このお話が末永く続くことを祈りつつ、初投稿です。
やあみんな、こんばんは、良い夜を、おやすみなさい。
「だ、ダメだってリアム今寝ちゃ、それにまだ朝だよ⁉」
健やかな睡眠に移行しようとするも声を掛けられて遮られてしまった。めんどくさいので突っ伏したまま顔だけを発言者の方へ向けて返事をする。
「なんだよシャル、
「ここは日本だよっ」
ハッハッハ、こやつなかなか鋭いことを言う。ジュニアハイスクール時代はさぞかし素晴らしい成績を収めていたに違いない。
「なんか変なこと考えてる顔してるけど、成績はリアムだって良かったでしょ」
「今度はエスパーか⁉」
「またバカなこと言って、ホントに起きてよ。そろそろ僕も怒るからね」
「……分かったよ」
怒ったシャルには勝てない。大きくため息をついてから体を起こし、改めて声の主へと向き直る。シャルロット・デュノア、整った顔立ちにアメジスト色の瞳とオレンジがかった金髪が映える、俺のかわいい妹分だ。
「まったく、もう少しシャキッとしなよ。まだ入学初日なんだよ?」
「そりゃそうだけどさ……この状況で無茶言うなよ」
言いながら俺は周囲を見渡す。
視界に映る女子、女子、女子、女子。世界の男女比が1対1だというのが信じられなくなるほどに女子ばかり。ついでに言えばそのほとんどがこっちの様子を窺っているというオマケつき。
今だって極力顔を動かさないようにしたにも拘らず、耳をすませば彼女たちの声が漏れ聞こえてくる。
「ねぇっ!今こっち見たんじゃない?」
「うんっ、二番目の子でしょ?絶対こっち見てたって」
「私目があったかも」
「いや私よっ」
「あ、ちょっと顔しかめた」
「あの目しながら「ゴミめ」とか言ってほしい」
「分かる、ついでにそのまま踏んでほしい」
一部抜粋でこれだ。ちょっと動いただけでこの反応では気分はほとんど動物園のパンダである。あと最後の方に変態がいた気がするけど俺は気にしないぞ。
「………だってこれだぜ?」
「あ、あははは…まぁしょうがないよ。ここは去年まで女子校みたいなものだったからね」
「みたいというか完全に、な。ISは女性にしか動かせないから当然だが」
「動かせな
IS、インフィニット・ストラトスは女性にしか動かせない。老若男女誰でも知ってる常識だ。
いや、常識だった、か。
つい数か月前にISを起動できる男性が発見されたことでその常識は覆された。
既存の兵器すべてを凌駕しながら男には扱えない。
そんな特徴のために女尊男卑が進んでしまった世界にもたらされた反証。
世界中の男(及び現状をよしとしない一部の女性)が全力で二人目以降を探し始めたのは必然だった。
そんなわけで『
その後はいろいろめんどくさかったが、幸い出自的な関係でそれほど苦労することは無かったので今は省略する。結論だけ言うと、数少ない男性操縦者の保護のためという名目で世界で唯一のIS操縦者を育成する教育機関であるIS学園へと(強制的に)入学することになった。
それで今日が入学初日なのだが、つい数か月前まで男性操縦者など影も形もなかった世界のIS操縦者育成学校である。これまでに男子生徒などいるはずもなく、現在進行形で客寄せパンダ状態となっている。
なにしろ廊下が見物に来ている女子達で埋まっているのだ。一応の良心からか教室の中には入っていないが当然のようにドアは全開だし、その向こうはすし詰めというのがふさわしい状態になっている。
「別に
「さ、流石にそれは無いと思うけど…」
教室内や廊下から突き刺さる視線を意図的に無視し、シャルと雑談を続ける。何かすることがあれば結構気を紛らわせられるものだ。たとえ話相手が今感じている頭痛の原因だとしても。
「それはそれとして、
「ん?――あぁ、あいつか」
一瞬何のことだか分からなかったがシャルが指さす方を見て得心する。俺たち2人の視線の先にいるのは、もう一人の男子用制服を着た人物だった。
「
「さっきからピクリとも動かないね」
