2人デュノア   作:逢魔ヶ時

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|ω・) チラッ

|・ω・)ノ⌒○ ポイッ

|)彡  サッ

|< ……。)




| :( ;˙꒳˙;):<遅れてごめんね... )


5.1人目

 そんなわけで回想から覚めて現在、IS学園1年1組の教室にて。

 

「―――リアムを狙うならまず僕に話を通してね」

「お前何言っちゃってんの!?」

 

 シャルがぶちかましやがった爆弾発言に思わず声を上げる。いきなり何言ってくれちゃってのこいつ。

 今の言い方だと確実に良からぬ方向に推測されるぞ!?

 

「来たっ強気の弟から周囲に向けての宣戦布告よ!」

「順当にリアム×シャルルかと思ったらシャルル×リアムだったわけか、たまげたなぁ」

「まさかと思ってたけどあんな言い方するってことはやっぱり…」

 

 ほらみろ、クラス内の不穏分子に続いて感化される奴が出始めてきてるぞ。

 というかなんでシャルはそんな周りを見ながら笑顔で頷いてるんだよ、余計に誤解が広がるだろうが。この時間が終わったら〆よう。

 とはいえ変な思考に侵されていない生徒もいる。

 

「しゃるるんとりーくんは仲いいんだね~」

 

 どこかのんびりとした調子のその声に振り返ってみれば、声の主と思しき人物と目が合う。

 小柄な体格とそれに全く合っていないダボダボの制服、特に袖はかなり余っていて先が垂れ下がっている。なんか子供が幽霊の真似してるみたいな感じだ。

 パタパタと手(というか袖)をこちらに振ってくる彼女の表情はほにゃっとした感じで、話さなくてもマイペースな人だと見当がつく。

 

 貴重な常識人枠っぽいし、ぜひ仲良くなっておきたい。

 

 しかし俺がそんなことを考えている間にも教室内での感染は進行していき、だんだんと声も大きくなってきている。

 俺が保安部鎮圧部隊の出動要請を本格的に検討し始めたところで、救世主が現われた。

 

「静かにせんかっ」

 

 1年1組担任、織斑先生である。

 

「貴様ら、私の前でそれだけ騒ぐとはいい度胸だな」

 

 あ~あ~、こめかみぴくぴくしてるよ。

 そしてその迫力の押されて女子達の声がピタリと止まる。

 やれやれ助かっ―――

 

「今は授業中だ。デュノア兄弟の趣味嗜好については休み時間にでも聞け、いいな?」

「「「はいっ!」」」

 

―――てないなこれ、むしろ悪化したわ。

 

 ってかあの鬼教師、言葉の後ろに「こうすれば私の一夏に寄り付くものも減るだろう」って小さくくっつけてるし。

 なんなの?ブラコンなの?

 

 ギンッ

 

「なんだデュノア兄、何か言いたいことでもあるのか?」

「なにもありません。授業を始めてください、サー」

「先生と呼べ」

 

 なんでバレたんですかねぇ。

 表情にも態度にも出してなかったと思うんだけど、こわ。

 

 あとその覇気で先生はない。確実に鬼教官の類だろ。

 

 ヒュンッ――ドスッ(←チョークが飛んできて机に刺さった音)

 

「次はないぞ」

D'accord(了解しました)

 

 マジで怖え………

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

「それではこの時間の授業はこれで終わりだ。次の時間もこの教室だから遅れないように」

「「「ありがとうございました」」」

 

 これで1時間目が終わり、授業というよりは注意事項の通達って感じだったな。

 

 さて、

 

「おいシャル、ちょっとOHANASHIがある。来い」

「え?」

 

 即行で立ち上がりシャルの肩に手をかけ、そのまま手を取って立ち上がらせる。この作戦は時間との勝負だ、反応を待っている時間はない。

 なぜなら―――

 

「あっデュノア君達が逃げるよっ。者ども、であえ、であえー!」

「回り込んで、前後の出入り口を塞ぐのよっ」

「弟君の発言について質問しちゃうよ!」

 

―――興味津々、噂話大好きな女子達がこちらを抑えようと動き始めているからだ。

 

 各々が席を立って扉が近い場合はそれを封鎖するように動き、そうでない場合は扉と俺たちの間に立ちふさがる。

 直接こちらに突撃してくることはなく、周囲の者同士で連携を組みながら包囲網を作っていく。

 君ら初対面だよな、なんでそんな息ピッタリなんだよ。さすが倍率1万倍のエリート校ってことか?

