歌姫に拾われた俺がアスタリスクで生活をするのはまちがっているだろうか。   作:リコルト

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王竜星武祭。準決勝第二試合の幕開け

 

 

 シルヴィアside

 

 

「ネイトネフェル……」

 

 

 オーフェリアの強さは私も分かっていた。力押しや並々の技術でそう簡単に倒せるものではないと。

 

 けど、ネイトネフェルがもしかしたら勝てるんじゃないかと試合を見て、予感はしていたんだ。体術というオーフェリアに対して圧倒的な不利な戦法を得意する中、彼女は僅かな短期間で新たな舞を生み出し、それを上手く使ってみせた。

 

 私の八幡君を勝手に参考にされたのは複雑だけど…。

 

 まぁ、それは置いといて……でも、オーフェリアにあそこまで手傷を負わせたのは私が知る限りだとネイトネフェルが初めてだと思う。オーフェリアと戦う人が少ないっていうのもあるから分からないけど、私はあそこまで苦戦したオーフェリアを見たことがなかった。

 

 結果としては負けてしまった。

 

 しかし、最後の劣勢の中でも戦意を喪失しない姿は、私の瞳に強く残っていた。腕が見るに絶えないものになっても、身体に毒が蓄積され続けても、ネイトネフェルは決して降参をせずに、立ち向かったんだ。

 

 その代償はもちろん大きい。試合後、ネイトネフェルは意識を失い、何名もの医者によって、即座に保健室へ救急搬送された。不幸中の幸いで命に別状はないらしいって八幡君から連絡は来たけど……それでも友達として心配。だから、私は八幡君にネイトネフェルが目覚めるまで付き添ってあげてってお願いした。

 

 ネイトネフェルが最強(オーフェリア)を打ち倒せるのではないかという期待を、希望を、観客だけではなく、私にも身体を張って見せてくれたんだ。

 

 

 

 だから、今度は私の番。

 

 

 私が決勝戦でオーフェリアに勝ってみせる。

 

 まずはこの準決勝に勝たないとね。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー◆◆◆

 

 

 

 準決勝第二試合の準備が整い、明日の決勝戦に出場する二人目の選手を決める重要な試合が始まる。

 

 試合開始のアナウンスと共にステージ脇から二人の選手が出場。ざっざっと試合に集中する姿を観客に見せながら、ステージ中央へと歩みを進めていく。

 

戦律の魔女(シグルド・リーヴァ)。貴様のような強者とこの舞台で戦える日を楽しみにしていたぞ」

 

 武人らしき言葉でシルヴィアを迎えるのは界龍の序列8位の拳士の男。これが最後の星武祭であり、今年でアスタリスクを卒業するというドキュメンタリー的な話題性から注目を集めていた人物だ。

 

「こちらこそ。貴方の星武祭最後の相手が私だなんて。とても光栄だよ」

 

「ふっ。()()の相手か。まるで、自分が勝つような言動だが面白い。これほど勝ち気のある者と戦えるなら、最後だとしても本望だ。貴様の実力を見せてみろっ!」

 

 これが最後の試合となっても後悔はないと言わんばかりに、さらに闘志を高める拳士の男。一方、シルヴィアもニコッとした笑顔で、その闘志に応えるのだった。

 

「当然っ!私が……勝…つにっ…」

 

 

 シルヴィアがふと観客席を見上げた途端、まるで幽霊でも見たように声を震わせ、驚きの表情を浮かべた。決勝戦に向けてあれ程、試合に集中していたシルヴィアが動揺する()()。それが観客席にいたのだ。

 

 

(嘘っ……今のはウルスラっ!?どうして……)

 

 

 彼女の視線の先にいた人物。それは彼女の歌の師匠であり、星脈世代としての在り方を教えてくれた彼女の原点、ウルスラ・スヴェント。

 

 ずっと行方不明であり、シルヴィアがアスタリスクに来たきっかけでもある人物。そんな彼女にとって、重要な人物がそこで試合を眺めていたのだ。

 

戦律の魔女(シグルド・リーヴァ)っ?どうしたのだ?」

 

 

「ごめん、貴方との大事な試合。速攻で終わらせなきゃいけない用事ができちゃったみたい」

 

 

 紳士的に心配する拳士の男を余所に、張り詰めた様子でシルヴィアは自慢の煌式武装フォールクヴァングに星辰力を込めて彼に構える。

 

 

 

 準決勝第二試合開始。

 

 

 八幡がクロエに呼ばれた5分後の出来事だった。

 

 

………………………

 

 

 

…………………………………………………

 

 

 

……………………………………………………………………

 

 

 

 シリウスドーム内をグルグルと歩き、戦闘服姿のクロエの後ろを八幡がついていくと、シリウスドーム内に設置された使われていない筈のクインヴェール専用の個室観客席の前で、クロエは歩みを止めるのだった。

 

「クロエ、ここは使っていないんじゃないのか?」

 

「それは建前。いいから入って」

 

 クロエがドアを開け、二人がその使われいない筈の部屋に入ると、そこには八幡の見慣れた人物2人が、彼を待っていた様子で出迎えてくれていたのだ。

 

 

「ペトラさん……?それに西園寺さんまでっ!?」

 

 

「待ってたわ、新宮君」

 

 

「やぁ~八幡君。お久しぶり~」

 

 忙しいからとシリウスドームに顔をなかなか出さなかった学園長に、しばらく例の店を開けていなかった店長という異色の組み合わせ。これには流石の八幡も驚きを隠せない様子だ。

 

「一体何が……それに西園寺さんのその衣装は……」

 

「そっ。気付いちゃったぁ?この白衣。私、クインヴェールの煌式武装を扱う顧問技術員として中途採用されました♪︎どう?お姉さんを見直したでしょ?」

 

「えっ、す、凄いですね。おめでとうございます?」

 

「まったく……流ったら。新宮君に今はそんな話をしている場合じゃないでしょう?」

 

 西園寺さんは普段の様子ではあるが、ペトラさんは何か様子が違う。まるで、何か問題を抱えているような。それに八幡は素早く気付いた。

 

「ペトラさん、クロエを使って俺を呼んだ理由は?」

 

 ベネトナーシュであるクロエが制服姿ではなく、戦闘服。そして、学園長も絡んでいる。明らかに異常な事態がこの星武祭中に起こっているのは確かだ。

 

「ええ、優秀な貴方なら気付いているだろうけど、そこにいる流や武装状態のクロエも関連して、今クインヴェールはある人物に対処しています」

 

「ある……人物?」

 

「その人物は他の学園からも狙われいますが、行方を眩ませるばかり。しかし、ベネトナーシュの尽力のお陰で、その人物がこの星武祭中のシリウスドームにいることが分かったのです」

 

(なるほど……だから、クロエが行動してたのか)

 

「しかし、その人物の実力は強大。ベネトナーシュ全員が立ち向かっても全滅の可能性があります。けれど、その人物と非常に相性が良い実力を持ち、対抗できるかもしれない人物が一人いるんです」

 

「まさか……」

 

 

 

「察しの通りです。新宮八幡君、学園長の勅令として純星煌式武装ヴァルダ=ヴァオスの討伐を命じます」

 

 

 

 

 

 

 

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