歌姫に拾われた俺がアスタリスクで生活をするのはまちがっているだろうか。 作:リコルト
課題は一応、全て終わったのですが、まだまだ増える見込み大です笑。
「ふぅ~、終わった~」
パソコンの画面にカタカタと文字を打ち込み、今日の目標業務を終えた俺は自室の椅子に背中をあずけてコーヒーをグビッと一口飲む。
クインヴェールの序列二位ネイトネフェルとの決闘が幕を下ろして今日で早三日。ネイトネフェルにやられた傷も骨にまで達していたが、普段と違和感を感じないぐらいまでに回復している。星脈世代ってやっぱすげぇ。骨折が数日で治るんだから。
壮絶なネイトネフェルとの決闘は今でも昨日のことのように思い出されるが、その後の出来事も昨日のように思い出される……色々な意味で。
あの後、クロエに見捨てられた俺はシルヴィとネイトネフェルの決闘を見る羽目になった。両者ともにあれは全力のガチモードだったと思う。だって、練習場の床に穴が何個も出来てたもん。あの女の子二人の何処にそんな力が……?と今でも疑問に思ってしまうぐらいだ。女性って不思議だね。
それで決着は着いたのかって?いや、着くわけがない。流石にペトラさんが決闘を止めるために乱入してきて結果的には引き分けで幕を下ろした感じだ。
ただ、あの後のペトラさんの説教が凄まじかったな。序列一位と序列二位が何も言わずに黙って聞いてるんだから。やっぱりあの人だけは一番怒らせちゃいけない人だと思う。時間としては30分ぐらいなのに体感で3時間ぐらいに感じるぐらいだもん。もう少し序列上位者としての振る舞いを大事にする事と同じ表現者同士で喧嘩をしないという内容だけでかなり重い説教だった。うん、マジで。
で、喧嘩の発端となったネイトネフェルのマネージャーの件はペトラさんが一度預かることになった。今のところまだ分からないが、ペトラさんの意向次第でネイトネフェルのマネージャーもするかもしれないというわけだ。これにはシルヴィもネイトネフェルに自慢するようにドヤ顔をしていたが、追加でペトラさんに怒られたのは言うまでもない。
で、ネイトネフェルは……
『別に構わぬよ。わらわはいつでも八幡のことはマネージャーとして歓迎するつもりだ。だが、そこの歌姫との仲で困ったら、すぐにわらわに報告せよ。その時はわらわがマネージャーとして八幡を優先的に貰うだけだからな』
シルヴィに皮肉たっぷりの言葉を残していったよ。ただ、マネージャーの件については強制するような素振りもなく、ペトラさんの提案に納得した様子だった。シルヴィはネイトネフェルの最後の言葉に対して何か言いたそうだったけど、ペトラさんが睨んでたから言えるわけがない。
と、まぁ、これがあの決闘の結果だ。色々とあったが、最後は綺麗に丸く治まったと思う。俺としてもアスタリスクでの研鑽の結果を知ることができた良い機会だった。
『PrPrPrPr,PrPrPrPr,PrPrPrPr!!!』
おっと、電話が来たようだ。電話の相手は………なるほど、ペトラさんか。
「もしもし、八幡です。どうしました?」
『新宮君、突然で悪いけど理事長室に来れないかしら?貴方に話したい事があります』
「分かりました。すぐに向かいます」
俺はすぐに電話を切り、理事長室に赴くために普段着と化した黒いスーツを模した制服に着替える。ペトラさんの話したい事とは一体なんだろうな?
