プリキュアとの奇妙な冒険‐ようこそヒーリングっど♥へ!‐   作:アンチマターマイン

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新年、あけましておめでとうございます。
こうも更新が遅れると、まるで無断欠勤みたいな気分に。
週一の更新ペースを保たないと、いつ完結できるかわからん。
正直、あと三年はかかりそうな……楽しく、ガンバろう。

あと、前回のタイトルを変更しました。
今後も、後から変えるべきだと思ったら変えます。
ジョジョからしてそうだし。

今回の語り部はのどかっち。
また、のどかっちばっかりになるかも。
文字数は8000字強。標準量よりは多めだけど、遅れた分には見合わない。



目覚めて、黄金の風!ジョルノの見る夢‐その1

今晩は、みんなへの『夢』は無しなの。

正直、最悪のタイミングなんだけどね。

ちゆちゃんは……まだいいの。よくないけど。

今日のことで、すごくまいっちゃってるから、放っておきたくないよ?

でも、ちゆちゃんには家族がいる。

家に帰れば、また別の居場所があって、そっちに気を使うっていう意味だってある。

だから、すぐにどうこうなることはないと思うの。ペギタンもいるんなら、なおさらね。

危ないのは鳴滝くんだよ。どうしてちゆちゃんがあんなことをしちゃったのか?

どう考えても原因は去年の県総体なんだもん。

あなたは私を傷つけた悪人なのよ、って、痛みをもって思い知らされたも同じ。

気絶から覚めて、何があったのかを一通り思い出した鳴滝くんは、

口では『仕方ない、気にすんな』って言いながら弱り果てちゃってて。

それを見たちゆちゃんが怯えちゃうし、ひなたちゃんが一瞬だけ責めるみたいな視線を向けたから

もっと縮こまっちゃうし。あんなちゆちゃん見たの初めて。

それから、みんな逃げるみたいに出て行って、

ほとんどそのまま解散したけど…これは、間違いだとは思わないよ。

あのまま鳴滝くんの家にいたら、ふとしたことでケンカになりかねなかったと思う。

ちゆちゃんは、ちゆちゃん自身にしか深さのわからない『恨み』を持っているのに、

ひなたちゃんにとって、鳴滝くんは『恩人』でしかないの。

理屈でわかっていても、感情が衝突したら大変なことになっちゃう。

どっちかが完全にやっつけられるか、『キレて』収拾つかなくなるか。

それよりももっと高い確率で、ちゆちゃんが折れて謝るとは思うけど……

オチがこの中のどれになろうと、わたしたちの間に深い深い傷を作ることになるの。

プリキュア解散、空中分解ッ そんなことになったら、わたしたちは終わり!

ここは『良かった』って思わないと。一歩下がった位置にいられるわたしが三人目だったことを。

ちゆちゃんと鳴滝くんの間にあったことは、ちょっとやそっとでどうこうできる問題じゃあない。

佐久間さんとお母さんのこともそうだったけど、

他人がしてあげられることって、すごく限られてる。

ヘタしたら一生かけてもダメかもだし……腰を据えていかなきゃあ、だよ。

だから今日は、ニャトランに鳴滝くんのところへ行ってもらって、まかせることにしたの。

F・Fもいるけど、DISCを取り出して無理やり黙らせるって出来ちゃうんだよね。

そんなこと、普段の鳴滝くんならしないけど。

心が弱っていると何するかわからないから。前科がね…

ここまできて、やっと最初の話に戻るよ。なんで今晩は『夢』無しなのか。

一言で言うと、ジョルノさんに接触するため。

今回の佐久間さんの事件の直後、病院全体がスキだらけになったところをチリ・ペッパーで調べて

ジョルノさんの置かれてる状況がわかった……これが、運命っていうのかな?

