歌姫に拾われた俺がアスタリスクで生活をするのはまちがっているだろうか。   作:リコルト

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受け入れ難い事実と邂逅

 

 

「見つけたっ!待ってよ!!ウルスラっ!!」

 

 

 フードを被っているけど、間違いない。フードから微かに見える空色の髪、幼少期に憧れたモデルのような高身長、そして懐かしさを感じる星辰力。全てが私の知っているウルスラと合致していた。

 

 確信を持った私は、なぜかフードを被っているウルスラの後ろから追いかけるように必死に声をかけた。

 

 すると、ウルスラは歩みを進めていた足をゆっくり止め、その場へと立ち尽くす。私の声が届いたのだろう。そのまま、ウルスラはフードを下ろし、私にその顔を見せてくれた。

 

 

 ウルスラに会ったら、色々と聞きたかった。

 

 どうしていなくなってしまったのか。

 

 今まで何をしていたのか。

 

 

 そして、私はウルスラに色々と話したかった。

 

 アスタリスクにやってきたこと。

 

 学園の生徒会長になったこと。

 

 アスタリスクにやってきて、沢山の友人ができたこと…色々と話したいことがある。

 

 

 

 けど、ウルスラの顔を見て、私はその願望を全て飲み込んだ。ウルスラの目は死人のように空虚で、まるで機械のような無機質さを感じてしまった。少なくとも、平常ではないことを私はすぐに察した。

 

 

「貴様は……シルヴィア・リューネハイムか。その感じから察するにこの身体の人物を知っているのだな?」

 

「誰っ……?貴女はウルスラじゃない……私の知っているウルスラはいつも笑って、感情豊かな人だった。ウルスラに何をしたの?」

 

「ほぅ……やはり知っているな。だが、その反応はどういう事だ?最近、私を尾行するベネトナーシュ共は、私がヴァルダ・ヴァオスだということを知った上で、生徒会長の貴様が、命令を出していたのではないのか?」

 

「ベネトナーシュがっ……?」

 

 知らない。初耳だ。

 

 確かに生徒会長である私にはベネトナーシュを動かす力がある。しかし、この星武祭は一切ベネトナーシュを動かした記憶はない。他に考えられるのは………

 

(ペトラさん……これは流石に私も怒るよ)

 

 学園長のペトラさんなら、ベネトナーシュを動かすのは容易だ。けど、私に伝えていないのは流石に憤りを覚えている。あれ程、ウルスラについて探しているって伝えたのに。帰ったら、詳しく説明して欲しいものだ。

 

 

 そして、聞き逃してはいけないワードがもう一つ。

 

 

(ヴァルダ・ヴァオス……確か前に学園が保有する機密文書で読んだ記憶はある。翡翠の黄昏を引き起こした純星煌式武装っ!?まさか、そいつがウルスラをっ……)

 

 

「ふむ、その様子だと知らないようだな。なら、余計な情報を与えてしまった。貴様には全て忘れてもらおう。この身体の持ち主の思い出と共にな」

 

 

 冷たい言葉を吐き捨てると、ウルスラ……いや、ヴァルダはフードを脱ぎ、全貌を現す。胸には怪しく光る大きなネックレス型の純星煌式武装があり、あれがウルスラをおかしくした奴の本体に違いない。

 

「ウルスラを返してっ!!」

 

 私は考える間もなく、煌式武装を起動。さっきの試合の疲れなんてどうでも良い。私はウルスラを戻せれば、それで十分だった。

 

 

 刃を顕現させた煌式武装を片手に、間合いを詰める。そして、煌式武装に星辰力を一気に込め、胸元の本体に強い一閃を決めようとする。しかし……

 

「貴様の攻撃は取るに足らん」

 

「くっ!??」

 

 カウンター。私の攻撃するタイミングで、ウルスラの身体を使った強い蹴りが私の右腹に入る。

 

 ウルスラは魔女ではなかった。しかし、彼女は武道を極めており、私にも星脈世代としての身体の使い方を教えてくれた。

 

 懐かしい……なんて思わない。

 

 むしろ、こんな純星煌式武装に私の師匠の身体を扱われているのが非常にムカつく。まるで、師匠を汚された気持ちになる。

 

「ケホッ……ケホッ……」

 

 通路壁に叩きつけられ、私はその場に座り込んでしまう。ウルスラの本気の身体能力は見たことがなかったけど、ここまで一撃が重いなんて。確実に骨一本はやられてるなぁ。

 

「所詮はそんなものか」

 

 

 

 その後も、ウルスラを操っているヴァルダとの戦いは続いたが、ウルスラの肉体を使った素早い拳、鋭い蹴りに対応できず、歌を発する余裕もない。気付けば、私はボロボロで、仇敵に首を掴まれ、宙に浮かされていた。

 

 

「がぁ……げほっ……ウル……スラぁ」

 

「所詮、能力の発動条件が満たせなければ、序列一位の魔女もただの小娘に過ぎない」

 

 空虚な瞳がこちらを睨み、逃がさないという意思を込めた首を掴む手から星辰力が流れ込む。

 

「がっ……やめてぇ……ウルスラぁ」

 

 首を掴まれ、すでに呼吸が整えられない状態にも関わらず、全てを塗り潰すような不快な星辰力が、さらに私を苦しめる。身体をバタバタと動かして抵抗するが、全く意味がない。

 

 ヴァルダという純星煌式武装が持つ特殊な精神操作型の能力の一端である記憶の削除が、私の身体を少しずつ蝕んでいく。

 

 

(あぁ…….いや、消えちゃう……)

 

 

 私の残りの星辰力をフル活用して、奴の不快な星辰力から私を守るようにしているが、その攻防も時間の問題。メモリのダウンロードのように、その侵攻度数は徐々に蓄積されていた。

 

 

(誰か………助けて…………)

 

 

 久しぶりにウルスラに会えた嬉しさが消えていく。

 

 

 ウルスラと過ごした日々も徐々にあやふやになり、

 

 

 ウルスラという名前にも疑問を覚え始めてきた。

 

 

「最後まで抵抗していたが、これで最後だ」

 

 

 師匠の声を悪用した冷たい言葉による死刑宣告。これで終わってしまうのと思い、私は涙を落とすが、涙が落ちた私の首を絞める腕に容赦はない。

 

 

 本気なんだ。 

 

 

 けど、この涙も枯れちゃうんだ。だって、記憶が無くなったら、泣く意味もないんだから。

 

 

 私は死刑宣告を受け入れようとした。助けを呼んでも、ここは人気が一切ない。駆け付けてくれる人がいない場所に私は後悔し、覚悟した。

 

 

 その瞬間

 

 

「ぐっ!!?」

 

 

 私の首を絞めていた腕が離れ、私は久しぶりのマトモな呼吸をすることができた。酸素を取り入れ、あやふやだった視覚も元に戻り、何が起こったのかを目にすることになる。

 

 

「だ、誰だっ!?」

 

 

 私の仇敵は腕を押さえ、叫ぶ。見てみると、腕には何者から受けていた傷があり、見たところ星辰力による光弾を受けたのだろう。

 

 朧気ではあるが、私を救った攻撃が飛んできたのは私の後方から。私を追い詰めた相手に一撃を入れた人物を私は後ろを振り返り、目撃する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「八幡くん…………」

 

 

「悪い、シルヴィ。待たせたな」

 

 

 

 

 

 

 






ついにヴァルダ戦っ!!
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