺」

「…うん。言ったよ」

「悪あがきは……してみる。結果はわからない、けど」

 

だが、俺は。

今、変えられないがゆえに!

『汚い』から『きれい』を守らざるをえなくなった。

そのためには。

 

「助けを求めた方がいいんじゃあないの?

 まだボヤで済んでるうちに」

「考えなくもなかったけどな。

 花寺は転校したてだ。その意味で、大して俺と変わらない。

 耳に入れたところで…バレるリスク以上のものは得られないぜ」

「そして、ひなたは問題外。

 ある意味、このテの問題には一番強そうだけど……ってとこね」

「沢泉を前に、バレずに立ち回れるヤツじゃあない。

 だがよF・F。平光はアテにならなくとも、その財産はアテになるだろ」

「財産……『恩を返させる』のか?」

「俺が持つ取引材料は、あれだけだ」

 

付け焼刃でも、『きれい』のマネをするしかないんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

話は、昨日の昼までさかのぼる。

沢泉がスランプに陥ってることだけ知らされて、

俺に出来ることといったら『電気は光の速度を超えられるか』の調査だけ。

昼休みを使って、図書室に電気関係の本をあさりに行って、その最中。

ヘンなヤツがつけてきているのに、今回はF・Fが気づいた。

 

「ヘイ」

「……ヤツか」

「殺気はない。敵意はある」

「当たってみる」

 

本の隙間からこっちを覗いていたヤツに向かって、まっすぐに突き進む。

この足じゃあ、死角に回るなんぞできるはずもないからな。

逃げるかとも思ったが、踏みとどまったヤツは、眼鏡の奥から俺をジッとにらんだ。

ジョニー・デップくずれだ。クラスメートの、メーワクがられてる知りたがり。

 

「何か、用か?」

「……。予定、変更しましょう。

 追跡調査ではなく、インタビューさせてもらいますよッ」

「意気込んでるトコ悪いんだけど、誰だっけお前」

 

ガクンと肩を落としたヤツは、それでもすぐ気を取り直して肩を張った。

 

益子道男(ますこ みちお)ですッ!

 すこ中ジャーナル編集長ッ!兼、記者ッ!」

「ご丁寧に、どうも。

 で…そのマスコミが何の用だ?俺が何か面白いのか?」

「それです。あなたはよくわからないことをしている……

 少し前には工作とか機械の本ばかりを借りて、今日は雷、そして電気。

 何をしているんですか?何を考えている……」

 

おい。何サラッとプライバシー侵害してんだ。

貸出履歴を覗かれたのは確定だぞ。

 

「答えてやる。『俺の勝手』だ。満足したか?」

「ま…満足するわけないでしょう?他にもあるんです!」

 

机にバンとメモ帳を叩きつけるヤツ。図書室で騒ぐなよ。

だが、メモ帳に書いてある文言に視線を走らせると。

あんまし、笑いごとじゃあすまねえな。これ。

 

「始業式放課後、公園の噴水破壊事件、下水噴出騒ぎ、ゆめポート……

 化け物騒ぎの現場で、ひんぱんにあなたが目撃されているッ

 もはや、偶然で済ませられないのでは?」

「だから何だ?俺が化け物を呼んで、町を壊して回っているとでも?

 バカも休み休み言うんだな…お前自身、無理があると思ってるだろ」

「グッ……動機には!人間性には無理がないと思っていますよ」

「だとしたらいい度胸だな。ひねり潰されたいのか?

 お前は今、殺されに来ているってことだぞ」

 

ヤツは顔面をこわばらせて言葉に詰まった。

いや、ここまでして俺なんかの行動を追ってきたコイツの苦労と奮闘には

まったく頭が下がる思いなんだが。

ガチにストーキングされる日が来るとか思わなかった。

いろいろ通り越して感心すら覚えるんだが……とにかく!

非科学的な非現実として片づけてもらおう。さもなければいつか死ぬぞコイツ。

 

「当然、俺にそんな不思議パワーはないな。

 そんなものがあれば、俺はすこ中に転校していないし、

 この足も…ほら、もちっと役に立つはずだよな。

 がんばって調べたんならわかるだろ。マスコミさんよ」

 

納得するはずだ。俺の経緯と、クソみたいな人格面とを知っているってんならな。

メガビョーゲンを自在に操る能力を、『ぼく』が持っていたなら。

刺してきたあいつは、その場でペシャンコだな……泥と血の塊。

いや、そのはるか以前に。大兄さまはともかく、小兄さまをブッ殺したかな?

そんなことはしないな。きっと、いたぶって屈服させようとしたはずだぜ。

そんなことを無軌道に繰り返した挙句に、人間社会で暮らせなくなる末路だろうな…

どうでもいい思考実験だが。この半分程度は、簡単に想像つくだろうよ。

 

「わかりました。そこは納得するしかないようです。

 しかし、これだけは……これは、どうなんですかッ?」

「なんだよ、今度は」

 

内心、胸をなでおろしていた俺はぞんざいに聞き返した。

どうしようもない、真の脅威がそこにあるとも知らず。

 

「すこ中のホープ、沢泉ちゆさんが、急に!