『わたしと同じ症状』。ジョルノさんは、わたしと同じ(・・・・・・)原因不明の衰弱に侵され続けていたの。

そして、ラテが感じていた嫌な予感は、まさにジョルノさんから出てきていたんだよ。

担当していた先生まで、わたしと同じ。蜂須賀先生!

当然なのかも。わたしと同じ原因不明なんだから、

同じものをわたしで経験した蜂須賀先生が担当になるのも……

重要なのは、ラテが感じ取った(・・・・・・・・)っていうこと。

ジョルノさんの症状がビョーゲンズのせいだとしたのなら。つまり、わたしも?

謎が解ける時が来たみたい。

わたし個人としても放っておけないし、なによりジョルノさんの容態が危ういの。

今日のことで絶対安静の治療室から一度ベッドごと避難させられたジョルノさんは

症状が一気に悪化しちゃってる。先送りしたら死にかねない。

…ホント、滑り込みセーフだよね。ラテの予感を調べるのが何日かでも遅れてたら、

ブラッド・フラワーがダルイゼンと一緒に病院を汚染して、たぶんジョルノさんは死んでた。

そのまま、ラテの感じた『嫌な予感』も解き放たれちゃったんじゃあないかなぁ。

そこはまだ解決してないし、解決するためにここにいるんだけど。

 

「ココならヒトは来ねーと思うぜ、グレース。

 射程距離はヘーキかよ?」

 

雑木林の中の鉄塔まで送ってくれたチリ・ペッパー。

つまり、ニャトランがわたしに確認してくる。

本体は鳴滝くんのところにいるけど、スタンドは電気が届けばどこにでも行けるからね。

ニャトラン経由で鳴滝くんとも伝言ゲームで話せるけど、これから行くのは『夢』の中。

起きたまま『夢』に入れるのは、DEATH13の本体であるわたしと、

キュアグレースとして一体になっているラビリンだけなんだよね。

 

「平気だよ、ニャトラン。

 ここからなら、十分病院まで届くから」

「じゃ、早速やろーぜ。

 ジョルノは昏睡(コーマ)状態…常に寝てるも同じだもんな」

「うん。だから、DEATH13ならお話できる。

 そうやって、ビョーゲンズと関わった経緯とかがわかれば…」

「今日この場で浄化しちまうってこったゼ!」

 

状況証拠的にはもう確定だ、って、ちゆちゃんも鳴滝くんも言ってたけど。

お手当ては慎重じゃなきゃあいけない。

ダーティ・ウォーターを鳴滝くんの体から追い出した時にやったみたいに

浄化の力を直接体に送り込めばいいとは思うけど、それにすら耐えられない可能性だってある。

最悪、みんなを連れてきてヒーリング・オアシスだね。

 

「始めるね……『DEATH13』」

 

口で言うのは合図だよ。DEATH13は、現実世界ではまともに見えない影だから。

そのまま、すでに知っているジョルノさんの治療室に送り込む。

今日、別室に移動させられてるけど、それもチリ・ペッパーで調べた後だよ。

いつものカフェ・ドゥ・マゴにジョルノさんを招待。

わたしの対面に座らせた状態で出したんだけど……

 

「ね、寝てるラビ?…『夢』の中で?」

 

動かないの。出した瞬間から、机の上に突っ伏しちゃった。

ただごとじゃあない。わたしはすぐに場所を杜王グランドホテルに変えて、

ジョルノさんをベッドの上に移した。

 

「…スゴイラビ。こうしてみると…ホントに、DIOラビ」

「似てるよね。似てる、けど……顔つきが違う」

 

親子だっていうだけあって、そっくりではあるんだよ?

でも、DIOとは違う。明らかに。

『妖しい色気をたたえた美しさ』の上に、邪悪さと冷酷さで

顔の彫りを彩っていたDIOは、正直、顔も見たくないような悪のカリスマ!

