歌姫に拾われた俺がアスタリスクで生活をするのはまちがっているだろうか。   作:リコルト

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初仕事の終わりと昔話

 

 

 

「二人とも、まずは今日のお仕事お疲れ様。今回はウチの不手際で二人に迷惑をかけちゃったわね。六星放送局の社長として改めて二人に謝罪するわ」

 

「いえ、カトレアさんが謝ることじゃないですよ」

 

「八幡君の言う通りです!それに私や他の人達も怪我をしなかったから謝る事なんてありませんよ!」

 

 収録が終わり、場所は応接室。そこで俺とシルヴィは先程起きたトラブルの後から改めて六星放送局のカトレアさんと再会することになり、応接室で彼女から謝罪を受けているような状況だ。

 

 深々と俺とシルヴィに頭を下げるが、カトレアさんが悪いわけではない。話を聞くと、今回の事件はやはり彼一人で行ったそうだ。カトレアさんもそうだが、ディレクターの人やプロデューサーの人も何も悪いことをしていないのに、責任者という肩書きだけで部下の不始末を謝罪させるのは心に何かグッと来る苦しい物がある。だからこそ、こうして俺はシルヴィとカトレアさんに頭を何とか上げさせるのだった。

 

「そう……二人共ありがとう。学生に慰められる日が来るなんて私も年を取ったわね」

 

 しみじみとした様子でカトレアさんは頭を上げるが、全く年を取っているとは思えないんだが。これで○○歳と知った時は驚いたよ。学生時代から大人の色気が増しただけで、殆ど変わってないだもん。

 

 ペトラさんとカトレアさんは確か学生時代は同級生だったんだよな……だとしたら、クインヴェールのアイドル出身者って年を取っても形をほぼ変えない化物ばかりなんだなと認めざるを得ない。シルヴィも何十年後は二人の後を追う形になるのだろうか……?

 

「そう言えば、あの男はどうしたんですか?カトレアさん達が何処かに連れて行った筈ですが?」

 

「彼はシルヴィが収録している最中に早々と星猟警備隊の人に引き渡したわ。彼に簡単な事情聴取をした所、星武祭の選手の妨害を生業とするマフィアみたいなグループ組織に高いお金を積まれたらしいわ。彼はもう一度チャンスを下さいと私にお願いしたけど……懲りずに二度も凶行を行う人を雇えないわ」

 

「成る程……そうですね」

 

 治外法権地域であるアスタリスクが誇る治安維持部隊--星猟警備隊に引き渡した後だったのか。確かに今回の事故は動機として星脈世代が関係している。星脈世代が関わる仕事は全て星猟警備隊が管轄だから、そこに引き渡されるのは当然の事だろう。

 

 今回の事件は危うく死人が出かねない事件だったが、未遂で済んだ。彼に課される罰も数年の禁固刑ぐらいになるとは思うが、出所した所でカトレアさんが言うように同じ職場に雇われるのは難しいだろう。まぁ、お金に目が眩んだ事による自業自得なんだがな。

 

 

 

 

「それにしても黄昏の夢幻剣(トワイライト・ファンタジア)をもう一度見る機会が来るなんて……彼女が使っていたのが懐かしいわ」

 

 そう言ってカトレアさんは俺の腰に着けている黄昏の夢幻剣を見ながら何かを思い出すような雰囲気を出す。

 

「彼女って……もしかして八幡君が使っている黄昏の夢幻剣の前の使用者の事ですか?」

 

「ええ、そうよ」

 

「………………………」

 

 シルヴィが興味深そうにカトレアさんに訊ねるが、俺は敢えて黙っておく。何せ、その人物に思い当たる節があるし、彼女自身もあまり触れて欲しくない話題っぽい感じがしたからだ。

 

「昔、他の統合企業財体から交流としてクインヴェールの生徒になった女子生徒がいてね。その女子生徒が黄昏の夢幻剣の使い手だったのよ。女子なのに機械や煌式武装弄りが趣味で、人見知りな変わった子だったけど、他人を支援することには人一倍長けていたわ。今思えば、私やペトラが獅鷲星武祭で優勝出来たのも彼女の煌式武装の調整やアドバイスが有ったからこそなのよね」

 

 懐かしいと言わんばかりにゆっくりとした口調で語りながら、カトレアさんは話を続ける。

 

「私はその子とあまり接点が無かったけれど、当時生徒会長だったペトラとはよく仲良く一緒にいてね。二人が仲良く話をしていたり、喧嘩をしたりしていたのはよく学園で見かけたわ」

 

「へぇ~!昔のペトラさんにそんな友人がいたんだ!」

 

「ええ。だけど、()()()()があってからは……」

 

(あの事件……?)