 今まで飛べていたハイジャンプを失敗ばかりするようになった!

 原因は…鳴滝魁に、なにかされた(・・・・・・)からだと!」

 

血の流れが止まった瞬間を認識した。

そして、次の瞬間には血管が凍てつくように萎縮していくのを感じた。

俺には、ヤツが何を言っているのか…この時は、いまひとつわからなかったが。

取返しのつかない何かが起きかけていることだけは、直感的にわかったんだ。

 

「……。なんだって?」

「答えてください。あなたは…沢泉ちゆさんに。

 下劣な行為を働いたんですか?」

 

ここで何を言わんとしてるのか、理解した。

理解したが、引き換えに思考がちょっとの間、停止した。

その間にも、ヤツは…騒ぎはせず…静かに、まくしたてる。

 

「もし、それが……事実だっていうのなら。

 …ボクは、ジャーナリスト以前の問題として……

 あんたをどうにかしなくちゃあいけないッ」

「…………どこで、そんな話を」

「質問に質問で返してるんじゃあないぞッ!

 ボクの町を、けがらわしい行為で汚すっていうのなら!

 キズつけるっていうのなら!ボクはおまえを許さないからな!」

 

目前でヒートアップしていくコイツは、

俺の足元が崩れ去っていこうとする音そのもののようだった。

……棒立ちしてるんじゃあないぞ、俺!

こいつは、ほぼ決めつけてきてはいるが!

それでも、断定できるだけの材料を集められていないし、

自分で納得できるところまで考えを詰められてない!

こうやって目の前に姿を現してること自体、その証明だろうがッ

今が最後のチャンスだと思え。次はないと。

 

「答える。答えるが、こいつはヤバイ話だってのは理解してるな?

 他ならぬ、沢泉をフッ飛ばしちまいかねない『爆弾』だぞ」

 

視線は敵意のまま、ヤツはうなずいた。

その辺がわかっている動きはしていた。

最低限の信用は、できると見た。

 

「……『未遂』だ。

 俺が下劣な行為を働こうとしたのは、県中学総体の時だ。一年近く前だぞ?

 しかも、体に触れるよりもはるか前に逃げられてる。

 目撃者は、当時大会に出ていたすこ中陸上部のうち何人かと、その顧問だ」

「なんで、あなたは捕まってないんですか?」

「当時の俺は実家の権力を乱用できた。

 権力を乱用してんのは実家も同じでな。『もみ消し』だ…」

「そんなに前で目撃者が複数なのに、どうして事件が知れ渡ってないんだ?」

「沢泉がフッ飛んじまう『爆弾』だからだよ。おそらく緘口令がしかれてる」

 

メモ帳の上に平手を置いたまま、ペンを取ろうともせず。

テーブル上の低い位置に視線を這わせながら、

咀嚼するかのように首を動かしていたヤツは、

やがて、フゥ…と小さくも深い息をついた。

 

「……時系列が合わない。あなたはそう言ってますね?

 そもそも、彼女にダメージ(・・・・)を与えた事実がない、と」

「お前の解釈で正しい」

「どのみちショッキングな事件があったことに変わりありませんけどねぇ。

 沢泉さんは、あなたをもう許してるんですか?」

「許してない」

「ウーン……理解に苦しみます。どうして平然と話ができるのか」

 

おっしゃる通りで。

スタンド使いだとかプリキュアのつながりがなかったら、

まともに口を聞く理由なんざ一個もなかっただろうよ。

視線をいくらかやわらげたヤツは、メモ帳の1ページを破り取って

バラバラに千切り、複数のゴミ箱に分けて捨てた。

 

「このネタは使えませんね。廃棄です。

 ここで出た沢泉さんの話は今後絶対に表に出しませんよ。

 すこ中ジャーナルの名にかけて」

「そうしてくれ」

「カン違いしないでください。あなたのためになんか配慮しませんよ!

 今回こそ聞かなかったフリをしますけど……

 あなたの背中には、いつでも敏腕ジャーナリストの目が光ってること。

 お忘れなきよーに!」

 

立ち去っていくヤツの背中を見送って終わりか。そんなことはない。

ここは確かに乗り切ったが、目前の破滅を回避しただけだ。

ヤバイ事態は始まったばかりで、収拾できなければどうなるか。

当然、俺は呼び止めざるをえないわけだな。

 

「ウワサの出どころを教えろ。

 このままじゃあ、沢泉がフッ飛ぶ」

「知ってどうするんですか?

 …ま、いいでしょう。わかったら教えます。

 事実無根の噂となると、裏に悪意を感じますからね!