 

 とはいえ、いくら連携を組んでいるといっても素人相手にそうそう後れを取るつもりはない。むしろ直接向かってこないでくれて助かったくらいだ。

 

「さあ逃げるぞ」

「え、ちょっとリアムっそっち窓だよ!?」

「気にするな!」

「気になるよっ」

 

 シャルの手を取って扉とは逆方向、すなわち窓側へとダッシュ。

 動揺したような声を上げているが気にしない、そのまま引張りその勢いのまま横抱きに抱え上げる。

 背後から歓声が上がるがそれもスルーして一気に窓を目指す。

 

 そして俺が駆ける先、窓の横には袖がダボダボな制服を着た1人の女子生徒の姿があった。

 

「そりゃ~行ってこ~い」

 

 という声に合わせてその女子生徒が窓を全開に開け放つ。

 授業中にやってほしいことを書いたメモを投げておいたんだが、どうやら指示通りに動いてくれたみたいだ。

 

「サンキューこのお礼はまた後でっ」

「ならお菓子がいいかな~」

「オッケー任せとけ!」

 

 すれ違いざまに短く言葉を交わし、そのまま開いた窓から身を躍らせる。もちろん抱えたままのシャルも一緒だ。

 

「う、うわぁぁああああ~~~~」

 

 シャルの悲鳴を耳元で聞きながら数秒の浮遊感を味わった後危なげなく着地する。これくらいなら保安部時代のおかげで慣れたもんだ。

 

 抱いていたシャルを下ろし、立ち上がって教室に目を向ければ、窓際にクラスメイト達が鈴なりになっている。皆口を開けてポカンとした表情だ。

 

「悪い、質問とかについては後で聞く時間を取るから今は勘弁してくれ!」

 

 彼女達を見上げながらそう声を掛ければ皆我に返ったようで、「分かったよ~」やら「約束だからね~」と言いながら手を振ってくれた。 

 それに手を振り返し、どうやら突然の落下に腰が抜けたらしいシャルを再び抱え上げると俺はその場を後にした。

 

 なお、今の一連の騒動の陰で―――

 

「……ちょっといいか」

「え?お、おう………ってあれもしかして箒?」

 

―――というやり取りが聞こえたが詳しいことは知らん。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「んじゃマジで頼むぞシャル、今お前は男なんだからな」

 

 シャルを抱き上げたまま人気が無いところまで連れていき(こういうと非常に誤解を招きそうだが事実だから仕方ない)OHANASHIした。

 

 なんせさっきのシャルの発言を客観的に見ると、弟が周囲の女性に対して「兄とお近づきになりたい(婉曲表現)なら自分の許可を取ってからにしろ」と宣言した形になる。

 そしてその宣言をした弟は100人中108人が認める美少年(実際には美少女)である。さらに宣言の対象たる俺も、まあ顔立ちは悪くはない方だと思う。さっきからのクラスメイト達の話を聞く感じでは剽悍なタイプでいい、とのことらしい。保安部で鍛えられているため体格がしっかりしているのもプラス要素なのだろう。

 

 と、以上の要素を想像力たくましい女子高生たちの頭にインプットしたらどうなるか。

 

 

 考えるまでもなく腐海が発生することは目に見えている。

 

 

 祖国(フランス)にいた頃でも女子達の想像力は俺の予想の上をいっていた。サブカルチャーの聖地たるこの日本ではどうかなど想像するだに恐ろしい。

 

 そのあたりを懇切丁寧に説明したところ、シャルも事の重大さに気付いてくれたようだ。若干顔を青くしながらコクコクと頷いてくれた。

 

「う、うんっ分かったよ。……ああもう僕は何であんなこと言っちゃったんだろ。皆はどうにかごまかせるとしても、こんなんじゃいつかリアムにはバレちゃうよ。もっと気を付けないと

 

