【凍結】いつか見た幻日~灰にまみれたボクと、愛に狂ったキミ~ 作:虚舟
ということで、第2話となります。今回は鬱要素を取り入れたつもりなので、楽しんで頂けると幸いです。
それでは、どうぞ。
最初に目に入ったのは、最早見慣れた赤だった。
村の中心から少し外れた場所にある彼の家は、他の家の例に漏れず業火に巻かれ、崩れながら黒煙を上げていた。こじんまりとして、落ち着いた雰囲気で自分を迎えてくれていた我が家の終わりに呆然とする。が、炎の熱と息苦しさによって自分を取り戻す。
そうして、彼は父母の名を叫ぶ。
「父さ―――――ん!?!?母さ――――――――――――ん!?!?!?!?」
驚くほど声が出た。が、返る言葉はない。彼の声は村に響き、そして静かに消えていく。
辺りは焼け落ちる音、未だ響く悲鳴と絶叫、逆巻く風の音で酷く五月蝿かったが、彼を支配していたのは、痛いほどの静寂だった。
彼の耳には周囲の音など入っておらず、ただ、返答を待ち続ける。その瞬間、彼の耳は1km離れていたとしても、父母の声を聞き分ける自信があった。が、その自信に反比例するかのように、
彼はだんだん心細くなってきた。が、それらを押し隠すようにもう一度叫ぶ。が、変化はない。
こうなると、彼は最早正気を保てなくなった。もとより心身ともに脆弱である。故に、半狂乱に成りながら必死で叫んだ。何度も何度も。すぐに喉がしゃがれ、堪らず空気を吸い込む。
煙ごと吸い込んだのだろうか。肺が焼けるように痛く、何度も咳き込む。そうして、血を吐くような勢いで叫ぶが、返る言葉はない。
そうして好きなだけ叫ぶと、頭が一気に冷えて、閉じていた扉が開く。
今までは『父母を見つける』という考えに縛られ、麻痺していた感情が首をもたげる。
その感情の名は、
(あれ....?こんなに寒かったっけ...?)
村が、家が焼け落ちていたという衝撃。炎というモノに対して抱える潜在的畏怖。自らを取り巻く環境の変化への困惑と混乱。家族や仲間の安否への不安。
そういった、ある意味今更な感情を取り戻してしまった彼。それらは、強烈な寒気となって彼を苛む。
焦げるような熱さのなか、彼は堪らず、震えながらしゃがみこむ。
そうして震えている彼の視界の端に、
(....?)
しばし、息苦しさを忘れる。ソレに目が吸い寄せられる。ゆっくりと顔を向けると、少しずつ全体像が見えてくる。
少し火が弱くなってきたからだろうか?玄関の入り口に何かが折り重なっているのが見える。物だろうか?いや違うだろう。玄関にそんな細長くて大きい物が置かれていた覚えはない。
奇妙な事に、ソレは玄関の出口側に向かって倒れてきている事だ。例えば、
ん?
あれ?
.....燃え上がる家から逃げ出そうとする人?
そんな人、いるはずが...
いや待て。
そんな、まさか。
違う、違う違う違う。
そんな筈はない。
嫌だ、嘘だ。
だって、だって.....
この家は....
あ。
~次回予告~
少年は"自らの終わり"へと進む
その歩みを遮るモノはなく
その歩みを止めるモノもいない
"結果"を否定し
"結末"を拒絶し
"終わり"から静かに目をそらす
故に進んだ先に路はなく
少年は選択の代償を払う
全てが終わりし運命の夜
新たなる物語は産声を上げる
そうして、幕は緩やかに上がり出す
――――――願わくば、最良の未来をその手に