 『ウソ、大ゲサ、まぎらわしい』はすこ中ジャーナルの敵です!」

 

……頼むぞ。

お前が俺を見ているってんなら、俺もお前を見ていよう。

裏切ったら、殺す。

しかし……なんてこったよ。

ついに恐れていたことが起こっちまったか。

それも、最悪に近い形でだ。

ぶっちゃけ、俺はいいんだよ。ふさわしい罰といえばそうなんだから。

だけど、沢泉はない。しかも、よりにもよってハイジャンプかよ。

最悪、不祥事の当事者にされちまうわけだな。

有名人の名声が地に落ちて、ある意味、第二の俺と化す。

俺はいいんだよ。俺の短距離走を穢して台無しにしたのは俺自身なんだから。

聖なるもの、輝くもの、キラキラしたものを穢し尽くしてきたのは俺なんだ。

沢泉はちがう。

 

…クソが。

 

すでに、待ったもありゃあしない。

ウワサを消さなければ。どんな手を使ってでもだ。

そして、絶対にバレてはならない。

こんな醜聞、沢泉の耳に入るだけで大ダメージだぞ。スランプの真っ最中によ…

医学書を調べてきたらしいペギタンに、

ちゆはイップスかもしれないペェ、と泣きつかれたのはその夜のことだった。

失敗がくせづいて(・・・・・)、いつまでもうまくやれなくなる病気、か。

このままじゃあ、本当にそうなりかねない。やるしかねえぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……で、何の用?」

 

『夢』でF・Fに話していた手段は、これだ。

温和とボーイッシュの二人を呼びつけて、

人目につかないところで話している。

いいかげん名前を覚えるか。りなに、みな…だったな。

向こうからすれば、俺にファーストネームを呼ばれる筋合いもないけどな。

時間はかけられん。

時間をかければ、今度はこいつらが沢泉と同じ目に遭いかねないからな。

 

「頼みがある。聞いてくれるなら……

 この前の怪物騒ぎ…気絶したお前らを外に避難させた恩な。

 あれをチャラにする」

「…恩に着せようってわけ?

 ま、いい。言ってみてよ」

 

ボーイッシュ…みなが、目に警戒の色を浮かべてきたが、

話を聞いてくれるつもりはあるようだ。まずは良しってとこか。

 

「ウワサの火消しを頼みたい」

 

ここから先は説明自体がセクハラだが、しないと進まないので

回りくどくならず、しかも度が過ぎた下品にならないように

慎重に言葉を選びながら話していった。

あー、されてるよ不快な顔。当たり前だ。

だが、彼女らの物分かりは、意外なまでに良かった。

平光を通じて、沢泉を直接知っているのがデカかったようだ。

 

「くだらない下品なデマってことね。それを止めろと」

「そんな話がホントなら、沢泉さん、とっくに警察呼んでるでしょ?

 そこまでされて黙ってる子じゃあないと思う」

「こんな話を聞かせて本当にすまんが。

 社会的に死んでる俺にはどうしようもないんだよ。

 弁明も沈黙も、今の俺にはマイナスにしかならん……頼む」

 

頭を下げる。

花寺の親父さんに言われたことは忘れちゃあいないが。

一人前の男だからこそ、下げる頭に価値がある、か。

そんなこと言っても、下げられる頭の持ち合わせがこれしかねーんだよ。

実際、目の前の二人がそこに価値を見出しているのかはかなり怪しいところだったが。

 

「わかった。引き受けてもいいよ。

 それと、恩はチャラにしなくてもいいから」

 

わずかに考えるそぶりを見せた彼女らは、

大して悩むでもなく、あっさりとそう答えてきた。

 

「沢泉さんは、ひなたちゃんの友達だから当然、私達の友達だよ」

「友達助けんのに恩着せてたら、女が廃るでしょ…そんだけ」

「…。いいんだな?」

 

信念の問題か。

念押しにもノータイムでうなずかれて、

そのまま質問が返ってくる。

 

「あなたの言うウワサが聞こえてこなければ何もしないだけだし…

 それより、ちょっとだけ聞かせてほしいかも」

「そーだよね。聞いとこっか。

 あんたは、どうしてウワサを止めたいの?」

 

うかつなことを言ったらややこしくなる気配はあったが、

ここで韜晦したりして気を悪くされたらたまらない。

時間的に余裕はないからな。何も偽らず答えた。

 

「俺の居場所を守るためだよ。

 沢泉がハイジャンプできなくなったら、俺もやばいんだ」

 

回答を吟味するように、自分の頬を指で叩いていた二人だったが。

数秒そうして、納得することに決めたようだ。

 

「ま、納得してもいいか」

「頑張ってみるね。あなたも何か…しない方がよさそうだね」

 

積極的かどうかはともかく、前向きな回答は受け取れた。

今の俺の人脈で、これ以上できることはあるまい。

あとは、スタンド使いにビョーゲンズを警戒しておくだけか。

そう思いながら教室に引き上げた俺は、やがて担任の呼び出しを受けた。

 

…ウワサってやつは、とても怖かった。




益子道男が案外書いてて楽しかった。

ご意見、ご感想、誤字脱字報告、ぜひよろしくお願いします。

現時点で、この作品に何を求めて読んでいますか?

  • 心優しいプリキュアたちらしい熱血バトル
  • ジョジョらしいどんでん返しの知略バトル
  • プリキュア世界で動くジョジョキャラ
  • ストーリー上の謎がどう展開するか見たい
  • 主人公たちがどう成長していくのか見たい
  • 人間関係がどう変わっていくか見たい
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