 ゴニョゴニョとなんか言っている気がするが俺には何も聞こえない。ブツブツと呟いているシャルを放置して近くにあった自販機に歩み寄りてきとうに2本購入する。

 1本をシャルに放り投げ、残った方のキャップを開けてまず一口飲む。

 

「流石日本だな。ボトルのお茶がこんなにうまい」

「あっほんとにおいしい。それに色も緑だね、茶色じゃないや」

 

 小さく口に含んだシャルもほにゃっと笑顔になったがすぐに心配するような表情に変わった。

 

「でもここでのんびりしてて大丈夫かな。クラスの皆は納得してくれたけど、他の人達は僕たちに興味津々だよ。急いで戻らないと授業に間に合わないんじゃない?」

 

 なんだ、そんなことか。

 

「それなら問題ない。むしろ中途半端なタイミングで姿を見せたらめんどくさくなりそうだし、ギリギリまでここに居たほうがいい」

「そ、そうなの?」

 

 よく分からないようで首を傾げるシャル。

 まったく、俺らがどうやって教室を出てきたかを考えれば分かりそうなもんだけどな。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「………おい、デュノア兄弟。どうして貴様らは窓から教室に戻ってきた?この教室にはドアが2つあることを忘れたか」

 

 はい、現在俺達の前にはこめかみをひくつかせている織斑先生(ブリュンヒルデ)がいます。理由は単純、俺がシャルを背負った状態で窓から教室にエントリーしたからだ。

 いやー予冷が鳴ってすぐだったからまだ来てないと思ったらもう教卓のところにいてびっくりだ。

 

「ひっ」

「他の生徒に囲まれて遅刻するよりはいいと思ったので、学園の校則にも窓から教室に入ってはいけないというのはありませんでしたし」

 

 シャルが怯えたように小さく悲鳴を上げるが、その程度では俺は動じない。怒っているよう見えるが、覇気も殺気もそれほど混じっていない。さっきチョークを投げられた時の方が怖かったくらいだ。

 

「たしかに校則には無いが、常識で考えろ。それに外に出たら遅刻するかもしれないと言うならそもそも出なければいい話だろうが」

「常識ってのは往々にして破られるものですよ、この教室にも実例が3つありますし」

 

 実例というのはもちろん「ISは女性にしか操縦できない」という常識を打ち破った俺とシャル、それに一夏のことである。まあシャルは実際のところ女性だが対外的には男性ということになってるから問題ない。

 つーか、戻れないなら外に出るなって言っても出ざるを得ない状況になった理由の何割かはアンタのせいだろうに。弟を守るために俺等を売りやがって。

 

 そんなことを考えていたのが伝わったのか、表情が若干ばつが悪そうなものに代わった。

 

「―――まあいい、席に着け。次からは普通の行動を心掛けるように」

「「分かりました」」

 

 シャルと2人で頷いて自分の席に戻る。

 お、なんか一夏が信じられないものを見る目でこっちを見てる。怒った姉から無傷で逃れたのが信じられないって顔だな。

 表情豊かで面白そうだし後で話してみるか。

 

「それでは授業を始めますよー………うぅ、最初の授業だから張り切ってたのになんか空気みたいになっちゃいました…」

 

 そして山田先生が落ち込んでる。

 こっちにはあとで謝っておこう。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「頼むっ、俺に勉強教えてくれ!」

「えぇ…」

「いくらなんでも追い詰められすぎじゃねえの?」

 

 はい、さっきは目の前で織斑(姉)が怒っていましたが、今度は目の前で織斑(弟)が手を合わせてこちらを拝んでいます。さっきは怯えていたシャルが今度は困惑してる。織斑姉弟はシャルのレアな表情を引き出すのがうまいな(思考放棄)。

 

 世界に3人しかいないIS適性保持男子が1箇所に固まっていれば周囲の女子達が突撃してきそうなものだが、一定の距離を開けて取り巻くのみで近づいてこない。

 互いに牽制し合っているというのもありそうだが、なにより一夏の全身から立ち上る必死さが彼女達を遠ざけているんだろう。

 

「なあとりあえず顔を上げてくれ。挨拶も何もなしでいきなりそんなこと言われても困る」

「あ、ああ。たしかにそうだな」

 

 そう声を掛ければ彼は顔を上げ、日本人に特有の年齢の割にあどけない顔立ちが露になった。

 

