歌姫に拾われた俺がアスタリスクで生活をするのはまちがっているだろうか。   作:リコルト

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皆様、あけましておめでとうございます!
今年も少しずつではありますが、投稿していこうと思いますのでよろしくお願いします!


再会する二人……動き出す計画

 

 

「どうぞ」

 

「ええ、頂くわ」

 

 物を置くことができるレジカウンターをテーブル代わりにして、西園寺は予想外の来客であるペトラにレジ裏で手早く調理したコーヒーを提供し、ペトラはそれを短い言葉で静かに受け取るのだった。

 

 レジカウンター越しに対面するように席にかける二人。黙々と二人が冷めたお見合いのようにコーヒーを飲む姿は、あまりにも誰もが近付き難い空気を醸し出している。二人の共通の知り合いである八幡もこの今の二人に割り込むのは難しいだろう。

 

「ねぇ……流」

 

「何です?ペトラ学園理事……ペトラ先輩?」

 

 再会したにも関わらず、他人行儀な呼び方を早々に指摘された西園寺は危うく再び役職名で言いかけそうになるが、ペトラの問いかけに応えようとする。

 

「……どうして私達に言わずに学園を去ったの?」

 

 バイザー越しに目を見合わせながら、ペトラは自分の後悔した証である西園寺に一番聞きたかった事を訊ねる。が、その姿にはテキパキと機械のように仕事をこなす学園理事長の姿はなく、言い辛そうに言葉を振り絞ろうとする人間味溢れた姿を思わせていた。

 

「相変わらず……聞き辛そうにしてる割に、ペトラ先輩は答え辛い事をズバズバと聞きますね。バイザーなんか着けちゃって、外見はあまり面影を残してないけど、ズバズバ言う所は学生時代から全然変わってなくて、逆に安心しちゃいましたよ」

 

「あらっ、そういう貴女は外見から全てが学生時代から何も変わって無いじゃない。見た感じ煌式武装を収集したり、改造したりする趣味は今も健在のようね」

 

「「ふ…うふふっ!(は…あははっ!)」」

 

 昔と今を比べる皮肉のような言葉の言い合いにペトラと西園寺の二人は思わず笑みを顔につくってしまう。だが、二人にとってその他愛ないやり取りは学生時代から全く変わらない産物に違いないだろう。

 

 

「ははっ……あの時の事は正直にペトラ先輩に話すと、自分でも何も考えずに起こした事でした。炎上して……学園での居場所を無くして……気付いてみたらって感じです。相棒(トワイライト・ファンタジア)も返還するように自室に放り出して……ペトラ先輩の事も少なからず恨んでました」

 

「ええ……貴女には私を恨む権利があるわ。私が貴女を公式序列戦に出させたばっかりに、貴女の生活……いや人生を狂わせてしまった。本当にごめんなさい……流」

 

 そう言って、ペトラは長年言えなかった謝罪の言葉を深く頭を下げて西園寺に告げる。そんな先輩の姿に西園寺は一瞬驚いた顔を見せるが、ペトラの謝罪に不思議なくらい一切の感情すら伺わせず、ただペトラの謝罪に耳を貸すのみであった。

 

「はぁ……頭を上げて下さい、ペトラ先輩」

 

 ふぅ、と一息ついて西園寺はペトラに深く下げた頭を上げさせて穏やかな口調で話を続ける。

 

「今更ペトラ先輩の事は恨んでませんよ。学園を抜けてから世界各地を旅して、色々と煌式武装の技術を身に付けたり、煌式武装の収集をしている内に色々と吹っ切れちゃって。それに心残りだった私の相棒(トワイライト・ファンタジア)についても将来有望な男の子に引き継いでもらってね。話を聞いたら、早速()()()を使ってかなりの実力者と引き分けたって聞いてるよ」

 

 ネイトネフェル戦後に店を訪れた八幡との会話を思いだしながら、西園寺は自慢気にして嬉しそうに当時の会話をペトラに語り出す。一方、その話を聞いたペトラは手を口に当てて、うふふと笑みを浮かべるのだった。

 

「もしかして……その男の子の名前って新宮八幡っていう名前じゃないかしら?」

 

「えっ!?ペトラ先輩、どうして知って……!?」

 

「その子、クインヴェール所属の専属マネージャーと護衛をしているの。シルヴィア・リューネハイムのね」

 

「歌姫のっ!?八幡君…マジか~」

 

 今まで一人の客として扱っていたため、詳しい八幡の素性を知らなかった西園寺はそれを聞いて唖然とする。

 

 加えて、ダメ押しにと小悪魔のような笑みを浮かべたペトラが八幡君が引き分けた実力者というのがクインヴェールの序列二位だと言う事を伝えるのだが、それを聞いた西園寺がさらに驚いて危うく汲んだコーヒーを溢しそうになるのは言うまでもない。

 

 

「流……貴女にお願いがあるの」

 

 八幡に関わる談義で盛り上がった所で、ペトラは西園寺にある提案をする。実はペトラにとって、西園寺に謝罪する事が一番の目的であったが、それに加えてもう一つ彼女の目的があったのだ。

 

「貴女に八幡君のバックアップをして欲しいの。来るべき戦いに備えて貴女の力を貸して頂戴」

 

「来るべき戦い……?」

 

 事情が良く分からない西園寺。そんな彼女にペトラは一枚の紙を提示する。

 

 そこには西園寺をクインヴェールの煌式武装開発部門の技術員として迎える人事の旨が書かれていた。それを見て西園寺はペトラを思わず二度見してしまう。

 

「あのペトラ先輩……これは?」

 

「流の席はもう用意してあるわ。昔、貴女が私達に見せてくれた支援力をクインヴェール……いえ、八幡君のために使って欲しいの。今回の戦いは八幡君が切り札になるかもしれないから」

 

「ペトラ先輩……裏で何と戦う気なんですか?」

 

「……ヴァルダ=ヴァオス。煌式武装に詳しい貴女なら、その名前を聞いた事があるでしょう」

 

「っ!?ええ…煌式武装に深く通じる人なら誰もがその名を知っています。ですが、それは確か行方不明で……」

 

「現在、全ベネトナーシュ部隊がヴァルダ=ヴァオスの動向を探り、アスタリスクの敷地内にいる事が判明しました。我々はこれを王竜星武祭内で内密に処理するつもりで、最悪の場合八幡君の力を借りたいのです。私の推測が正しければ、彼はヴァルダ=ヴァオスの天敵に近い存在ですから」

 

「……………成る程ね、ペトラ先輩」

 

 それを聞いた西園寺はペトラが提示した紙にサラリと承諾のサインを施す。

 

 

 王竜星武祭。シルヴィアを中心とした有力な学生達が参加する一大イベントが近づく中で、クインヴェールの上層部は裏である目標を討伐しようと動き出していた。

 

 

 

 




雰囲気で察した人もいると思いますが、原作前でヴァルダには一度退場してもらいます……
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