歌姫に拾われた俺がアスタリスクで生活をするのはまちがっているだろうか。   作:リコルト

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大学の期末テスト半分終わった~!!


人が斬れない女剣士

 

『Cブロック二回戦第二試合っ!勝者シルヴィア・リューネハイムっ!!!』

 

 

『ウオォォォォォォッッ!!!』

 

 

 勝者を発表するシリウスドームのアナウンスに観客らは立ち上がるように一気に湧き上がり、試合の勝利者であるシルヴィはファンサービスとして観客達に手を振って、戦い終えたステージを後にする。

 

 

「ここまでシルヴィ絶好調だな」

 

 VIP席からシルヴィの初戦、そして今終わった二回戦を見ていたが、魔女の能力を使う事なく、持ち前の身体能力と剣技だけで圧勝している。Cブロックの他の参加者を見た限りだとシルヴィに匹敵する実力者はおらず、Cブロックの勝者として容易に本選に上がれるだろう。

 

「さてと、シルヴィを迎えに行きますか……」

 

 初日は二回戦まで行うことになっており、明日からはまた三回戦、四回戦と予選を続いていくのが今後のスケジュール。つまり、シルヴィの今日の試合は先程の試合で終了というわけだ。

 

 ネイトネフェルもシルヴィとは別ブロックでの予選だったのだが、シルヴィよりも前に二回戦までが終わっている。結果は言うまでもない、圧勝だった。

 

 メディア嫌いなネイトネフェルは試合が終わり次第、取材陣による勝利者インタビューを極力避けて、先に学園に戻ったそうだ。その連絡を彼女自身から聞いた時は、相変わらず彼女らしいなと電話越しで思った。

 

 ネイトネフェルが先に帰り、シルヴィも試合が終わった以上、俺がここで今日見る試合はもう無い。

 

 シルヴィが他の予選を見たいと言えば、彼女の意向に従い会場に残るが、久しぶりの星武祭だし、疲れてないとはいえ学園に帰って休息を取るのが最善だろう。まぁ、シルヴィが今日の試合が終わり次第迎えに来て欲しいと二回戦前に言っていたら、残る可能性は低いか。

 

 

 そう思いつつ、シルヴィを迎えに行くために誰もいなくなったクインヴェール専用のVIP席を後にして、彼女かいるであろう選手用控え室へと向かう。

 

 ひたすら迷路のような長い通路を歩いて数分。左右に真っ直ぐにと色々と歩いて、ようやく選手控え室が近い所までやって来た。が、その途中で星武祭の参加者の一人であろう女子生徒が見るからに治安が悪そうな青髪の男に絡まれているのを目撃してしまう。

 

「おいおい~、かつて優勝候補と呼ばれていたお嬢様がもう敗退するとはな~!序列8位だったのはもう過去の栄光じゃねぇか!序列25位の俺でも倒せちゃうんだぜ~。クインヴェールも所詮は顔と容姿だけって事か!」

 

「っ!!私を侮辱するのは構いませんが、クインヴェールの他の生徒を侮辱するのだけは許せませんわ!」

 

(怒っている彼女は確か……)

 

 

 ウェーブがかかった長い金髪をポニーテールのようにまとめた俺やシルヴィよりも年上の女性……いや、淑女か。対面している男とは対照的にその整った容貌は天使のように美しく、一つ一つの言動に育ちの良さが分かる上品さが反映されている。

 

 

 

 彼女の名前はソフィア・フェアクロフ。欧州の名家出身の本当のお嬢様で、彼女の兄はガラードワースの現生徒会長という生まれた頃から平民の俺からしても、普通は経歴的に近寄りがたい存在……そして、開会式前にシルヴィが色々と気にかけていた人だ。

 

 

「はっ!俺に負けた敗者が何を言っているんだか!それよりも今から俺に付き合わないか?」

 

「……ひっ!?や、やめなさいっ!?」

 

 下品な笑みを浮かべながら、タトゥーが入った青髪の男の右手が悲鳴をあげる彼女にゆっくりと迫る。が、これを見逃す程そこまで俺は屑じゃない。

 

 

 

