【凍結】いつか見た幻日~灰にまみれたボクと、愛に狂ったキミ~   作:虚舟

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どうも、虚舟です。

とりあえず、今回でプロローグ(もとい回想)は終わりとなります。次回からは本格的にストーリーを動かすつもりなので、よろしくお願いいたします。








それでは、どうぞ。


「彼」の終わり~そして舞台の幕が上がる~

 ─────────────────────────────────────────────────────────────────どれくらい、時間がたっただろうか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気が付くと、俺は知らない場所にいた。周囲は相も変わらず燃えているが、場所だけが違っていた。そこは……村の広場だった。

 

 あまり大きくないこの村の中心にある、円形の広場。この広場を村の中心として、ここを囲むようにして家が立ち並び、道が放射状に広がっている。そんな広場のさらに中心にある大きな噴水の淵に、俺は腰かけていた。

 

 意識の覚醒とともに、自らを取り巻く環境に困惑し、辺りを見やる。

 

 後ろを向くと、火から逃れようとしたのだろうか? たくさんの人々が折り重なって浮かび、火によって紅く照らし出されていた。顔がないモノ()。焼け焦げているモノ()。最早、元が何だったのかわからないほどに崩れたモノ。そんなモノ()たちで埋め尽くされた噴水は、赤黒い水を吐いていた。

 

 そんな光景も、もはや俺には何の感慨ももたらさなかった。生きている人間が一人たりともいないのはわかりきっていたが、それ以上に。俺の、人として重要なものがどこかで壊れてしまっていたのだろうと、漠然と思った。

 

(なぜここに……? 俺はさっきまで自宅の前にいたはず……)

 

 奇妙なことに、事ここに至るまでの記憶が一切ない。我が家は村のはずれにあるから、ここまで来たのなら覚えていてもいいはずだが……。

 

(確か……。そうだ、俺は母さんたちを探していたんだ。やっと家について、でも家も燃えていて、だから母さんたちを呼んで……。そのあと……!?)

 

 突然、猛烈な頭痛に襲われる。頭が割れるように痛い。立っていられない。たまらず膝をついて、頭を抱える。

 

 

 

(痛い。痛い。痛い。痛い。痛い痛い痛い痛イたいイたいイタいイタイタいイタイイタイイタイイタイ────────────────────────────────────────っッッッ!!!!????)

 

 

 突然の激痛に驚くとともに体が、脳が悲鳴を上げる。たまらず身をよじる。水しぶきを上げ、後ろに倒れこむ。水深は浅くとも、恐慌状態になっていた俺は、縋りつくものを探して手足をばたつかせる。傍から見るモノがいれば、その滑稽さと場の異様さが組み合わさり、さぞ不気味に映っただろう。

 

 それはさておき、ばたつかせていた手に、何かが触れる。

 

(!!!)

 

 すぐさまソレを抱き寄せると同時に、ソレを台替わりにして起き上がる。気づけば、あの異様な痛みは消えていた。

 

(今のはいったい何だったのだろう……?)

 

 そう思いながら、ふと、自分が抱えていたものを見る。

 

 

 

 ──────────────────────────────────────────────それは、先ほど見た焼け爛れた死体だった。

 

 

 

(!?!?!?)

 

 

 たまらず放り投げる。憔悴した体のどこにと言うほどの力が出て、死体は放物線を描いて飛んでいく。……あ、首が取れた。

 

 そうして、深呼吸をする。身体に倦怠感が纏わりついてきて、たまらず顔をしかめる。

 

 気を取り直して、もう一度、家に着いた時のことを思い出そうとする。すると……

 

 

(グゥッッ!? またッ……!!!)

 

 先刻の頭痛がぶり返してくる。たまらずうずくまりながらも、考えるのをやめようと努力する。脳を空っぽにして、何も考えない。ただ、〝何も考えないということ"だけに意識を集中させる

 

 すると……痛みは徐々に消えていった。

 

 荒い呼吸を繰り返しながらも、先の出来事を回想する。

 

(あの痛み……。母さんたちのことを考えるとぶり返してくる。でも、なぜ? そんなの、まるで……)

 

 そう、まるで……

 

 

 まるで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

(……やめよう。これ以上考えていても嫌な気分になるだけだ)

 

 

 

 

 ────────────────────────────────────────────────そうして、俺は考えるのをやめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(嗚呼…やっぱり)

 

 

 

奇妙な確信とともに見上げたのは、あの娘の家だった。

 

 

考えるのをやめ、歩き続けること十数分。半ば無意識で歩いていたというのに、此処にたどり着いてしまうこと。

 

…無意識だった?

