プリキュアとの奇妙な冒険‐ようこそヒーリングっど♥へ!‐   作:アンチマターマイン

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一週間分、思いっきり穴が開いてしまいました。
プロットの一部にちょっとばかり規模大き目の見直しが発生した影響です。
この分の埋め合わせはいずれ必ず。

今回の語り部はのどかっち。
文字数は5500字ちょい。標準量。



枯れることなきブラッド・フラワー‐その3

あの後、さらに話し合ったんだけどね。

看護師さんの帰宅時間とかを押さえるんじゃあなくって…

チリ・ペッパーで直接、みんなの前に連れてくることにしたの。

直接会って話を聞いたとして、トボけられてのらりくらりかわされたら

時間を無駄にするだけになる、って鳴滝くんが言い出したんだよね。

だから『誘拐』しよう。そう鳴滝くんは言ったの。

そんな物言いするから、ひなたちゃんビックリしちゃったでしょ?

 

『要は、逃げ場をなくして話を聞かせようってことね』

 

咳払いをしてから、言い方を直したちゆちゃんに鳴滝くんはうなずいたけど、

相談が終わった後でチョット怒られてたね。

胸を張って必要だって言えるなら、わざわざ悪く言う必要ない。って。

現にわたしたちは納得してるもん。

今の状態はすでに危険で、いつおかしなことになるのかわからない。

強引にでも安全を確保するべきだって、わかるよ?

夜中を待たずにニャトランはシフト表を押さえてくれた。

それによると、今晩も『出』になってたから決めた。決行は今日!

そして今は深夜二時。みんな集まってる。

どこにって?無人駅だよ!近所に家すらもないトコ!

秘境駅っていうらしいけど…ちなみにこの場所探したのわたしね。

鳴滝くんだけにやらせすぎてるもん、こーいうコト。

学校のジャージ来てる鳴滝くん以外はみんなプリキュアに変身してる。

もちろん、ここに出てくる前に監視カメラは故障させてる…ゴメンナサイ。

 

「いるんだな、ニャトラン」

「いるぜ、目の前だ!」

「作戦、開始ィィーーーッ!」

 

ノリノリで号令を出すスパークルに、

ヒーリングステッキから歯を食いしばらせたみたいな顔を見せてるニャトラン。

次の瞬間には、看護服姿の女の人が駅のベンチに横たえられてた。

手はず通りって言うのかな?

悲鳴とか上げられたら大変なことになりかねないし、

連れてきた先のこの場所で逃げ回られたら、こっちもこっちで大変だからね。

チリ・ペッパーで首の後ろに当て身(花京院さんのマネ)を入れて気絶させてから

ここに連れてきて、意識がない間にDEATH13で事情を説明する。

この人のスタンドがどんなものであろうと、これなら無力化できるの。

自動追跡型だったらマズいけど、そうじゃあないことは確認済みだもん。

 

「…ヨシ!ウマくいったぜ……

 でもよぉー、ヤダよなぁー。何もしてねーヤツ殴るとか。

 こんなん慣れたくねェーよ」

「これっきりにしたいものよね…グレース、お願い」

「うん」

 

持ってきた懐中電灯をつけて、女の人の顔を照らす。

どういう人なのか、見た目くらいは確認しなきゃと思ったから。

でも、ここでまた驚くことになっちゃった。

わたしが、すでにこの人を知っていた。

ショートでちょっと巻き毛気味のクセッ毛。間違いなかった。

 

「佐久間さん……」

「エッ、知ってるヒト?もしかして」

「お世話になった看護師さんだよ。

 一時期、すごく迷惑かけてた…」

 

シフト表の名前を事前に聞いてれば予想できたのかも。

蜂須賀先生以外がいるのは全然当てにしてなかったのもあって、

最初から考えてなかったんだよね。

 

「じゃあ、話しやすいじゃん!ラッキーだよね?」

「うん、見ず知らずよりは」

「どういう人なの?佐久間さんって」

「聞き上手な人、かな?

