歌姫に拾われた俺がアスタリスクで生活をするのはまちがっているだろうか。   作:リコルト

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八幡の恐ろしい戦法

 

 

ーーー約二週間前ーーー

 

 

「どうだ、クロエ?俺の魔術師の能力と黄昏の夢幻剣の能力を組み合わせた戦法を作ってみたんだが……結構形になっているか?」

 

「ええ、形にはなってるわ。けど………」

 

「けど?」

 

「貴方の考えた戦法かなり捻くれてるわね。わたしがもし八幡の敵だったら、二度と戦いたくない人ベスト一位に入ると思う。友達無くすわよ」

 

 ガハっ!?あれ?可笑しいな?今日は身体を使った練習をしてないのに涙が出てくる。クロエの感想がストレート過ぎて辛いんだが。

 

「でも、八幡のこの戦法……相手の五感に干渉するから八幡の星辰力を対象に付着させるために複数回の接触という条件が必要だけど、条件を満たせばかなり強い戦法ね。星武祭でも十分に通用するわよ」

 

「それほどか…じゃあ、ネイトネフェルにも?」

 

「もしかしたら通用するかも知れないわね。ただ、彼女は近接戦闘のプロフェッショナルよ。条件を満たすまでの接触がかなり厳しいかもしれないけど」

 

 確かに……彼女に接触するという事は近接戦闘専門の彼女の体術を受ける可能性が高い。条件の達成には自身の星辰力を対象に付着させるだけだから銃撃もありだが、彼女には当てるのは厳しいだろう。それに直で触れた方が回数的にも効率が良いし。

 

「まぁ、わたしが言えるのはここまでね。練習と本番ってかなり違うものだし。せめてネイトネフェルと同じ、もしくはそれ以上の実力の人と戦えれば、通用するかどうか見えてくるんじゃないかしら?」

 

 

 成る程、それならば………

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ほぅ?今日は魔術師の能力と純星煌式武装を組み合わせた戦法が実戦でも通用するか試したいじゃと?良いぞ!妾にいくらでも見せるが良い!魔術師の能力に目覚め、並々ならぬ煌式武装らを手にして成長したお主とは一度戦ってみたかったのじゃ!何処からでも来ると良い!」

 

 意外にもそういう人物が身近にいるんだよな。しかも、生粋の戦闘狂だからこういう提案には絶対に乗ってくると思っていた。それに星露ならクロエには無いアドバイスをくれるかもしれないからな。

 

 本来はネイトネフェルに対応する体術を学ぶために以前彼女から受けた勧誘に乗ったわけだが、彼女もこういう趣向の転換を良いと思っている人物だ。それなら、遠慮なくやらせて頂こう。

 

 

…………

 

 

…………………………

 

 

………………………………………………

 

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

「ほっほっほっ!!愉快愉快!見事な戦法じゃ!久しぶりに妾も攻略に苦労したぞ!」

 

 いや、攻略って………最後は無理やり貴女が強引な力技で対処しただけじゃん。元々勝てるとは思ってなかったけど、こうして最後は体術で捩じ伏せられちゃっているよ。

 

「けれど、これは厄介な戦法じゃな。お主の能力と純星煌式武装の能力を無くして出来ないお主だけの戦法と言っても良い。確かにお主が言っていたように相手に自身の星辰力を十分に付着させるという必要条件はあるものの、自身の五感も変化出来るのじゃから体術を究めれば、能力で高めた動体視力と共に併用する事でその問題は解決すると思うぞよ」

 

 成る程……動体視力を向上させて回避しながら体術を利用すれば、相手への接触も容易だろうな。星露に言われるまでなぜそんな簡単な解決方法に気付かなかったのだろうか。

 

「にしてもこれは妾の弟子達が戦いたくない分類の人物じゃな。仙星術を使える者ならまだしも拳士のような武術だけを武器とする者はこの戦法の発動条件が満たされる前に八幡を倒さないと勝ち目は無い。長期戦になればお主は絶対に勝てると断言しても良いわい。今からでも妾の学園に入学させたい程じゃのう」

 

「ははは……残念ですが、無理ですね」

 

「じゃな。そんな事をすれば、歌姫にまた怒られてしまうわい。最後にその能力について妾から注意に近いアドバイスを授けよう」

 

「アドバイス?」

 

「左様。お主のその戦法は確かに強い。じゃが、お主の裁量次第でその戦法は人を廃人にするといった悪用も簡単にできる。くれぐれもお主は道を外すような行動は起こすなよ」

 

「はい、了解です」

 

「うむ。では今日の体術の特訓に入ろう……」

 

 

……………………………

 

 

 

 

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……………………………………………………………

 

 

 そして、話は現在へと戻る。

 

 

「何だと?これは分身か!?」

 

 ネイトネフェルが驚いたもの。それは8人に分身した俺の姿だった。

 

 といっても、この分身は俺が忍術とかを学んで出したわけではない。黄昏の夢幻剣の能力を利用して作った幻に近いものである。

 