 

それすらも言い訳だ。

 

結局のところ、その足を動かすのは自分自身なのだから。

 

 

しかし、何と言うべきなのだろうか。

「無意識だったから」と自分自身に言い訳をして、「理性が邪魔していただけで、本王ではずっと彼女を心配していたんだ」と、顔の見えない誰かに言い連ねるような。

 

「本当は幼馴染の安否を確かめたかったんだ」と主張するかのような…

 

そんな自分に嫌気がさす。

 

 

(さっきまでは自分のことで頭がいっぱいだった癖にな…。)

 

 

精一杯自分のことを脳内で罵倒してみても、

 

「それは全てお前の独りよがりな自己満足にしかならない。お前は自分を罵倒すれば自分の罪が許されると勘違いして、勝手に気持ちよくなっているだけだ。」

 

と冷静な自分が言う。

 

その冷静な言葉さえもただの自己満足に聞こえてきて、もはや何を考えればいいのかわからなくなってきた。

 

 

そんな自己嫌悪のスパイラルに(現在進行形で燃え盛っている家の目の前で)陥っている僕の思考を断ち切るように、唐突に(by主人公の主観)甲高い悲鳴が上がる。

 

その声にいち早く僕が気づけたのは、その声が幼馴染の声のようだったからだ。

 

その声が響くのは目の前の館から。

 

なぜここに来たのかを思い出した僕は、なりふり構わず幼なじみの家へと飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

熱い。最初に感じたのは、その炎の熱さだった。

 

家の中はそこかしこが燃え、家具委や調度品は倒壊し、食器や細工の欠片が散乱して、足の踏み場もない。まるで嵐のあとか、誰かが荒らし回ったかのようだった。

 

そんな中を、這って進むのはなかなかに堪えた。

 

熱で肌があぶられる。目に煤が入り込み熱気が肺を焼く。涙がにじんで前が見えない。陶器の欠片が突き刺さり、血がにじむ。その傷にガラス片が入り込み、激痛が走る

 

それでも、進み続けた。

 

 

階段を上り、二階の突き当り。そこに彼女の部屋がある。

 

途中、何度か焼け焦げた死体を見た。死体には、まるで化け物にでも傷つけられたかのような傷跡があった。まだかすかに動いていたモノもいたが、どうせ助からないだろう。

 

そういえば、あの娘は何人家族だったのだろう?地主の娘だから兄弟も多いのだろうか?ああ、だからこの家はこんなに大きくて、転がってる死体も多いのか…。

 

そんな狂った思考をしながら動くうちに、いつしか目的地に到着していた。

 

 

彼女の部屋までは、未だ火が回っていないようで、少し安心した。

 

ゆっくりと立ち上がり、ドアノブに手をかける。

 

(ああ..。そういえば、女の子の部屋に入るのって、これが初めてなんだな...。)

 

フッ...と、小さな笑いが込み上げてくる。

 

少しだけノブを引いてみると、抵抗はなかった。鍵は開いているらしい。

音もなく、滑るように開くあたり、高級品なのだろうなと思う。

 

そんな場違いな思考をして

 

彼はその扉を開け放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――何もない部屋だった。

 

いや、「何もない」というには少し語弊があるだろうか。真なる意味での「何もなさ」ではないのだから。

 

小綺麗な部屋、とでも言うべきか。カーペット敷の床に、この辺りでは珍しいクローゼット。こじんまりとした机に、確かな存在感を放つ本格的な本棚。

 

自らの知る"部屋"という概念から遠く離れたその場所に入ったことで、彼は自分がひどく場違いな場所にいるような、あるいはよく知らない場所に独り取り残されたかのような、そんな心細さを感じ、身震いした。

 

それはさておき、彼は当初の目的を思い出し、ゆっくりと彼女の名を呼ぶ。

 

コトリ。

 

小さな音が、クローゼットの中から聞こえる。

 