見てしまったら、声を聞いてしまったら…『惹かれてしまいそう』それが怖いの。

今のわたしじゃあ…今のちゆちゃんに、ひなたちゃんじゃあ……

神様みたいな『安心』に身をゆだねてしまうんじゃあないかって。

鳴滝くんもダメだと思う。全員まとめて役者が違う。今のわたしたちだと。

なんとか逆らえそうなのはF・Fくらいだと思うな。

比べて、ジョルノさんにそれはないんだよね。

……すごく、カッコいい。キレイ……なのはそのままだけど、

顔から、そんな神様じみたものは感じないの。

DIOが神様だとしたら、ジョルノさんは王子様……みたいな。『高貴』っていうのかな?

でも、それよりわたしが目で見て感じたのは、弱り果ててること。

ちょうど今日、ちゆちゃんと鳴滝くんがなったみたいな、

取り返せない失敗をしちゃった時の顔。

それを何度も重ねて固まっちゃったみたいな雰囲気を感じるの。

 

「ラビリン」

「ラビ?」

「ここにいるのは、ジョルノさんの魂だよね?

 魂は、この世界なら普通の人間と同じように動き回れるはずだけど、

 それもしない。その元気さえもないんだとしたら」

「…心が、死にかけてるラビ?

 助けが間に合わなかったエレメントさんみたいに」

 

やっぱり、ラビリンもそう思うよね。

想像を超えてまずいことになってるみたい。

『夢』の中なら話せると思ったのに。

そうやってお手当ての方法を決めようと思っていたのに。

すでに、話すらできないところにまで容態が悪化しちゃってる。

 

「ど、どうするラビ?

 これじゃあなんにもできないラビーッ」

 

考えなくっちゃ。このまま何もせずに帰ったら、たぶんジョルノさんは死ぬ。

わたしの病気の秘密も、それっきりわからなくなる気がする!

ここは『夢』の世界で、わたしが許す限りは誰でも『夢』を操れる。

なら……ジョルノさんに『夢』を手渡したなら?

 

「できるかな…やるしか、ない」

「何をするつもりラビ、グレース?」

「『夢』の中に魂があるのなら、眠っている魂が見ている夢も『夢』

 それを、DEATH13で全部拾って実体化できれば」

「魂が見ている『夢』の中で話せるっていうラビ?」

できて当然だよ(・・・・・・・)、ラビリン。わたしにはできる(・・・・・・・・)!」

 

ジョルノさんの魂を押し広げるように。

あるいは、逆にわたしたちを小さく縮めて魂の中に押し込めていくように。

DEATH13で世界を操り、ジョルノさんに合わせて、なじませていく。

絶対にできるの。できるから、ジョルノさんも『夢』で意思表示できるの。

賭けでもなんでもない(・・・・・・・・・・)できて当然(・・・・・)

世界が一瞬真っ暗になるけど、欠片ほどの不安も持っちゃあダメ。

わたしたちの行き先はジョルノさんの見ている『夢』。

わたしは助かったんだよ?この人が助からないなんて、おかしい。

余計なことは考えず、強くそう願い続けて、正直もう一時間くらいは経ったと思ったよ。

『夢』の外のニャトラン経由で鳴滝くんに聞いてみたら4分だった。

 

「ンなコト聞いてくるってことは…イケたんだな?

 ジョルノの夢に入れたってコトかよ?」

「…。うん」

 

たぶん行けたと思う。

というか、そうじゃないと困るの。

できれば根拠だとか確証が欲しいよね。

今、『夢』の中で見ているのは…日本じゃあないどこかの町。

使われてる文字はアルファベットなんだけど、並びが英語っぽくない。

 

「なら、魁の意見だけどよぉー。オレも賛成のやつ。

 プリキュア全員呼ぶぜ。すでにヤベーコトになってんじゃねーか」

「うん、お願い」

 

本当だったら今晩は、動くのはわたしだけにしたかったけど。

ジョルノさんの命が危険で、もしかしたらわたしだってそうかもしれない。

この状況でゼータク言ってる場合じゃあ、ちょっとないよ。

 

「あ、なら鳴滝くんもコッチね。これは絶対」

「おーよ、かしこまりーだゼ」

 

絶対に一人にはさせないよ。少なくとも今日いっぱいは、一人にしたらマズイ!