「いくぞ!!」

 

 本物を含めた8人の俺達はネイトネフェルに向かって一気に突撃する。

 

「くっ……こざかしい。だが、この分身は貴様が持つ純星煌式武装の能力だと言うのは知っている!所詮はホログラム。本物以外は無視して良い!」

 

 ネイトネフェルは新たに作られた分身を無視し、先程まで対峙していた俺、つまり本物にだけ集中する。ホログラムなら実体は無く、接触してもすり抜けると彼女は思っていたのだろう。

 

 だが………

 

「がっ……何!?実体があるだと!?」

 

 本物の俺以外の7人の分身の攻撃がすり抜ける様子も無く、その攻撃はネイトネフェルにしっかりとダメージを与えていた。

 

「今だ。黒炎斬撃(こくえんざんげき)!!」

 

 俺はヴァルハラを振り、ネイトネフェルへの一撃を喰らわす。ヴァルハラの刀身には黄昏の夢幻剣で具現化した黒い炎が纏っていた。

 

「ぐっ…熱…!!何だこれは………!?」

 

(こやつの純星煌式武装はホログラムを生み出すだけの能力の筈……なぜ、わらわがダメージを?)

 

 

…………………

 

 

 

…………………………………

 

 

 

………………………………………………

 

 

「お~、見事にハマッておるのう」

 

 

「万有天羅、あれは一体……?」

 

 盤面が一気に変わった試合を星露はニヤニヤと面白そうに眺め、ペトラはネイトネフェルの予想外の劣勢っぷりに驚きを隠せなかった。

 

「簡単な話じゃ。八幡がネイトネフェルの五感に干渉して錯覚を見せておるのよ」

 

「錯覚?」

 

「うむ。黄昏の夢幻剣が生み出す幻ーいや、ホログラムに近いものに彼奴はネイトネフェルの五感を弄って実体があるように見せておるのじゃ。触覚に干渉されているせいで接触した際の痛みを感じる、幻の炎に対して熱さを感じる。ホログラムだから身体的な怪我はほぼ無いものの、精神に直接ダメージを与える。あれはなかなかに恐ろしい戦い方よ」

 

「……あれは貴女がお教えに?」

 

「いや、あの戦法は八幡自身が作り出したものじゃ。本当に頭のキレる奴じゃの~」

 

 

………………………

 

 

………………………………………………

 

 

……………………………………………………………

 

 

「ぐうっ!!しつこい!!」

 

 ネイトネフェルは襲い掛かる分身を自身の体術で消し飛ばしていく。が、幻であるため彼らに痛覚は無く、幻が消えても俺の星辰力が残っていれば、黄昏の夢幻剣の能力で何回でも蘇らせることも可能だ。この不死身のゾンビ戦法、精神的にかなりキツイだろうなぁ。ネイトネフェルも試合序盤と比べて全く余裕は無いし。

 

「ふふ…まさかこのわらわがここまでやられるとはな……。お主の評価を変えなければならない」

 

「はぁ、一体どのような評価を?」

 

 この戦法をその身で受けてクロエみたいにウザイ奴という言葉が飛んでくるのではないかとわざと惚けてネイトネフェルに訊ね返すと、彼女は疲れているにも関わらず口元に笑みを浮かべてこう言った。

 

「前言撤回だ。貴様……いや、新宮八幡は紛れもなく才人の一人。アスタリスクに来て僅か一ヶ月半でよく大成したものだ。シルヴィアの事は詫びよう。彼女は良い男を見つけてきたな」

 

 彼女の顔や言葉からは初対面の時に感じた軽蔑の視線や嫌悪感のようなマイナス感情は一切現れていなかった。シルヴィも言っていたが、俺も彼女は決して悪い人ではないと思う。ただ、彼女が直截な性格なだけ。彼女の価値観で悪いものや事にはビシビシと容赦なく厳しい言動を投げかけ、彼女が認めた良いものや事にはそれ相応の評価を言動で素直に表す。彼女はそういう人なのだ。

 

「それは嬉しいっすね……」

 

「うむ。だが、この決闘の決着を茶番で終わらせるわけにはいかない。わらわの提案じゃが、お互いに次の一撃で決着を着けよう。わらわもお主の分身を倒すのに星辰力を消耗して、お主も新たな分身を沢山作ってそろそろ星辰力が限界じゃろう?」

 

「バレてましたか………」

 

 新たに作った分身のせいで俺の星辰力もそろそろ枯渇しそうだったんだよなぁ。だって、あの人分身をもろともせず手刀と蹴りで消し飛ばすんだから。

 

「分かりました。次で決めましょう」

 

「ああ、出し惜しみはするなよ。八幡!」

 

 俺はヴァルハラを右手で構え、ネイトネフェルは右拳に星辰力を凝縮させる。

 

 

 さぁ、これで決着だ。

 

 




友達が言うには八幡のこの戦法ってキャンチョメの『シン・ポルク』じゃね?らしいです笑。
いや、普通に強いやん笑(読破済み)
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