2人デュノア   作:逢魔ヶ時

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第2話です、どうぞ~


20.07.08
アルベール氏の妻2人の名前を変更しました。
原作での正妻:マリレーヌ・デュノア → ロゼンダ・デュノア
シャルの実母:サラ・デュノア → エレナ・デュノア


2.デュノア家の人々

「はぁっ⁉ シャルを男としてIS学園に入学させる?親父お前何言ってんだ⁉」

「うるさいぞリアム、とりあえず座れ」

 

 時は数週間前に遡る。

 

 俺がISを起動して色々忙しかったせいで久しぶりだった実家での団らんの場にて、俺は親父の発言に思わず大声を上げた。

 

 いや、そりゃ上げるだろう。確かにシャルもIS適性があるからIS学園に行くのは特に不思議はないし、俺も入学することになるだろうから心強いとは思っていたさ。

 ただまさか男子としてだなんて考えてもみなかった。

 

 なぜなら、俺の妹分であるシャルロット・デュノアは女である。もう一度言うが女である。女子率99%越えのIS学園にわざわざ男として入学するなんて誰が想像できるんだよ?

 

 そんな俺の至極真っ当なはず疑問はどうやら俺以外の家族には伝わらなかったらしい。

 

「もうリアム、そこまで驚かなくてもいいでしょ?僕びっくりしちゃったよ」

「そうよ、デュノアの男子たるものもっとどっしり構えていないと」

 

 シャルは俺の声の方に驚いたようで片頬を膨らませながら文句を言ってくるし、ローザ母さんの方はティーカップを手に落ち着き払っている。

つーかこの反応を見るに2人とも知ってたな。知らなかったの俺だけかよ。

 

………とりあえず立っているのもなんだから座ることにする。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 ちょっと突然だがここでここにいる家族について紹介しておこうと思う。

 

 まず、デュノア家はフランスを代表するISメーカーであるデュノア社を経営する一族である。会社の詳細については今度話すとして、まずは家族構成からだ。

 

 

 最初に、俺の父親でありデュノア社の社長でもあるのがアルベール・デュノア。オールバックにした金髪と変に見えない程度に鍛え上げられた体、老いによるしわはあれどそれがかえって渋みを感じさせる顔立ちは、息子の俺がいうのもなんだがナイスミドルという言葉がふさわしい。気さくな人柄で社の内外を問わず慕われており、多くの友人がいる。まさに、大企業の長としてふさわしい風格を備えた人物である。

 ……のだが、プライベートではローザ母さんの尻に敷かれているし、娘のシャルには甘いを通り越して親バカである。無論俺との仲も良好だし、休日には釣りやキャンプに一緒に行くことも多い。俺がアウトドア好きになったのはこの人の影響だったりする。

 

 

 続いて、母親のロゼンダ・デュノア、会社では親父の補佐をしている。金髪碧眼、整った顔立ちで若い頃はミスコンなどにも出場していたらしい。元々良家の生まれで教養もあり、社長であるアルベールの良き妻として最近でもたびたびメディアへの露出があり、穏やかな女性として親しまれている。

 まぁさっき言ったようにこれは表向きというか社交用のもので、家内では親父よりも立場が上。最近の風潮である女尊男卑とかそういうのではなく、もともとの性格が勝ち気ではきはきしたタイプなので純粋に親父がローザ母さんに頭が上がらないといった感じなだけで夫婦仲はすこぶる良好である。ちょっと厳しいと感じる時はあるが俺とシャルにとっても良き母親だ。

 

 

 3人目はシャルロット・デュノア、俺の妹分で背中の中頃まである明るい金髪を首の後ろ辺りで束ねている。スリムな体型が自慢だけど最近胸が大きくなってきている……らしい、つーか何故それを俺に言った?