それと、割り振りも考えないと。ここに来てもらうってことは、『夢』に加勢してもらうこと。

つまり、来てもらって早々、ここで寝なきゃダメなんだよね……

き、気が進まないなぁ……でも、これしかない。

 

「ニャトラン。ちゆちゃんはもう寝てる?」

「チョト待て……寝てるぜ。ペギタンもな」

「ちゆちゃんを寝かせたまま連れてこられる?ペギタンも」

「ムズイぜッ?まー、やってはみるけどよぉぉー」

 

寝かせたまま連れてきたちゆちゃんとペギタンを、そのまま『夢』に引き込むの。

起こして、また寝てもらうんじゃあ時間がかかりすぎるから。

やりたくないんだよホントに?今日、あんなことがあった直後で、

鳴滝くんのいるすぐそばに、パジャマで寝てるちゆちゃん連れてくるとか。

ひなたちゃんだったら着ぐるみモコモコパジャマで寝てるから見られてもまだマシだし、

鳴滝くんをヘンに疑う理由もないから、やるならひなたちゃんの方がいい。(後で謝るとして)

でもダメ。『夢』の中でキュアスパークルになるには、ニャトランも寝なくちゃあいけないの。

わたしはここに…こんな雑木林奥の鉄塔に、チリ・ペッパーで連れてきてもらってる。

ニャトランが寝ちゃったら、人がたくさん来たりしたときに逃げられなくなる!

プリキュアを頼りたい時点で、ひなたちゃんは外の監視に当たってもらうしかないの。

そうだね…鳴滝くんにも寝てもらおっと。

同じ『夢』にいるんなら、ちゆちゃんに対して何もできないことの証明だし。

 

「ニャトラン、ちゆちゃんの前に!

 病院からストレッチャーをふたつ、ここに持ってこられる?」

「ストレ…なンだそりゃ?」

「患者さんを乗せて運ぶ、動かせるベッドのこと!」

「あ、わかった。アレな!……ヨシ、あったぜ」

 

病院暮らしが長いと、こーゆー器具の名前も覚えるんだよねー

そんなことは置いといて、持ってきてもらったストレッチャーの上に

まず鳴滝くんを載せて、そのまますぐ気絶してもらった。

フー・ファイターズがあるから自分で気絶できるのスゴイ

続いて、ちゆちゃんとペギタンを次のストレッチャーに寝かせた。

こんなところに引っ張り出すから、せめてベッド代わりを…って気持ちももちろんあるけど、

草まみれの地べたに放り出したりなんかしたら、それこそすぐに起きちゃうっていうのが理由。

最後にひなたちゃん…キュアスパークルに来てもらった。

いったん、別の離れた場所に出て変身してもらったんだよね。

…ほら、変身の時、光るから。スッゴく。ここでやったらちゆちゃん起きちゃうの。

 

「グレースさぁー。ナニ?このシュール?なシチュ」

「しーッ、起きちゃうから」

 

言わないでほしいかな。

わかってるよ、モノスッゴク変な光景になってるの!

