歌姫に拾われた俺がアスタリスクで生活をするのはまちがっているだろうか。   作:リコルト

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激闘。舞神(ハトール)VS孤毒の魔女(エレンシューキガル)

 

 

「はぁ!どうした!こんなものか!」

 

「…………………っ!!」

 

 試合が始まるや否や、ネイトネフェルはオーフェリアに急接近。自慢の身体能力の高さとトップクラスの武術の実力を生かして、オーフェリアに強襲を仕掛ける。

 

 ネイトネフェルの素早い蹴り、拳をオーフェリアは血にも似た赤色の刃を持つ剣型煌式武装でさばいているが、今のところ反撃する素振りはない。

 

「以前よりは強くなったらしいわね……」

 

「っ!!はぁっ!!」

 

 防戦一方も苦しいと判断したのか、オーフェリアは煌式武装に星辰力を込めて、赤い斬撃を一気に解き放つ。力の溜めに気付いたネイトネフェルは間一髪のタイミングで、オーフェリアから離れたが、斬撃の痕は凄まじく、床が見事に抉れている。

 

「貴様も見事……と言いたいが、貴様の普段の恐ろしい瘴気はどうした?」

 

 ネイトネフェルがこれまで優位に接近戦ができていたのは、オーフェリアが周囲に影響を及ぼす瘴気を出していなかったからであり、ネイトネフェルは彼女の力の出し惜しみに対して不思議と感じていた。

 

 それもそのはず。オーフェリアが本気を出せば、接近戦を優位とするネイトネフェルを瘴気で呑み込み、瞬殺ができるのだから。普段のオーフェリアと戦う上で、接近ほど危険なことはない。

 

「……本当なら、この力は使いたくない。けど、これも運命なら使うしかないわね」

 

 悲しそうな表情を浮かべながら、オーフェリアは剣型煌式武装にさらなる星辰力を込め、ついにオーフェリアは瘴気を周囲へ撒き散らす。

 

イスナ・アフアー(二蛇の牙襲)

 

 瘴気はやがて巨大な紫色の蛇の型を成し、大きく口を広げた二頭の蛇がクネクネとネイトネフェルの方へ素早い動きで襲いかかる。

 

「ふっ、使ってきたか。はぁっ!!」

 

 だが、ネイトネフェルは笑みを浮かべていた。それは強者への興奮、強者が自身に本気で手合いをすることへの満足。だが、ネイトネフェル自身も負けるわけにはいかない。

 

 自身の拳に星辰力を込め、ネイトネフェルは二頭の蛇を躱す。そして、隙ができたところでネイトネフェルは星辰力を込めた拳を手刀に変え、二頭の蛇の首を刈り落とす。あまりの豪快さに観客も息を飲んでしまう程だ。

 

 だが…………

 

「ちっ……やはり瘴気は厄介だな」

 

 二頭の蛇の構成は100%オーフェリアの瘴気。防御不可能の技であり、蛇に触れたネイトネフェルの手は酷く爛れ、赤みが増してきている。

 

「触れれば、普通の人は腐食するのに……」

 

「生憎と、わらわには星辰力による肉体強化には一日の長がある。変幻自在に戦う魔女(ストレガ)の力もなければ、純星煌式武装もない。わらわの肉体と舞踊の二つでここまで戦ってきたことを甘く見るな」

 

 ネイトネフェルの戦闘スタイルは、今の星脈世代には珍しい身体一つで戦うスタイル。剣や銃といった得物を全く必要としない。その戦い方は界龍の拳士と似ているだろう。クインヴェールでも彼女のような戦い方をする人物はいない。真似するならば、銃剣を操るバランス型のシルヴィアの方が圧倒的に多い。

 

 しかし、その実力は界龍の生徒会長である范星露のお墨付きで、彼女ならば界龍の拳士のトップに位置してもおかしくはないと豪語している。

 

 身体一つで魔女(ストレガ)最強クラスであるオーフェリアと対等に戦えるのは彼女ぐらいだろう。

 

「そちらもようやく本気で来たのだ。ならば、こちらも本気だ。わらわの新たな舞に酔いしれるがいい!」

 

 そう言うと、ネイトネフェルは美しい肢体を大きく動かし、ステージ中央を大きく移動するように舞を披露する。独特な舞に、観客も息を飲むようにグッと魅力されるが、やがてその舞は大きな結果をもたらす。

 

 

 

『おっーと!!?これは幻覚でしょうか!?ネイトネフェル選手が得意の舞を披露したら、彼女の姿が八人へと数を増やしました!!魔女(ストレガ)の能力でもなく、純星煌式武装の能力でもないっ!?この現象の正体は何だぁ!?』

 

 

幻舞踊(げんぶよう)。わらわが生み出した新しい舞の名よ。いくぞっ!」

 

 八人へと増えたネイトネフェルは独特な舞の動きを継続しながら、オーフェリアへと一気に近づく。

 

「これは……そこねっ」

 

 八人の動きを見抜き、オーフェリアはある一体のネイトネフェルの身体を斬り付ける。が……

 

「残念。はずれよ」

 

「ぐっ………!!?」

 

『ネイトネフェル選手の拳がオーフェリア選手の胸へとクリーンヒット!!?これは苦しいかぁ!!』

 

(何なの……この分身の正体は……?)

 

「ふっふっ、オーフェリア。わらわの舞に魅了されておるな。選手としてではなく、ダンサーとして誇らしいっ!ようやく、お前の心を動かせるのだからっ!」

 

 

………………………………

 

 

………………………………………………

 

 

…………………………………………………………………

 

 

 

 范星露side

 

 

「ほぅ、幻を見せる舞か。これは興味深い」

 

 

 シリウスドームの界龍専用のVIP席。中華風のオリエンタルな内装が施されたその部屋で、界龍が誇る三代目万有天羅、范星露がネイトネフェル達の試合を見て、自分もその試合に参加してみたいとウズウズとしていた。

 

「彼女の幻を見せる舞……これは暗殺術の応用よな。緩急を付けた独特なステップ、残像を残す程の素早く大きな移動。普通の身体能力の星脈世代では実現できないだろうし、彼女も相当特訓を積んだのだろう」

 

(しかし、この技の真価はそこにあらず。あの孤毒の魔女を騙す程の残像に残した彼女の気配。これも彼女の特殊な舞踊の経験あっての実力。舞踊というのは周りを引き込む魅力と存在感のバランスが重要じゃからな)

 

「だが、この舞踊の原点は……間違いなく八幡よのぉ。八幡との試合は彼女に大きな進化をもたらしたらしい……」

 

 

…………………………

 

 

………………………………………………

 

 

……………………………………………………………………

 

 

「くっ……!?」

 

 

『オーフェリア選手!!八人のネイトネフェル選手による乱打が襲いかかる!!防戦一方だぁ!!』

 

 残像を使ったネイトネフェルの肢体による乱打がオーフェリアを襲い、オーフェリアの服や煌式武装に少しずつ乱れやヒビが生じてくる。

 

「そろそろ終わりにさせてもらうぞ!!」

 

 星辰力をさらに全身に溜め、ギアを上げるようにネイトネフェルは大きく構える。

 

 

 だが

 

 

「はぁ……私も負けるわけにはいかないの」

 

 

 同時にオーフェリアも夥しい無尽の星辰力を身体が吹き出し、ステージ中央の1/3を覆ってしまう量の瘴気を出現させる。

 

 

「……ここからが貴様の本場というわけか」

 

「すぐに終わらせるわ……ごめんなさい」

 

 

 試合も終盤。二人の高めた星辰力がぶつかり合う。

 

 

 

 

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