 一応俺と同い年なんだが割と身長差があるためなんだかんだ年下扱いをしてしまう。まあ本人は気にしてなさそうだし、シャル自身家族とかの親しい人にはとことん甘えたがる性格だし問題ないだろう。外で見せる頭脳明晰で優等生な一面とのギャップがすごくかわいいから許す。文句があるやつは俺と親父が許さない。

 

 

 んでもって最後は俺、リアム・デュノアだ。デュノア家長男で、身長は一応高い部類。それなりに鍛えているから体力には割と自信がある。

 髪は赤茶色で以前は短くしてたんだが、最近はシャルに言われて伸ばした髪を後ろで束ねている。シャルほど長くないから精々肩甲骨の上あたりまでしか届かないし正直くすぐったい。

しかし、「えへへ、これでリアムも僕と同じ髪型だね」と言うシャルの笑顔に比べたらそんなことは些細な問題だ。

ただシャルよ、笑顔で後ろをついてくるのは良いんだがときどきそこを掴むのはやめてくれ、首コキッってなるから。――え、持ちやすいからやだ?……やっぱバッサリ切ろうかな。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

―――と家族について紹介してきたが、実はまだうちの家族について半分くらいしか話していない。

ここからは我がデュノア家のちょっと特殊な事情についてご紹介だ。なに、たいした話ではないから気を楽にして聞いてくれ。

 

 

 そんじゃまず1つ目、

俺らの母親であるロゼンダ・デュノアは子供を産むことができない。詳しくは聞いていないが遺伝的なもののようで、自然に子供を授かることができる確率は一般の人と比べて著しく低いらしい。

 

 ああ、言いたいことは分かる。『なら俺とシャルはなんだんだ』って話だろ?それがまあ2つ目と3つ目ってわけだ。めんどくさいから言ってしまうと、俺は元捨て子の養子で、シャルは親父の子だけどローザ母さんの子ではない

 

 

 とりあえずシャルの方から話すか。ただこの話をするにはデュノア家のもう一人の家族について話しておく必要があるな。

 

 レナ母さん、エレナ・デュノア。シャルの実母であり、彼女をそのまま年上にしたような感じの外見の女性だ。シャルと同じように美人であり(こちらがオリジナルなのだから当たり前だが)、プロポーションという視点ではローザ母さんを圧倒している。おっとりした雰囲気で物腰柔らかい印象を受ける。

 

 もともとこの3人は高校のクラスメイトで、ローザ母さんとレナ母さんは親父を取り合った仲だったらしい。ただローザ母さんは良家の生まれで、親父は今ほど大企業でなかったとはいえデュノア社社長の息子、周囲は皆ローザ母さんの取り巻きでレナ母さんの味方は少なかった。

 しかしレナ母さん、当時は今と比べ物にならない程積極的だったようで、親父に対して押して押して押しまくったらしい。手作りお弁当を持っていって胃袋を掴む、密着して胸を押し付ける、さらにはシャワーを浴びている親父のところへ突撃するなど。その責めっぷりにはローザ母さんも呆れるを通り越して感心してしまったそうな。

 そこで女2人で話し合ってみたところ喧嘩することもなく意気投合。翌日から親父は2正面作戦を強いられることになり、それから時を置かずに陥落した。

 

 その後はそろって同じ大学に進学しキャンパスライフを楽しんだあといよいよ将来について考えるということになったのだが、なんとまあ親父の奴どちらか一人を選ぶのではなく三人婚を選択した。これは2人の同性と1人の異性による婚姻関係のことでうちの国(フランス)の他いくつかの国で認められている。……まあ認められているだけで一般的というわけではない。

 正直「2人とも愛するから2人とも結婚して欲しい」という親父も親父だが、それを了承する母さん達も母さん達だと思う。

 

 今のように女尊男卑の世の中でなかったとはいえ周囲、特に親からの反対は激しかったらしいが、親父の「2人とも愛する」という言葉に嘘はなかったようで結婚生活は円満そのものだったらしいし、それは今の仲睦まじさを見ても分かる。

 そして結婚からしばらくしてレナ母さんが身籠ったのがシャルという訳である。

 

 