世界で初めてISを起動して一躍時の人となった人物だが、今は机に突っ伏して微動だにしていない。最初に見た時と全く体勢が変わっていないところを見るに、必死で気配を消そうとしているのだろうが成功はしていないようだ。
今も多くの女子達の視線が彼の背中へと向けられている。本人もそれを感じているから動くに動けないのだろう。
「あれで動き始めたらこっちに向いてる視線持ってってくれそうなのに」
「それは酷だよ、なんか僕たちの結構前から来てたみたいだし」
「
(さてはあいつ割とアホだな)
「リアムと合いそうだよね」
「どういう意味なんですかねぇそれは」
シャルと話しているうちに時間が過ぎ、気づけばホームルームの時間となっていた。
☆☆☆
「あっ!もうホームルームですよ、皆さん自分の教室に戻ってくださ~いっ」
そんな声が廊下から聞こえてきてほどなく、教室に1人の女性が入ってきた。
「……これはまた、」
小さく声が漏れてしまった俺は悪くないと思う。
ちっこいとか眼鏡っ娘だとか、おっとりしてそうな人だなとか、色々思うことはあったが彼女の第一印象はそのどれでもなかった。
デカいのだ。
どこがとは言わないが、首よりも下でへそよりも上にある女性の象徴的なものが。いくら何でも反則だろというレベルで大きい。他の部分を見れば俺たちとほぼ同世代なのにそこだけは彼女が大人であるとはっきり主張している。
そんなちっこくてデッカい女性は教壇に立つと、改めて俺たちの方に向き直って挨拶を始めた。
「皆さん初めまして、おはようございます。私は
彼女が言い終わると、答えるようにちらほらと「よろしくおねがいしまーす」という声が上がった。生徒達の反応が良かったのがうれしいのか、山田先生も笑顔になる。
「せんせー、副担任ってことは別に担任の先生がいるってこと?」
「はい、実はそうなんです。ただ担任の先生はちょっと仕事があるとかで遅れてくるみたいです。なので先に皆さんの自己紹介を始めてしまいましょう。えーっとそうですね、それじゃあ出席番号順に1番の人からお願いします」
どうやら本担任は遅れてくるらしい。1年生の最初のホームルームに遅れてくるのはどうかと思うが、恐らくは
「はいっ。出席番号1番、
山田先生の呼びかけに応じる形で、ショートカットの活発そうな女子が自己紹介を始める。ふぅ、ホームルームが始まってからもチラチラとこちらに向けられていた視線が彼女の方を向いてくれたのでようやく一心地付けた。
その後数人の自己紹介がつつがなく終わり、いよいよ織斑の番となった。ボーっとしていたのか、山田先生の呼びかけを何度かスルーしていたが自分が呼ばれていることに気付くと慌てたように立ち上がった。
さて、最近は忙しかったから実はあいつのことはあまり知らないんだよな。ここでそれなりに人柄が分かればいいんだけど。
「え、えっと織斑一夏です」
ふむ、それで?
「…………い、以上ですっ!」
ズコォッ!(ガタガタンッ)
机の上で一斉にずっこける俺たち、山田先生も教卓の上で体勢を崩している。
なんかこのクラスに一体感が生まれた気がする。
お?、誰かが教室に入って来て織斑の後ろに立って―――
バシィンッ
「いってぇ!」
「お前はろくに挨拶もできんのか」
―――流れるような動きで出席簿を織斑の頭へ振り下ろした、だと!?
「げぇっ、関羽っ!?」
バシィンッ
「誰が三国志の武将か、馬鹿者」
「いったぁ……」
超貴重な男性操縦者に対して躊躇いなく
一例をあげるとすれば、
「ああ、遅れてすまない。私がこのクラスの担任を務めることになる
やだ、真逆のこと言ってるのにすごい堂々としてるから違和感がない。
この教師というよりも軍人といった方がよさそうな女性は織斑千冬、誰もが認める人類最強だ。
ISが開発されて最初に開催された
ついでに言えば、一夏の実姉でもある。だからこそさっきの出席簿アタックも躊躇なくできたのだろう。ただ今見た感じだと、誰に対しても同じようにやりそうな気もする。
それにしてもかなり高圧的な挨拶だったし、中には不快に思うやつもいるんじゃないか?