 

 カトレアさんの口からポッと出たワードに思わず反応を示す。雰囲気から察するに何か良からぬ事が二人に起こったのだろうか。

 

「カトレアさん、あの事件って?」

 

「あれは獅鷲星武祭が終わって、少し経った頃かしらね……公式序列戦に出たがらない彼女を公式序列戦に出るようにペトラが推薦するような形で出場させたのよ。彼女もペトラの推薦があったから気合いを入れて出場したんだけど、結果は酷いものだったわ……」

 

「カトレアさん。それって……もしかして黄昏の夢幻剣の能力のせいで試合自体が炎上して、その使用者の選手が中退したっていう……」

 

「あら、シルヴィも知っていたのね。そう……正々堂々戦う公式序列戦の場で黄昏の夢幻剣を使った戦闘は只のパフォーマンスと見なされ、大炎上。その話の起源は他でもないクインヴェールでの出来事よ」

 

 カトレアさんから語られる黄昏の夢幻剣の使用者の知られざる過去に俺とシルヴィは驚きで二の句が継げなかった。西園寺さんの話の出所が意外と俺達の身近な所にあったとはな。

 

 

 だとすると、やはり西園寺さんはクインヴェールの…

 

 

「その後はシルヴィが話したように、その生徒はクインヴェールをすぐに中退したわ。私やペトラすらも気付かない内にね。けど、その時の出来事はペトラが一番後悔してたわ。あの子の人生を狂わせたかもって私に何度も泣きながら相談してきたぐらい」

 

 ペトラが泣いた事は秘密にね、とカトレアさんが念を押すが、ここにいる誰が悪ふざけ感覚で話すだろうか。

 

 自分の簡単な推薦で、他人の人生を狂わせてしまったのだ。その罪悪感や後悔の念は計り知れない。泣いてしまうのは恥ずべき事ではなく、一人の人格者として当然の事だろう。

 

「今でも私の持つコネを使って、失踪した彼女の事を調査してるけど、これといった有力な情報が無いわね。聞く噂では世界各地で煌式武装を収集したり、開発しているらしいけど……今頃彼女は何をしているのかしら?場所が分かれば、あのペトラも真っ先に赴くのだけれどね」

 

 

…………………

 

 

…………………………………

 

 

………………………………………………

 

 

 八幡とシルヴィが六星放送局に赴いていた同時刻。再開発エリアに近い場所にある廃墟を思わせる外観の建物の地下にある人知れず営業している店で、大きな動きを見せていた。だが、そんな事が起こっていた事を八幡達が知るのは今よりも少し未来の事になる。

 

 

カランッ、カラランッ……

 

 

「はーい!いらっしゃー………い」

 

 たった一人の店員で、店の主である赤髪の女性--西園寺流が入店したお客に反応する。が、そのお客の姿を見て、普段の明るい性格が表れる彼女の言葉も思わず途切れてしまう。

 

「ずっと探したわよ……流」

 

「お久しぶりです……ペトラ先輩。いや、今はペトラ学園理事長かな?もう何十年ぶりですね」

 

「ええ……お互いに年を取ったわね」

 

 人気が無い狭い店内で、護衛も付けずに訪れたスーツ姿のバイザーをかけた女性--ペトラ・キヴィレフトが目の前に立つ西園寺に話しかける。

 

 

 人知れず八幡がそれぞれ結んだ縁は、封印された数十年の浅からぬ縁をも結び付けていたのだ。

 

 

 

 

 




ここで西園寺さんの再登場!ちなみにですが、西園寺さんは八幡とシルヴィがクインヴェールに所属しているのはまだ知りません笑。初めてあった時はシルヴィは変装していましたし、八幡もあくまで平塚先生に紹介された客として来客しましたからね。
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