 んで、次は俺の方なんだがこっちは大した話はない。

 シャルが生まれてすぐのある日、俺が道端に捨てられていたのをローザ母さんが見つけてくれたってわけだ。当時ローザ母さんは三人婚に不満はないとはいえ自分に子供がいないのを寂しく思い、寂しさを紛らわすように1人散歩をしていたという。路肩にポツンと置かれていたベビーバスケットの中で寝ていた俺を見つけたとき、ローザ母さんはこれを天からの授かりものと感じてそのまま抱き上げて家に帰ったらしい。もしその時見つけてもらっていなかったら今頃俺はいなかっただろうし本当に感謝してるよ。

 

 

 そんなわけでこれが俺とシャルの出自に関する話。

 どっちも一般的とは言えないが、皆に2人ずついる親がたまたま俺達には3人いるというくらいの感覚でしかない。全員から等しく愛情をもって育ててもらってるし、家庭内の不和もないから困ってることもないしな。

 しいて言うならレナ母さんは元々体が弱く入退院を繰り返していて今も入院中ということだが、命に別条があるわけではないな。いつも家にいれば、とは思うけど会いたければ会えるし、入院していない方が長いからそこまで気にしていないな。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 以上、家族についての説明終わり。

 それより今はシャルの男装問題についてだ。

 

「冷静に考えてみろよ。いくらシャルが中性的といってもこんなかわいいんだぞ、男装っていっても無理があるだろ。秒でバレるって」

「大丈夫だ、ちゃんと政府と学園側の許可はとってある」

「そういう話じゃない! ってか許可出てんの?なんで?」

 

 かわいいと言われたシャルが頬に手を当てながら照れてるけど今は重要じゃないし事実だから放置。

 

「一応理由はあなたのためよリアム。男性適合者が多ければその分だけ秘密を探りたい奴等の注意が分散する、そうしたらこちらも対処がやりやすくなるわ」

 

 

 親父に代わってローザ母さんが説明してくれた。そういうことなら理解はできるが納得はできない、それじゃシャルに負担をかけることになるじゃないか。

 その思いが表情に出ていたようで、機先を制すように親父が声をかけてきた。

 

「お前の言いたいことも分からんではないがな、どのみち家族だというだけで影響は出る。それならどちらも男性操縦者にしてしまった方がこちらとしても動きやすい」

「……それはそうかもしれないけどさ」

「なに、ずっとというわけではない。あくまで各国の出方を見極めて今後の参考にするための措置だからな、特に問題がなければネタをばらしておしまいだ」

「………まあ、そういうことなら。すまんシャル、俺のせいで迷惑かける」

 

 悔しいけど親父の言うことは理解できる。確かに誰か本腰を入れてを守ろうとするならなりふり構わず全力の護衛を常に張り付けるか、相手のことを調べ上げてしっかりした予防策を張るか位しかない。前者は場所が海外な上無関係な生徒もいるということで難しく、現実問題としては後者によらざるをえない。

 シャルに迷惑をかけるのは申し訳ないが、今の俺には頭を下げことしかできない。

 

「ううん気にしないで。一番大変なのはリアムだし、それがリアムのためになるんだったら僕は全然大丈夫だから」

 

 そう言ってほほ笑むシャル。今のように時折見せる普段の明るい笑顔とは別の穏やかな笑み、それはどこまでも魅力的で俺は返そうと思っていた言葉を飲み込んでつい見入ってしまった。

 いきなり黙り込んだ俺を不審に思ったのか、シャルが首をかしげながらのぞき込んできたので手を振って何でもないと伝えるといつものようなほにゃっとした笑顔になった。なんとなく頭をなでてやるとさらに嬉しそうに頭をスリスリとこすりつけてきたのでさらに撫でる。

 

 ナデナデ、スリスリ―――ナデナデ、スリスリ―――ナデナ「ゴホンッ、いいか2人とも?」

 

 なんだよ?

 

「んんっ それに関連してなんだが、どうやらIS学園の寮は2人ずつの相部屋制のようでな、2人には同じ部屋で暮らしてもらうことになる」

「……Qu'est-ce que vous avez dit(なんだって?)