名を呼ばれて驚いたのだろうか。どちらにしろ、探す手間が省けたと、彼は足早にクローゼットに向かう。

 

そうして、クローゼットの前に立ち、もう一度名を呼ぶ。

 

カタリ。サラ、サラララ。カチャリ。

 

物音と共に、衣擦れの音が聞こえる。こちらの声を聞いて、興味が湧いたのだろうか。

 

ソッ...。キュイイイイ...。

 

ゆっくりと、本の少しだけ、扉が開く。今頃、恐怖とそれに勝る好奇心でもって、彼女は扉をの隙間から外を窺おうとしている。"普段から冷静な彼女がこんな風な動きをする辺り、かなり追い詰められているのだろうな"と、頭の片隅で思う。

 

そして、彼は唐突に、ほんの少しだけ開いた扉を開け放つ。

 

キュイイイイ....パタン。

 

ゆっくりと開け放たれた扉の先には思った通り。蹲り、唐突に射し込んだ光にその端正な顔を歪める幼なじみがいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良かった。あなたに会えて、本当に良かった。」

 

彼女が漸く発した言葉が、それだった。

 

彼らはゆっくりと、しゃがみながら、玄関へと歩いていた。

 

扉を開けて数秒後、漸く事態に彼女の頭が追い付いてきたのか、泣くとも笑うともつかぬ顔を向けてきた。なにか言いたいようで、でも言葉にならなくて、その仕方を知らなくて、でも伝えたくて...。

 

彼女の表情からは、そんな迷子の子供のような想いが溢れていた。

 

自らへの罪悪感から、たまらず目を背ければ、彼女に抱きつかれた。

 

どうやら、相当追い詰められていたようだ。

 

彼女の話によると"何か恐ろしい化け物の声が聞こえた。父や母に逃げろと言われ、外に逃げようとしたが、既に火が回っていた。

その内にどんどん火が強くなったため、少なくとも一階よりは危険が少ないだろうと自分の部屋に逃げた。突然のことで、兄弟がどうなったのかが分からない。とても気がかりだ。"

 

要約すると、こんなところか。

 

入ってきたのとは別ルートで玄関へ向かう。入ってきたルートにしないのは、彼女への配慮だ。元来た道には、死体がゴロゴロ転がっているから。

 

「ありがとう。まさか助けに来てくれるとは思わなかったわ。」

 

そう言って笑う彼女の顔には陰りが見えるが、とても嬉しそうだった。

 

"君を助けると強く思ったんだ"などと伝えれば、嬉しそうにはにかむ。そんな彼女のそばにいるだけで、心が癒された。こんな状況でも"頑張りたい"と思えた。

 

浅ましい男だ。犯した罪は変わらないのに、罪悪感から逃れたいがために救いを求める。そんな資格は、貴様には存在しないというのに。

 

極限状態においては、いつも以上に互いを意識しあい、結束する。普段は気にかけないようなことまで気にかけ、肩を貸し、助け合う。

 

それは、今にも崩れ去りそうな絆を、何とかして保とうとする人間の本能なのだろうか。

 

極限の状況下で有るがゆえに、いつも以上に分かりあい、笑いあえる。そんな時間があった。

例えそれが、他者から見れば狂気でしかなかったとしても。

 

「ふふ。どうしてだろうね?こんなに苦しいのに、私たち、笑ってる。」

 

―――苦しいからこそ、笑い会うのさ。苦しみを分かち合うために。

 

「愛を分かち合うために?」

 

―――そうさ。他の想いも同様に、ね。

 

「他の想いって、例えばどんな?」

 

―――なんでもいいのさ。恋だの、愛だの、勇気だの、希望だの。

 

「ずいぶん前向きなのね。」

 

―――前でも向いていなきゃやってられないだろ?こんな煙の中じゃ。

 

「ふふ。それもそうね」

 

―――だろう?

 

「貴方とはずっと一緒にいたのに、今、初めて貴方と会えた気がする」

 

―――同感だ。僕も君に初めて出会ったような気がする。

 

「なら、はじめましてかしら?」

 

―――ああ。はじめまして。

 

「ええ。はじめまして。そして()()()()()()()()()()?私の騎士さん?」

 

―――もちろん。こちらこそ、よろしく。...騎士さん?

