プリキュアとの奇妙な冒険‐ようこそヒーリングっど♥へ!‐   作:アンチマターマイン

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次にお前は「これがやりたかっただけだろお前」と言う!


平光ひなたは飛び込む

そもそも、今日を迎えるにあたってうすうす考えてはいたことだ。

さらに、DISCが全員に適応するというなら、障害は一切ないといえる。

問題は、すべて無くなる。

 

「覚えられているのは、俺の顔だけだ……

 DISCがそこに無ければ問題はない。そうだな?」

「えっ?それは、そうだけど…どういうこと?」

 

目を丸くした花寺のどかが聞き返してくるが、それに構わず続ける。

どのみち、質問の答えにしかならない。

頭から取り外したままのDISCを、花寺のどかに差し出す。

 

「DISCをプリキュアが持っていればいい。

 俺が持っているより、はるかに安全だ」

「えぇー、それは……それは、そうだけど!

 鳴滝くんが、安全じゃないような……何か見落としてるのかな、わたし」

「見落としているな。だが教えない。

 知られていないからこそ有効な策があるんでね」

「…そうなの?」

 

首をかしげたまま引き下がる彼女。

実際のところ、何も見落としちゃあいないんだがな。

考えを知られれば絶対に邪魔をする。こいつらはそういう奴らだと見た。

 

「正直、検討もつかねー策だけどよ。

 マジに大丈夫だってよ、おめー約束できんの?」

「ああ、約束する」

 

だから、黙って俺に騙されろ。

そこに関しては敵でしかない。敵をあざむくのは当然だからな。

俺は平気な顔で嘘を吐く。もともと失うものは何も持っちゃあいない。

痛くもかゆくもないな…

ややあって、差し出したDISCをニャトランが受け取った。

そこを経由して、花寺のどかの手に渡る。

 

「ウソだったら…覚えてろよ?」

「ああ、覚えておく」

 

その時にはすでに負け犬の遠吠えだけどな、その言葉。

いや、負け猫かな…いいや、負けているのは最後まで俺だけだ。

こいつらをそれに巻き込むわけにはいかないんだよ。

なんとも言えない表情でこっちを見ているラビリンにペギタン。

どうやら不審に感じているらしいな…

話すことは話し終えたんだし、さっさとお暇しよう。

 

「……クシュン」

 

ラテが唐突に咳をした…犬が?

いや、そういうものか?猫のクシャミは見たことがある…

 

「ラテ様!」

「ビョーゲンズだペェ!」

 

一斉に殺気立った反応を見せたのはヒーリングアニマル御一行。

花寺のどかも速かった。

すかさずラビリンから聴診器…ファンシーな…を受け取り、ラテにあてる。

 

「水のエレメントさん?…どこの?

 …遠く?温泉?…あっち?」

「ど、どの温泉ラビ!」

「ここは温泉地だペェ。候補が多すぎるペェ」

 

ビョーゲンズが現れたことを察知したが、場所が特定しきれない。

どうも、そういう話をしているようだ。

これはまずそうだ。アレを暴れるに任せていたら死人が出る。

 

「プリキュアに変身して突っ走るしかないんじゃあないか?」

「そ…それしか方法はないラビ。

 近づけばだんだんわかってくるはず…」

「やっ…と見つけたぁぁーッ!」

 

これまた唐突に突っ込んできた何かがいた。

こいつは…昨日の『何か言ってたの』だ。

こんな雑木林の真ん中に何の用なんだ?

ヒーリングアニマルたちは一斉に隠れた。

具合が悪いらしいラテには無理だったが。

 

「やいやい!こンなトコにのどかっち連れ込んでさぁーッ

 アンタ何するつもり!?」

「…うへェ、メンドくせぇ。

 花寺のどか、ここは引き受けるからサッサと行けよ」

「う、うん。それじゃ、ひなたちゃん。

 わたし、ラテが大変だからー!」

「クゥン…」

 

スタタタタ!

音と土煙を立てて花寺のどかは走り去っていった。

当然、ラテを抱えてだ。

よし。DISCを持たせたまま去らせることには成功だ。

あとは瑣末ごとだ。こいつの相手はテキトーでいい。

 

「ラテ?あのワンちゃんのこと?」

「見ている前で具合が悪くなった。

 いったん連れて帰るんだろうよ…邪魔してやるな」

「邪魔?そういうことなら、そんなことないない!

