歌姫に拾われた俺がアスタリスクで生活をするのはまちがっているだろうか。 作:リコルト
千葉からアスタリスク近くの波止場まで移動し、そこからさらにアスタリスク行きの船に乗り換えてようやく目的地であるアスタリスクに辿り着いた。
日本国内には存在しているものの、アスタリスクは日本の唯一の治外法権領域で日本の中に独立国家があるようなものである。アスタリスクに入るまで何回税関みたいな場所を通ったものか。海外旅行経験者でもあれほど一日に身分とかを何回も経験すればうんざりするって。ペトラさんが慣れたようにスラスラ対応してくれて本当に助かった。
「新宮君、ここがアスタリスクよ」
船から自分の荷物を下ろし、俺自身もお世話になった船から降りてペトラさん達と共にアスタリスクの地面に足を着ける。
「……………………でけぇ」
アスタリスク初入域の最初の一言。でかい。
言葉通りである。語彙力無いのか?と誰かに言われそうだが、目前に広がる言葉が出なくなるような景色を見て形容詞一つ言えただけでも充分だと思って貰いたい。
日本の都市である東京と同じくらい…いや、それ以上の高層ビル群などの建築物の数々。近未来という言葉を体現したような街の景色が今俺の目の前に広がっている。先進国の仲間入りをしている日本だが、アスタリスクはその日本よりも一世紀以上は進んでいるだろう。治外法権領域とは言っていたが、ここまで差があるとは………。
「まぁ、アスタリスク最初の時は皆そう言うよね。昔、私が初めてアスタリスクに来た時もこの景色を見てびっくりしちゃったから」
隣にいたシルヴィがそう言って苦笑しつつ俺の気持ちに共感する。世界的人気アイドルのシルヴィにフォローされても、出生から今日までザ・庶民だった俺としては未だにここで生活していくのかというビジョンが全く想像がつかない。いきなり、ただの庶民が王宮暮らしをするような感覚である。
「二人共。お話はその辺にして荷物を持って来なさい。迎えの車が来てるわよ」
「「はい!(はーい!)」」
ペトラさんの俺達を呼ぶ声がした方を見ると、そこには黒色の高級車が止まっていた。どうやら、俺は開始早々アスタリスクでの普通の生活の定義について知らなくてはならないようだ……。あんな傷付けたら弁償を要求されそうな車に乗った経験普通の人には無いって。総武中学の入学時期ぐらいに似たような車に轢かれた経験はあるけども。
そう心の中で思いつつ、俺はシルヴィと共に急いで黒色の高級車のトランク部分に荷物を積み込んで、車の中へと乗り込んだのだった。
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「新宮君、着いたわ。ここが私達の学園、クインヴェール女学園よ」
「ここがクインヴェールか………」
アスタリスクの波止場からさらに車で北西方向に移動し、今日からお世話になる学園であるクインヴェール女学園へと辿り着いた。
アスタリスクの各学園でも最小と呼ばれているが、とんでもない。学園だけでも町一つ分の敷地はある。これより大きい他の学園とか一周回って逆に意味が分からないんだが。まさかの県規模なの?
「……といっても、そこはクインヴェールの裏門なんだけどね。ほら、私が帰って来ただけでも大騒ぎになるのに、男子である八幡君が正門から入って来たら、さらに大騒ぎになりそうだから」
そう言ってシルヴィは目の前の状況に補足説明を加える。確かに女子校に男子である俺が正面突破したら、流石に通報ものである。ちなみにシルヴィはそれを踏まえた上で、車の中で変装をすでに済ませており、彼女の特徴的な紫色の髪は特殊な機械により栗色になっていた。アスタリスクの科学力ってすげぇな。
「さぁ、そんな話は置いといて中に入るわよ」
片手に持ったデバイスでペトラさんは人気の無い裏門のオートロックを解除する。
こうして、俺は新しい居場所となるクインヴェールの校内へと足をゆっくりと踏み入れたのだった。