「俺は織斑一夏、気軽に一夏って呼んでくれ。数少ない男子同士仲良くしようぜ」

「リアム・デュノアだ。俺もリアムでいい、よろしくな」

「よろしくね、僕はシャルル・デュノア。シャルルって呼んでくれると嬉しいな」

 

 ニカっと人懐っこく笑う一夏と握手し、改めて俺達も自己紹介を行う。

 やっぱり同い年というよりも1,2つ下の感じがするな。部隊の仲間の日本オタクが日本人は外見と同じように中身も幼いって言ってたけど案外間違ってないのかもしれん。

 

「それで、勉強っていうのはISに関する知識のことかな?」

「そうなんだよ!千冬姉のやつ、1週間で参考書全部覚えろなんて、無理に決まってるだろあんな分厚いの!」

 

 さっきの授業で一夏にはIS関連の知識があまりどころか全くないことが判明した。どこが分からないのか聞いてくれた山田先生に対し、「ほとんど何も分かりません」とヤケクソ気味に宣言している様はいっそ感動すら覚えたね。

 直後に織斑先生から出席簿アタックと追加課題としての参考書暗記を言い渡されてたけど。

 

 んでもってこの参考書、ISの仕組みや仕様に関連規則などのISに関する基礎知識が記載されているのだが、バカみたいに分厚い。必要最低限の記載とされているが、おおかたIS自体が世に出て日が浅いために何が必要最低限なのかが誰もよく分かっていないのためにこうなっているのだろう。

 

 そんなものをわずか1週間で覚えろというのは無茶である。よって普通ならば一夏に同情するところだが、あいにくときちんとした理由がある。

 

「いや、それは確認もせずに電話帳と間違えて捨てたお前が悪い。それがなけりゃ2ヶ月くらいは時間あっただろ」

「うぐっ、そりゃ確かにそうだけど…」

 

 俺の言葉に口ごもる一夏。

 この一夏(バカ)、あろうことか家に届いた参考書を電話帳と間違えてそのまま捨てたらしい。そして参考書の存在自体を知らないまま入学したときたもんだ。

 誰か気付けよと思わないでもないが、資料で見たところ一夏の家族は姉の織斑千冬だけで両親はいない。その織斑千冬についても弟がISを動かしたゴタゴタで忙殺されていたであろし、しょうがないと言えばしょうが無いのかもしれない。

 

「もうリアム。過ぎたことを言っても仕方ないよ、捨てちゃったものは捨てちゃったんだから。一夏、僕達でよかったら勉強手伝うよ」

 

 うなだれる一夏を見かねたシャルが助け舟を出す。

 さすがの優しさだ、伊達に天使と評されている(デュノア家及びデュノア社の共通認識)わけではない。

 

「ほんとか!?」

 

 暗闇の中で一筋の光を見つけたかのような顔になる一夏。表情がコロコロ変わって面白いな。

 

「うん、困った時はお互い様ってね。リアムもいいでしょ?」

「へいへい、俺もそのつもりだったからな。ま、織斑先生にしても本気で全部覚えられるとは思ってないだろうし、重要そうなところに絞ればなんとかなんだろ」

 

 シャルも問いかけに俺も頷いて答える。

 俺以外の唯一の男性適性保持者だから可能な限り情報を集めるようにと政府から内々に指示が出ているうえ、束博士からも「いっくんと仲良くしてあげてね」というお願いをされているので一夏に近づくのは決定事項だ。

 

 とはいえ、それらを抜きにしても仲良くしようと思うくらいにはこいつとは合いそうだ。

 

「2人ともありがとな!いやー言われた時はほんとにどうなることかと思ったぜ。つーかなんで2人は普通に授業についていけてたんだ?参考書を読んでたとしても難しかったと思うんだけど」

 

 分からないといった感じで首をかしげる一夏に思わずシャルと顔を見合わせる。もしかしてこいつ、うちの会社(デュノア社)がISメーカーだってこと知らないのか?

 ………知らないんだろうな、というかそもそもうちが企業を経営してることも知らないかもしれん。

 

 どこから話したものかと考えながら口を開いたところで―――

 

「ちょっとよろしくて?」

 

―――よこあいから声が掛けられた。




続きます。
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