歌姫に拾われた俺がアスタリスクで生活をするのはまちがっているだろうか。 作:リコルト
まずは、前回のお話について感想やコメントありがとうございます!正直に言うと、賛否両論に分かれる話でしたので、色々と不安を覚えていました……笑。ただ、色々と納得して頂いたようなコメントが多く見られ、書き手である私としては非常に嬉しかったです。
ただ、今回は…また色々とご理解を頂けたら幸いです。
※アンチが嫌いな方はブラウザバッグ推奨です!
災害等はともかく、事件が起こった以上、犯人というものは必ず存在する。それは八幡の事件にも必然的に該当する条件だ。
殺害事件、傷害事件、いじめ問題……法律に照らし合わせていくだけでその数はキリが無いが、事件というものは大抵被害者と加害者という二つの骨組みで出来上がっているだろう。
此度、千葉の総武中学で起きた事件。被害者は言うまでもなく、比企谷八幡(旧姓)。では、加害者……犯人は誰のことを指しているだろうか?
比企谷八幡の悪評に便乗し、同学年から下級生まで少なくない生徒数がストレスを発散するように比企谷八幡へと悪口や暴力を加えてきた。
勿論、彼らは加害者だ。事実、すでにその過去は取り消せず、その行いに見合った処罰を受けている。だが、その多くは最初、自分は悪くないと証言する。しかも、息を揃えたように同じ名前を複数人挙げるのだ。
『悪いのは戸部と海老名。だが、それをややこしくして、ここまで事を大きくした挙げ句に、比企谷八幡が消えるまで隠蔽し続けた葉山が一番悪い』
『同じ部活にも関わらず、彼を庇うこと無く、何食わぬ顔で今日まで学校生活をしてきた雪ノ下や由比ヶ浜も比企谷を追い詰めた原因ではないか?普段から悪口っぽく彼の名前を呼んでいたし』
『文化祭に関しては相模が一番悪いだろうな。よく受験期までのほほんとしていたものだ。まぁ、事情を詳しく知っていた葉山も大概だがな。修学旅行の件もそうだが、あいつが比企谷八幡について汚名を打ち消せば、俺達はいじめも暴力もしなかった』
挙げられた名前の多くは戸部、海老名、雪ノ下、由比ヶ浜、相模、葉山と修学旅行や文化祭に深く関わった人物が多い。だが、その中で最も挙がった名が葉山であった。
自らのやった事を棚上げにし、黒幕は葉山だという始末。だが、葉山が八幡の虐めの発端になった事件の裏に居たのは言うまでも無い事実で、これは当事者である八幡と戸部と海老名が証言していた。
確認のために葉山本人にも先生が訊いたのが、追い詰められた彼はそれを事実だと認めてしまう。それにより、諸悪の根源の犯人は葉山。次に悪いのは深く事件に関わった戸部、海老名、雪ノ下、由比ヶ浜、相模という構図が総武中学の裏で情報として出回っていた。
挙げ句の果てには八幡の虐めや暴力に加担したものの、葉山達が余計な事をしなければと逆恨みして、学校でも機密にしていた彼らの名前をマスコミに漏らした事態にまで発展。それにより雪ノ下達が以前より生活しにくい環境になったのは言うまでも無いだろう。
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ーー葉山sideーー
八幡が失踪してからすでに三ヶ月近く。アスタリスクでは王竜星武祭が始まる時期となる中で、千葉の高級住宅街にある葉山家では重い雰囲気が漂っていた。
2×2で分かれるように、四人分の席があるテーブルで隣同士に座るのは葉山夫妻。父は弁護士、母は医者という高収入が期待できる夢の職業に就く二人だが、彼らの顔にはキビキビと働く若さは無く、疲労感がどっと現れた高齢者のような様子だった。