そう思いながら見回してみると肩を小刻みに震わせている生徒達の姿があった。やがて、彼女らの口がゆっくりと開かれる。
「「「き」」」
「き?」
あっ、これやばいやつだ。
そう判断した俺は即座に前の席に座るシャルを小突く。振り返った彼女にジェスチャーで耳を塞ぐように伝えて自分も両耳を抑えて机へと勢いよく伏せた。
その直後だった。
「「「きゃぁぁぁぁぁ~~~~~っ」」」
クラス中の女子が音響兵器もかくやというレベルで黄色い悲鳴を上げる。ってか両耳塞いでんのにうっせぇっ⁉
とはいえ多少はマシなのだろう。俺とシャルは防御が間に合ったが何だか分からなかったらしい織斑は歓声をもろに食らって鼓膜をやられたようだ。
「千冬様よっ!本物の千冬様よ~~~~~っ!」
「私、千冬様に憧れてきた九州から来ました!!」
「あの千冬様が指導してくださるなんてっ、嬉しくてもう死んでもいいです!!」
「………はぁ、毎年毎年よくもまあこれだけ馬鹿者共が集まるものだ。ある意味感心だがこれはあれか? わざわざ私のクラスに馬鹿が集まるように誰かが仕組んでいるのか?」
「生の叱責よぉ!お姉様、もっと私たちを叱って!」
「でも時には甘く優しく囁いて!」
「そして付け上がらない程度に躾けて~っ!」
「本当に、なんで毎年こうなんだ………」
あっ、これ毎年なんだ………うん、お疲れ。
ポーズとかじゃなく本心からそう思ってそうな表情をみせる彼女には同情を禁じ得ない。
あ、織斑先生の頬が引きつり始めた。
「…いい加減にしろ、黙れ」
「「「「「はいっ!」」」」」
「…………ほう、返事ができる点は評価してもいいかもしれんな」
即座に返事をして静かになった一同に織斑先生は肩眉を上げる。機嫌も心持回復したようだ。
彼女の決して大きくは無かった声に全員が反応するとは、よく分からんがこれが日本が誇るHE・N・TA・Iというやつなのか?
それはそれとして、返事ができたら評価って一体例年はどんななんですかねぇ。
「ふむ、もうこんな時間か、あまり時間が無いから貴様らが気になっているであろう奴だけ先に自己紹介をやってもらう。―――デュノア兄、まずはお前からだ」
「分かりました」
おっとご指名か。
さてどうすっかな。もともとはちょっとふざけようかと思ってたんだが、あんまやりすぎると織斑先生から
「リアム・デュノアだ。
世界で二人目の男性操縦者で最近だと
っとこんなもんか?割と無難にまとめられたと思うんだが………
「………ありよりのあり」
「ワイルド系か~うん、いいねぇ」
「立ったらおっきい、やっぱり男の人なんだなぁ」
「運動が趣味ってことは当然筋肉も………じゅるり」
「料理できるんだぁ~……今度お願いしてみようかな」
「ちょっとっ、抜け駆けは許さないわよ」
よしっ、それなりに好意的な感想もちらほら聞こえるし、とりあえずは成功ってことで。
………………あとやっぱり変態がいた気がするけどきっと俺の気のせいだな、うん。
「よし、座っていいぞ。―――聞いたか織斑、自己紹介とは今のようにやるんだ。さっきのお前のは何だ、小学生じゃないんだぞ」
「へ~い」
バシィィィーンッ
「返事は、はいだ」
「…………はい」
満足げな織斑先生の許可が出たのでおとなしく着席する。
あと一夏(でいいよなもう)、一瞬頭が机にめり込んだように見えたんだが気のせいだよな。
何はともあれこれで俺の番は終わりだ。織斑先生がシャルの方へと顔を向ける。
「次、デュノア
「はいっ、
世界で三人目の
シャルはそこで言葉を切ると満面の笑みを浮かべ、ぐるりと教室を見回しながら続きを口にする。
「―――リアムを狙うならまず僕に話を通してね」
「お前何言っちゃってんの!?」
可愛い妹分のはずのシャル、
彼女は何をどう間違えたのか男子生徒としてIS学園に入学しているのである。
皆さん初めまして、筆者の逢魔ヶ時です。
前書きにも書きましたが、本作は「シャルロットが可愛い」という思い
別作品も投稿中のため不定期更新となる予定です。
まだ煮詰まっていない点などもありますが、「こんな感じにしたいな~」という漠然としたイメージはあるのでのんびりやっていきたいと思います。
それでは、本作「2人デュノア」をよろしくお願いします!
*↓↓↓筆者の別作品です、良ければ見てやってください
『学園生活部にOBが参加しました!』(原作:がっこうぐらし!)
https://syosetu.org/novel/206834/