 

「あの部屋から私を見つけ出してくれたとき、物語に出てくる"姫を救い出す騎士"」みたいだなって思ったの。」

 

―――それは光栄だ。なら、()()()()()()()()()()()()

 

「ふふふふふ♪」

 

―――アハハハハハハ♪

 

轟轟となる炎のオーケストラに合わせ、彼らの笑い声は燃ゆる赤へと溶けていく。

 

そうしてゆっくりと進むこと十数分。

 

彼らは、玄関へ間近に迫っていた。

 

――――見て。玄関だ。外に出られる。

 

「本当だ。....ふぅ。ようやく此処まで来られたね」

 

―――早く外にでないと。

 

「うん。皆を助けなきゃいけないもんね」

 

―――さぁ、行こうか。

 

嗚呼。何故、世界はかように残酷なのだろうか。

 

少年は壊れかけの心を抱いて、彼女を支える。その、儚く、小さく、優しい手を。

 

嗚呼。何故、世界はかように美しいのだろうか。

 

少女は少年の腕に腕をひかれ、ゆっくりと歩き出す。その瞳に、崩れかけの希望を宿して。

 

嗚呼。少年はどこで間違えたのだろうか。きっと、その問いに意味はない。なぜなら、きっと彼は最初から、壊れていたのだろうから。

 

そうして、ソレは起きた。

 

彼らは予想していなかった。その炎がどれだけ恐ろしいか。

 

彼らは考えられなかった。自分達がどれだけ危険な場所にいるのかを。

 

彼らは気を抜いてしまった。出口を見つけたことに安堵するあまり、周囲の変化を見過ごした

 

故に、ソレは結果として発現する。

 

始めは小さな異音。

 

それは徐々に大きさを増し、やがて轟音となる。

 

そうして、ソレが―――――その家を構成する骨組みの一つ。頑強なる石柱が、彼女へと倒れ込んだ。

 

回避は不可能。轟全たる質量は、彼女の下半身を完全に押し潰し、倒壊した。

 

ピチャビチャビチャッッッッ!!!!

 

彼の体に血飛沫が飛ぶ。その顔に付着した液体に、彼は呆然とする。

 

当然だろう。つい一瞬前までは確かにその存在を感じていたものが、いつの間にか下半身をミンチにされて横たわっているのだから。

 

呆然とする彼に、言葉が投げ掛けられる。

 

「あれ..?わたし...何で...倒れて...?」

 

立ち上がる砂煙の向こうで、人の声がした。間違いない。彼女だ。急いで駆け寄る.。彼女の当惑した声が響く。次第にその声も弱々しくなる。

 

近づいてよく見れば見るほど酷い状態だった。臍から下の下半身はぐちゃぐちゃで原型を留めていない。血が急激に圧縮され、破裂したことにより大量に出血。その顔がみるみる血の気を失い、土気色に変わっていく。

 

「あ、あれ...?私、早く外に行かなきゃ行けないのに...。」

 

―――■■■!!!

 

堪らず駆け寄ると、彼女はゆっくりと彼の方に顔を向ける。その動作は酷く緩慢で、彼女の体が最早使い物にならなくなってきているのを暗喩していた。

 

駆け寄って彼女の手をとる。その氷のような冷たさに愕然とする。

 

「...ねぇ、何が起きたの?私の身体はどうなったの?」

 

―――君は...倒れてきた石柱の....下敷きに...なった..ん....だ。

 

途切れ途切れの言葉で、なんとかそう伝える。視界は真っ黒で、頭は真っ白。口は鉛で出来たかのように重く、錆びた歯車を回すかのように掠れ、動揺がありありと浮かんでいた。

 

そう口では言いいながらも、思考は現実に追い付いていなかった。彼の頭は現状の把握で手一杯であり、ソレ以外に割けるリソースは無かった。

 

だからだろうか。彼は、自分の言葉が弱りきった少女にどんな風に届くかにを考えられなかった。有り体に言えば、配慮が出来なかった。

 

ここで、少しだけ彼女の視点に立って考えてみよう。

 

突然の火災によって家族と離ればなれになり、燃え上がる炎に戦々恐々とした時間を過ごしていた少女。いつ、自分のところにまで炎が来て焼け死ぬかも分からない状況。

 