 何がイヤだとか、うまくいかないこととか、

 いつも聞いてもらってるばっかりだったなぁ…」

 

快方に向かいだしてからしばらく経った頃。

自由になってくる体に慣れ始めると、逆に不安が襲ってきたの。

蜂須賀先生の顔を見ていれば、お母さんとお父さんの顔を見ていればわかった。

体調が回復してる原因がわからない。

お医者さんのわからないところでわたしが治っていってるんだって。

なら逆に、いつ元通り(・・・)になっていくかもわからない。

でも、そんなこと言ったって困らせるだけだよ。

だから言わなかった。わたしは何も言わずにこらえてた。

言わなかったけど、その代わり…スゴく、イヤな子になってた。

ちょっとしたことですぐに泣いたり、怒ったりしてた。

そして、厄介なことだけど…その頃のわたしは、そんな自分を自覚できなかったの。

しばらくして、蜂須賀先生がそれに気づいてくれた。

お父さんもお母さんもいる前で、わたしは先生に謝らせちゃったんだ。

不安にさせてごめんよ、のどかちゃんの優しさに甘えてごめんよ、って。

優しいなんてとんでもなかったよ。わたしは困らせてるだけだったのに。

先生はもっと言ってくれた。不安や辛さは隠さないで言ってほしいって。

のどかちゃんと一緒にそれと戦うのが、お医者さんの役目なんだって。

そこで大泣きしたのをきっかけに、わたしの情緒不安定は収まっていったけど…

その間、一番迷惑をかけた看護師さんが、この人だ。

 

「…って、どうしたのスパークル?

 なんかわたし、ヘンなコト言った?」

「ンー、なんか今ののどかっちからは想像つかなくて」

「人は成長するってことでしょう?

 それを助けてくれた人なら、なおのこと放っておけないわね。

 始めましょうグレース。いつ目を覚ますかわからないわ」

「そう、だよね」

 

振り返れば、見守られて変わってきたわたしがそこにいて。

それはきっと、これからも変わらないんだと思う。

ううん、もしかしたら根本は何も変わってないのかも、わたし。

鳴滝くんが身構えたまま動いてない。わたしの今やるべきことをしよう。

 

「じゃあ、始めるね?…DEATH13」

 

夢の中ならわたしは無敵。怖いものは何もないよ。

それでも、人の心は思うようにできない。

出来たとしても、そんなおぞましいことしたくない。

そんなの、ホワイトスネイクがひなたちゃんにやったことと何が違うの?

力に何の意味もないのなら、頼れるのはわたし自身の説得力だけだね。

『夢』の中に入った。佐久間さんを連れてくる。

場所はヒーリングガーデンにした。ヘンな威圧感与えたくないし。

 

「……うっ…え?どこ?」

「お久しぶりです。佐久間さん」

 

バッと体を起こしてキョロキョロしだした佐久間さんの前に出る。

当然、わたし花寺のどかの姿だよ!

DEATH13なんかの姿で出たら、ひっくり返って気絶しちゃうかも!

キュアグレースの姿で出ても、ゼンゼン知らないヒトで混乱するダケだし。

 

「えッ…あ、あなた。まさか花寺さんッ!?

 どうしてこんなところに?

 あ、そ、それより!ここはどこなの?

 仕事中よ私?戻らないと…」

「そんなに時間はとらせないです。

 少し、お話を聞いてくれませんか?」

 

こーやってワタワタしだすのも予想してよかったかも。

いつもは落ち着いてる人なんだけどね。

ビックリすると取り乱しちゃうの。

いきなり怒ったり泣いたりしてたあの頃のわたしがどれだけ迷惑をかけたか、

この反応だけで思い出しちゃう。

 

「そうはいかないんだけど?

 病院に戻れるの?時間どれくらいで?

 私を待ってる人たちがいるの、わかって!」

 

…だけど、この必死さ。以前にはなかった態度だよ。

ううん、そりゃあ必死さはあったけど。仕事にいつも全力だったけど。

方向性が違う(・・・・・・)のを感じる。

ちょっと、突っ込んでみよう。敵対的にはならないように。

 

ウサギさんの治療(・・・・・・・・)を、みんな待ってるの?」

「ッ!?