 ウチ、動物病院だもん。追っかけなきゃ!」

「…ハァ?」

 

直後、花寺のどかの後を追って走り出す何か言ってるの。

まずい、まずすぎる。

このタイミングで追いかけられたら、プリキュアの秘密がまず確実にバレる。

こいつは一体何なんだ?俺のことスデに忘れ去ってる?

 

「おいッ!お前はいったい何しに来たんだ!」

「もうアンタは後!ワンちゃんの方が大事!」

 

忘れてはいないらしい。足は止まった。

このまま少なくとも2、3分、足止めしなければ…

 

「追わなくても電話番号とかあるだろ。

 それ使ったら?」

「あッ…昨日聞いてた。そうする」

 

出るわけがない。あいつは今頃プリキュアに変身しているんだからな…

スマホにしばらく耳を当てていたこいつは、

少し苛立った表情を浮かべて通話を切った。

 

「出ない…気づいてないじゃん」

「ショートメール出しとけば、後から電話来るよ。

 病気なんだ。当然最初に探すのは動物病院だろ」

「そりゃそっかぁ。んじゃ連絡待ちだね」

「だろうよ。じゃ、俺はこれで」

「んじゃね」

 

俺は去る。ヤツとは反対方向に。

しばらく歩く……

 

「…………えっ!?」

 

振り向いた。もうヤツの姿は見えない。

逃げ切ったのか?あんなことで?

こんなクソくっだらねーゴマかしで俺は逃げ切っちまったのか?

チョロい。チョロすぎる…

だとしたらヤツは、想像を絶するノータリンだぞ!

……マジで?マジか……世の中は広かった。

とたんにバカらしくなった。帰りにスーパー寄ろう。

ホントは100均に行きたいが、あれはゆめポートにしかないし。

雑木林を抜け、公園にある噴水付近に出てきた。日光がまぶしい。

 

…本当の危機はここからだった。

俺の望んでいたものが、望んだ形で来なかった。

 

「進化しろ。ナノビョーゲン」

 

さらに振り向いたその先にいたのは、あの顔色の悪い少年。

確か、ダルイゼンとか言ったっけか…

 

「よせばいいのに…シャシャり出てくるから……メンドくさ」

「お前ッ……」

「命令が出ちゃったよ。お前を連れて帰ってこい、だってさ」

「メェガァァ~~~ビョオ~~ゲン~~~~」

 

新たな声がしたのは俺のすぐ脇だ。

メガビョーゲン。昨日と同じタイプ!樹木がモチーフ!

フー・ファイターズの『銃弾』では有効打がまったく望めない!

対する俺は、DISCなし!丸腰!

爆弾を新たに作るヒマももらえないとは…

つまり、『詰み』だ。終わった。

 

だが、これは『次善』でもある。

今の俺の体のどこをホジクッたとしてもスタンドのスの字も出やしないんだ。

とはいえ連れ帰られたら、向こうの何かの特殊能力で記憶をホジられる可能性があるから、

それだけを回避すればいい。要するに…この状況を利用して、うまい具合に自殺する!

 

周りの人間はあっという間に逃げた。

いいね。元気な両足があって。どいつもこいつも鍛え方がなっちゃあいない…

さて、可能な限りは戦わないとな。石をいくつか拾ってポケットに詰めてある。

一応、こういう可能性もあるとは踏んでいたからな。

狙うべきはメガビョーゲンだ。ダルイゼンの方がまだ有効打を望める気がするが、

座り込んでるあいつが本気になったら、気絶させられて連れ去られるまで、たぶん一瞬だ。

メガビョーゲンなら行動がわかりやすい。怒らせさえすればいい。

瞬時に手首にスナップを効かせる。メガビョーゲンの頭を小石が打った。

 

「グッ、メガァァァーーッ!」

「何それ。出し惜しみ?…ま、楽になるからいいけど」

 

激怒したメガビョーゲンが繰り出すムチのような一撃。

俺に逃げられるわけがなかった。ぶっ飛ばされる。

草地から石畳までが頬を擦り下ろし、やがて止まる。

松葉杖は手放さなかった。まだ、最低限、立てる。

やつが待ってさえくれればだけどな…

痛みはほとんど感じていない。気が昂っているみたいだ。

くだらない人生だけど締めは締めだからな。悪くない。

石を一個握りしめ、やつに向き直る。

 

「メガァァ~~~ッ」

 

巨大な足音を立てて迫りくる巨体。

そのまま来い。そして踏みつぶすんだ。それで全てが終わる!

