歌姫に拾われた俺がアスタリスクで生活をするのはまちがっているだろうか。   作:リコルト

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序列二位への挑戦

 

 ネイトネフェル。

 

 目の前の女子生徒は自分のことをそう呼んだ。

 

 シルヴィのマネージャーをやっている身として彼女の名前は聞いたことがある。クインヴェールの中ではシルヴィに次ぐ序列二位の座を持つ学生だ。

 

 序列二位だからかなり有名だと思われるかもしれないが、彼女はその考えから逸脱した稀な存在である。彼女のパーソナルデータは所属するクインヴェールの情報網を駆使しても一切不明なのだ。年齢、出身、家族関係、もしかすると名前すらも本名なのか怪しい。クインヴェールの全てを知るペトラさんも彼女については身分について詮索しない事を条件に学園に入れた特異的な存在だと話している。

 

 会話からも分かるように同学園でシルヴィをライバル視している彼女が一体何の用事で来たのだろうか。少なくとも激励という感じでは無いだろう。

 

「そう言えば、シルヴィアのマネージャーについて名前は聞いていなかったな。貴様、名前は?」

 

「新宮……八幡です」

 

「ほう、新宮八幡というのか………」

 

 名前を訊ねられたので彼女に俺の名前を言うと、彼女は俺の近くまで来て見定めるような様子でジロジロと眺め始めた。

 

「……ほぅ、王竜星武祭前最後のライブでシルヴィアが拾ってきた者というからどのような才人かと思えば、ただの青二才ではないか」

 

 ネイトネフェルが俺を見て言った言葉ーそれはまるで呆れたぞと言わんばかりの厳しい言葉だった。事実、俺に向けられる視線もあまり良い感じではないのがよく分かる。

 

「ネイトネフェル、それどういう事かな?」

 

 彼女の言葉にいち早く反応するシルヴィ。訊ねる言葉にも多少の怒気みたいが込もっていた。

 

「言葉通りの意味だ。何故このような者を学園で秘密にしてまで所属させた理由がわらわには見当がつかんのだ。先程の貴様らの模擬試合を少し見ていれば、彼は並外れた星脈世代ではなく、さらには音楽や芸能に通じた専門家でもない習いたてのマネージャーの卵ではないか」

 

「でも、八幡君はここ一ヶ月で星脈世代としても成長しているし、マネージャーとしての仕事もしっかりとこなせてるよ!」

 

「確かにな……だが、それはシルヴィア…貴様が構ってくれた結果だとわらわは考えている。事実、貴様は三年前の王竜星武祭よりも練習場に顔を出す回数は減っているではないか。あれほど王竜星武祭でオーフェリア打倒というわらわと同じ目標を持っていた貴様が………王竜星武祭前に大会に関係ない男と遊ぶとは落ちぶれたものよ」

 

「っ……!!」

 

 ネイトネフェルがシルヴィに向けた一瞬の眼差し。そこには見損なったぞと目でも言いつけるような軽蔑しきった眼差しだった。

 

 

「……シルヴィは落ちぶれてなんていません」

 

 

 俺はネイトネフェルとシルヴィの間に入るように立ち塞がる。俺だけを罵るだけならまだしも、シルヴィにも同じことをするのは我慢できなかった。

 

 彼女の専属マネージャーとして、彼女に救われた一人の男として。

 

「八幡………くん?」

 

「ほう……貴様、誰と誰の間を立ち塞いでいるのか分かっているのか?」

 

 そんなのは分かっている。一人は序列一位、もう一人は序列二位。アスタリスクに来たものなら、誰もが憧れる伝説のような存在達だ。それに立ち向かえる実力や序列すらも持っていない俺なんて彼女達からしてみれば蚊帳の外の存在だろう。

 

「貴女が言うようにこの学園都市は実力至上主義だ。本来なら、俺が貴女やシルヴィに会うことすらも出来ないでしょう。けれど、シルヴィは自分の時間を削ってまでアスタリスクに来たばかりの俺に目をかけてくれた。貴女がその時間を無駄だと言うなら、俺はその時間が決して無駄ではなかったと貴女に証明してみせる」

 

「証明か………如何にして?」

 

「貴女に決闘を挑む」

 

「八幡君っ!?」

 

 実力至上主義の学園都市で自身の実力を示す行為は一つー決闘しかない。シルヴィが言いたい事は分かる。でも、ここまで言われて彼女に何もしないなんて出来るわけがない。

 

「ふっ……面白い。その胆力だけは気に入った。本来なら公式序列戦でも無い限り決闘を受ける義務はこちらに無いが、その胆力に免じて受けてやる。一度言った言葉の責任はしっかり負えよ」

 

 俺はその言葉に静かに頷く。今更、無効試合にしようなんて提案するわけがない。

 

「では、今日はこの辺りでわらわは退いてやろう。わらわも忙しいからな。シルヴィアよ、決してお前はこの決闘に口出しをするな」

 

 そう言い残して嵐のようにやって来たネイトネフェルは練習場を去って行った。練習場に残ったのは去って行く彼女を最後まで見届けた俺とそんな俺を心配するシルヴィだけだ。

 

「八幡君……」

 

「ああ、大丈夫だ」

 

 

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