深夜、雑木林の鉄塔のふもとで、ふたつのストレッチャーの上に寝かされてる男の子と女の子に、

そのすぐそばにいるフリフリ服の変身ヒーローふたりだもん。わけがわからないよ。ウン。

 

『じゃあ、スパークル。わたしは夢の中に集中するから。

 スパークルは周りを見張っておいてね』

『ン、りょーかい!』

 

スタンド会話でそう伝えてから、『夢』に意識を戻す。

現実と『夢』、ふたつの世界に同時にふたつの体があるみたいなものだから、

両方で別々の動きをするのは結構しんどいの。これでもかなり慣れたけど。

 

「えっ?グレース、今日は『夢』無しだって」

「沢泉。事情が変わってる」

「…あ、鳴滝。くん」

「手短に言う。いつもの『夢』じゃあない。

 ここはジョルノ・ジョバァーナの夢の中で、安全だとは限らない。

 変身しろ……すぐにだ」

 

少しの間、立ち尽くしたちゆちゃんだったけど、

いろんな疑問だとか言いたいことは呑み込んで、まずはすぐに変身してくれた。

これはこれ、っていう感じですぐに気分を切り替えてやれるの、

わたしとスパークルにはない強さだよね。鳴滝くんもなんだかんだ引きずるっぽいし…

 

「グレース、これは」

「鳴滝くんが話してくれた通りだよ。

 わたしも今来たばかりだけど……

 どういうことになってるか、想像つかないの」

「何をすればいいかしら?

 ジョルノさんを探せばいいの?」

「まずは、それだよね。

 『夢』の中でも、自分は自分のはずだから」

「『私は、蝶になった夢を見た』」

「……。えっ?」

 

わたしとフォンテーヌの間に、突然、ヘンなことを言ってきた鳴滝くんに、

わたしたちはそろって首を斜めに向けちゃった。

 

「そんな詩を書いたヤツがいる……

 低学年の頃、図書館でそんなのを見かけたんだがよ。

 姿形だけで探しても、そいつが正解とは限らねえかもな」

「じゃあ、どうするペェ?」

「俺にもわからねぇー、けど…ここから先は全部『夢』なんだろ?

 ジョルノのな。シナリオを作ってるのはジョルノ本人だろうよ。

 意識的だろうと、無意識だろうとよ」

 

…うん。結構重要かも。

闇雲に姿だけを探して見つけたとしても、それは偽物かもしれなくて。

でも、偽物を置いた誰かは常にそこにいて、わたしたちを見ている。そういうこと。

 

「その中に、わたしたちは…いる。

 それを忘れないようにして、探そう?」

「動かないと始まらないラビーッ」

 

そこにラビリンが、一番大切なことを言ってくれた。

備えられるだけは備えたつもり。なら、この先に『軽はずみ』はない。

なら、後は探すだけ。見つけ出して、ジョルノさんと…話す。

みんなで進むことにした。この町が、ジョルノさんの育ったネアポリスだとするなら。

まずは学校を探す。ネアポリス中・高等学校中等部。

康一さんが会いに行った時、ここでジョルノさんが暮らしていたっていうのは覚えてるの。

過去がほとんどわからないから、馴染み深そうな場所を探っていくしかない。

商店街に出る。建物の古さまでオシャレな町…なんだけど、

その中に微妙な『汚さ』が紛れてる。バッチいんじゃあなくって。

近づきたくない、例えるなら…ビョーゲンズみたいな何かが、物陰に潜んでいるみたいな……

思い出す。承太郎さんが、康一さんから聞いていた話を。

ジョルノさんは、町にはびこる麻薬を根絶するため、あえてギャングになった。

タクシーを装った荷物ドロボーだとかスリだとかの常習犯っていうのは置いとくよこの際!

ギャング団『パッショーネ』のリーダーに上り詰めて、麻薬をほとんど撲滅したのはホントだし。

わたしたちくらいの歳の子が、麻薬を買って破滅していく町だったらしいの。ここは。

そんな中で、ジョルノさんは育ったんだよね……

そこを『夢』に見るのなら、それなりの意味があるはず。

フォンテーヌが先頭に立って、注意深く見まわしてる。

人通りが普通にあって、そんな中でプリキュア姿だから悪目立ちしちゃってて、

道行く人がみんなコッチ見ていくけど気にしてるヒマない。夢だしドーセ!