そんな状況で心身ともに疲弊していたに、身を呈してを助けに来てくれた少年。彼女には正に救世主のように見えていた事だろう。

 

そんな少年が。自らの救世主が。自分を助けようとするでもなく、ただ自分を見下ろしている。何をするでもなく、ただ傍観する少年。

 

たとえこの少女でなくとも、こう思うだろう。

 

 

 

 

 

 

            即ち、『突っ立ってないで助けて』と。

 

 

 

 

 

 

少年はここに来て、ようやく柱を退けようとする。が、ピクリとも動かない。当然だ。彼は成人すらしていないただの子供なのだから。

 

彼女は、何とか脱出しようと感覚がなくなりかけた身体に鞭打って立ち上がろうとするが、何とか手首を上げられるだけだった。

 

身体を凍えるような寒さが覆い、刻一刻と、大事なものが抜け落ちていく。痛み等という甘いものはとうに消え、すがる先はなにもなかった。

 

寒さが増していく。全てが遠ざかり消えて行く。意識を留めることに全神経を使うその姿は、まるで蜘蛛の巣にとらえられた揚羽蝶のようだった。

 

見れば、既に少年は救出を諦め、座りこんでしまっていた。

その姿が、その光を失いかけた目が、彼女の絶望を加速させる。

 

少年もま同様だった。彼女を救い出した時の高揚は、全て罪悪感へと変換される。

何もできない自分への無力感。

「そんなことをただ考えるだけで行動しない自分」への失望と叱咤。

「そう思うことさえも自分を罰しているつもりで、勝手に気持ちよくなっているだけではないか」という、自らへの疑念。

 

そういったものたちが彼を取り巻いて、余計に彼は動けなくなる。

 

それは負の螺旋。それは自己矛盾のスパイラル。それは自己嫌悪の連鎖。

そうして、想いは循環する。

 

 

 

 

 

                そこは地獄だった。

 

 

 

 

 

そうの地獄で、彼らは絶望を共有する。想いを通じ会わせる。

 

何よりも尊い日常の中で、心はすれ違い、閉ざされた絶望の闇の中で、人は想いを繋ぐ。

 

それは、なんという皮肉なのだろう。

 

 

少年には伝えたい想いがあった。ソレは何処までも純粋な願い。

 

少女には叶えたい願いがあった。ソレはささやかで優しい想い。

 

されど、その想いが成就することはないと、彼らは悟った。

 

そうして、少年と少女の物語は終わる。

 

彼女の最後のコトバは、煙に紛れて消えて行き、少年はその最後を看取った。

 

 

 

             『そうして、少年は全てを喪った。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少年は立っていた。何処をどう歩いたのかすら覚えていない。

 

ただ、炎の強い方へ強い方へと流されていくうちに、ソコに辿り着いた、と言うべきか。

 

ソコは、四方を紅き焔で囲われ、痛い程の熱気が肌と喉を焼く場所。中央には焦げた死体の山がうず高く積まれ、王の玉座に仕立てられていた。

 

玉座に座るは、二足歩行の狼とでも呼ぶべきモノ。おおよそヒトとかけ離れた姿をしていながら、仕草は妙にヒトっぽい。

人間とは絶対に言えないが、さりとて狼と言うには疑問を覚える。そんな存在だ。

 

少年は、そんな人ならざるモノに向かい、頭を垂れていた。

 

頭を垂れるというのは、本来は謝罪や恭順を示すものだが、今回は違った。

 

有り体に言えば、自殺しようとしていたのだ。

 

最早理想も故郷も憧れも喪った少年に、反骨心なぞ欠片も残っていない。あるのは何処までも広がる虚無感。憎しみ等という熱く眩しい感情は消え去り、現実から逃避するために死を求める。

 

これを自殺と言わずして何と言う?