理由は言うまでもなく葉山の名前が記者に漏れたからだ。彼らは毎日のように職場に来る嫌がらせの電話やストーカーのような記者への対応によって心身共に削られ続けていた。三ヶ月経った今でようやく以前のような生活に少し戻れたのが、彼らの唯一の救いだろう。
そんな二人に対して対面するように一人で座るのは総武中学では諸悪の根源と呼ばれている葉山隼人。だが、その姿は以前のような面影は無く、目には隈が出来ていて、全てに疲れたような様子を見せている。雰囲気からすれば、総武中学の八幡に近い感じだ。
「隼人……お前に進路の話がある」
「進路?……ああ、今日はそういう話か」
葉山隼人は父から久しぶりに家族揃って話がしたいと聞いていた。どうせ、比企谷の件だと隼人は思っていたが、今日は進路の話だと告げられる。だが、彼に推薦入試の話が舞い込んで来る訳がない。今からでも足掻くように勉強すれば、一般入試に受かるかもしれないが、彼はもう勉強する気も失せていた。
(なんだよ…学校でも言われ、親にも言われるのか。俺は今頃、スポーツ推薦で雪乃ちゃんと総武高校にいる事が決まってた筈なんだ…なのに、今からでも勉強、勉強、と。比企谷のせいで俺の将来設計が台無しじゃないか)
葉山隼人は爪を噛みながら、心の中で後悔……いや、勝手に逃げて事態を大きくした八幡に逆恨みするように負の感情をぶつける。こんな事を父親の前で言えば、事件が発覚した時のように父親に殴られて説教されてしまうのは隼人本人もよく理解していた。
だからこそ、心の中で発散されずに八幡への負の感情がマグマのようにフツフツと静かに溜まっていく。葉山夫妻らが負の悪循環の兆候がここで起こっていたのを知らないのは言うまでも無いだろう。
「隼人、アスタリスクに行け」
「はぁ……?アスタ、リスク?」
父の口から告げられた進路に隼人本人は予想外だと言うようにポカンと動揺した様子を見せる。
「アスタリスクって星脈世代の街の?」
「ああ、その通りだ。今頃は星武祭が行われている最中だろう。お前には高等部から編入してもらう」
「どうして……急に?」
あまりの急展開に話が掴めない隼人は父に訊ね、葉山父はそのまま話を続ける。
「総武中学の一件で、我々葉山家には後が無い。評判も最悪だ。だが、今行われている星武祭の優勝には優勝者のどんな願いを叶える特典がある。隼人……お前にはそこで優勝して、葉山家の評判と信頼を戻して欲しい」
「成る程、確かに俺は星脈世代だからね。父さんが言うなら、頑張ってみるよ」
(要は俺を道具にするって話か。だが、父さんが言うように世界で注目される星武祭に優勝すれば、俺の地位と信頼も回復する。千葉にも居場所は無いし、ここはWin-Winの関係で乗ってやるか)
表面上では父親の想いに答える好青年を演じる一方で、内心でドス黒い事を考える隼人であったが、彼はさらに詳細を聞くために父に深く訊ねる。
「ちなみに、学園はどうするの?」
「隼人には星導館学園に通ってもらう。彼処は葉山家と雪ノ下家と縁がある知り合いがいるからな。希少な星脈世代である葉山なら、多分パスできる。ただ……雪乃ちゃんがクインヴェールに行きたいと言っていたが…「雪乃ちゃんも行くのかい!?」あ、ああ、雪ノ下家も葉山家同様に色々あるからな。お前にこの提案をしたのも彼女がそういう決心をしたからだ」
それ以降も葉山父はアスタリスクに進路を変更する隼人に説明するが、隼人にとっては『雪ノ下雪乃がアスタリスクに行く事』以外もうどうでも良い事だった。
(雪乃ちゃんも来るのか……なら、俺も好都合。雪乃ちゃんがいる前で星武祭に優勝して、信頼によって失った彼女との縁も戻してみせる!そしたら、同じ比企谷によって人生を狂わされた者同士で結婚も……逃げる事しか出来ない比企谷には無理な人生設計だな。ついでに、星武祭に優勝したら、優勝者権限でお前を探してやるから覚えてろよ!!)
