歌姫に拾われた俺がアスタリスクで生活をするのはまちがっているだろうか。 作:リコルト
お久しぶりです。
???side
ナゼ、私はこの試合を見ている?
ワカラナイ。
気が付けば、私は他のギャラリー共と同じように、この試合
出場選手は星辰力は平凡程度の拳士の星脈世代。そして、
試合の内容はまぁまぁ。謎に星辰力が急ぎ乱れている
シルヴィア……リューネハイム
この星武祭が始まり、ベネトナーシュの奴等が妙に尾行してから、この名がどうしても離れない。
奴等に指示を出しているのが生徒会長の彼女だから?
違う。
これは私の意思ではない。この身体の宿主が反応しているのか。しかし、宿主が目覚める様子はない。
数年前、あの
私は
だから、この身体の宿主の名前もとうに忘れ、私の能力で見ることができる宿主の記憶も覗いたことはない。
けれど、彼女を見ていると、心がザワツク。
彼女の歌が私にノイズをハシラセル。
フカイ……不快だ。人間でいう体調不良というもののようだ。一刻と早く彼女から離れたい。私がこの宿主の身体を得たことで、初めて実感した
興味本位でこの大会会場に来てみたは良いが、もう二度と足は踏まないだろう。悪辣の王からの警告もあるし、身を潜める機会に移ろう。
だが……もし彼女の方から私の方に来れば…………
………………………………………◆◆◆
「やあぁぁぁぁっ!!!」
「ぐっ!!?……ここで詰みか……」
『おっーーと!!!シルヴィア選手の煌式武装の一閃が校章を一刀両断っ!!?決勝戦にコマを進めた勝者はシルヴィア・リューネハイム選手だぁ!!!』
『シルヴィア選手の歌を媒介にした自由度の高い能力には、己の身体だけで戦うタイプの選手は手数が少なく、相性が悪いですからねぇ。しかし、準決勝の名に相応しい良い試合だったと思いますよ』
シルヴィアが持つ魔女の能力をフル活用した戦いにより、準決勝第二試合はシルヴィアの勝利で幕を下ろした。先程の第一試合のような命に関わるような重傷者もおらず、運営側としては満点の結末だろう。
試合が終わり、実況・解説がシリウスドームに響く。そんな中、試合を終えたばかりの選手であるシルヴィアは、そんな試合の評価に目を向けることもなく、シリウスドーム内を疾走していた。
観客席から姿を消した師匠を探すために
(どこっ……どこなの……ウルスラ?)
シリウスドーム内をただ一人駆けるシルヴィアの頭の中には観客席から眺めていた師匠の姿しかなかった。
それは試合中でも同じ。だから、彼女は急ぐような戦いを行い、試合をできるだけ短くおさめた。そのために、彼女は決勝戦までに残しておくべきだった切り札の能力も無意識に使っていたのは言うまでもない。
冷静な判断も鈍る程、彼女の脳内はウルスラで一杯だった。もう数年も会っていない音沙汰もなく、消息不明になった師匠。そんな師匠にシルヴィアは色々と話したいことがあったのだ。
しかし、そんな彼女が試合後に姿を消した。シルヴィアはその時、直感的に感じ取ってしまったのだ。
『ここで逃せば、もう会う機会は無い』と。
何万人を収容できるアスタリスク最大のドーム施設をシルヴィアは試合後に残していた星辰力で、疾く駆ける。スタッフの注意程度の制止すらも振り切り、観客席を巡って、シルヴィアは異様な程に雑音もしないステージから遠く離れた人気が少ない学園関係者エリアへと辿り着いた。
そして
「見つけたっ!待ってよ!!ウルスラっ!!」
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「………以上がヴァルダ・ヴァオスを倒す作戦だ。だいたいは理解できたかな、八幡君?」
「はい、なんとか……」
西園寺さんから受け取った俺が討伐すべき標的について書かれた資料を見ながら、同時に作戦内容も伝えられ、俺がやるべきことをだいたい理解した。
ヴァルダ・ヴァオス
アスタリスク最大のテロ事件である『翡翠の黄昏』の首謀者とも言える人物……いや、純星煌式武装で、今はシルヴィの師匠に寄生しているとは。
確かにこれは今のシルヴィには伝えられない情報かもな。シルヴィの師匠がアスタリスクにいる情報もそうだし、身体を乗っ取られている情報も。それを聞けば、シルヴィは星武祭に集中できないだろう。
だからこそ、秘密裏に処理しなければならない。相変わらずペトラさんの判断は正しいものだ。
「おっけ~。じゃあ、八幡君にはこれを渡そう」
「これは整備に出していたヴァルハラじゃないですか。まさか、西園寺さんが……」
「そっ♪︎私が整備したの。ただ、整備だけじゃないよ。八幡君に合わせて色々とカスタマイズしたんだ。八幡君の能力を
西園寺さんから預けていた煌式武装ヴァルハラを受け取り、それを腰に身に付ける。右腰にヴァルハラ、左腰に
「それと、一番大事な……
そして、西園寺さんが次に渡してきたのは紫色の刃を持つ一つの短剣。今回の作戦の大事なアイテムであり、シルヴィの師匠を助けられる可能性を持っている。
「ありがとうございます」
俺はその貴重な短剣を懐に隠すのだが、それと同時に胸ポケットにしまっていた
「なんだっ!?シルヴィの試合はもう……」
作戦を聞きながらではあるが、シルヴィの試合の結末は拝見しており、この機械は鳴るはずがないと思っていた。というか、シルヴィの戦闘力を鑑みて、普通は一度も鳴るはずがない。いや、鳴ってはならないのだ。
「八幡君、それは一体?」
「これはシルヴィの体調や星辰力を管理する機械です。マネージャーになる際にペトラさんから頂いたのですが、このアラームは……シルヴィに異常が起きた際のアラームです」
西園寺さんに機械の説明をするが、機械の内容を知るペトラさんも俺が初めて見るひどく動揺した様子だ。だが、鳴るのはアラーム音だけでなかった。
「はい、クロエよ。………なんですって!?」
「クロエっ、どうした?」
「ベネトナーシュの仲間から…よ。生徒会長がヴァルダと交戦。生徒会長が手も足も出ないって…八幡っ!!」
それを聞いた途端、部屋を出た俺はアラーム音が鳴る機械のGPSを頼りに、シルヴィがいる場所へと最短距離で向かった。クロエの止めるような言葉はもう聞こえない。星辰力を足へとさらに込め、加速する。
「最悪の事態だ…………」
一刻も早く………早く………