「おい、この人に手を出すな」

 

「だ、誰だお前っ!??」

 

「……え、あ、貴方は?」

 

 俺は青髪の男の右手を固定するようにガシッと強く片手で掴み、彼女に一切触れさせはしない。男は掴まれた腕に力を込めて無理やりにでも彼女に触れようとするが、それも無意味な抵抗だ。

 

「テメェ、この手を離しやがれ!俺はこの女に用があるんだ!関係ねぇお前は邪魔なんだよっ!!」

 

「彼女は俺の主が気にかけている大事な関係者だ。それに用があると言っているが、悲鳴をあげていた彼女に対して強引に迫るのはどうかと思うぞ?」

 

「ちっ!!ムカつく野郎だ!レヴォルフで序列25位の俺の邪魔した事を後悔させてやる!!」

 

「あ、危ないですわっ!!?」

 

 男は掴まれていない左手で腰からナイフ型の煌式武装を引き抜き、咄嗟に彼の右手を離した俺を何度も斬りつけようとする。

 

 だが、俺には魔術師の能力を利用した動体視力がある。ナイフの軌道は全て読み切っているし、その軌道を避ける身体能力をシルヴィや万有天羅の特訓で身に付けたので、致命傷はおろか当てる事も厳しいだろう。

 

(……そろそろケリを着けるか)

 

「っ!?ごほっ!?ゲホッ!!ぐぇッ!?」

 

 俺は腰から煌式武装のヴァルハラを抜刀して、無駄に攻撃して疲れきった彼の身体に数回斬撃を叩きこむ。一応、星武祭の選手だから大きな怪我はしないように星辰力の刃を出さずに加減はした。まぁ、この実力だと本選に行けるかはかなり厳しいと思うが。

 

「……お前っ、この人を傷つけられないような星武祭に相応しくねぇカス女を何故守る!?星武祭参加者同士なら勝者である俺にこれからを期待し、色々と忖度するのが普通だろうがっ!!」

 

「うるさい。勝者だから何でも許されるわけないだろ。それに彼女を守るのは勝者とか敗者とか星武祭に相応しく無いだとか関係ない。純粋にお前が気に食わないだけだ。それに人を傷付けたくないのは人として至極真っ当なことだ。お前みたいな戦闘狂の感性に合わせようとするな……本気でやる前に失せろ」

 

「くっ……お、覚えてろっ!!」

 

 峰打ちした部分を手で押さえながら、男は逃げるようにその場を後にする。万有天羅に教えて貰った星辰力による威圧をしてみたが、意外に通じるものだな。

 

 

「あの、大丈夫ですの……?」

 

「大丈夫です、怪我はしてません。それよりもそっちは大丈夫ですか?」

 

「ええ、貴方が来てくれたお蔭で……先程は助けて頂いてありがとうございます」

 

 そう言ってソフィアさんは上品そうに丁寧なお礼をする。大きな声で言えないが、こんなお嬢様みたいな挨拶は聞くと新鮮なものだな。シルヴィやネイトネフェルからは絶対に想像できない(二人に失礼)。

 

「改めまして私はソフィア・フェアクロフ。貴方は……胸にクインヴェールの校章が付いてますが、もしかして新しいベネトナーシュの方ですの?」

 

 ギクッ。やっべ……そう言えば、シルヴィの専属としてクインヴェールの所属を証明する校章を普段から付けるようにしてたんだった。

 

「え、ええ……まぁ、そういった所です。それじゃあ、俺は用事があるので……」

 

 

 クインヴェール所属の彼女にこれ以上詮索されたら、ボロが出かねない。そう考えた俺は彼女から離れようとするが、彼女が俺の右手にしがみつくように手を取る。

 

「少し待って下さい!貴方の立場を理解した上で、貴方の素性は一切聞きません!ですが、貴方に相談に乗って貰いたいのです!人を傷付けなければいけない事について……人が斬れない私について……」

 

 

 ……シルヴィから予め彼女の事について少し聞いていたが、かなり思い悩んでるようだな。仕方ない……シルヴィに少し遅れるかもしれないとメッセージを送るか。

 

 

 

 

 

 

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