中には、いかにもワルっぽい人も混じってる……殴るよ、来るなら!夢だし

 

「グレース、ひとつ…いいか?」

「なぁに?」

「松葉杖なしじゃあ歩けねえ。『夢』なのによ…

 夢の主導権が完全にジョルノ持ちっぽいぞ。そっちは?」

 

耳打ちするみたいに小声で話してきた鳴滝くんに左手を向けて、

手元に紅茶のカップを出してみるわたし……出たね紅茶。

ヌワラエリアだよ!ウチで飲んでるやつ。お父さんが好きなの。わたしも好き。

手渡すと、鳴滝くんは片方の松葉杖にうまく体重をかけながら、ググーッと飲み干した。

 

「…プハッ。さすがにDEATH13本体は平気か」

「何やってるのよ、こんな時に」

「『夢』の主導権の話だな。今、俺にコーヒーは出せない」

「でも、わたしには出せるの。…はい、どうぞ」

 

横からツッコンできたフォンテーヌも、

カップを受け取ると上品にツツツッとすすった。

 

「……フゥ。そういうこと…

 出せないわね。砂糖も、ミルクも」

 

意味ありげにもう片手を広げて指先をワキワキさせてるフォンテーヌの手の中には、

今は種も仕掛けもないみたいで、現実と同じ。なんにも出てこない。

 

「ごめんね。欲しかった?」

「あ、違うわ。いいのよ、今は無糖の気分だもの……

 最悪の場合、DEATH13で逃げることはできるってことね」

「そのへんは、ホントに最後の手段だよ。

 わたしの勘が正しければね?

 このまま何もせずに帰ったら、ジョルノさんは死ぬの」

「……なら、今は忘れるべきね」

「うん」

 

ひとまず、フォンテーヌが紅茶を飲み切っちゃうまで待つことにして、

しばらく町を眺めてのんびりしようと思ったの。

そうやって警戒をゆるめたときに限って事件は起こるんだよね。

なんとなく立ち寄ったドネルケバブ屋さんが敵スタンド使いだったりするの。

今回も、そういうやつ。

すぐ近くのレストランから、ドアを破って小さな男の子が転げて倒れた。

 

「えッ、と…とうじ?」

 

鳴滝くんにカップをグイと押し付けてフォンテーヌが走った。

駆け寄って男の子を助け起こすんだけど、背中に手をかけたあたりでまたハッとしたみたい。

うん、似てる。見間違えても仕方ないくらいに、髪型がほとんどそのまんま。

坊ちゃん刈りっていうんだよね?とうじくんの髪型と同じ。

ネアポリスだったら、ここはイタリアなのに、金髪じゃあなくって黒髪だし……

今、顔が見えた。確定だよ。悪い意味で、お人形さんみたいな顔をしてるの。

とうじくんはもっと元気だもん。

 

「ち、違うわね……で、でも!」

 

お姉ちゃんのちゆちゃんだったら当然、わたしよりも早くに他人と気づいたけど。

だとしても!

小さな子供がお店の外に蹴り出されたなんてヒドイことがあったのは変わらないよね。

フォンテーヌがにらんだ先、レストランの入り口にいたのは……

一人の、お巡りさんだった。目つきのスゴくキツい、お巡りさん。

 




ペンネーム・伝説のパパイヤさん
「蝶になった夢……『胡蝶の夢』のことだと思う。作者は荘子。
 説話であって、詩じゃあない……哲学の話をしているの」

ご意見、ご感想、誤字脱字報告、ここすき等、ぜひよろしくお願いします。

現時点で、この作品に何を求めて読んでいますか?

  • 心優しいプリキュアたちらしい熱血バトル
  • ジョジョらしいどんでん返しの知略バトル
  • プリキュア世界で動くジョジョキャラ
  • ストーリー上の謎がどう展開するか見たい
  • 主人公たちがどう成長していくのか見たい
  • 人間関係がどう変わっていくか見たい

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