プリキュアとの奇妙な冒険‐ようこそヒーリングっど♥へ!‐   作:アンチマターマイン

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遅刻の上、変則的な順番で話を投下することに。
最新話になってますが、時系列は
『緊急お手当て!同時多発ビョーゲンズ!‐その1』より前です。
次回投稿時に、しかるべき順番に並び替えます。

今回の語り部は、タイトル通りちゆちー。
文字数はおよそ5000字。標準より少ない。

2021/7/11、順番並び替え完了。


ちゆのお手当て・傷口消毒

「皆さん、ごめんなさい。帰り際に…

 それも、あんな大変なことがあった後で」

「いいのよ、沢泉さん。

 それで……去年の『あの事件』の話、だったわね?」

 

先生の表情が鋭いわね。無理もないけれど。

大会が終わった直後……とはいっても、ビョーゲンズのせいでオジャンになったけれど。

陸上部顧問の先生を通じて、『あの事件』を知っている全員をここに集めてもらったわ。

現地解散じゃあなくって、学校に一度戻ってから解散だからね。

休日の、誰もいない体育館に集まることができたわ。

『あの事件』が何かって…もう言うまでもないでしょう?

鳴滝魁が私に対してした、おぞましい行為の未遂事件よ。

止めてくれたのは他でもない、目の前の先生なのよ。

それと、居合わせた先輩のうち何人か。いなかったら、どうなっていたか…

 

「はい。結論から言いますけれど…

 私は、本人と話して……『許さない』で決着しました」

 

予想はしてたけど、みんな、ざわついたわね。

当たり前だわ。逆に私がみんなだったら。

自分を標的にしてきた性犯罪者と直接話す?おろかな真似よ!

奇妙よね。めぐり合わせでそうなってしまったわ。

 

「ちょッ…ちょっと待って!何考えてんの?」

 

一番に突っかかってきたのは、やっぱり、りょうこね。

すこ中の陸上部に入ってきて以来、友達でいてくれてる子よ。

今回のスランプだって、ずっと励まして手伝ってくれてるんだもの。

どれだけ世話になってるか、わからないわね。

だからこそ当然の反応よ。それだけ心配してくれているの。

私は、ちゃんとわかるわよ?

 

「りょうこ。ごめん。まずは最後まで話させて」

「でもさ!……ごめん。話して」

「ありがとう」

 

もう待ったなしだわ。

あいつは、あいつ自身の悪評が原因で直接襲われた!

このまま放置して、二度目、三度目が起こったなら!

負けなかったとしても、私たちが助けに入れたとしても

ダメージが蓄積していって、いずれ……『死ぬ』わね。

だって、治りもしないうちに新しいケガこさえていってるじゃない、あいつ!

『夢』で理不尽な怒り方しちゃったけど、正直、このイライラを抑えるのは無理よ。

ひどいケガしているのを見せられても、『関係ないから』。

そう思って平和に過ごせる人間には…なれないわ。絶対。

フー・ファイターズで治る?だからなんなのよ。痛いわ(・・・)

それでも、戦わせないわ、って言えるほど、人手も足りていなければ、情報も足りていない。

傍観者に押し込めたところで、やっぱりいつか殺されるだけ。

連絡を密に、一緒に戦うしか生き残る道はないわ。そして、それは私たちも同じよ。

その邪魔になるものは、なんとしても取り除く。それだけね。

 

「まず……彼が転校してきてから、私はそれとなく監視していました。

 どういうことがあってここに来たにせよ、

 あれ(・・)と同じようなことをさせるわけにはいかない…そう思ったからです」

 

ごまかすことが何もないくらい本当のことよね。当時はただそれだけ。

いじめの復讐に遭って足が動かなくなったことを知ったところで、ほぼ敵よ。

ただ孤立している彼を見て、これが悪人の末路か……って、冷ややかに見ていただけだったわ。

何かをする様子もなくって、脅威を感じなくなった私自身も、やがて興味をなくしていった。

それがまさか、こんなことになるとはね。

 

「私と同じように思っていた人も、何人かいるかもしれません。

 いたとしたら、知っているでしょうけれど。

 彼はただ孤立して、何もしなかったわ。

 本人に聞いたわけじゃあないけれど、気力が尽き果てていたみたいね…続けます」

 

ここからよ。話す機会がない人には、誰も話していなかったこと。

あえて話す必要がないのなら、それで別によかったけれど。

もう、それは通らないわ。避けて通ることはできない。

 

「入学式の週の日曜日。町内で下水の噴出事件があったけれど。

 あの現場に、彼と私は居合わせていたんです……

 彼は被害者として、私は目撃者として」

 

先生が真顔になった。

すでに、事件そのものは知っているのよ。先生は。

私とのどか、ひなたが下水道に落ちた人を救出したっていう事柄だけは。

すぐ病院に行ったとはいえ…何かの感染症が遅れて発症しかねないって、

お母さんが、気づけばすでに連絡していたの。

部活に出るなり、怒られつつも褒められたわ。よく勇気を出したわね、って。

ただ、そこで助けたのが鳴滝魁だとは知らなかった。それが確定した瞬間ね。

…お母さんは知らないはずよね。話していないもの。

私と彼との間にあった事件のこと……どうして、あえて名を伏せたのかしら?