 

そして、異変はその願いを叶える。

 

少年の足元から焔が吹き出し、彼を取り巻いていく。

 

そうして、焼き殺されるのだろう。

 

しかし、少年に後悔はなかった。むしろ、その痛みを彼女への贖罪にしようなどと考えていたのだから笑ってしまう。

 

かくして、少年の物語もまた、終わりを迎える―――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

訳がない。

 

この世界はそんな身勝手な贖罪は必要としないし、罪人には罰が与えられる。

 

少年の目に微かに映ったのは、赤と白の閃光だった。

 

              『霊符·夢想封印』

 

灼熱の世界に、凛として涼やかな声が響き渡る。

 

その声に呼応するように色とりどりの球体と様々なお札が空を駆ける。

 

それらは、焔を蹴散らし、黒雲を裂き、煙を払う。

 

少年を囲む焔すらも切り裂くソレは、かの異変すらも、まるで幻のように消し去った。

 

かくして、呆気ないほど唐突に、拍子抜けするほど簡単に、異変は終わった。

 

元凶は死に絶え、動くものは2人を除いて誰もいなくなった。

 

 

 

 

晴れ渡った空のもと、紅白の少女が戻ってきた。生存者を探し終えたのだろうか。

 

「結局、アンタ以外の生存者は見つけられなかったわ」と彼女は言う。

 

そこから、今の状況やこれからどうなるのかを淡々と伝えていく。少年は返事をしなかったが、少女も気にせず言葉を並べていく。どうやら、少年にあまり興味があるわけではないらしい。

 

「アンタはこれから私の所で預かることになるわ。私の代わりに働きなさい」

 

こくりと頷く。少年には、これからの生活がどうなるかなぞ、どうでもよかった。

 

ただ、流されていく。そこに少年の意志は存在しないし、その必要もない。

 

脱け殻に、意志など存在しないのだから。

 

 

「それじゃ、ついてきなさい。」

 

そう言って、先頭を歩く紅白の少女の後を追う。

 

しかし、幾歩も行かずに立ち止まり、くるりと振り返る。

 

そうして、言った。

 

「アンタの名前は?」

 

少しだけ、心臓が跳ねる。そうして、ゆっくりと息を吸い、告げる。

 

 

 

 

僕の...名前は――――――。

 

 

 

 

 

 

 

これは、僕と彼女のプロローグ。

 

青年と巫女のお話の前、少年と少女のお話。

 

大きく捻じ曲がり、動き始めた少年の物語。

 

その行き先を暗示するかのように、少年の胸のなかで、黒玉が妖しく揺れていた。




はい、ということでプロローグ終わりです。皆さん、愉しんでいただけましたか?いただけた方は幸いですし、いただけなかった方には申し訳ありません。これから精進してまいります。

さて、あらすじにも書いてありますが、主人公の『山神誠』という名前は、今後も出していこうと思っています。というか、霊夢みたいに名前を言わずに「あんた」で済ませる人だけじゃないので、使わないと不便なので。

この回想は、あくまでも主人公の夢の中という設定なので、当然ながら起きたら覚えていません。夢の中で記憶を封印って何なんですかね…?(困惑)マトリョーシカかな?(by原作者)

そして皆さんお気づきでしょうが、この主人公、かなりの阿呆です。どう考えても助けに行くべきだろってところで自己嫌悪で気持ちよくなっていたり、自分のしていることが倫理的にどうなのかを全く考えなかったり。


自分で書いていていて言うのもアレですが、この主人公好きじゃない…(´・ω・`)

というか、自分が何書きたいのかもわからなくなってきた(白目)

おかしい、当初のプロットではこんなはずじゃなかったのに。不思議だね(;・∀・)


それはさておき。ここらへんで言っておきますと、これはあくまで僕の自己満足?小説以上の何物でもありません。見ていただけるのは嬉しいですが、好みが分かれる(主人公が色々とアレ)どころの話じゃないので、無理な人(多分大多数)はブラウザバック推奨。

それでも見たいなら、どうぞ見てくださいお願いします|д゚)

しかし、何度も言いますがこれは自己満足小説です。なので、「こんな展開はやめろ」とか言われても聞く気はありません(そもそも言ってくれる人がいない)のであしからず。

それでは、いつもの次回予告に入ります。




               ~次回予告~
            
            追憶は消え、物語は始まる
    
             少年はカタチを亡くし

             残骸を重ねて己を創る

             されど、それは紛い物

              一度壊れたその心

              最早元には戻らない

            ....されど、その想いは死せず

               灰被りの少年と

             純粋たる巫女が出逢う時

              その運命は胎動する

               

                 ―――――――願わくば、最良の未来をその手に。  
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