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「失礼します」
「新宮君、待ってたわよ」
理事長室に入ると、ペトラさんが理事長専用の椅子と机で作業をしながら待っていた。雰囲気を見た感じシルヴィみたいに説教とかでは無さそうだが……。
「ペトラさん、用件は?」
「ええ、実はね…………」
そう言ってペトラさんは自分の机の引き出しの中から一枚の紙を俺に渡してくる。
「これは…………?」
「新宮君の保留していたボディーガードの仕事についての正式な書類よ。新宮八幡君、今日から貴方にはシルヴィの専属マネージャー兼ボディーガードになってもらうわ」
「えっ、ボディーガード?」
突然の任命で頭の中が真っ白になってしまう。ボディーガードってあの警備をするボディーガードだよな?いつかはやるかもしれないと言っていたが………
「あの、ペトラさん。俺がシルヴィのボディーガードで大丈夫ですか?普通、ボディーガードって守られる人より守る人の方が強いんですよ。シルヴィのボディーガードはまだ俺には早い気が……?」
「三日前に序列二位と引き分けた人が何を言っているのかしら。それだけでも十分に強いという証拠よ。それに新宮君が戦ったネイトネフェルにもこの事を相談したら、異論は無いと言っていたし、シルヴィからもボディーガードにして欲しいと何度もお願いに来るぐらいなのよ」
シルヴィ……何をお願いしてるんだ。ペトラさんにお疲れ様ですしかかける言葉が見当たらない。
「それで、引き受けてくれるかしら?」
「分かりました……引き受けさせて頂きます」
自分から志願するのではなく、他人から信頼されて推薦されているようなものだからな。それを断ったら、推薦してくれたネイトネフェルとシルヴィに面目が立たない。それにこれ以上ペトラさんを困らせるのは可哀想だ。
「それは良かったわ。それで、新宮君には早速五日後から正式なマネージャー兼ボディーガードの仕事をしてもらいたいのよ。仕事の内容はテレビ局のスタジオで星武祭の特番に出演するシルヴィの護衛よ。そう言えば、新宮君にとっては外部の仕事は初めてだったわね」
言われてみれば、その通りである。いつかは来ると思っていたが、ついに来てしまったか。テレビ局のスタッフさん達と仲良く出来るかどうか心配はあるが、そこは自分でどうにかするしかないだろう。
「はい、頑張ります」
「ええ、期待しているわ。それと貴方に指導員として付いていたクロエだけど、今日で解任するわ」
「解任!?そんなっ!?」
「別に新宮君が想像しているような理由で解任したわけじゃないわ。クロエに頼んだのは基礎の教授だけなのよ。だから、これ以上新宮君に教える事は無くなってね。いわゆる卒業よ」
ほっ、それは良かった。まさか、俺に問題があるからこれ以上教えられないという理由で何も言わずに別れてしまったのかと思ってしまった。どうやら、クロエはすでにベネトナーシュの別の任務についているらしい。今は連絡も取れないらしいが、またいつか会える機会があれば会いたいものだ。
「じゃあ、俺の指導は……?」
「………言わなくても分かるでしょ。万有天羅が直々に稽古をこれからも付けてくれるって。けど、応用的な技術を学ぶなら彼女が一番よ。まぁ、頑張りなさい」
「…………はい」
確かに応用的な技術はあの女児が一番教えてくれそうだけど、あの人の稽古オンリーはキツいって。スパルタ過ぎて何度死にかけたか。卒業は嬉しいが、クロエの丁寧な稽古が恋しいなぁ。週一で死にたくないよぉ。
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ふぅ、ペトラさんと仕事とかの話をしていたら、かなり時間が経ってしまったようだ。時間はすでに夜の七時近く。普段の俺なら夕飯を作る時間である。
それにしても外部での初仕事か。いきなり、ペトラさんもいない状況での仕事だが、少々不安である。まぁ、ペトラさんの知り合いもいるからトラブルは無いと思うが。
「ただいまー」
そう思いつつ、俺は自室へと帰ってくる。一人暮らしだが、未だにただいまを言う癖は直らない。返事なんて返ってくるはずが無いんだけどな。
「おかえりー!」
「……はっ?」
あれ、今の幻聴かな?返事が帰ってきたんだけど。まさかの幽霊?にしては聞いたことのある声なんだよな~。
俺は急いで声の主を確認するために部屋の中へと急いで入る。そこにいたのは………
「シルヴィ、何やってるの?」
「えっ?料理だけど。専属ボディーガードが決まった記念に私がご馳走しようと思って」
俺の部屋のキッチンを手慣れたように使用しているピンクのエプロンを制服の上からしたシルヴィの姿だった。