まあ、いいわ。今は重要じゃあないものね。

どのみちカバーストーリーよ。余計なことを考えていたら口を滑らせかねないわ。

 

「マンホールがはじけ飛んで、下水が噴出したことは知っていると思いますけれど。

 彼はその時、下水に落ちてしまったんです。

 そしてそのまま、噴出するほどに入り乱れた下水の流れに、上半身の力だけで抗っていた…

 しばらくすれば、それも収まりはしたけれど。彼の足は動きません。

 もう、ただ流されてどこかにさらわれるしかなくなってしまった……

 そこに、私が通りかかったんです。私と、花寺さん。それと平光さんが」

 

嘘じゃあないわね。私たちがいなかったら、鳴滝くんは下水道の奥深く彼方よ。

そしておそらくは、すこやか市の命運ももろともに断たれていたわね。

考えれば考えるほどに薄氷なのよ、ココ!

もし、彼がのどかを信じる意思を見せずにメールを送らなかったら!

もし、ひなたが体内のフー・ファイターズを恐怖したままに消去していたら!

もし、私の体内にあえて誘い込む戦法を思いつかなかったら!

どれが欠けても『詰み』だったわ。

もっと言えば、F・Fが目覚めなければ、彼はあの場で死んだわね。

彼に死なれたのなら、倒したDEATH13を回収する手段がないから『夢』の訓練はできず。

F・Fがいないということは、命令DISCの存在に気付くきっかけがない。

何も知らずに行ったゆめポートで、突然ひなたが殺人犯になるわ!

それら諸々を乗り越えたとしても、おそらくスカー・ティシューでトドメよ。

……お、恐ろしいわね…いいえ、それ以前に!

そんな理屈を詰めた話よりも前に!

彼を死なせることで、私たちは確実に『弱くなった』はずよ。

手を伸ばしても助けられなかった後悔が胸に穴をあけて、ふさがらないと思うわ。

そんな弱った心で戦う私たちは、絶対に今よりも不利よ。

だからこそ、今ここでも引けないわ……話を続けていく。

 

「なんで私が、私たちが…って、考えなかったかっていうと、嘘になるわ。

 それでも、気づいてしまったから……行くしかなかった。

 行かなければ、彼は死ぬんだもの。どう見ても確実にね」

 

当然、これも嘘じゃあないわ。経緯はともかく。

ビョーゲンズを倒すため、はもちろんだけど、

私たちはみんな、彼を助けに行ったのよ。そこに打算はないわ。

 

「助けて、って、言われたの?」

「……いいえ。むしろ、とっくにあきらめていたのかも知れないわね。

 少なくとも、助けに入られるなんて、思ってもみなかったみたいね」

 

出まかせも苦し紛れもないからスムーズね。事前準備もあるけれど。

聞いてきたりょうこも、ウーンとうなるだけで、すんなり引っ込んだわ。

 

「みんなで引っ張り上げて助けて、少し落ち着くと、彼の方から言ってきました」

 

『ごめんなさい。そして、ありがとうございます。

 言うべきことがあまりにも多すぎて言葉が見つからない』

 

「それを聞いたから、私も…話す気になったんです。

 それから、あの事件についても話して……

 私は『その清算はできない』…許さない、と言って。彼もそれに納得しました」

「なるほどね」

 

じっと聞いていた先生が、うなずいてから口を開いた。

 

「円山先生からも聞いているわ。

 ここ最近、彼と…平光さん、たまに花寺さんが、

 いくらか会話していることがあるって。

 そういう縁から始まっていたのね」

「はい」

「…それで。その話を私達に聞かせて…

 沢泉さんは何を望んでいるの?私達に」

「彼に対し、『中立』でいることを!」

 

即答よ。もっとも大切なことをね。

こんな話をしたところで、先生から見た彼に対して、

信じろだとか言ってもそこまでの効果は望めないわ。

他のみんなは、先生以上にそうよ。

 

「味方する必要はありません…『中立』でいいんです」

「どうして?と聞くわ。正直むずかしいもの」

 

それはそうよね。私だけの問題じゃあないわ。

性犯罪に手を染めかけたヤツについて、いったん忘れろ、と強要しているも同じなのよ。

だけどここは、唯一の被害者である私の立場を使って押し通るわ。

 

「……まず、私の立場として。

 再起不能になりかねないことをされかけた私ですけれど。

 その犯人は、今までの馬鹿な行いの代償を、陸上選手生命で支払うことになったわ。

 全国レベルのスプリンターが、動かない足を引きずって生きるのよ。

 しかも家族に見放されて、ただ一人で知らない町に放り出されている……

 被害者である私としては、もう十分に罰を受けているものと思います。これ以上は望みません」

「知っているわ。彼が動かない足で、誰の手も借りられない一人暮らしをしていることはね。

 でもね沢泉さん。それをあなたが哀れむ必要はあるの?