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ーー由比ヶ浜sideーー
「アスタリスク行きたい行きたい~!!!」
場所が変わって、普通の住宅街。そこには由比ヶ浜家の家があり、家内では由比ヶ浜結衣が暴れるように駄々をこね、両親を困らせていた。
「はぁ……結衣。さっき星武祭のテレビを見てからそうしてるけど、何があったの?私達としては今からでも一般入試の為に勉強して欲しいんだけど……」
弱った様子で訊ねる由比ヶ浜の両親。彼らは葉山家や雪ノ下家とは違い、名前がマスコミに漏れる事は無く、職場での悪質な嫌がらせ等を受けてはいないが、二人は娘である由比ヶ浜結衣の決まらない進路に苦悩して疲れた様子を見せていた。
娘の頭が悪いのを親が知らない筈が無い。むしろ、今はもう無い推薦入試で、希望していた総武高校の一般入試用の過去問を試しに解かしてみたら、最初から全てが解けない衝撃に打ちのめされたのが記憶に新しいぐらいだった。
「ママ、それがね!さっきテレビを見たら、ヒッキーが映ってたんだし!SPみたいな黒い服を着ていて、格好良かったなぁ~」
「そう……けど、比企谷君がアスタリスクにいるのかしら?結衣の見間違えじゃないの?」
娘が指差す先のテレビはすでに別の映像。娘の言葉を確かめようとする両親であったが、残念な事にその術は持ち合わせていない。
「本当だし!ねぇねえ、私もアスタリスク行っても良いでしょ?探していたヒッキーがいるんだよ~!ヒッキーに会いたいよ~!!」
「だがなぁ……」
娘の駄々に苦言を溢す父。それもその筈、アスタリスクの学園に通うのは寮での生活費込みで普通の私立の二倍以上はある。特待生のような制度を使わなければ、一般家庭の娘が金銭的に入る事は難しいだろう。
だが、娘は運良く星脈世代の資質があるだけ。勉強も苦手だし、上手く戦う能力も無い。特待生と呼べるには程遠い存在であった。
「はぁ……分かったわ、結衣。貴女がそこまで言うなら、アスタリスクに行くのを認めるわ」
「やっt「ただし、条件があるわ」
そう言って、由比ヶ浜の母親は喜ぶ娘に対して真剣な眼差しを向ける。
「もし……結衣が探す人が比企谷君なら、絶対にまず謝りなさい。私達は比企谷君に取り返しがつかない迷惑をかけたのよ……お願いだから謝って頂戴」
涙が入り交じる掠れた声を出しながら、由比ヶ浜の親は娘である結衣にお願いする。
「分かった!ヒッキーに謝れば良いんだね!」
「うん、本当にお願いだから……」
結衣は母のお願いに元気良く約束を交わすのだが、アスタリスクでヒッキーに会える興奮で、次の日にはもう忘れていたのは本人である彼女しか知らない……
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ーー比企谷家sideーー
「クソッ!!どうしてこうなった!!」
テーブルにバンッと叩きつけように座った八幡の父親は声を八つ当たりするように荒げる。
理由は簡単。八幡を追い出した事がニュースになり、会社からはクビを宣告され、今の彼は絶望の淵に立たされているからだ。
幸い、大きな罪には問われず、5年の執行猶予がついただけで済んだが、比企谷家に対する信用はガタ落ち。生活に困窮していても近所の誰もが無視するように助けてくれない。
「ねぇ……私達、八幡にとんでも無い事を……」
「バカ野郎!!何を言っている?俺達があいつのせいで、とんでも無い事になっているんだ!!クソッ!」
八幡の母親は今更ながら反省するように後悔した様子を見せるが、暴君のように荒れる夫の前ではそういった発言すらも許されないのだ。
「お父さん……うるさいよ」
「お、おお、スマンな小町。これも八幡っていう奴の仕業なんだ。許してくれ」
「うん!ゴミいちゃんが悪いもんね。雪ノ下さんや由比ヶ浜さんも困らせておいて勝手に逃げるなんて……二人に謝らないなんて最低!」
「そうだよな~小町!」
異常なまでの溺愛っぷりの父と娘に蚊帳の外である彼の妻も流石に恐怖を覚える。が、二人は人の目を知らず、追い出したにも関わらず勝手に逃げたと解釈して八幡を悪者に仕立て上げるのだった。
と、そんな時にテレビに今沸騰中のアスタリスクについての番組が三人の前で流される。それを見た八幡の父親は名案を思い付いたように小町に提案するのだった。
「そうだ、小町!アスタリスクに行くと良い!無能な八幡と違って小町は星脈世代だし、小町の実力なら今行われている星武祭で優勝も簡単だぞ。優勝すれば、どんな願いも叶うというらしいからな!」
「どんな願いも!?なら、頑張ってみるよ!!小町が優勝したら、豪華な生活を送れるような大金をお願いするんだから!」
「お~!小町は親孝行だなぁ。総武中学は評判が悪いし、アスタリスクが一番だ」
叶う筈も無い優勝に二人は夢を膨らませるが、そんな二人を見て呆れる人が一人。
(八幡……何処にいったの?)
というわけで、これで総武編は一旦終了です!
・葉山は八幡がアスタリスクにいることを知らないが、親の意向もあってアスタリスクへ。
・由比ヶ浜は八幡らしき人物を見つけて、強引な形でアスタリスクへ。
・小町は父の意向で、アスタリスクへ。
という感じです……。
ちなみに、話に出なかった戸部と海老名は八幡の件を深く後悔し、親を安心させるため一般入試に受かるために必死に勉強中ですね。相模は引き籠りになった裏設定みたいなものがあります笑。
賛否両論を生む展開にはなったと多くの読者が思いますが、ご理解頂けると非常に幸いです。
次回はまた八幡の話に戻ります!