 

 いきなり何言いやがるんですかね、この親父は。

 横を見ればローザ母さんは表情を変えていなかったが、シャルはさっきまでのくつろぎモードが嘘のように「そ、それは僕も聞いてないよ⁉」と目を白黒させていた。

 

「何を驚いてる?男同士で兄弟ということになるんだから同じ部屋でないと逆に不自然だろう?」

「いや確かにそうだけどもっ、実際は女子なんだからそこはなんとかできなかったのかよっ!」

「どこの馬の骨とも分からん女に可愛いシャルを預けられるかぁっ!ならばよく分かっているお前の方が万倍マシだ!」

「アンタ自分が言ってる言葉の意味わかってんのか⁉」

 

 ダメだ、親バカが発動してて今の親父には論理的な話は通用しない。こういう時はしっかりしてるローザ母さんを頼ろう。

 

「別の女子と相部屋になって男装がばれるのも問題でしょ?それに別にいいじゃない、血がつながっているわけでもないし間違いが起こっても問題ないでしょ」

「「その発言が間違いだって自覚あるか(かなあ)⁉」」

 

 シャルとの声が揃う。

 くそ、こっち(ローザ母さん)もダメだ。そういえばうちの親はその辺割とフリーダムな人種だった、伊達に三人婚してないな。

 

「そうそうシャルロット、レナからあなたに伝言があるわ」

「え、な、なにかな?」

「『頑張ってね、私の娘なんだからガツガツいきなさい』だって」

「お母さん⁉」

 

 実母からのフォローならぬ追い打ちにシャルの声が裏返った。こういうの聞くとレナ母さんも昔は積極的だったってのがよく分かるな。

 どうせ、この調子じゃ今からどうこう言っても変えられないだろうから諦めるしかなさそうだ。絶対やばそうだけどその辺は未来の俺に任せることにする、もう知らん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「というかシャルロットは今だって大して変わらないでしょうに、たびたびリアムが寝てるとこにこっそり潜り込―――」

「わーっ!わーっ!ローザお母さんそれ秘密だからっ言っちゃだめだからぁー!!!」

 

 …………朝起こしに来てたんじゃなかったのねあれ。

 

 

☆☆☆

 

 

 

「ああそうそう、もう一つ言い忘れてた」

「まだなんかあんの?」

 

 正直シャルが男装して入学&俺と相部屋ってだけでも俺はお腹いっぱいなんだが。

 

「そうたいした話じゃない。うちの保安部と陸軍特殊部隊の合同チームがお前の見張り役として派遣することになった」

「なんでそうなっちゃたかなぁ~、っていうか見張り?護衛じゃなくて?」

 

 男性適合者が珍しいから監視したいってのは分かるけどさ、そもそもIS学園は建前上どの国からも干渉を受け付けないんじゃなかったか?つーかそれができるならシャルを男装させる必要ないじゃん。

 それに普通は護衛とかいってぼかすもんじゃないのかよ。そのあたりのことを聞いてみてもおやじの態度は崩れなかった。

 

「チームが待機するのはIS学園の近くというだけで内部ではない。それに建前上はフランスに籍を置く民間軍事会社の日本支社というだけだ、どこに出店するかは各企業の自由だからな」

 

 出たよ、政治工作でおなじみの屁理屈。

 

「あと監視で合っている、自覚が無いようだから言ってやるが今のお前は我が国1番の問題児、いやトラブルメーカーだ」

「ひでぇ!」

「当たり前だろう、なんせ―――」

 

 そこまで言うと親父はこちらをジロリと睨んでから先を続ける。

 

 

「ISを起動したその日のうちに無断展開したうえにシャルを引き連れてそのまま成層圏を突破、挙句の果てには世界中が行方を追っている篠ノ之束博士と接触して協力体制を構築。いったいどれだけの大騒動だったと思ってる?」

 

いやほら、不可抗力って………あるじゃん?




今回はちょっと説明回っぽかったです、ごめんなさい
これからはテンポよく行きたいと思ってます
シャル実母はかなり悩みましたが、せっかく暖かいデュノア家にするならやっちまえということで生存させました。まぁあんまり本編とは関係ないんで許してください何でもしますから(何でもするとは言ってない

オリ主ははっちゃけるタイプの予定
とりあえず次回は今回の最後に書かれたやらかしの詳細おば


のんびり更新していきますのでお楽しみに~
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