 私が思うに……あなたの仕事だとは、とても思えないけれど?」

 

……~~~~ッ、まッッッたくその通りよ。

でも、それこそが問題なのよ!

カバーストーリーだろうと、そうでなかろうと、依然変わりなく!

正面からぶつけていくわ。先生がそれを望んでる!

 

「…………。彼は、私に謝ったわ。

 今のところ、そういう風に生きていく気になっているけれど。

 私たちが手の平を返せば、いつでもそれをやめるでしょうね。

 おそらくは、失望感と一緒に」

「だったら…」

「わからないですか?

 『失うものが何もない』

 その怖さに今!私たちは触れているんです」

 

ひなたはともかく、のどかなら私と同じことを感じているはずだわ。

あの時あいつは、嫌われ者の自分が消えて、それでおしまい、って本気で思ってたわ!

ジョセフさんの言っていたことと照らして、今ならなんとなくわかるわ。

『失う』と感じるものが何もなかったから。

あいつは『意味のある死』に突っ走ろうとした……そうよね?

 

「私の仕事じゃあない。その通りだって思うわ。

 でも、このまま放り出したなら…あいつ、もう、誰の話も聞く気がなくなるわよ。

 その先に起こるのは何?自殺しろって祈れとでも?

 ええ、人に危害を加えるよりはマシでしょうね。でも…

 私には、私たちにはッ!たまったものじゃあないわッ!

 そんなの、殺したも一緒じゃない!」

「それは私達教師が止めるし、私達の責任だわ。

 誰もあなたを責めないわよ」

「責めるわ。私が責める…私を、責めます。

 これは、のどかもひなたも…同じはずです」

 

『死んでもいいや』。

確か、『未必の故意』っていうはずよ。そういうのをね。

私が、プリキュアになったとき。ペギタンに貸してと言った力は。

苦しむ人に手を差し伸べられる強さ、よ。

それに背くのなら、もう私にプリキュアの資格はないわね。

 

「……正直、納得できないかなぁ」

 

みんな黙ったけど、りょうこが前に出てきた。

 

「あえて言うけど、されたことからしてさ。

 『死ね』って願っても全然おかしくないんだよ?」

「それは……そうね」

「ちゆ」

 

少し困った顔をしていた彼女は、そこから私の顔をのぞきこんできた。

顔を寄せて、真剣な目でね。

 

「あいつはもう悪いことをしないんだね?」

「ええ。

 今日、お願いしたのは…そこから、転げ落ちさせないためよ」

 

彼女もまた、私に即答を求めているのがわかったわ。

私の名誉と信用を賭けられるのか。そういうことよ。

賭けるわ。もう、とっくにさんざん悩みぬいた後よ。

それを確認した彼女は、首をかしげて微笑んだ。

 

「納得できないって言ったけど。

 そーいうのはちゆらしいって、そっちの方だと納得できちゃうんだよね。

 …うん、わかった。私は黙って見てることにする(・・・・・・・・・・・)

 

それから、先生や先輩がた、他のみんなの方も見て。

 

そういうことでいい(・・・・・・・・・)ですかね?先生も、先輩も」

 

地面を濡らすにわか雨みたいに、みんな、まばらに少しずつうなずいた。

黙って見ている。そういうことでいい…か。

『中立』っていう最低限の目標は達成できたと見ていいのかしら?

この言い方だと文字通り、どこかから監視されかねないようには感じるけど……

そこは、悪いことをさせないように手綱を握っとくしかないわね。

まあ、実際に更生の意志は見せてるんだし……ハァ。

面倒なことになったわ。

 




ある意味、原作ヒロインによるオリ主ageの話になってますが。
悪評を元に殺しに来る人間が現に現れた以上、このタイミングで
ちゆが動かないことはありえないと判断しました。
なんか、総集編を書いてる気分になる回だった。

ちなみに、りょうこの声はトリッシュ。

ご意見、ご感想、誤字脱字報告、ぜひよろしくお願いします。

現時点で、この作品に何を求めて読んでいますか?

  • 心優しいプリキュアたちらしい熱血バトル
  • ジョジョらしいどんでん返しの知略バトル
  • プリキュア世界で動くジョジョキャラ
  • ストーリー上の謎がどう展開するか見たい
  • 主人公たちがどう成長していくのか見たい
  • 人間関係がどう変わっていくか見たい
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