煽るようにさらに石ころを投げる俺。やつは止まらない。

 

これは俺の望んでいたものだった。最善ではないにせよ次善だ。

さっき俺は、『望んでいた形で来なかった』と言ったな?

そいつは嘘じゃあない。だって、なぜなら…

 

「待った待った待った待ったぁぁーーーッ」

「メガ?」

「…………ハァ?」

 

『何か言ってたの』が雑木林を突っ切って、戻ってきやがったからだ。

そして木の枝やら空き缶やらをメガビョーゲンに向かって投げやがったからだ。

 

「離れろーーッバカヤローッそこどけーッこのヤローッ」

「メ、メガッ!?メガッ、メガッ」

「バッ……バカヤローはてめーだァァーーー何してやがるッ帰れ!」

「ほっといたら死んじゃうじゃん!」

 

手持ちを投げつくした勢いで俺に駆け寄ってくる。

なんだよこれは、どうすりゃいいんだ?

 

「お前わかってんのか?俺は鳴滝魁だぞ?

 助けたところで誰も喜ばない、帰れ!」

「実はチョットだけそーしよーかって思ったよあたし。

 でもさぁー、結論!助ける!決定!」

「なんでそうなる!」

「そーしないと、きっとゴハンがマズくなるもん。

 もう、他は…どうでもいいや!」

「…な、なんじゃあそりゃあぁぁーー」

 

マジになんなんだこりゃあ。理解ができない…

そんなこと言ったって、お前が死ぬぞ?

どういう状況かわかって突っ込んできたのか?

理解しているから突っ込んできた…それでお前はどうするんだ?

 

「バカバカし……そいつからやれ。メガビョーゲン」

「メガァァァ~」

 

ああ、言わんこっちゃあない!

そりゃあ、そうなるだろうよ!俺の動きは超ノロイんだから。

邪魔者さえ潰せばいくらでも取返しがつくんだから。

 

「で、このオバケ、何?ウワサの怪物?」

「たぶん、それで間違いない。今からでも逃げろ。

 別に俺はそれでお前を恨んだりはしないからな」

「ヤダッつってんじゃん。アンタがよくてもあたしがよくない」

「ぐっ…聞き分けのないやつ」

 

一般人二人、バーサス、メガビョーゲン。

しかも一般人にハンデ付きだ。どうしてこうなった。

なんとしてもこいつを逃がさなければ。

死の恐怖を感じさえすれば、何を言う必要もなく逃げてくれるか?

そのはずだ。普通、一般人に死の覚悟なんていらないんだ。

 

「メガァッ!」

「ふぇっ?わぁぁッ!」

 

メガビョーゲンが動いた。薙ぎ払う軌道だ!

俺も彼女も、やつの軌道に入っている。

先に打たれるのは…彼女だ!

仕方ない、真後ろに回り込んでクッションになるしか…

 

ド ン

 

「メッ……メガァァァァアァァ!!」

 

メガビョーゲンが突然のけぞった。

腕が燃えている…よく見ていなかったが、何かがやつを撃ち抜いた?

 

「えッ?何、今の?なんかビームが、空からビーム!」

「何今の、は俺が聞きたい。見てたのか?」

 

その辺を転がりまわって消火しているメガビョーゲンを後目に聞く。

ビームとは何だ?…花寺のどかが戻ってきたのか?いや、早すぎる。

それに、あいつの放った『螺旋ビーム』に敵を燃やす性質は無かった。

答えを出したのは、相変わらず座ったままのダルイゼン。

 

「へぇ。お前もなんだ」

「何よアンタ、あの怪物、アンタのシワザ?」

「空、見てみなよ……太陽がふたつあるでしょ?」

「……えっ、えぇぇぇーーーッ!?」

 

俺も見た。太陽はひとつ。俺には見えない。

……『今の俺には見えてない』!

『今の俺には見えない太陽』!

そして暑い!春まっただ中の気温じゃあない。

異変が着実に広がりつつある。これは…確定だ!

 

「お前……スタンド使いだったのか!」

「えっナニそれ?サスガのあたしもかなりコンラン…」




太陽サンサン、熱血パワー!
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