 なんであなたがそれを?一体なんなのッ!?

 と、いうより…見えるの?私のザ・キュアーが……うッ?」

 

佐久間さんの目が見開かれたままこわばった。

『夢』の中でスタンドは出せない。スタンドを出したまま眠らない限り。

わたしに向かってスタンドを出そうとして、だけど出来なかったんだね。

だからこそ、面会にここを選んだんだけど。

 

「ザ・キュアー!……えぇ?

 …出ない?……どうなって?う……う!」

 

ここまで取り乱した佐久間さんを見たことがない。

じりじり後じさりしながら、左手、右手とこめかみに当てて首を振ってる。

このまま放っておいたら吐いてしまうんじゃあないかってくらい、息が荒い。

これじゃあ話にならない…何より、見てられない。

ゆっくりと歩み寄ったわたしは、そっとその腕を手にとった。

 

「佐久間さん、落ち着いて?」

「落ち着けるわけッ…」

「『夢』から覚めれば元通りですから。

 佐久間さんが治療の力を使えるように、わたしは『夢』を操れるんです。

 少し、わたしの話を聞いてほしくて、佐久間さんを『夢』に呼んだんです」

 

殺されそうな顔をするまでのことなのかな?

一瞬、敵意混じりの目まで向けてきた佐久間さんだったけど、

精いっぱい気持ちを抑えたんだと思う。

深呼吸みたいに一回、二回息をつくと、居住まいを正してわたしに向き直った。

 

「……『夢』。『夢』ね…

 ここに閉じ込めるだとか、そんなつもりはないのよね?」

「ありません。

 というより、今寝ている佐久間さんの目が覚めれば、もう『夢』の外ですよ」

「…。信じるわ。花寺さんだもんね。

 あなたはわけもなくひどいことをする子じゃあないもの。

 聞くわよ。話があるなら、話してくれない?」

 

落ち着いてくれた。かなりツッケンドンだけど。

我慢の限界みたいなところを抑えて、それでも聞こうとしてくれているんだよね。

そこを踏まえて話をしないと…

この様子だと、スタンドの回収だなんて話は間違っても出来ない。

たぶんだけど、スタンドを使って誰かを治療することに、ものすごく必死になってる。

そのあたりを把握しないままに手を出せば、完全に敵対しちゃう。

病院の中のことがなければ、最悪、一方的に取り上げてオシマイ…も最後の手段だけど。

…ううん。絶対にダメ。その痛みを、今のわたしが測り知ることはできない。

わたしは『お手当て』したいの。傷つけて、後は知らないなんて、嫌。

慎重に話していった。スタンドという概念のこと、そのルールのこと。

それを狙って使い手を悪の怪人に変化させようとしてくるビョーゲンズのこと。

DISCのことは話さなかった。自己嫌悪だけど、どう転ぶかわからないうちに伝えるのは無理。

でも、それこそが。その煮え切らない態度が、補強しちゃったのかもしれない。

佐久間さんの勘違いを。

 

「そう……ありがとう。そういう法則がある力なのね。

 私だけじゃあ知りようがなかったわ。

 知ってさえいれば身を守れる…社会の決まり事と同じね」

「はい」

「そして、この力が突然目覚めた意味。

 ずっと考えてきたけれど……

 必要で、必要としてくれる人がいて。

 その中で目覚めた力なら…やっぱり、これは使命ということ。

 あなたがこうして私を助けにきてくれたように、ね」

 

『そうです』とも『違います』とも言えない。

『そうです』は勘違いを推し進めちゃうし、

『違います』はDISCの存在に片足を突っ込んじゃう。

確か、前に鳴滝くんを死なせようとしたっていう松永先生も、

いきなり身に着けた能力を使命だって受け取ってたよね?

そんなものなのかな?周りに誰もいないと。

『命令』DISCの可能性も考えるべきかも……

 

「不安そうな顔しないの。

 病院の中にビョーゲンズとかいうヤツの気配があるのよね?

