歌姫に拾われた俺がアスタリスクで生活をするのはまちがっているだろうか。 作:リコルト
「はぁ……はぁ……はぁ……」
練習場のシステムを使って星脈世代としての基礎能力、剣術、射撃の腕前を連続して測った俺は練習場の真ん中で思わず座りこんでしまう。まさか、こんなに疲れるとは思わなかった。
「お疲れ様、八幡」
そんな疲れた俺にクロエはドリンクを持ってきてくれた。疲れた人に対する一つの心遣いであるが、その行動に思わずスパルタじゃなくて良かったと思ってしまう。あの万有天羅だったら、ドリンクの代わりに愛のムチとして手刀が飛んできそうだ。
ちなみ、ペトラさんとシルヴィはギャラリー席で俺とクロエの特訓を静かに眺めている。クロエの特訓に口出しをする気配も無さそうだ。
「剣術は剣道をやっていた経験があるからまだマシだけど……星脈世代としての身体の使い方と射撃の使い方は全然駄目だわ。先に後者の二つを重点的に特訓をした方が良さそうね」
「ああ……分かった」
あの測定だけで、早速特訓メニューの大まかな方針を決めたようだ。彼女自身も他人の分析等を得意としているらしく、その才が早速この特訓で発揮されていた。
俺はドリンクを飲み終え、クロエの言う特訓メニューの内容に耳を傾ける。
「まずは星脈世代の身体の使い方の話をするわね。貴方の場合は走る等の基本的な行動に対しては星辰力がしっかり使えている状態で、後はランニングなどといったトレーニングをすれば走る速さや持久力は上がるわ。そこは引き続き自力でやって頂戴。これからやるのは戦闘時での星辰力の使い方よ」
「戦闘時での使い方?」
「そう。星辰力は時に相手に強力な一撃を与える力の源であり、時にはその一撃から身体を守る力の源よ。わたし達、星脈世代はこの力を応用して戦っているのは八幡も知っているでしょ?」
「ああ、まぁな」
他にも星辰力は自身の治癒能力を高める力がある。これは俺も経験済みだ。クロエが言うには有限である自身の星辰巳の使い分けが上手い人がアスタリスクでもかなりの実力者らしい。シルヴィもその内の一人だろう。
「そこで、わたしがやる特訓はこれよ。八幡、右手を構えなさい」
「えっ?こうか?」
「そうっよ!!」
「なっ!?」
突如、クロエは右拳を使って俺の右手に力強い一撃を加える。まさかの展開に俺も驚きを隠せない。
「どう?痛いかしら?」
「ああ……すごいジンジンするわ」
戦闘はあまり得意じゃないと豪語していた彼女の拳は万有天羅より威力はマシだが、それでも身体に響き渡る余韻を残すような一撃だった。
「痛みを感じるなら、まだまだね。今の私の拳は自身の星辰力の6割ぐらいで撃ち込んだものよ。今のを八幡は同じ位もしくはそれ以上の星辰力の割合で防御しなきゃいけないと駄目ね。じゃないと、最悪右手を骨折していたわよ」
咄嗟だったとはいえ、クロエが言うには俺は4割で防御していたらしい。もし、クロエが全力でやっていったら骨折は現実のものだったな。
「これをゆっくりのスピードでわたしと貴方で攻守交代してやるわよ。その時にわたしが当てる部位と当てられる部位、何割の星辰力でやるかを言うから八幡はそれに対応しなさい。防御の場合、下手すればさっき言ってた大怪我するかもしれないからそこは注意して」
「ああ、分かった」
「じゃあ、わたしから攻めるわよ。まず、左手に8割の星辰力で右拳の一撃」
左手に8割……こうか!
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ークロエsideー
「………………………………」
「………………………………」
まさか、数時間の練習で何も言わないで対応出来る所まで出来るとは思っていなかったわ。最初はかなりミスはあったけど、今では正確に星辰力を攻守共に制御できる状態だなんて。
「はっ………!」
「そらっよ!!」
わたしの全力の拳も今では痛みを感じずに楽々と防御している。ベネトナーシュの他のメンバーでもこの練習は無言でも出来ない子がいるのに。
理事長とうちの生徒会長はとんでもない人物を連れて来たものね。私と同じようにあまり公に出来ない理由もよく分かるわ。
「………今日はこの辺にしましょう。数時間でここまで上達したのは私も予想外だったわ。これなら、数週間で星脈世代としての身体の動かし方を教える事はなくなりそうだわ」
「え………マジか」
ええ、八幡は物覚えが良いというか、しっかり頭の中で理解しているタイプだから。がむしゃらにやるタイプの猪突猛進みたいな性格の男子だったら、一年はかかっていたわね。
「じゃあ、次は射撃と剣術について教えるわ」
「了解だ」
練習メニューの元ネタはハンター×ハンターの『流』という念能力の練習です。分かる人いるかな?