 手伝うわ…探してあげる。

 私だって、病院の中にそんなヤツがいるのは見過ごせないのよ?」

「お願いします。

 さっきも言った通り、ラテが…

 ラテっていう名前の犬なら彼らを探知できるので。

 詳しくは、後から手紙を届けます。仲間のスタンドで」

 

チリ・ペッパーの能力も正確には教えていない。

ましてや名前を教えるなんて、もっての他。

ビョーゲンズに知れるのも危ないけど、

今も得体が知れないままのホワイトスネイクに知られるのが一番イヤ!

どこまで探られてるのかな、わたしたち。

こっちからではわかりようもないんだけど。

チリ・ペッパーがどんなに強いスタンドでも、

性質を知られて対策しつくされたら、どうしようもない。

スタープラチナでさえ、それでやられちゃってるんだよ?

大切なのは、ビョーゲンズを倒して、わたしたちも佐久間さんも助かること。

そのためには、用心深くいかなくっちゃ。

 

「じゃあ、解放します。

 必要があったら、またこうやって呼びますから。

 その時はごめんなさい」

「気にしないで。

 あなただって必要だからやっているんでしょう?

 私も協力は惜しまない…むしろ、うれしいわ」

 

佐久間さんの無邪気な顔が、つらい。

わたしより、ずっと大人のはずなのに…どうして?

そんな気分に気づかないみたいに、わたしにそっと顔を寄せてきた。

昔、わたしを安心させてくれようとしてたみたいに。

 

「のどかちゃん。私ね…

 あなたのお世話をしながら、あなたが苦しんでるのをずっと見ていながら。

 ただの看護師で、何もできない自分をただ棚に上げて。

 蜂須賀先生を恨めしく思うだけだったわ…

 私はお医者さんに、なれすらしなかったのにね」

「……。あきらめてないんですよね?

 お医者さんになるって…そう、言ってましたよね」

「そんなことも、言っていたわね…

 でもね、思うだけなのはもう終わり。私は力を授かったわ。

 蜂須賀先生にも出来ないことが、今の私にはできるのよ。

 だからまず、ここ(・・)から始める。

 誰も私を疑わないようになるまで、みんなを癒し続けたいの」

「何を、するつもりなの?

 それで佐久間さんは、どうなりたいんですか?」

「お医者さんになるのよ。みんなを助けられるお医者さんにね」

「…………」

 

この人は、スタンドを使って仕事をするつもりらしい。

ホントにお医者さんになるつもりらしいね。

困った人や、大変な目にあった人のお手当てをするっていうのなら、

わたしたちと同じで…仗助さんとも同じ。

スタンドで仕事をするっていうのなら、トニオさんがそう。

辻彩さんだってそうだったよね。

だから、それ自体はそんなにおかしいっていうほどのこともない。

うまく隠し通して社会に溶け込んでいけさえすればいいんだもん。

じゃあ、この佐久間さんはどうなのかな?

怪我や病気を治すスタンド、ザ・キュアーでお医者さんをやっていけるの?

考えたって、すぐには理屈のある答えは出そうにないけれど。

今、わたしの直感だと!

 

このひとは無理だ(・・・・・・・・)いずれ破綻する(・・・・・・・)

 




この佐久間某は原作に影も形も存在しないオリキャラです。
原作主人公に関わりの深いオリキャラっていうのはかなり有力な地雷要素。
この佐久間某も今までのオリキャラ同様、基本使い捨ての予定とはいえ、
マジ気を付けて扱っていかんと……

ご意見、ご感想、誤字脱字報告、ここすき等、ぜひよろしくお願いします。

現時点で、この作品に何を求めて読んでいますか?

  • 心優しいプリキュアたちらしい熱血バトル
  • ジョジョらしいどんでん返しの知略バトル
  • プリキュア世界で動くジョジョキャラ
  • ストーリー上の謎がどう展開するか見たい
  • 主人公たちがどう成長していくのか見たい
  • 人間関係がどう変わっていくか見たい

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